【推しの子】達を包む夜空は星を堕とさせない 作:C-RhYme
五反田監督の映画を撮影してから2年ほどが経過し、アクアマリンとルビーも今年から幼稚園に入ることになった。
すくすく育っており喜ばしい限りだ。
アイの方もあの映画をきっかけにさらに人気が伸びアイドル活動だけでなくタレントとしていろいろなテレビや企画に呼ばれるようになった。
事あるごとに俺を連行しようとするが当然すべて却下している。
そのあたりが良いこととして報告できるような内容だ。
わざわざそのような表現をしたというのは、その反対のこともあるからである。
一つはいまだに雨宮先生の消息が分からないことだ。
定期的に興信所に依頼して調べているが何一つ進展がない。
俺は関係的に失踪届を出すことができないためこのように個人的に人を雇って探している。
携帯の方に連絡を入れても3年前からすでに本体の方につながらなくなっているため俺がもつ彼女へのつながりは残っていなかった。
唯一わかったのは雨宮先生が一人で住んでいた家は鍵がかかっておらず中は荒らされていたとのことだ。
消息がわからなくなった期間を考えればただの空き巣である可能性があるため荒らした人物が何かしらに関わっていると言い切れないため、特に何かの証拠になるわけではない。
突然いなくなったのだから宮崎を中心に調べているが、やはり範囲を広げるべきかと考えるがそれこそ闇雲に探すのと何一つ変わらず、砂漠で特定の砂粒を見つけるような無謀なものだ。
せめて失踪届をだすことができれば警察に動いてもらえるが、彼女はすでに身内と呼べる人物は残っておらず、また病院を退職しているためそっちの方で事件性ありとして警察に届けてもらうこともできない。
どこかで何かしらの活動の記録さえ見つかれば俺の杞憂で済むのだが、そのような痕跡すら出てきていない。
せめて無事であることを祈るしかできない。
もう一つはB小町での仕事に偏りが出始めていることだ。
アイの人気だけが突き抜けてしまい、他のメンバーと格差ができてしまっている。
正直なところほとんどのメンバーは精神的に成長したためそれを受け入れて平然としているのだが、ニノだけは思い悩んでいる。
面談はしたのだが、何かを隠しているのがわかっただけで特にできることはなかった。
一応、同期にあたる高峰、めいめいには相談にのってやってほしい旨は伝えたがかなり微妙な表情をされた。
「ままならないな・・・」
社長の夢であるドームライブの開催がほぼ決定しており、そこに向けて動いている段階なのでそれまでにはやり残していることは片づけたかった。
他にもそのドームライブへの軌跡を中心にしてB小町のドキュメンタリー映画を撮るということで五反田監督に話がいっており、やることが山のようにある。
そもそもこのドキュメンタリー映画だが社長的には5年ほど前から構想があったらしく、そのころに俺に顔出しさせたのもそれが理由だと最近判明した。
それとメンバーにやらせている動画サイトでの配信に映っても大丈夫なようにというのもあったそうだが、そこは俺が気を付けるだけで映らないので配信に姿が載ったことはない。
マイクをこっそりおかれて声が載ったことはあるが、それを企てたアイとめいめいには配信をつけたまま公開説教を行った。
余談だが、配信のアーカイブでその回が一番再生数が多いらしい。
「ん?」
その時、玄関の方から鍵が開く音が聞こえた。
「パパー!」
「お邪魔します」
「やっほ」
中に入ってきたのはルビー、アクアマリン、アイだった。
ルビーとアクアマリンは園児服を着ている。
時計を見るとすでに登園の時間だった。
「もう、そんな時間か」
「うん。私もそろそろでるから二人をお願いね?」
「ああ。わかってる」
幼稚園への送り迎えは基本的に俺がしている。
そのために俺の仕事は送迎のタイミングで仕事が入らないように融通がきくようにしている。
結果的に役者としての仕事はかなり抑え気味だが、まぁ問題ない。
「ねぇやっぱり前みたいに私の部屋の方で暮らさない?」
アイがそう切り出すとルビーとアクアマリンも目を輝かせてこちらを見つめた。
二人が1歳過ぎて歩き回るようになったころ、だいたいアイが初めてドラマにでたころに俺は生活の場所をアイの部屋からもとの隣の部屋へと戻した。
元々、アクアマリンの睡眠を助けるのが目的でそれが解消されたのとこの子たちも大きくなってきたから前のような『本当の親』のような距離感で生活する必要がないと思ったからだ。
もちろん、食事とかは一緒にすることが多いし極端に接触を減らしているわけではないが、徐々に頻度を減らすつもりではある。
「俺たちはこれぐらいの距離感で十分だ」
本当の父親の件はもう少しアイが情報を漏らすと思っていたが本気で隠しているようでしっぽをつかめないでいた。
俺自身がそこまで本気で探っていない、というのもあるがそこまでアイが警戒できる人間だとは思っていなかったので少し意外だった。
他には本当に一夜限りの関係だったのか、それとも本当にやばい奴なのか・・・
そこまで考えて俺は思考を止めた。
最初に決めたことだ、誰であろうと構わないと。
「そっか~、まぁ、それはそれで都合いいか。さてと、それじゃそろそろ行こうか。私はミヤコさんとだけど」
「そうだな」
「じゃあ、いってきますのぎゅー!」
「はいはい」
アイはそう言って抱き着いてきたので軽く抱きしめ返す。
俺と同じシャンプーやらボディソープを使っているのにそれとは違う優しい香りが鼻腔をくすぐる。
ちなみにちゃんとやらないと『やりなおし!』と言われて終わらないためちゃんとやる。
そのあと、軽く支度をして俺たちは駐車場へと向かった。
駐車場にはすでにミヤコさんが車で来ており、アイはそれに乗り込み出発した。
それを見送ってから俺達も俺の車に乗り込む。
「パパの隣がいい!」
「ダメだ」
毎朝のようにルビーが助手席に乗りたがるが、チャイルドシートを設置している後部座席に座らせている。
多少愚図るがすんなりと乗ってくれるあたりダメ元で言っているのかもしれない。
車が動き出すとその後は特に愚図ることもない。
「ねぇ父さん、なんで一緒に暮らさないの?」
アクアマリンからの問いは先ほどの会話の続きのようだ。
正直3人の中でそのあたりの考えが一番ドライなアクアマリンからそのようなことを問われると思っておらず、返答をどうするか少し悩んでいるとさらに続けた。
「一緒に寝たい」
アクアマリンがこんな風に素直に言ってくるのは珍しい。
「ってルビーが言ってた」
「はぁ!?」
突然、話を振られてルビーが変な声を出した。
ルームミラー越しに見えるアクアマリンの顔が若干赤いから恥ずかしくなってなすりつけたのだろう。
「確かにパパと一緒に寝たいけど、それはお姉ちゃんもでしょ!この間なんか、夜中にこっそりパパの部屋行こうとしてそわそわしてたの見てたんだから」
「げ、見てたの!?」
「ママも知ってて、ニコニコしてたよ」
そこまで言われてとうとう完全に顔が真っ赤に染まった。
そうとう恥ずかしいらしい。
年齢を考えれば問題ないと思うが、知能が高いゆえの羞恥心だろう。
「というか、ママも随分前から時々夜中にいなくなってるんだよね~」
そういえば、といった様子でルビーが言った。
「もしかしてママもパパのところに行ってたりする?」
「そうだな。たまに晩酌に付き合ってもらっている」
ルビーの問いかけに俺は『用意しておいた回答』を伝えた。
アイからは『バッチリ!気づかれてないよー!』と自信満々に言われたのだが、ルビーを甘くみていたようだ。
「でも、戻ってきたママからはパパの匂いはするけどお酒の匂いはしないよ」
「飲むのは俺だけだからな。先ほどから気になってたがルビーはそんな時間に起きているのか?」
少なくとも俺の部屋に来たアイは1時間程度では
話をそらすために尋ねるとルビーは気まずそうに窓の外を眺め始めた。
「夜はちゃんと寝なさい。俺が言えたことではないが、睡眠不足は一番体によくない」
本当に自分のことながら何様だと言いたくなるような言葉だ。
それを言われたルビーと聞いていたアクアマリンが二人とも妙に落ち込んで暗い顔をしていた。
それが俺には『怒られた』『注意された』から、という理由ではないように見えた気がした。
「じゃあ、おに、ん!パパが一緒ならちゃんと寝るよ!」
「そう!あ、じゃなくて父さんも一緒に寝よう」
「・・・わかった、たまにはな」
どこか必死さを感じるような表情で二人に言われて、俺は仕方なくうなずくとルームミラー越しに見える二人の表情が一瞬で明るくなり、瞳に星が瞬いたのが見えた。
流石に断れない。
「さて、ついたぞ」
幼稚園の保護者用駐車場につき、車を止める。
全員で車から降りるとルビーが俺の前で両腕を広げた。
「パパはやくはやく!」
「はいはい。いってらっしゃいルビー」
「むふふ、いってきますパパ」
しゃがんでからルビーを抱きしめ頭を軽くポンポンとなでる。
ルビーはうれしそうに笑い、ぎゅーっと俺の背中にまわした腕に力を入れる。
数秒ほどしてからルビーを離し、アクアマリンを同じように抱きしめる。
「いってらっしゃいアクアマリン」
「う、うん、いってきます」
毎回恥ずかしそうなのだが、嫌がらずに受け入れてくれる。
いつからだったかルビーが『いってらっしゃいのハグして!』と言われて、毎回これをするようになった。
アイが出発前にやってきたのもこれを聞いたからでもある。
二人はその後手を振って幼稚園へと向かっていった。
これが俺たちの朝における日常である。
現状確認兼日常回です
うちのアクアちゃんはパパ(主犯)とママ(共犯者)によってデロデロに甘やかされてるためかなり精神年齢が幼くなってますので、無意識レベルで甘えたがっちゃってます。
その瞬間にうちなる雨宮先生がでてきて恥ずかしくなってる、という感じです。
ルビーちゃん?平常運転(徐行気味)ですよ。
幼稚園での内容を書くにはちょっと原作時間が飛びすぎたのでクッション的にこういう感じに