【推しの子】達を包む夜空は星を堕とさせない 作:C-RhYme
「ドラマに出たい」
俗にいうヲタ芸ベイビーの件から1年ほどがすぎたある日アイがそんなことを言いだしたことだ。
「それを俺に言ってどうする?」
「社長やミヤコさんに相談したらアイトに相談した方が早いって」
確かにそっち系統の個人に対する伝手は苺プロはまだ弱い。
バラエティやイベントごとの伝手はアイドルグループを運営する上で必須なおかげかすんなり仕事をいれられるが、ドラマのようなグループ内の特定人物への仕事になると途端に怪しくなる。
そのあたりの仕事は主に俺が拾ってきて斡旋していたからそのように言われたのだろう。
「せっかく演技の指導も受けたのに活かせないとね~」
アイの妊娠で有耶無耶になっていたが確かにワークショップはアイがそっち系の仕事をしたいから連れて行ったのだからアイの言い分も理解できる。
「ママもドラマ出るの!?みたいみたい!」
はなしを聞いていたのかルビーが走ってアイのもとに来ていた。
1歳半になりだいぶ大きくなって歩けるようになったルビーとアクアマリンはとてもじゃないがその歳の子とは思えないように流ちょうにしゃべる。
それに対してアイが『やばいぐらい天才・・・やっぱり遺伝だね』とドヤ顔をしていたので鼻で笑ってやった。
ちなみに俺はそれまでのこちらの言葉に対しての反応とかを見ていたので今更そのことに何かを思ったりはしない。
ルビーのあとを追ってアクアマリンもゆっくりとこちらに来て俺を見つめている。
「アイのドラマ、私も見たい」
アクアマリンはアイのことを本人には『母さん』と呼んでいるが他の人に対しては結構な頻度で『アイ』と呼んでいる。
アイも気が付いてはいるが特に何も言ってないので俺から何かを言う気はない。
「ほら~、二人もこう言ってるんだよ?」
「・・・わかった、一応伝手を当たってみる」
自分の甘さに頭を抱えながら俺はある所へ連絡を入れた。
Side Aqua
「ママの初ドラマ楽しみだねー」
「ちょい役だけどね」
私たちは今、ミヤコさんの運転でアイが出るドラマの撮影場所へと向かっていた。
「いいですか二人とも?現場では間違ってもアイさんのことママと呼ばないように」
「え~、呼んでもだいじょーぶだよ。たまにラジオで二人がママって呼ぶこと話してるし」
「それでもです!実際に呼ばれてるのを見られるのがよくないんですから!」
ミヤコさんの懸念をアイが笑って流そうとしたところをくぎを刺している。
アイは私たちがSNSでバズって以降、本当にそのあたりを隠さなくなってきた。
兄の子という建前をぞんぶんに使って『自分が本当の母親』ということだけ明言せずに私たちを我が子のよう(実際に我が子なのだけど)に扱っている。
もちろん時々焦げ臭くなりかけるが『姪っ子にたいしてそうなるのは当たり前』とフォローする声がたくさんあがり一瞬で鎮圧されているため平和だ。
むしろその後のアイへの叔母いじりのほうがアイはダメージをうけていたりするのはここだけの話。
「というか、私またアイトさんに怒られるかも・・・」
そういってミヤコさんは少し落ち込んでいた。
ドラマの撮影なのだから本来なら私たちを連れていく必要なない。
というか本来は今日のアイの送迎は社長がやる予定で、ミヤコさんは私たちと家でお留守番だった。(藍斗君も仕事で不在)
でも、主にルビーが『ママのドラマ撮影見たい!』とごねて、それに私も便乗したことでいまだに『神罰』を恐れているミヤコさんが社長と交代してアイと私たちを撮影現場に連れていくことになった。
「パパには私がおねだりしたっていうよ!」
「ぜひともそうしてください」
その言葉にはだいぶ思いがこもっていた気がする。
しばらくすると撮影場所である高校につき、私たちは撮影が行われる教室へと向かった。
教室の中にはカメラやらスタッフさんやらが大勢いた。
「苺プロのアイです。本日はよろしくお願いします」
教室の中にいたスタッフたちアイが挨拶するとその中にいた少し髪が長めの茶髪でこわもての男性がアイに近寄ってきた。
なにやら険しい表情をしている。
「どうかしましたか監督?」
「いや、別に」
どうやら今回の撮影の監督だったらしい。
アイをジーっと見たあと目線を私たちへと向けた。
「その子供は?」
「あ、この子達はアイトさんの子供で」
「あ~あいつの・・・あいつ子供いたのか!?」
ミヤコさんが説明すると監督は目を白黒させ私たちの方へ近づいてしゃがみ顔を合わせた。
「確かに、目元やら髪やら似てる気が・・・?」
「なにしてるんですか五反田監督」
ぶつぶつつぶやいている監督の横にいつの間にか藍斗君が立っていた。
すでにメイクを終えているためかスーツと眼鏡を着用し、髪も短く黒くなっており雰囲気としてはまさに教師という感じだ。
「お、おお、アイトお前ガキがいたんだな」
「なんでここにいるのかはちょっと疑問ではありますがね」
「ひ・・・」
とんでもなく冷たい視線がミヤコさんを射抜き、小さく悲鳴をあげた。
「ぱ、パパー!」
何故か涙目になっているルビーが藍斗君へと駆け寄った。
藍斗君はしゃがむと駆け寄ったルビーをそのまま抱き上げた。
「髪、髪きっちゃったの!?」
「切ってないよ。隠してるだけだから切ってないし染めてもいない」
撫でられながら優しく説明されるとルビーはホッとしたようで、そのまま藍斗君に抱き着いて甘える方向にシフトした。
ルビーはある程度自由に歩き回れるぐらいになってからは藍斗君の髪に触っており、よく自分と同じワンサイドアップの髪型にしている。
ちなみに私はあまり長いと邪魔に感じてしまうので肩に届く前くらいのところで切っている。
「あの時の奴がすでに子持ちか~、時間の流れを感じるなぁ」
そう呟いて監督はどこかへ行ってしまった。
「さて、ルビー、ちょっと俺はミヤコさんと話があるからおとなしくしててくれ」
「は~い」
藍斗君はルビーをおろした後ミヤコさんをドナドナしていった。
私とルビーとアイはそっと合掌していた。
その後、撮影が始まるまでの間アイはメイクしたりしていたが私とルビーは藍斗君の娘としてもみくちゃにされた。
カラダがもたないのでその場はルビーに全投げして私は教室を抜け出した。
「ん?アイトのガキじゃねーか」
ちょうどそこで監督に出会ってしまった。
「居るのは構わねえが、騒いだりして収録止めたら追い出すからな」
「あ、いえ!我々赤ん坊ですがそのような粗相はしないよう努めますので!」
監督に対して慌てて弁明をする。
ちゃんと私たちが大丈夫なことは伝えないといけない。
「現場の進行を妨げないのは最低限のルールと認識しております!決して父の顔にドロを塗るようなふるまいはいたしませんので、弊社の者を今後とも何卒ごひいきに」
「めちゃくちゃしゃべるなこの赤子!?」
ぺこぺこと頭を下げながらつい早口でまくし立てると驚かせてしまったらしい。
「やっぱ、アイトの子だけあって賢いんだな」
「監督は父さんと付き合いが長いんですか?」
「敬語使う必要はねえよ。まぁ、アイツとは長いっちゃ長いな。俺の監督デビュー直後くらいからの付き合いだからな」
その後、監督は藍斗君との出会いを話してくれた。
なんでも監督になって比較的最初のころの作品で藍斗君がデビューしたらしくそれからちょくちょく一緒に仕事しているとのこと。
以前ミヤコさんに言って見せてもらった作品の監督がこの人だったようだ。
ちなみにあの作品はルビーには不評で、藍斗君の弟役の人をやたらと『パパにべたべたしすぎ』と毛嫌いしていた。
「それにしてもそんだけ喋れて落ち着いている、そんでもってアイトの子なら将来性も抜群だ。名刺やるから事務所に入ったら連絡をくれ」
暗に今度撮影に使いたいと名刺を渡された。
五反田泰志、それがこの監督の名前らしい。
「いや、仕事を振るならアイの方に・・・」
「ああ、アイトが売り込んだあのアイドルか」
そういって五反田監督はチラッと教室にいたアイを見た。
「売り込んだ?」
「バーターって知ってるか?この作品でアイトを使いたい制作側に、アイドルを出すことを条件に出演してくれたんだ」
出演してくれた。
その言葉からして藍斗君は役者としての評価がかなり高く、かなり意見を通せる立場のようだ。
「今回の作品は新人が多い。画にフレッシュさはあるがそれだけじゃ作品はなりたたねえ。成立させるためには人を集められる話題性のある有名どころのいわゆる看板役者と作品のクオリティを担保してくれる実力派の役者が必要だ」
「新人、看板、実力派・・・」
「おう。でだ、アイトはどれに分類されると思う?」
そう問われてこれまでいくつか見た藍斗君の作品を思い出す。
「実力派?」
「正解。それも、他の役者の能力を引き上げるような全体の底上げもできる破格の役者だ。自分が引いて他を輝かせるのはたまにいるが、自分が引かずに全体を輝かせるのはなかなかいねぇ。だいたいがついてこれねぇからな。だから今回みたいな新人が多い作品では引率役としてほしいんだよ」
いろいろと説明されて改めて藍斗くんのすごさが理解できた。
アイドルと役者で分野は違うがアイは一人でも強烈に輝けるタイプだけど他の人を際立たせるのが苦手なタイプだ。
それに対して藍斗君は全体のレベルと自分に近いところまで引き上げることができるタイプということなのだろう。
そして、その能力が活かされたのが本来ならアイという一番星によってくすんでしまっていたはずのB小町ということか。
「なるほど」
「まぁ、直前までアイトが首を縦に振ってくれなかったから上の方はだいぶ焦ってたけどな」
それを言われて、この間藍斗君がアイの『ドラマでたい』というのをかなえるためにこの作品に出たというのがわかった。
相変わらずアイに優しい。
「ちょうどアイトの演技を生で見れるんだ。さっき言ったのがどういうことかよく見ときな」
そういって監督は行ってしまった。
そして、しばらくして撮影が始まった。
主演の子とアイのシーンは相変わらずアイがかわいいのがわかって大変良かった。
そこまでは私には演技というのがよくわからなかったけど、それは藍斗君の登場シーンで空気が変わった。
それまでは『役者』たちがそこにいたはずなのに、藍斗君が入った瞬間にそこにいたのは『先生』と『学生達』だった。
しかし、アイだけは例外でその空気にのまれることなくアイのままだった。
「せんせ、みんなの課題集めたよ」
「どうも」
「相変わらず不愛想だね~モテないよ~」
「学生相手にモテる要素をだしてどうする」
ただ、その空気は感じ取っているようでアイと先生が二人で会話をするシーンではこれまで以上にアイの瞳は輝いており存在感を感じた。
そして、それに負けないぐらい先生の存在感を感じた。
ただの軽い会話のシーンなのに目が離せなかった。
「カット!映像確認入ります」
カットがかかった瞬間に先ほどの空気は消え、そこには役者達がいた。
これが監督が言っていた藍斗君の演技。
その光景に私は覚えがあった。
ミヤコさんがとんでもないことをしようとしていた時のルビーの演技だ。
その役であることに疑問を抱けない空気と演技力、それの完成形を見た気がした。
その後、他のシーンの撮影も終わり一月ほどたってそのドラマが放送された。
楽しみにしていたがアイのシーンは撮影の量に対して少なすぎる『数える程度』しかなく、アイは演技が下手だったのかと落ち込み、ルビーはそれを慰め、私はもらった名刺の番号に電話をかけ監督にクレームをいれるのだった。
ただ、その後社長からそのドラマの瞬間最高視聴率のシーンが主役たちのシーンではなくアイと藍斗君のシーンであったことが伝えられアイとルビーは少しだらしないぐらいのニッコニコの笑顔となった。
これが二人の初共演ドラマとなりB小町の古参ファンを中心に大盛り上がりとなった。
かなちゃんとの話は登場シーンでにおわせる、という感じにすることで先送りにしました。
やっと原作1巻の半分が終わりました・・・
以下必須タスク
・それが始まり
・アクルビ幼稚園イベント
・ニノとの件
保障内容:本編時間では星を持つ子を堕とさせない