【推しの子】達を包む夜空は星を堕とさせない 作:C-RhYme
「アクアマリンが日中しか寝てない?」
俺の仕事が終わり帰るとテレビ(B小町のライブ映像のようだ)を見ている双子に聞こえないぐらいの距離でアイからそう相談された。
その表情は不安に染まっている。
逆に俺はその相談内容に少しだけ首を傾げそうになった。
「うん、最初は気のせいかな~って思ってたんだけどどうも夜ちゃんと寝てないみたいで日中も眠そうにしてるんだよね」
アクアマリンやルビーぐらいの赤ん坊の睡眠は日中の短い睡眠を複数回と夜の長めの睡眠で構成されてるのが普通だ。
その長い方の睡眠で眠れていないことになる。
あの子たちは夜泣きもしないため、アイもアクアマリンが夜寝ていないことに気づけなかったらしい。
「日中眠いなら眠るはずだが寝ないのか?」
「なんか、少しでも物音がするとすぐ目を覚ましちゃうんだよね」
どうやら相当眠りが浅いようだ。
相当神経質とも思えるが、これまでの様子を見ていてそのようなタイプには見えなかった。
逆にルビーなんかは多少の物音どころかゆすっても起きないことがあるぐらいだ。
「アイ」
「ん?」
「俺はそれを見たことがないんだが?」
そう、それが今の相談に対して首を傾げそうになったことだ。
俺が面倒を見ているときにそんな様子を見たことがない。
むしろ抱っこしているとすぐ眠ってしまうし、そのあとなかなか起きないぐらいだ。
まぁ、普段眠っていないからこそそこでなかなか起きないのかもしれないが・・・
そして、そこそこの頻度でアイの代わりに夜二人の面倒を見ているが起きているのを見たこともない。
「アイトの前ではよく眠ってるんだ」
「少なくとも俺目線ではな。だが寝貯めみたいな状態になってるのかもしれないからよくないな」
「じゃ、じゃあさ、アクアがちゃんと眠れるまでこっちで一緒に寝てよ」
「そうだな。しばらくはそうした方がいいかもしれない」
「え?いいの!?」
自分から提案したのに了承されるとアイはうれしそうに笑った。
「今日からパパ一緒に寝てくれるって」
アイは二人のところに行きそう言って抱きしめた。
それを聞いた二人がとんでもなく目を輝かせてこちらを見ている。
ちょうどライブ映像が終わってたらしい。
全然かまわないが当然のようにルビーも一緒に寝ることになっている。
アクアマリンの顔を見ると、確かに眠そうなのに眠りに落ちていない。
今はライブやらアイが抱きしめたからテンションが上がっているからとも考えられるが赤ちゃんの場合はそれでも一瞬で電池が切れたかのように眠るはずだ。
それなのに起きているとなると何かしら理由があるはずだ。
とりあえず、様子を見て対応するしかないな。
俺は心の中でそう決意した。
Side Aqua
眠い・・・
今の状態を自覚したのはおそらく一月ほど前だ。
私としてはそんな意識しておらず割り切っていたつもりだけど頭というか魂というか、そういうのはちゃんと覚えていたらしい。
自分が殺されたときの状況を。
「アクア、また欠伸してる」
一緒にライブ映像を見ているルビーが近くにアイ(今日は休みでミヤコさん不在)がいないのを確認してから私の欠伸を指摘してきた。
確かに、最近しょっちゅう欠伸をしている。
「最近眠れなくてさ」
「赤ちゃんなのに・・・この体無駄に眠いからうらやましいよ」
「ぜひとも代わってもらいたいね」
ルビーはうらやましそうに言うが、そんななまやさしいものじゃない。
前世でも医者おなじみともいえる睡眠不足に悩まされていたけど、この体での睡眠不足のしんどさは毛色が違う。
「でもさ、パパにしがみついてしょっちゅう寝てるじゃん?」
ルビーに指摘され、確かに藍斗君に抱っこされてまともに意識を保っていた記憶がない。
それだけ考えると少しだけ恥ずかしくなってきた。
いつもアイにやばい甘え方をするルビーに対して何も言えないぐらい恥ずかしい。
「ただいま」
玄関が開き声が聞こえてきた。
どうやら藍斗君が戻ってきたようだ。
パタパタと別な部屋にいたアイが玄関に行き、藍斗君と何か話している。
そして、何か決まったらしく笑顔でアイがこちらに来て私とルビーを抱きしめた。
幸せすぎてやばい。
「今日からパパ一緒に寝てくれるって」
アイの言葉に私とルビーは思わずこちらに来ていた藍斗君を見てしまった。
ルビーの目がとんでもなく輝いている。
あと、気のせいかもしれないが、ルビーも目を輝かせているけどアイの方がテンション高いような気がする。
藍斗君は基本的に夜になると自分の部屋にもどって眠っている。
退院してこっちに戻ってきて最初のころは私たちの夜泣き対応の為と言ってずっといてくれたが私たちはそういうのがなかったためいつの間にか夜戻るようになっていた。
「だー!きゃう!」
「ルビー抱っこしてもらいたいって」
ルビーが藍斗君に手を伸ばすとアイはルビーを抱えて藍斗君に手渡した。
ルビーは抱っこされると嬉しそうに藍斗君にほおずりしている。
相変わらずとんでもなく甘えている。
「妬けちゃうな~。ママにもそういうことしていいんだよルビー」
アイはルビーの頬を軽くつついている。
それに対してルビーはいやいやと顔を横に振ってる。
普段、ルビーはアイにそういうことされるとすごく喜ぶのだが藍斗君に構ってもらってるときに構おうとすると嫌がるのだ。
ファンの風上にもおけない失礼な奴め。
「ルビーは本当にパパが好きだね~。あ!アクアも抱っこしてもらいたいよね?」
アイが私を抱えて藍斗君へと渡した。
その瞬間、すごい安心感に包まれ意識が消え、気が付くと私は暗い森の中にいた。
これは私がいつも見る夢だ。
この後、私は何者かにナイフで刺され殺される。
そして、崖から落とされたところで私はいつも目を覚ます。
この夢のせいか物音に敏感になり、暗い場所が無意識ながら苦手になっていた。
いつもの流れならそろそろ来るだろうと思っていると目の前にぼんやりと人型の何かが現れ、次の瞬間にきたのは何かが体に刺さる衝撃ではなく正面から抱きしめられる感覚だった。
『え・・・?』
これまで起きたことのないことに驚きながら私は目の前の存在をちゃんと見た。
抱きしめられてるから顔は見えないが長い金髪が見えた。
『大丈夫、怖いものはなにもない』
聞こえた声でそれが誰かわかった。
それと同時に周囲が変わりここが本当は暗い森の中ではなくいつもの部屋の中で、ここにいるのは大人の雨宮五月ではなく、赤ちゃんのアクアマリンだと思い出した。
抱きしめてくれる彼の鼓動、温もり、息遣い、声、すべてが私に安心感を与えてくれた。
そして、ここが世界で一番安全な場所だと確信できると私は体を『父さん』にゆだねた。
そうだ・・・怖いものなんて何もない・・・
「ん・・・!?」
目を覚ますと目の前には藍斗君の顔があった。
私が起きたのに気が付いたのか藍斗くんは優し気に私に微笑んだ。
どうやら私は藍斗君に抱っこされてそのまま横になった彼の上で眠っていたらしい。
「おはよう、アクアマリン」
「アクア、よくねてたね~。12時間くらい寝てたよ」
「だな、一度も起きていないはずだ」
挨拶してきた藍斗君の横にはスマホを構えているアイがいた。
というか、一度も起きずそんなに長く寝ているとは思わなかった。
確かに多少のだるさはあるが、これまでにない爽快感がある。
「ほら、アイト見てみて。親子のお休み写真」
アイはアイト君にスマホの画面を見せた。
横にいる私にも見えるので一緒に覗き込む。
そこに映っていたのは藍斗君にほおずりするかのようにくっついて眠っている私とルビーとそれを優し気な表情で受け入れている藍斗君だった。
というかよく見たら横にはルビーが私と同じ体勢で抱っこされており、まだ眠っている。
「うん、元気そうだね!」
アイは私の顔を覗き込んで嬉しそうにうなずいた。
私も目覚めてすぐにガチ恋距離の推しを見られてうれしい、というか心臓が爆発しそうになる。
「じゃあ、アクアとルビーあずかるよ?アイト寝てないでしょ」
「少し、頼む。一応、夜は俺が対応するということにしよう・・・だめだな、ルビーが手をってアクアマリンもか」
藍斗君が私たちをアイに渡そうとした瞬間、私は無意識に藍斗君の服をつかんでいた。
ルビーも寝てはいるが同じように服をつかんでるらしい。
私は誤魔化すように目をとじた。
「ん~、もう少し寝させてあげよっか」
「仕方ないな」
「ありがとね?パパ」
「あ、おい」
目を閉じているから見えないけど何か少し上の方で『チュッ』というリップ音が聞こえた。
「へっへ~ん、動けないからやりたいほうだ~い」
歌うようにそう言うのが聞こえるとパタパタという足音が遠ざかっていった。
「まったく・・・まぁ、いくらでもベッド役はしてやるさ」
藍斗君がぎゅっと私たちを抱きしめてくれたらしく温もりが少し強くなった。
ゆっくりと意識が落ち始めていく。
世界で最も安全で、最も安心で、最も安眠できる最も贅沢なベッド。
眠れなかった彼には申し訳ないけど、娘のわがままだと思ってもう少しだけ堪能させて父さん。
私は夜空に包まれるような優しい眠りにつけた。
つい思いついて書いてしまった・・・
本当は原作のヲタ芸ベイビーをやるつもりだったのに
先生は殺されたのがトラウマになってないわけがない、という決めつけてできあがりました。
ちなみに当然ですがアイト君はベッド役をしている間寝てません。