【推しの子】達を包む夜空は星を堕とさせない 作:C-RhYme
アイと藍斗君、社長が仕事に行き今日は社長夫人のミヤコさんが面倒を見てくれることになった。
ミヤコさんが別な部屋にいるのを確認してから少し話したいことがあったので私は妹であるルビーに話しかけた。
「ちょっとは遠慮したら?前世の記憶があるのにアイドルから直母はちょっとどうなの?」
「は?娘なんだから当然の権利を行使してるだけなんですけど」
先ほどアイから授乳されていて盛大に飲み(プハーとか言ってた)、横で哺乳瓶で飲んでいた私に対してニヤリとほくそ笑んでいた。
明らかにお腹を満たすというよりは授乳してもらうことそのものに喜びを見出している。
「それにアクアだってお、パパに抱っこせがんで満足そうによく寝てるじゃん」
確かに私は藍斗君につい抱っこをせがんですぐに眠ってしまう。
言い訳させてもらうなら抱っこが上手で気持ちよすぎるのがいけない。
私だって元産科医だからそういう抱っこの指導をしたことあるけど、彼のは比のうちどころがないほどだった。
さりなちゃんが赤ちゃんだったころから一番面倒を見ていたというのは伊達ではないだろう。
ぶれることなくやさしく揺らされ、程よい体温と、男性特有というか藍斗君の少し低く脳がしびれるかのような声を耳元でささやかれ一撃で意識を刈り取られてしまう。
「そ、それは赤ちゃんが父親に甘えるのは当然であって」
口から弱めの言い訳がごにょごにょとこぼれる。
考えてみれば、私にとって父親に甘えるというのは初めての経験だ。
産まれた時にはすでに両親はおらず祖父母に育てられている。
それがこの歳(今は0歳だけど)になって甘えることのできる父親ができたのだ。
そして、どんなにわがままを言っても受け入れてくれそうな彼の包容力に抵抗できないというかする気がおきない。
「じゃあ、同じことだね。私のこともいちいち言う必要ないでしょ?」
「う・・・」
言い負かされてしまった。
ルビーの方が藍斗君に甘える頻度や甘え方が極端すぎてアイが慌てて止めに入ることがあるぐらいだけど、度合いではなくやっていることを論点に話してしまったがためにそこは突っ込めない。
「はぁ・・・」
アイには普通の子供を産ませてあげたかったけど、こんな私たちが産まれてしまったのが少しだけもうしわけない。
不可抗力だし、この状況を幸せだと思ってしまっているから若干開き直ってはいるけれど。
「ねぇ、おむつ交換したいから向こう行ってて」
「はいはい」
ルビーに言われて素直に従う。
これは互いに前世があることがわかったときからのルールで、おむつ交換は互いに見ないようにしようということにしている。
さすがに状況を理解している人に見られたら死にたくなるから当然だ。
ルビーがおむつを交換してもらうために泣き始めると別な部屋で仕事をしていたミヤコさんがおむつを持ってこっちに来た。
その表情はどこか疲れ果てていて暗い。
「はー・・・社長夫人なのにどうして私がこんな仕事を」
すごい負のオーラをまといながらぶつくさ言ってルビーのおむつを替えている。
「というか、父親不明の実質片親とか闇すぎんだろうが!そもそも私はベビーシッターをやりによめにきたんじゃねえ!」
替え終えおむつを汚物入れに怒りにまかせるかのように投げ捨てている。
正直、言っていることは理解ができるというかすごく正当性を感じてしまう。
「というか、これ不祥事よね?黙ってるよりいい方法があるじゃない・・・」
突如、彼女は不穏なことを言い始めた。
いろいろと限界なのか追い込まれてる人独特の無敵の人のようなオーラが出始めている。
もしかして私たちの情報を週刊誌とかに売るつもりか?
「これをネタにアイトさんをゆすればいいのよ。最初からそうすればよかったんだわ。アイさんを守りたいアイトさんなら、きっとうなずいてくれる・・・ふっふっふ」
もっとやばいことを考えていた。
おむつを替えてもらったルビーが慌ててこっちに来て耳打ちをしてくる。
「やば!どうやって殺す!?」
もはや殺すことを大前提に相談されるとは思わず、沸騰しかけた頭が冷静になる。
体格差があるからどっちみち無理だろうし。
「私に考えがあるから合わせて」
「う、うん」
相談しているうちにミヤコさんはアイの母子手帳をスマホで取り始めた。
「ふふ、これでお金とイケメンとの再婚、どっちも手に入る・・・」
ここで止めて冷静にさせないと危険だ。
私とルビーは机の上にあがり腕を組んだ。
そして、私は覚悟を決めて口を開いた。
「哀れな娘よ。貴様の心の渇きをわれらが父は癒さぬであろう」
「だ、だれ!?」
私が声をかけるとミヤコさんは我にかえりこちらを振り向いた。
可能な限り威厳があるように険しい表情を浮かべる。
「我は天の使いである。貴様の狼藉、これ以上見過ごすわけにはいかぬ」
私の発言にミヤコさんは混乱した表情を浮かべて、ぶつぶつと現実を否定しようとしているのが聞こえる。
「あ、赤ちゃんがしゃべ・・・?」
「本来であればわれらの世話に免じて多少の不敬は目をつむってやるところだが、大いなる宿命を背負いしわれらが父母を陥れようとするとは目に余る」
「いやいや、そ、そんな、こと、あ!これどっきりでしょ!?もう!わかってるんだから!?」
混乱しつつもミヤコさんはなかなか信じてくれない。
迫力が足りず言葉に重みが足りなかったのかもしれない。
あるいは一周回って中途半端に冷静になられたのか・・・
「ほらほら、ルビーちゃん、机の上にのぼっちゃ」
なんとかペースを握ろうとミヤコさんがルビーへと手を伸ばすが、ルビーがそれをはたいて拒否した。
「慎め。我はアマテラスの化身。貴様らの言う神なるぞ」
すさまじい演技力と迫力に昔チラッと見た藍斗君のドラマを思い出した。
まるで、役ではなく登場人物そのものだと錯覚してしまうかのような演技力。
ふと、ルビーの目を見るといつもはただのキレイな赤い瞳なのに、今は茜空に輝く星のような瞳に見えた。
その様子にミヤコさんはとうとう腰を抜かしてへたり込んでしまった。
「汝の天命は神に選ばれし星野アイならびに星野アイトを守護することである。天命に背く汝の愚にもつかぬ行為は神に仇なす意思があるとみなされ神罰がくだるであろう」
「し、神罰ってなんですか!?具体的に!?」
「具体的に?」
そこでルビーは一瞬止まってしまった。
勢いでいけそうだったが具体例を求められて困ってしまったらしい。
「死ぬ」
「そう!死ぬ」
「いやー!超具体的!わたしどうすれば!?」
ここまできたら勝ったも同然である。
「簡単なこと・・・母と我々の秘密を守りこの子らをかわいがり、言うことを全部きくのじゃ」
ルビーはこれ幸いにと秘密を守ることだけでなく要求を増やしている。
かなりしたたかだ。
「さすれば汝が願いはかなうであろう」
「え?イケメン金持ちとの再婚が!」
「ああ」
「も、もしかしてアイトさんと」
「たわけが!調子に乗るでない!」
「ひー!ごめんなさい!」
最後のやつが一番迫力があった気がする。
というか、この人藍斗君狙ってるのか。
まぁ、スペックを考えたら間違いなく超優良物件だ。
ミヤコさんは謝りつつも願いが叶うと信じてくれたようで上機嫌で掃除を始めた。
こちらから意識がそれたところで私はルビーと話し始めた。
「これでなんとか外に出れるようになったね」
「まだしゃべるわけにはいかないからパパにお願いできないもんね」
この時期だとまだ喃語ぐらいしか本来はしゃべれないのにこんなに流ちょうにしゃべったら悪い意味でアイも藍斗君も泣くかもしれない。
それこそ、初めて私がルビーとしゃべった時みたいに『キモー!』なんて言われたらきっと立ち直れない。
「それにしても迫真の演技だったね?前世で演劇かなんかやってたの?」
「ううん。初めてだったけど、そっちこそすごかった。まるで本物の神様みたいだったから」
ルビーも私が抱いたような印象を受けたらしい。
血はつながってないはずなのに、父親としての藍斗君とのつながりがあるようでなんか胸の奥が温かくなる。
確かな親子としてのつながりを感じるようで。
思わず笑みがこぼれてしまう。
「なに笑ってるのさ?」
「ううん。今度、父さんが出てるドラマ見たいなぁって」
「え、パパってもうドラマ出てるの?」
「役者の仕事してるって知ってるでしょ?」
「知ってるけど、てっきりドラマはまだ出てないとばかり」
本当にこの妹はアイのことしか知らないようだ。
私の方が藍斗君のことわかっているようでちょっとうれしくなる。
それが態度にでてしまったようでルビーは反対に不満気だった。
アイト君不在というかいると成立しない原作回ですね。
ちょっとパパにデレデレになり始めてるアクアちゃんを書きたい→授乳の件でルビーちゃんに突っ込んでる→じゃあブーメランぽくすればいいよね!
という経緯でこの回が選ばれました。
アイさんとヒカル君の会話回は順当に進めると想定している分だけで原作エピソード分最低3話+書きたくなってしまったエピソードn話(nは自然数)後になりそう
その前にどっかでルビーちゃんに処女受胎発言させればアイさんを焦らせることできるからどっかにぶっこもうかなぁ、と試行錯誤中です
余談ですが、あらすじの『作中に犯罪や社会通念上認められない描写がありますが、これらを推奨する意図はございません』は第十七話を書いたときに流石に入れないとなぁと思っていれました
仮に感想で正解がでても私はそれに対して正解・不正解です、とは言わない人種でザンス