【推しの子】達を包む夜空は星を堕とさせない 作:C-RhYme
「本日はアクアをよろしくお願いいたします」
「いや、お前にそこまで丁寧にされると逆にこえぇよ」
今日俺はアクアマリンとルビーを連れて五反田監督の映画の撮影に来ていた。
ミヤコさんはB小町の方について行っているというのと、今日は俺は役者だけでなくマネージャー枠としてもここにきている。
アイの初ドラマの際に五反田監督に気に入られたらしくアクアマリンが子役として呼ばれたのだ。
アクアマリンは事務所に入ってなかったのでその段階で苺プロの星野アクアとして正式に所属となった。
ついでにルビーもこういうことが今後もありそうだったからついでに子役として登録した。
一応、建前としてはアクアマリンを登録するさいに『演技だったらルビーの方がうまい』と言っていたからというのもある。
ちなみにそれを聞いたアイが『親子そろっての共演も近いね!』と喜んで軽く踊り、アクアマリンとルビーがサイリウムを振る(1歳すぎたあたりで一応解禁してあげた)ということがおきた。
「アクア、ルビー、ちょっと監督と話してるからあそこの控室で待っててくれ」
「「はーい」」
二人を控室の方に行かせて改めて五反田監督の方に向き直る。
「どういう風の吹き回しですか?急にアイとアクアをいれるなんて」
「なんだ聞いてねえのか?あの早熟ベイビーから直談判されたんだよ。アイを使えーって」
「それでアクアを出すことを条件にってことですか?アクアに何を見出したんですか?」
「・・・いわねえ」
彼の表情は『本当のこと言ったらこいつが怒る』というのを如実に表していた。
台本のアクアマリンの登場シーンとその役名を思い出し、言いづらそうにしたであろうことには見当がついた。
「アクアは賢いから言わんとすることは伝わってますよ。そのうえで伝わっている以上言ったのと同じですからね」
「肝に銘じとくよ」
監督は明らかに聞き流していますという態度で手をひらひらと振った。
どうやらこれ以上俺の小言は聞きたくないようだ。
「では、またあとで」
「おう」
俺はそう告げて控室に向かった。
控室に入ると中にはアクアマリンとルビーのほかにもう一人いた。
「かな、今日はよろしく」
「アイトパパ!うん、よろしくね!」
中にいた子役有馬かなは俺に気が付くと笑顔でこちらに駆け寄ってきた。
反対にアクアマリンとルビーはすごく不機嫌な表情をしている。
というか、口元がぴくぴくしていてとんでもない表情だ。
「一緒に仕事するの久びさだから楽しみ!」
確かにかなと一緒に役者として一緒に仕事をするのは半年ぶりぐらいだ。
そのときも特に絡みがある役ではなかっが俺のことを覚えていてくれたようでずっと一緒にいた気がする。
周りからは『お子さん増えたんですね』とからかわれたぐらいだ。
本当はバラエティとかで共演の可能性もあったが俺が基本的にそれを断っているため会うのはこういう現場ぐらいだ。
ただ、かなはそれを『役者一本って感じでかっこいいわよ!』と目を輝かせていた。
実際のところはマネージャー業があるからというのも大きいが夢を壊すのも申し訳ないので黙っている。
「ほら、大先輩の星野アイトさんよ!あなたたちもちゃんとあいさつしなさい!」
かながアクアマリンとルビーに対してそう言い放った。
先輩風を吹かせたいのと、俺を慕ってくれてるから言ってくれてるの両方といったところだろうか。
そこまで何回も会っていないのに慕ってくれていて悪い気はしない。
ただ、それを言われた二人は余計に不機嫌になっている。
おそらくだが俺が来る前に何かしらひと悶着があったのが察せられる。
「パパー!」
「父さん!」
二人がすごい勢いでこっちに来たのでしゃがんで二人を抱きとめた。
普段は遠慮がちなアクアマリンもこの勢いで来るのは珍しい。
「え、え?」
俺たちを見てかなは動揺していた。
「この子たちは俺の娘なんだ。仲良くしてくれるとうれしい」
「そ、そう、なんだ・・・」
先ほどまでの元気は鳴りを潜めてかなは視線をそらした。
どうやら二人のことを俺とは関係ないどこぞの子役だと思っていたのだろう。
「この子、遊びに来てるなら帰りなさい!って怖かった!」
「それにアイのこともコネで媚び売って役をとったんだ!って」
二人からそのように言われてここに入ってきたときの微妙な空気の理由がわかった。
告げ口のようなことをされてかなは動揺から少しおそれのある表情にかわった。
「そっか、ちょっと二人ともちょっと離れてくれ」
二人から離れて俺はかなのそばに行きしゃがみこんで目線を合わせた。
きまずいのか若干涙目になって彼女は視線をそらした。
「かな。二人が来てから何があったか話してくれる?絶対怒ったりしないから」
「ほ、本当に・・怒らない?」
「約束だ」
右手の小指をだすとかなはちょっとおどおどしながら小指を絡めてくれた。
怒られるのを少し過剰におびえてるように見える。
「えっと、そこのリボンをつけてる子が、ここ来てからパパ、ママって騒いでたから、遊びに来てるなら帰りなさい、って」
「そっか、正直に答えてくれてありがとう。偉いぞ」
髪型を崩さないように帽子ごしに頭を軽くポンポンと撫でてあげる。
するとホッとしたのか彼女の瞳からはこらえてた涙がぽろぽろとこぼれてきた。
ポケットからハンカチを取り出し可能な限り優しくぬぐってあげた。
彼女の涙がある程度止まってから今度はアクアマリンとルビーの方を向いた。
今度は二人が若干気まずそうな表情をしている。
「ルビー、俺が何を言いたいかわかるか?」
「うん・・・現場連れてってあげるけど、騒いだり他の人に迷惑かけないって約束してた・・・」
「そうだな。ルビーがどうしても行きたいって言うから許可したな?俺のこともママのことも好きなのはわかってるけど、それは騒いでいい理由にならないよな?」
「はい、ごめんなさい・・・」
涙目になりながらルビーが謝ったので頭を抱えるように抱きしめる。
ちゃんと賢い子だから人の気持ちがわかる子だ。
「アクアマリンも言われて納得できないだろうけど、アイならそんなの簡単に見返せるって信じてあげて堂々としててほしい」
「・・・うん、そうだね」
自分の中のアイを思い浮かべて納得したのか不安げな表情は穏やかな表情に変わった。
それを見てから俺はルビーと同様にアクアマリンを抱きしめてから離れた。
「さて、かな」
今度は再びかなに向き直る。
すでに涙は止まっているからホッとした。
「仮に思っていても、面と向かってコネだなんて言われていい気はしないのはわかるな?」
「うん・・・」
「かなは演技が好きなんだろ?」
かなは無言でそれにうなずいた。
これは2回目の共演をしたときにかなが言っていたことだ。
演技が楽しくてずっとこの仕事をしていたいと。
「なら、そんなひどいことを言う必要はない。ここにいるのは敵じゃなくて一緒に演技をやる仲間なんだから」
「で、でも、他の役者はいつか役を奪う敵だってママが」
「そう思うならそれこそ相手を傷つけるような言葉をぶつけないほうがいい。この仕事は人が人を選ぶことで成り立っているのだから、同じ能力なら周りが敵だってピリピリしてる人より仲間だと思って仲良くやってる人の方がいいってかなも思うだろ?」
「そう、かも」
「わかってくれてうれしいよ。俺も演技仲間がそういう風に思ってくれた方がいいからな」
「うん、わかった・・・ちゃんと、二人に謝るわ」
そういってかなは二人の方にいった。
「さっきはひどいこと言ってごめんなさい。その、役者仲間として仲良くしましょ」
「こ、こっちこそさわいじゃってごめんね?」
「私も大人げなくぴりついちゃったし妹を諫めなくてごめん」
どうやら大丈夫そうだな。
俺はそれを見てからそっと控室から出た。
と、そこには少し気まずそうにしている五反田監督がいた。
おそらく中の様子をこっそりうかがっていたのであろう。
「なんですか?」
「いや、まぁ、そのなんだ貧乏くじを引かせちまったな?」
その言葉ぶりからかなが少し危うい状態だということに気が付いていたらしい。
以前の現場でもそうだったが、母親がやたらと監督に口出ししたり、かなに対していろいろと吹き込んでいた。
そのせいもあってか、かなは結構高圧的な態度をとることがあり現場の空気はあまりよくなかった。
あのままでは遅かれ早かれ彼女はこの業界から干されるだろう。
「この映画の子役にかなを推薦したのは俺ですから、多少はやりますよ」
彼女の言ったコネ、今回の撮影である意味一番恩恵を受けているのは彼女だ。
映画の件を五反田監督に相談され他の子役とかとも共演の機会はあったが、その中でも俺は彼女を選んだ。
能力はあるが、親が面倒だということで少し警戒され始めている彼女を。
「まぁ、問題はあの嬢ちゃんが意識したところでそれ以上は俺たちにできねえんだけどな」
「そうですね」
ある種の一番の問題は俺達には手を出せないのだから。
原作それがはじまり回
ちょっと長くなったので分割します