【推しの子】達を包む夜空は星を堕とさせない   作:C-RhYme

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第二十二話 約束と家族

 

「藍斗君ももうすぐ来てくれると思うよ」

 

出産予定日になり昼頃に私は彼に予定通りの時間になりそうな旨を伝えた。

 

その返事も一瞬で返ってきてすでに宮崎行きの飛行機にのる直前とのことだった。

 

到着は17~18時ころと言っていた。

 

あらかじめピンポイントで日程を組んでいないとできない行動だ。

 

それを見た私は思わず笑ってしまった。

 

予定では出産は夜から深夜にかけてになりそうだとは知っているはずなんだけどな。

 

 

「そっか、ありがとセンセ」

 

「どういたしまして。それじゃあ、私はいったん家に帰って少し休んでくるよ」

 

 

陣痛が始まるまではまだ時間がかかりそうだったのと、少し休んで頭をしゃっきりさせたい。

 

初産の双子だから長丁場になるだろうし。

 

 

「よんだらすぐ来てよ?」

 

「大丈夫。それになにかあっても他の先生がいるから」

 

「やだ。センセがいい」

 

「はは、じゃあ必ず戻ってくるよ」

 

 

私はそれだけ伝えて白衣を着たまま病院を出た。

 

アイとは良い関係が築けたと思う。

 

ただ、それもこの出産が終わったらただのアイドルとファンに戻る。

 

それでいい。

 

藍斗君の伝手を使えばまた会えるだろうけど、その為に友人を利用したくない。

 

寂しくないと言ったらうそになるが、私は医者なのだから元気になって私とは無関係になるというのが何よりも喜ばしいことだ。

 

ただ、純粋に彼女と子供の幸せを願えた。

 

それなのに頭によぎったアイとある男性が双子を抱きしめているのを想像して、胸の奥が変にきしんだ気がした。

 

 

「もう、暗くなってきちゃったなぁ」

 

 

外はすでに暗くなっていた。

 

とりあえず家に向かう。

 

そして、5分ほど歩いたところで後ろから誰かがついてくる音に気が付いた。

 

立ち止まって振り返るとそこには黒いフードを深くかぶった人がいた。

 

 

「アナタ、星野アイの担当の雨宮五月?」

 

 

顔はよく見えないが、輪郭やフードから出ている長い髪、そして声からおそらく女性だ。

 

問われた内容に一瞬で私の頭が警戒音をならした。

 

アイの名前は公表されていない上に、病院では偽名を使っていたのに本名をあてた。

 

そして、その担当が私であることも。

 

 

「ああ、答えなくてもいいわ。その反応で十分だもの」

 

「アナタは関係者の方?名前を聞いてもいい?」

 

 

一応、関係者の可能性もある。

 

すぐに藍斗君に確認が取れるようにスマホを準備しながら訪ねた。

 

しかし、その女性は答えることなく逃げてしまった。

 

 

「ちょっと待って!」

 

 

ここで逃げられるのはまずい。

 

悪質なストーカーの可能性が高い以上、放っておくとこの出産を控えた大切なタイミングで何をやられるかわかったもんじゃない。

 

それに女性だったらおそらく私でもなんとかできるはず。

 

そう思い、私は彼女を追いかけて彼女が逃げていった森の中へと入った。

 

 

「はぁ、はぁ、暗くてよく見えない」

 

 

持っているスマホのライトで周囲を照らし周りを見渡す。

 

見失ってしまった。

 

 

「まずいなぁ。いったん、警察に・・・いや、でも警察も被害が出てからじゃないとだし事が大きくなるのもまずい」

 

 

このとき、私はいったん病院に戻って警備の人に警戒を呼び掛けるべきだった。

 

ライトで自分の位置を伝えるようなことはすべきではなかった。

 

ドン、と何かがぶつかった衝撃が来たと思った瞬間脇腹から熱と激痛が走った。

 

 

「ぐぅ・・・」

 

 

そこを見ると銀色の何かが見えた。

 

ナイフが刺さっていた。

 

理解した瞬間、さらなる激痛で立っていられなくなった。

 

 

「これで、アイツは・・・」

 

 

薄れゆく意識の中で先ほどとは違う男の声が聞こえた。

 

そして、何者かは倒れた私を持ち上げると崖から私を落とした。

 

最後に見えたのはわずかに星の光に反射した金髪だった。

 

あぁ、藍斗君、アイ、ごめん・・・

 

 

「約束・・・まもれ、そうも、ないや」

 

 

地面にたたきつけられ私の意識は消えた。

 

 

 

 

 

Side Aito

 

 

宮崎に到着したとき、病院に着いたときに雨宮先生に連絡を入れたがつながることはなかった。

 

妙な胸騒ぎがするが俺は横にいるアイを不安にさせないように表情に出さないようにした。

 

 

「じゃあ、アイトお願いね」

 

「構わないがいいのか?」

 

「いいの。もう病院側には伝えてるんだから」

 

 

病室で二人っきりで待っているときにアイにあることを頼まれた。

 

出産に立ち会ってほしいと。

 

俺とアイの関係は夫婦どころか恋人ですらない。

 

一番ましな関係が義理の兄妹といったところだ。

 

一般的に出産の立ち合いはお腹の子の親か彼女の夫となる人物がするものである。

 

もちろん、アイが俺のことを好ましく思ってくれているのはわかっているがそれ以上にアイが守りたいと思っている男性がいる以上、その人物と結ばれたいはずだ。

 

俺がお腹の子の親となるはあくまで便宜上という側面が強い。

 

不安からきたものなのか、それとも他の理由があるのか。

 

 

「アイトがそばにいてくれれば私がんばれるから」

 

「そうか」

 

 

いろいろと頭の中で考えたが一瞬で破棄された。

 

結局俺は断らないのだから考えてもしょうがない。

 

 

「それにしても、すごいね?一瞬アイトってわからなかったよ」

 

「前回は急だったから仕方ないとして今回は予定を組めたから帽子を外すことも考慮してる」

 

 

普段の帽子と眼鏡に頼った変装ではなくウィッグや髪型、カラコンを駆使して星野アイトだとわからないようにしている。

 

そのうえで印象に残りにくいようにはした。

 

 

「ありがと、アイト」

 

「何をいまさら」

 

「ははは、そうかもね。じゃあこれからよろし・・・っ!」

 

 

笑っていたアイは突然お腹を押さえた。

 

どうやら陣痛が始まったらしい。

 

俺はすぐナースコールを鳴らした。

 

そして、すぐにアイの手を両手で握った。

 

 

「大丈夫、大丈夫だ」

 

「うん・・・大丈夫」

 

 

その後のことはあまり覚えていない。

 

分娩室に連れていかれるアイの手をずっと俺は握っていたと思う。

 

どんな言葉をかけたかも思い出せない。

 

どれだけ時間がたったかもわからない。

 

気が付けば、二つの泣き声が聞こえてきてアイの腕に二人の赤子が抱かれていた。

 

 

「アイト、抱っこしてあげて。ルビーとアクアマリンだよ」

 

 

汗だくで息が乱れているアイから二人を渡される。

 

重量だけで言えば大したことないはずなのに、とても重く感じた。

 

 

「ルビー、アクアマリン、パパだよ~」

 

 

アイの言葉に俺は何も言えず二人を抱きしめた。

 

応えるかのようにルビーとアクアマリンは大きく泣いた。

 

 

「家族が増えたね」

 

 

嬉しそうに笑うアイを見て終わったのだと俺はやっと呼吸ができた気がした。

 

 

そして、最後まで雨宮先生は現れずその後連絡がつくことはなかった。

 

 





おっかしいなぁ
書き始めるまでは外で待ってたはずなのにアイさんが急に立ち会うよう言い始めたんです

まぁ、書き直すとしたらこのシーンカットになるかも・・・(未定)


かわいいアイさんやルビーちゃん、アクアマリンちゃんを書きたいのに曇らせろと闇野作者がずーっとささやいてくる

きえるべ闇のあたす!
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