【推しの子】達を包む夜空は星を堕とさせない 作:C-RhYme
「・・・来るのがずいぶん遅れたな」
ドームライブの後始末が終わって少ししてから俺は墓参りに来ていた。
「もう8年か、ごめんなさりな」
『天童寺家之墓』と書かれてい目の前の墓にしゃがみ込んで線香をあげる。
さりなが死んでから俺はここに一度も来たことはない。
「薄情だよな。ずっと一人にさせちゃったな」
大切だの愛してるだの言っておきながらこのざまだ。
「本当はすぐにそばに行きたかったんだけど」
あの直後はそのことばかり考えていた。
もし、最後にさりなと言葉を交わせなかったら・・・
もし、雨宮先生に話を聞いてもらえなかった・・・
そんないくつもの『もし』がなかったおかげで俺は今も生きている。
「俺はやっと人の気持ち、というものを受け止められるようになった気がする」
あの日、お父さんの言葉を聞いてやっと俺はちゃんと生きていけるような気がした。
さりなが死んだときに捨てたつもりの人としての『藍斗』として。
「あの日、さりなが俺の言葉にうなずいてくれたのに俺はちゃんと受け止めれてなかったなぁ」
俺は誰かの気持ちを気持ちとして受け入れることができてなかった。
ただの言葉としてしか受け入れてなかった。
「そっちに行くことになったら、ちゃんと目いっぱい怒られるとするよ」
「パパ」
後ろから声をかけられ両腕を前に回された。
「ルビー」
「えへへ」
おんぶ状態のルビーに反応するとルビーは顔は見えないが嬉しそうにわらった。
アイとアクアマリンと車で待っててもらったはずなのだが来てしまったのか。
「さっきね、髪の白い着物を着た眼の黒い人に言われたの」
その特徴にあてはまる人物が脳裏をよぎるがすぐに黒い光に塗りつぶされた。
「私がパパの妹さんとして声をかけてあげさいって」
何を言っているんだと思った瞬間、世界が塗り替わるような感覚がした。
「お兄ちゃん」
心臓が強く鳴ったのがわかる。
「私ね、ずっと幸せだったよ?お兄ちゃんがそばにいてくれて、私のことを思ってくれて、それだけでよかったの」
今しゃべっているのはルビーなのに心がそれを否定する。
さりなの言葉として胸の奥に入っていく。
「ありがとう、私を愛してくれて」
「さりな・・・」
視界がにじんでいく。
「だから、お兄ちゃんは自分のこと責めないで?私はお兄ちゃんに救われてたんだから」
いつからだろうか、心の中にいた幻のさりなに責め立てられるようになったのは・・・
いつからだろうか、心の中にいた幻のさりなに死を願われるようになったのは・・・
そんなことを言うさりなはいなかったはずなのに。
言われた瞬間に心の中にいた幻は消えていった。
「ちゃんと幸せになってくれなきゃだめだよ?その前にこっちに来たら絶対に許さないんだからね」
「ああ、わかった」
「それとルビーちゃんを大切にしないとぜーったいにダメだからね!」
最後の瞬間にはもうさりなからルビーに戻っていたような気がする。
ルビーが言っただけでさりなではないはずなのになぜかさりなに言われたような気がした。
「ありがとう、ルビー」
ちょっと顔を見られないので回されている腕をそっと握る。
俺は本当の意味で前を向ける。
遠くで鴉が満足そうにないたのが聞こえた気がした。