【推しの子】達を包む夜空は星を堕とさせない 作:C-RhYme
夜空に包み込まれるように沈んでいった私の意識はある日、突然浮上した。
最初は意味が分からなかったけど、少し時間がたちすべてを理解した。
推しのアイドルの娘に生まれ変わってる。
私、天童寺さりなは気が付けばアイの娘瑠美衣として生を受けていた。
これが2か月ほど前の記憶である。
赤ん坊なせいかまともに意識がなかったからその期間も正確かは微妙だけれど。
それだけでも幸せの絶頂なのに、神様はさらならサービスをくれていた。
「ルビー、どうした?」
前世の私の兄、藍斗お兄ちゃんがいたのだ。
髪の色が私が入院する前に戻っているけど、まだ私の為に伸ばしてくれているのかかなり長い。
周りの人の話や同じく生まれ変わりらしいアクアが言うには一応パパだけど血がつながっていないらしい。
神様、過剰サービスが過ぎる。
つまりこれは神様がお兄ちゃんと離れ離れにはさせない上に将来結婚できるようにしてくれてるということに他ならない。
結構年齢差があるけど気持ちは6歳差だからセーフ。
あまりの幸せに笑っているとお兄ちゃんも優しい笑みを浮かべてくれた。
(元気そうでよかった)
それがなによりもうれしかった。
私が死ぬ直前なんて私より顔色が悪いんじゃないかと思ってしまうレベルだった。
それにもしかして私が死んだら後を追って『くれる』かもしれなかったから生きていてくれてうれしい。
意識ができてお兄ちゃんの顔を見た瞬間に大泣きしてしまいママもお兄ちゃんも困らせたのは記憶に新しい。
「ルビーは本当にパパが好きだね~」
ママがお兄ちゃんの肩に顔をのせて私を覗き込んでくる。
あまりガチ恋距離をされてしまうと胸が高鳴ってしまうから困る・・・いや、推しにされてるのだから困らない。
間違いなく幸せなはずなのに、あることがそこに影をさす。
それがお兄ちゃんと『アイ』の距離感だった。
ほぼ同棲していて、苗字もお兄ちゃんは何故か天童寺ではなく星野を使っている。
それなのに結婚しているわけではないらしい。
夜中にこっそりと(周りの人たちに生まれ変わりだとばれないようにするため)アクアに確認してみたらお兄ちゃんはアイの兄で通称アイのお兄様だったとのこと。
それを聞かれた瞬間に絶対に汚されない聖域を土足で踏み荒らされたかのように胸の奥が鈍く傷んだ。
(どうして)
アイのお兄様だってことを生前に教えてくれればよかったのにとか、もっとB小町の話をしてくれればよかったのにと、いろいろあるはずなのに今の私にはそれを考える余裕はなかった。
幸せなはずのに思わずお兄ちゃんの服を強く握ってうつむいてしまう。
そこは私だけの物なのに。
わかっている、これが醜い嫉妬や独占欲なのだと。
死んだはずの私はすでにその席から追い出されているのだと。
今知ったわけでもないのに自覚してしまうと頭が限界になり涙が止まらなかった。
「おんぎゃー!おんぎゃー!」
「あれれ?どうしたんだろ、お腹すいたのかな?」
「さっき上げてたしおむつも替えた。だからきっと」
私が泣いているとお兄ちゃんは少し強く私を抱きしめ背中をやさしくゆっくりトントンと撫でるかのようにたたいた。
「大丈夫、俺はここにいるから」
私の不安がわかっているかのような言葉に胸が温かくなり自然と涙が引っ込んだ。
顔を上げると私が好きな夜空のようなきれいな瞳がそこにはあった。
しばらく見ないうちに少し変わってしまったような気がするけれど、それでも私の大好きな瞳だった。
思わず両手を伸ばしてお兄ちゃんの顔に両手を添えて瞳を覗き込んでしまう。
「わわ、キスはダメだよ!?」
直前でママに邪魔されてしまう。
普段は構ってもらえてうれしいのに今だけは少し嫌だった。
「ルビーはそうやって目を覗き込むのが好きなんだ」
「私されたことないけど」
「そうなのか?まぁ、とりあえずキスしようとしわけじゃないから大丈夫だ」
「だけどさぁ」
「ふてくされるな」
「ん~・・・」
ママがお兄ちゃんの肩に顔をうずめてぎゅっと抱き着いている。
それをお兄ちゃんは嫌がるでもなく当然のように受け入れている。
推しのアイドルが誰かに甘えているのを見てしまいお兄ちゃんに対して暗い気持になる。
一番大切な兄が女性に甘えられているのを見てしまいママに対して暗い気持ちになる。
見たくない。
(わたしの『あい』をとらないでよ・・・!)
それがどちらに対して思ったことなのか、私にはわからなかった。
あ、あれ?もっといちゃいちゃさせようと思ったのに気が付けばこんな展開に
だから指が重かったのか・・・
次こそはがっつりいちゃつかせてみせる!
当小説のルビーちゃんは少し独占欲強めです(多分)
父親の話を早めにいれるよう段取り中。
内容的にはアイとヒカルの会話回。
今週から来週にかけて少し忙しいので更新ペース遅れるかも・・・