【推しの子】達を包む夜空は星を堕とさせない 作:C-RhYme
ミヤコさんとお金の話をした次の日、私は唯一事情を知っているヒカル君に話がしたいと連絡をした。
私の声で何か察したのかヒカル君はそこでは特に聞かずに喫茶店を指定しそこに来るように言ってくれた。
私は軽く変装をしてその喫茶店に行くと個室の喫茶店だったらしく、店員に事情を説明したら部屋に案内してくれた。
部屋の中にはすでにヒカル君が到着しており何かを飲んでいた。
「一応、キミの分もブラックコーヒーを頼んでおいたよ」
「気が利くね?」
互いに特に挨拶もなく私はヒカル君の対面に座った。
ふとヒカル君のほうを見ると飲んでいたのはブラックコーヒーだった。
「あれ?苦いの苦手だって言ってなかったっけ?砂糖たっぷりいれてるの?」
「入れてないよ。兄さんがこの店を紹介してくれた時に飲んでたから飲んでるだけ」
「うへぇ、相変わらずのブラコンぶりだね」
彼のブラコンぶりは若干私も引いている。
もし彼が女性だったらアイトはすでに骨の髄までしゃぶられてしまっていることだろう。
「というか、ブラックコーヒー飲めるの?」
勝手に頼んでおきながらヒカル君が聞いてきた。
確かに私は甘いのが好きで苦いのは少し苦手だ。
「まぁ、二児の母で大人ですからね」
どやぁとヒカル君にポーズを決める。
それをヒカル君は冷めた目で見ていた。
「ああ、キミも兄さんが飲んでたの見たのか。今ほぼ同棲中だもんね」
「う・・・」
一瞬でバレてしまった。
アイトが部屋にいるときよくアイトはコーヒーを飲んでるからそれを勝手に飲むようになってからちょっとハマってしまっている。
少ししてコーヒーが運ばれてきたので一口飲む。
苦くて少し顔をしかめてしまうが、気持ちだけは満たされていく。
「相変わらず変なところで似てるね僕たち」
「心底嫌だけどね」
そう、私たちはよく似ている。
その代表例が私たちが大切にしている相手だ。
でも、似すぎているせいか妙に気に食わない。
「というか、いつになったら双子に会わせてくれるんだい?」
「そのうちね~」
ヒカル君はよく双子に会いたいと言っていた。
理由はわかっていても私はそれをのらりくらりと回避している。
なんか、教育に悪そうだし。
「僕は早く会いたいんだけどな」
アイトに少しだけ似た暗い瞳の奥に星が瞬いたのが見えた。
ヒカル君は飲んでいたコーヒーを置き口を開く。
「兄さんの子なんだから」
そう、アクアとルビーは私とアイトの子だ。
アイト以外とそういうことをしたことはないから間違いない。
「ダメ。今来られたら周りへの説明がめんどい」
「そうだね。兄さんは今形だけの父親をやっているつもりなのに、突然叔父を名乗る人物が来るわけだからね」
そういえばヒカル君からしたらあの二人は姪っ子になるわけだ。
そりゃあ、きっと可愛くてしかたないだろう。
私ですら日々あの二人の可愛さに打ちのめされてるのだから。
「わかってるなら諦めてよ。私はまだアイトに本当のことを言うつもりはないの」
「ひどい女だな~」
「酷いってアイトの部屋監視してて警察に突き出されたくなければ言うなって言ったのはどっちかな?アイドルのあられもない姿を見ておいてさ」
「はっ!わかった瞬間に記録だけのこして見るわけがない」
「鼻で笑われた!?てかそれなら記録残さないでよ!」
「兄さんを守るためにはちゃんと被害者の記録は残さないとね?」
「く・・・」
ヒカル君は元々アイトの部屋を監視していたようで私がことに及んだことを知っていた。
そして、妊娠したことが周りにばれる前に相談したときに『兄さんに負担をかけるようなら通報するよ?そうしたら事務所も兄さんも困るね』と脅してきたのだ。
だからといって何かを要求されたわけではないのちょっと不気味だけど。
「だいたい考えてもみなよ?ワークショップの時に僕が電話してる隙にカバンから鍵を盗んで鍵屋に持って行って複製、それで兄さんが睡眠薬で寝てるのをいいことに深夜に侵入してことに及んでるんだよ?普通に犯罪だからね」
ぐうの音も出ない正論だった。
ワークショップで合鍵の話や、日々のヒカル君の行動習慣を覚えたおかげでついやってしまった。
「それでも罰せられるとしたら兄さんの可能性が高いんだから当然でしょ?」
「うぅ、おっしゃる通りで・・・でも、我慢できなかった」
鍵を複製した後、私はすぐにことに及んだわけではない。
とりあえず、その時はそれで我慢できた。
でも、その後のヒカル君との会話で『兄さん夜しんどそうだから添い寝してあげたいなぁ』とか『子供って愛の結晶って言われてるよね兄さんと作れたらなぁ』とか若干やばいなこいつと思いながらも具体的な状況を言われてしまいついイメージしてしまった。
その相手が私だったらな、と。
それからは早かった。
部屋の場所は知っていたから深夜に複製した鍵で侵入し、最初は2時半ころまでただただ添い寝をした。
だんだんと気持ちを抑えきれず、ハグになり、キスになり、そしてその行為へと至ってしまった。
眠りながら私を抱きしめてくれた時があり、そんな時は視界がはじけるかのように白く明滅した。
そんな日々が続いたある日、私は吐き気や体調の違和感を覚えた。
もしかして、と思い検査薬を使うと見事に妊娠していた。
ゴムは一度も使ってないから遅いか早いか問題だったと思う。
アイトとの愛が自分の中にあるという極大の喜びがきた後に一気に冷静になり後ろめたさととんでもないことをしてしまったことに気が付いた。
アイトは私を大切にしてくれているのに、私はなんて身勝手なことをしているのだろう、と。
きっとアイトはアイトの子だと言えば疑わずに一緒に育ててくれる。
けれどアイトの信頼を裏切ってそれに甘えられないと思った。
そして、私は自分だけでなく彼の結末も知っている。
病院で私と生まれたばかりの子供たちを守るために父親として殺された彼を・・・
その時の『私』は、きっと今の私と同じように子供ができて素直に彼にしゃべってしまったのだろう。
その段階でどこかに私と彼の子だというのが漏れたのだろう。
それがその失敗した『私』の末路だ。
知っている以上、それを繰り返すわけにはいかない。
でも、私だけで守り切れるほど甘くは考えていないからこそ社長たちに協力を求めた。
「我慢は文明人のたしなみだよ」
「まぁ、私は欲張りだからあんあまり我慢しないんだよね」
「それが今の状況だって本当に自覚あるの?」
「あるけど、幸せでもあるしなぁ」
後ろめたさは確かにある。
いつか必ず言うとも決めてる。
だけど、それが今の幸せを否定することにはならない。
「兄さんのお人よしにも少し困るよ。せっかく、父親を言わないのを納得してくれたのに父親役を名乗り出るなんて」
ヒカル君は深くため息を吐いた。
そう、あの時は夢を見ているかのようだった。
あの日、私はアイトの方を見ることができなかった。
どうしてもあの子たちの父親はアイトじゃないと目を見て言えなかったから。
アイトには直接嘘をつきたくなかったから。
だからすべて社長やミヤコさんにむけて言うつもりで嘘を吐き続けた。
そんななかでアイトが父親をやってくれると言ってもらえて私がどれだけうれしかったか。
私だけでなくお腹の子も大切にしてくれるとわかりどれだけ心が満たされたことか。
「でも、そんな兄さんだから僕たちは好きなんだろうね」
ヒカル君はどこかアイトに似た笑顔を浮かべた。
アイさんパートでした。
長くなったで次回ヒカルくんパートです。