私には何個かの未来が少しだけわかる。
何も前提条件がなければそれはなんてべんりなのだろうと思うだろう。
なら、このような前提条件ならばどうだろうか?
わかる未来は自分が死ぬ直前のことだけ、そしてそれはつまり自分の死に方だけだ。
私にとってそれは便利というより温もりをくれるものだった。
「全部、キミが守ってくれたね」
まだ会ったことのないキミが私の為に死んでいる。
ある時はすべてを犠牲にして私を支えてくれた。
その時は何でもないという嘘だった。
自分を少しでも優先してくれればキミは死ぬことはなかったのに。
でも、そうしていたら私たちは何を失っていたかわからないほどの大惨事が起きていただろうな。
ある時は凶刃から私をかばって助けてくれた。
その時は大丈夫だよという嘘だった。
自分を少しでも優先してくれればキミは死ぬことはなかったのに。
でも、そうしていたら私は間違いなく命を落としていただろうな。
どれかの未来で誰かに言われた『好きが振りきれると何を犠牲にしても惜しくない』という言葉が妙に胸の中で落ち着いた。
その思いがあまりにもうれしくて・・・
その行動があまりにもかなしくて・・・
その犠牲の中にキミだけじゃなくてちゃんと私がいるとわかっていたらキミは生きていてくれたのだろうか?
「酷い人だなぁ」
キミがいない現実を私は受け止めきれなかった。
すべてを支えてくもらった私は薬を飲んでキミの後を追った。
せっかく支えてもらったけど支えがなくなったものは崩れるんだよ?
凶刃から守ってもらった私はその刃を拾ってお揃いの傷を作り後を追った。
せっかくかばってもらったけどキミの傷は私の傷と同じだから痛いんだよ?
そして、私だけじゃなく、娘が真っ先にキミの後を追った。
あまりの思い切りの良さに少しうらやましく感じた。
そう、私の死因の『すべて』が自殺だった。
「あんなに私のこと愛してくれたのに、私、愛してるって伝えられてないよ」
あまりに臆病な私はいつも間に合ってなかった。
出会う前からあなたの献身を知っていたのに。
確信した時には伝えるべき相手はすでにいなくなっていた。
「あんまり待たせてもかわいそうだよね」
ライブを終えて家に帰ったら血だらけになり温もりがなくなったキミがそこにはいた。
今回は家でちゃんとまっているよ、という嘘だったね。
今回の死に方も覚えた。
キミの横に落ちていたナイフを拾いキミと同じ場所に突き立てそのままキミの体の上に倒れた。
「あぁ、次があるといいなぁ」
キミの手を握るかわりに私は意識を手放した。
これを見た私はちゃんとうまくやってほしいな。