【推しの子】達を包む夜空は星を堕とさせない   作:C-RhYme

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第二十四話

 

崖から落とされて気を失ったかと思えば私雨宮五月は天国にいた。

 

いや、死後の世界という意味ではなく比喩的なものではあるけれど間違いなく天国だ。

 

その理由は

 

 

「いい子でちゅね~愛久愛海」

 

 

推しのアイドル・アイの娘愛久愛海として生まれ変わり、甘やかしてもらえているからだ。

 

自分が赤ちゃんになったことを受け入れられるようになるまで時間はかかったけど受け入れてしまえばこれほど心を癒してくれる環境はない。

 

社会の荒波ですさんだ心に効く。

 

前世の自分は刺された上に崖から落とされたのだから間違いなく死んだのだろうけど、そのマイナスを余裕でうちけすほどの幸せだ。

 

 

「はんぎゃー!はんぎゃー!」

 

「はぁいなんでちゅか?」

 

 

そして、この家には私の双子の妹となる瑠美衣がいる。

 

この子はここまでの生活で私と同じ前世の記憶持ちだというのがわかっている。

 

今みたいに私だけが甘やかされていると高確率で泣いて妨害を試みてくる。

 

最初は偶然かと思ったけれど、たまにアイに見えないようにドヤ顔してくるので間違いなくわざとだ。

 

 

「おい、そろそろこれからの段取りを確認するぞ」

 

 

部屋の中に私が最初にアイを診断したときに一緒にいた男性、事務所の社長である斎藤壱護が入ってきた。

 

それと一緒にかなり若い金髪の女性、社長夫人のミヤコさんも一緒だ。

 

 

「アイドル『アイ』は今日から復帰だ!そんで一発目が生放送の歌番組、いけるな?」

 

「もちろん」

 

「アイが仕事の間、子供の面倒はミヤコとアイトが交代で見る。とりあえず、今日はアイトが見てくれることになっている」

 

 

社長はそう言ったがこの部屋に藍斗君はいない。

 

それもそのはずで、藍斗君はとなりの部屋に暮らしており、建前上は兄妹が隣に暮らしているという形をとっている。

 

そして、アイがいない間は私たちは藍斗君の部屋の方で面倒をみてもらう・・・というのが当初の予定だったらしいが、アイが『兄妹なんだから一緒に暮らしててもおかしくない!』とごねて結構な頻度で藍斗君がアイの部屋に来ている。

 

ざっくりと3日に1日だけ自分の部屋に戻るような感じだ。

 

まぁ、実際はアイが元気いっぱいの状態の時は部屋に戻ったりしているのでその頻度も場合によりけりだけども。

 

藍斗君はアイの復帰する2カ月ほど前から一応復帰しているが主にマネージャー業で役者としての仕事はかなりセーブしているらしい。

 

 

「子供たち仕事場連れてっちゃダメ?」

 

 

アイがとんでもないことを言い始めた。

 

 

「ダメに決まってんだろ!いくら表向きはアイトの子だつっても、アイトがいない場所に連れていくのを見られたら別な理由でお前が炎上する!それならまだしもお前の休止時期を考えると子供かもしれないと思われたら全員首をくくることになる!」

 

 

そう、藍斗君が最初の防波堤になるからまだ多少の疑念は大丈夫だけど突っ込まれたら終わりなのだ。

 

 

「だいたい、アイトさんの件も若干焦げ臭くなったのよ?結婚もしていない相手に子供を産ませて捨てたんじゃないか?って」

 

 

ミヤコさんがげんなりしたように言った。

 

これに関してはまだ私の意識がはっきりする前のことだからあまりわからないけど、聞く限りだと復帰直後に子供がいることを公表した結果そのような反応が返ってきたらしい。

 

一応円満で別れたということで表立った批判はなくなったが、それでも炎上寸前だっただろう。

 

 

「でも、あれって子供云々って言うよりアイトが女の人と」

 

「何をへんなことを言ってるんだ?」

 

 

アイが何かを口走りそうになった時に藍斗君が部屋に入ってきた。

 

どうやら時間になったから来たようだ。

 

 

「あーう!だー!」

 

「ん?どうしたルビー」

 

 

藍斗君が来たとたんアイの腕の中でおとなしくしていたルビーが藍斗君に手を伸ばして暴れ始めた。

 

それをみた藍斗君がアイからルビーを受け取り抱っこしてあげるとルビーはすぐおとなしくなった。

 

 

「アクアはパパが好きだね~」

 

「ルビーだ。間違えるなアイ」

 

 

アイはいまだに私とルビーを間違える。

 

そのたびに藍斗君から注意を受けていた。

 

確かに双子だからわかりにくいだろうけど、髪の長さも違うしルビーはリボンをしており私は何もつけていないと見分けやすくしてる。

 

それでもアイは間違えるのだ。

 

なんでもなかなか名前と顔を覚えられないらしい。

 

 

「そろそろ時間だろ?アクアマリンもあずかるから準備しろ」

 

「は~い」

 

 

アイは私を藍斗君へと渡した。

 

アイとは違うしっかりとした体に力が伝わる腕。

 

それらがまるで大樹に守られているかのような安心感を与えてくれた。

 

 

「ふふ、ルビーもパパが好きなんだね~」

 

「アクアマリンだって言ってるだろ」

 

 

そんなやりとりを横目にしながら安心からか私は一気に眠りについた。

 

 

 

 

Side Aito

 

 

双子が眠りについたのでベビーベッドで寝かせてから俺はパソコンとタブレットで自分の仕事をしていた。

 

アイが退院してから5カ月ほどが経過した。

 

出産後、特に体調を崩すこともなくアイは元気になり今日復帰だ。

 

双子も育っており順調なのだが少しばかり不安があった。

 

この子たちが夜泣きをしない。

 

さりなが産まれてすぐくらいは天童寺の両親は寝る間もないくらいだったのを思い出す。

途中からは俺が夜泣きの対応をして両親の睡眠時間を確保していたが、それぐらい本来は夜泣きは大変なのだ。

 

育てる側としてはありがたいが、もしかすると脳に障害があるのでは不安になったりもしてしまう。

 

一応医者に相談したが、特に異常はなく普通の子より賢く反応がよいという程度だった。

 

ちなみに俺が医者から戻り、それを聞いたアイは『親に似て天才なんだな』としたり顔だった。

 

 

「そろそろ時間か」

 

 

時計を見るとB小町が出る番組の生放送が始まる時間だ。

 

今日は現場に社長が付いて行っているはずなので本来は見る必要がないが、アクアマリンとルビーがアイの過去の映像がテレビで流れると何回も見たがるほど大好きなため見せようと思ったのだ。

 

 

「アクアマリンは起きてたか」

 

 

ベビーベッドを見るとアクアマリンはこっちをジーっと見ていた。

 

そして、俺が気が付くと眠っているルビーをゆすって起こしていた。

 

賢すぎる気もするが俺自身もにたようなものだったことを考えるとよくあることなのかもしれない。

 

俺はベビーベッドへと行きアクアマリンとうっすらと目を開けたルビーを抱きかかえてテレビの前に座りテレビをつけた。

 

ちょうど、B小町の順番だったらしく7人全員が映っておりアイが質問を受けていた。

 

 

『本日活動再開となったアイさん!大丈夫?ご飯食べてる?』

 

『はい!いっぱい!たべてます!そうそう!ごはんと言えばこないだウチの子が』

 

『うちの子?』

 

『あ、兄の子ことです!休養中はずっと一緒にいたから、ついうちの子って』

 

 

正直危なっかしくて見ていられない。

 

これで俺が親を名乗らなかったらどう誤魔化すつもりだったのだろうか?

 

画面の中でアイはこちらの心情などはつゆ知らずケラケラ笑っている。

 

しかし、その後の歌とダンスはさすがだった。

 

復帰一発目とは思えないほどのキレを見せている。

 

 

「「きゃー!」」

 

 

腕の中で二人が嬉しそうに目を輝かせて腕を動かしている。

 

 

「キミたちのママはすごいな」

 

 

子供の手前アイだけをほめる。

 

もちろんアイだけでなく他のメンバーも高いレベルでまとまっている。

 

確かにトータルで言えばアイが少し抜けているだろう。

 

それでも、アイのワンマンチームと呼ばせないほどの実力は見せている。

 

というかそれぞれが他のグループだったらセンターを張れるほどだ。

 

その証拠にアイがいない間もB小町はちょくちょくテレビ、ラジオ、CM、地方ライブ等に呼ばれている。

 

もちろん、その間メンバーからの愚痴は俺の方に頻繁に来ていたがそれは甘んじて受け入れた。

 

だからこそ、アイも復帰最初の仕事をテレビにすることができた。

 

しばらくして、B小町の出番が終わるとルビーがジーっと俺の方を見てきた。

 

 

「うぅー!あー!」

 

 

俺の服をつかんでもう片方の手をテレビのほうに伸ばしている。

 

どうやらもう一回見たいようだ。

 

俺は二人を落とさないようにリモコンを操作して、もう一度B小町の出番が始まったところから録画した映像をながした。

 

今見たばかりだというのに二人は目を輝かせてみている。

 

その様子を見てある二人を思い浮かべてしまう。

 

 

「・・・」

 

 

ルビーをさりなと重ねて自分を慰めようとする自分を戒める。

 

 

(忘れるな。俺はさりなを見捨てて救えなかった)

 

 

都合よく考えようとする卑怯者の脳みそを切り替える。

 

あの日以降、雨宮先生とも連絡が取れていない。

 

病院に確認したところ突如退職する連絡が入り、その後はわからないとのことだった。

 

何か起きたのかもしれないが、確認するすべがない。

 

せめて彼女だけでも無事であってほしい。

 

 

「だぁーう?」

 

「ルビー?どうした?」

 

 

どうやら態度にでてしまっていたようでルビーがこちらを見ていた。

 

そして、ルビーは両手で俺のほほをはさんでジッと見つめてきた。

 

輝く星が『両目』いっぱいに広がった。

 

 

「きゃっきゃっ!」

 

 

ルビーが嬉しそうに笑うと、先ほどの重くなった気持ちは一瞬で消し飛んだ。

 

そして、アクアマリンもその小さな腕を広げて抱き着いていてくれた。

 

それだけなのに世界が明るくなった気がした。

 

 

(すごいな)

 

 

俺はルビーとアクアマリンを少し強く抱きしめ続けた。

 

 

間違いなくこの子達はアイの子だ。

 




す、すごい、ルビーちゃんが絡むと指ががんがん動いてくれる


けど、入れる予定なかったのにアイトを軽く曇らせてしまった


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