【推しの子】達を包む夜空は星を堕とさせない 作:C-RhYme
「病室にいないと思ったらこんなところにいたのか」
屋上に現れた男性はアイに近づいてため息交じりにそういった。
さっき一緒にいた男性とは違う男性で年齢的には先ほどの男性よりアイに近そうだ。
そこまで考えてある結論にたどり着いてしまった。
(こ、こいつがアイを!?)
そりゃあ、相手がいてこそ子供はできるができれば知りたくなかった。
アイなら処女受胎であってもおかしくないと思っていたぐらいだ。
一瞬、さっきの決意がゆらぎかけた。
「あ、センセ紹介するね」
心の中では盛大にやめてくれと叫んでいるが、推しの言葉を遮るわけにはいかない。
今から処刑される、というのはこういう気持ちなのだろ無駄に実感できた。
「この人がパパでーす」
そして、心の中の私は盛大に処刑された。
あぁ、死ぬ前に推しに会えたからよしとしよう。
「アイ、少し黙っててくれ」
アイを黙らせようとするとはなんて不届きな、と思いつつもよく考えてみるとその声には聞き覚えがあった。
その人物は私のほうに近づいてくると帽子と眼鏡を外した。
中に隠れていた長い色素の薄い金髪がさらっと広がる。
「あ、藍斗くん?」
「お久しぶりです雨宮先生。アイの担当医だと聞いて驚きました」
さりなちゃんの兄の藍斗君がそこにはいた。
「え、え、じゃあ藍斗君が」
のうがはかいされるおとがした。
知り合いなら素直におめでとうを言わないといけないけれどそれ以上にショックで頭が真っ白になった。
「アイ、少し先生と話をしてるから戻ってろ」
「ふ~ん。じゃあ、センセまた明日」
アイは一瞬不満気に藍斗君を見た後にこやかに屋上からいなくなった。
「大体4年ぶりですね」
「う、うんそうだね」
最後にあったのは宮崎ライブの前日の食事の時だ。
ライブ当日の日は会場にはいたらしいけど結局会えず、その後は特に連絡もとっていなかった。
「え、えっとさ」
いろいろと聞きたいことがあるけどさっきの件が頭の中で片付かずうまく言葉にできない。
「先に言っておくことがあります。俺はアイの子の本当の父親ではないです」
先ほど破壊された脳が復活した。
「で、でもさっきパパだって」
「対外的にはアイの子を俺の子として扱って俺がシングルファザーであるという形にするだけです。アイがアイドルを続ける以上、子は公表できない」
そこまで言われて状況が理解できた。
アイの子供だとは公表できなくても子供がいる以上、親は誰かという流れになる。
そうなったときに藍斗君がシングルファザーとして名乗り出るということでアイに矛先が向かないようにしているのか。
だからさっきパパだって言ったのかと納得できた。
ちょっとだけ他意を感じたきがするけど。
「でもそれ私に言っていいの?」
おそらくこれは事務所のトップシークレットだ。
それこそ漏れてしまえば会社の存続や首をくくることにつながりかねない。
「先生を信じているのが一つと、アイと俺の関係性について疑問を投げられる人物がいるところに入院してしまったので知っておいてもらわないと面倒になりかねないからです」
そういって藍斗君はため息交じりに頭を抱えた。
「昼頃にここに入院する旨を聞いた俺の心境がわかりますか?よりにもよってここか、と」
「確かに。藍斗君のこと覚えてる人いるしね」
彼はある意味、入院患者より有名だったから。
おそらく私がまだここにいるということも後で知って困ったことだろう。
「基本的に俺はここには来ないようにします。変な噂が広がるリスクがありますから」
「うん、それがいいかもしれない」
「ただアイが口を滑らせる可能性がある以上、ある程度事情がわかる誰かしらに協力を仰がないといけなかったのでそういう意味では先生でよかった」
「まぁ、私がいなければこのやりとりもそもそもしなくてすんだからなんとも言えないけどね」
「その通りではありますね。そのうえで雨宮先生、無茶を承知で頼みます」
そういって藍斗君はこちらをジッと見つめてきた。
その瞳は昔は真っ暗だったのにその中に星が見えた気がした。
「アイをよろしくおねがいします」
そういって彼は頭を下げた。
万感の思いがこもったお願いだった。
その瞬間に星野アイの医者として、アイのファンとして、藍斗君の友人としての意見がまとまった。
「全会一致した。任せて藍斗君」
もう、彼がひとりで苦しまなくてすむようにできる限りをしよう。
「ありがとうございます」
顔をあげた彼は優しい笑顔を浮かべていた。
「さて、聞きたいことがあると思うのですべて答えますよ」
自分の話はここまでとばかりに彼は空気をかえた。
そこからは私が延々と質問する番だった。
「髪の毛染めたんだね?」
「逆です。こっちが地毛で、さりなが入院したあたりからは黒く染めてたんです。いろいろ行動するのにこの色は目立つので」
「じゃあなんで今は染めてないの?」
「子供が生まれるのに染髪材がついているのはよくないので全部落として、染め直してないだけです」
「おぉ、ちゃんとしてる。えっと、アイのお兄様って藍斗君だったんだね?テレビで見ててビックリしたよ」
「あれは俺も驚かされましたよ。不意打ちでしたしね。まぁ、アイとの関係が色々わかったのは施設に入れらて天童寺に引き取られてからですが」
「いつからマネージャーだったの?」
「B小町結成当時からです。それがばれると面倒だからさりなにも言ってませんでした」
「私も羨ましいって思うからさりなちゃんがいろいろ言ってきそうなのは想像に難くないね。じゃああの時のチケットはその伝手?」
「そうです」
「もしかしてここでのライブの前日の時って近くにB小町がいてライブの準備してた?」
「ええ。その際にニノが近くにいたのをあなたが恋人扱いしてただけです」
「あはは、そりゃあ時間ないわけだよね。そ、そういえば役者になってたんだね?同僚から聞いてびっくりしたよ。ファンなんだってさ」
「今の事務所に所属した際にその部門に配属されただけです。その同僚さんには俺がここに来たことは黙っててください」
「同僚が言ってたけど藍斗君って男の人が」
「俺、それいろんな人に何回も言われてるんですけど・・・」
「そっか違うならよかった。ところで体調不良で活動休止って聞いたけど大丈夫なの?」
「ちょっと倒れただけです。これからはアイのサポートをするために体調不良という建前で表に出ないようにするので当分は表の活動はしない予定です」
「倒れただけって、気を付けてね?それこそもうキミ一人だけの体じゃないんだから」
「・・・そうですね」
しばらく質問攻めした後は、近況報告をして解散となった。
「では、次ここに来るとしたらアイの子が生まれる時くらいです」
「そっかじゃあ5か月後くらいかな?またね」
「ええ、ではまた」
そういって、私たちは別れた。
そして、その『また』は私雨宮五月に訪れることはないとはこの時の私は知る由もなかった。
とりあえず、原作1話でやりたいことはかけたのでおっけー
あと2,3話(予定)でルビー出せるぞぉ