【推しの子】達を包む夜空は星を堕とさせない 作:C-RhYme
宮崎のライブから2年ほど経過した。
その間もB小町はじわじわと知名度を伸ばしテレビに呼ばれる頻度も増えてきた。
そして、俺自身も最初のドラマが評価され役者としての仕事がじわじわと増えて行った。
このあたりが基本的にこの期間に起きた良いことだろう。
しかし、良いことだけでなく悪いことが2つほどあった。
その悪いことの一つが通称『アイのお兄様』としての顔ばれしたことである。
それはB小町がテレビ収録の際に『B小町のマネージャーさんってどんな人なの』という話題になり本来はミヤコさんの話題を出すことになっていたと俺は聞かされていたのだが、メンバーで結託(社長、ミヤコさんもグルだった)して俺のことを話してしまった。
困惑していると俺のほうにカメラが向いてしまいあっさり俺はB小町のマネージャーとして世間に顔ばれした。
確かにその直前でミヤコさんが用事が入ってしまい収録に付き添うのが俺になったので少しおかしいとは思ったが、そういう理由だったのかと後でわかり心底呆れた。
その後のトークでメンバーからマネージャーが数年前から話が出ている『アイのお兄様』であることが伝えられたことで一瞬だがB小町は少し燃えかけた。
それは当然だと思ったが、ここでも古参のファンが中心になり『アイドルの横にいる男』ではなく『結成当時からメンバーを守ってきたアイのお兄様』なのだからたたくのはファンとしてにわか、B小町がいるのはお兄様のおかげという風潮になり焦げ臭くなっただけで炎上とまではいかなかった。
また、顔ばれ(名前も)したことで俺が役者をやっていることも広がり、俺が出たメディア経由でもB小町の女性ファンがふえたと社長が言っていた。
なお、これは関係ないとは思っているが最初のドラマ『未来へのカラー』で仲が良すぎた兄弟を演じたことで『アイのお兄様』は男が好きなのだから炎上しなかったというネットの書き込みを見つけたことがある。
そして、悪いことのもう一つが現在の状況である。
「お前も飲め飲め!」
個室の居酒屋で俺は壱護さんからビールを注がれていた。
俺が20歳になってから彼は俺を頻繁に居酒屋に連行するようになった。
事務所のメンツはほとんど女性で、一応わずかだがモデルの男子学生が所属しているぐらいで成人済みなのは俺とミヤコさんだけ。
その中で俺に飲み相手としての白羽の矢がたつのは仕方ないとは思っている。
諸事情により酒はあまり飲みたくないが、仕方ない。
仕方ない、と思うしかない。
「順調だからって飲みすぎです社長」
「飲みたくもなるさ。武道館が見えたんだからな」
普段はこのようなテンションではなく多少酒で楽しくなっている程度だ。
それが今日妙にテンションが高いのは再来年ころに武道館でライブを行える算段がついたのだ。
「まぁ、確かにドームライブまでの足掛かりとしては最高レベルですね」
「ああ。これからが正念場だ!だけど、今日は武道館を喜ぶぞ!じゃもっかい乾杯だ!」
「乾杯」
互いにグラスを軽くぶつける。
俺は軽く1口だけのんだが、社長は一気に飲み干した。
「かーっ!こんなうめぇ酒は久々だな」
「それはよかった」
空いた社長のグラスに瓶ビールを注ぐ。
まぁ、今日ぐらいは思う存分飲ませるとしよう。
「なぁ、一つ聞いていいか?」
楽しく飲んでいたはずの社長は急にまじめな表情でこちらを見てきた。
「なんですか?」
「どうしてお前・・・いや、アイトはここまで協力してくれたんだ?」
「どうして、ですか」
「ミヤコも言っていたんだがアイトは一人でやっていけるタイプの人間だ。能力もある、金もある。メディア露出するっていうのはかなりリスクがある。そりゃあ確かにアイには結構甘ぇけどよ、だからってアイに言われたってだけでそこまで尽くすタイプの人間じゃねえだろ?それこそ脅されようともな」
そこまで聞いて理解した。
ここまで順調だったからこそ、社長夫妻は不安になったのだ。
傍にいた俺の存在理由に。
それがわかったからこそ、俺は少し笑ってしまった。
「覚えてますか?斎藤壱護さんが融資の話を俺にしたときに俺が聞いたことを」
「あ、ああ。事業内容と必要額と目標だったか」
社長も覚えていたようだ。
「その目標、ドームをサイリウムで埋め尽くす。その夢が純粋で美しく感じたからこそ俺は協力することにした」
「そ、それだけ?」
「ええ。口先だけじゃない。中途半端に賢くなったふりをしている大人ではみれない夢。それなら構わないと思い融資ではなく出資にしました」
もちろん、当時の俺の代理人と壱護さんに恩を売れるからというのもあったが実際のところ壱護さんに恩を売るメリットはたいしてなかった。
それでもかまわないと思ったからこそ倍額を出資した。
「俺も『あなたの夢』に夢を見させてもらっている。だから手伝っている」
「へっ!アイトも結構なロマンチストなんだな」
社長はサングラスを少しだけ外し袖で目を軽くこすった後すぐにかけなおしてビールをあおった。
確かに俺は他者依存型の生き方をしているが、そこに楽しみがないわけではない。
だからこそ、彼やB小町の躍進を喜べるのだ。
「ならきっちりついてこい!あんときの言葉はまだ偶像だったけどな、必ず本当にしてその光景を見せてやるよ!」
「楽しみにしてます」
あぁ、楽しみだ。
これは心の底から出た本音だ。
「しかし・・・失敗したらとりあえず取り立てるようにしたほうが危機感ができていいでしょうかね?」
「いまさら怖ぇこというなよ!?」
いきなり時間とんだけど、予定通り
次回も時間が少し飛ぶ予定
宮崎ライブの時のニノやメンバーとの話を書くか悩んだけど、それならどこかでニノの独白回でまとめたほうがきれいだと思い断念(結局書くかは未定)
それにしても、話題にちょくちょく出てきてるのにミヤコさんを出せていないなぁ、と今更思っていたり・・・