私のお兄ちゃんは嘘吐きだ。
私が病院に入院してからほぼ欠かさずにお見舞いに来て、面会時間が終わるまで一緒にいてくれた。
週に1,2日ぐらいこれない時があるみたいだけどその時は雨宮『五月』せんせが必ず来
てくれている。
まぁ、もっともさつきせんせは仕事をサボってここにいることが多いから若干違うようなきもするけど。
ただ、それもこの2か月前くらいまでで最近は来る時間にばらつきはあれど基本的に毎日来てずっとそばにいてくれている。
「さりな、そろそろ戻ろうか」
「うん」
だんだんということを聞かなくなってきたとはいえ、体を動かさなくなるとそれが加速すると担当のとーどー先生に言われているからお兄ちゃんがいるときは体を動かすようにしている。
そして、その理由は
「おっと」
うまく体が動かず倒れそうになるとお兄ちゃんが素早く受け止めてくれる。
お兄ちゃんがそばにいるとき私は床に倒れたことがない。
必ずお兄ちゃんが受け止めてくれる。
その安心感からか倒れそうになっても声一つ出そうにならない。
助けてもらって当然、ではなくお兄ちゃんが私を助けないわけがない、という信頼だった。
何度やってもらってもそのたびに胸の奥が暖かくなる。
私は愛されているのだと。
「ふっふ~ん、ほめて遣わす」
私の言葉にお兄ちゃんは微笑んでから私を立たせてくれた。
「ありがたき幸せだ」
私のお兄ちゃんは嘘吐きだ。
私とのやり取りをするたびに微笑んでは瞳の中の夜空が曇っていっている。
お兄ちゃんは気づかれてないと思っているのだろうけど、私がお兄ちゃんのことに気が付かないわけがない。
私を受け止めてくれている腕の力が昔よりだいぶ弱くなっていることを。
私の代わりに伸ばしてくれている髪がだいぶ傷んでいることを。
顔に出ている不調を隠すためのメイクが濃くなってきているということを。
何回も倒れて点滴を受けているとということを。
そして、私がいないところで病院の人と話していることを偶然聞いて聞いてしまった。
このままの生活を続ければ死ぬ、と。
それでも私にはなんでもないかのようにふるまう。
「さりな、どうかしたか?」
「ううんなんでもないよ」
私は嘘吐きだ。
本当は言いたいことがいくらでもあるのに私はなんでもないとふるまう。
私のことより自分のことを心配してほしい、と言えない。
それがあまりにもうれしくて仕方ないから。
あなたの愛(嘘)を暴きたくないから。
でも、それをいつまでも続けられない。
だって私には時間制限があるから。
隠しているのだろうけど自分のことは私が一番わかっている。
私はその時が来る前に解放してあげないといけない。
きっと最後に私はあなたを傷つける。
それが残らない傷であってほしい。
頭の中のよいこな『さりな』がまた嘘をついた。
あぁ・・・お兄ちゃんのそばにいるのが一生私であってほしかった。
「うん、なんでもないんだよ」
私は嘘吐きだ。
私の愛(嘘)を送るまでもう時間はないということだけはただなんとなくわかっていた。