ミラーモンスターたちと征く、俺のヒーローアカデミア ~七人のヤンデレを添えて~ 作:グランドスタン
「え~……皆さん。この方が、俺がこれまで色々とお世話になった波動ねじれ先輩です。そしてこちらの方が通形ミリオ先輩で、あっちで壁に頭をくっつけて落ち込んでいるのが天喰環先輩です」
てんやわんやと騒がしかった果てに、俺はなんとかクラスの皆に三人の先輩たちを紹介することができた。だが紹介を終えた直後、ねじれ先輩の悪い癖がさっそく発揮されてしまう。
気になったことは周囲の目を気にせず直球で聞いてしまう彼女の悪癖を見てなお、むしろ好意的なクラスメイトたちの反応に安心しつつ、俺は懐から取り出したハリセンでねじれ先輩の頭を軽く叩く。
「いてっ!?」
「ねじれ先輩……こんな時くらいは、その質問したい癖を抑えておいてくださいよ。ほら皆、『本当にこの人たち凄い人なのか?』って顔してるじゃないですか」
「だって気になるんだもん! 相澤先生の最初の除籍をかけた試験を、誰一人欠けることなく全員で突破できたなんて、不思議なんだもん!」
その無邪気な一言に、クラスの皆が首を傾げる。それもそのはず、皆は相澤先生の「除籍は嘘だ」という言葉を信じ込んでいるからだ。
緑谷君がテストで結果を出さなければ、本当に彼が除籍されていたことなど、誰も知る由もなかったのだから。
「……先輩、それってどういうことですか? 除籍の話は先生の嘘なんじゃあ?」
「ううん、本当のことだよ。去年の一年の子たち、本当に全員除籍されたんだから……あれ?緋色、皆にその話していなかったの?」
あっけらかんと特大の爆弾を投下するねじれ先輩と、「どういうことだ」と一斉に俺へと向けられるクラスメイトたちの視線。
「あ~、その……入学前に先輩たちから聞いてたんだ。相澤先生は見込みなしと判断した生徒を、容赦なく除籍処分にするってさ。だけどまあ……結果的に今回は俺たち全員乗り越えたし、今更それをバラしても余計な不安を煽るだけかなって思ったから、あえて黙ってたんだよ」
ここまで来て隠し続ける意味もないと悟った俺は、苦笑いを浮かべながらねじれ先輩の言葉が事実だと認める。
やはり皆大きな衝撃に襲われており、特に相澤先生の言葉は絶対に嘘だと誰よりも信じきっていた八百万さんは、顔を真っ青にして一歩後ずさった。
「あ~、皆ショックが大きいようだね……そうだ! 気分転換に、皆俺と戦ってみないかい?」
静まり返った重い空気を破るように、通形先輩が明るく爽やかに模擬戦を提案してくる。
動揺するクラスメイトに反し、この緊張感をほぐすにはちょうど良い薬だと思った俺は、皆に「受けてみなよ、勉強になるから」と薦める。
「忠告しておくけど、ちゃんと考えて戦わないと一瞬で終わっちゃうから……お気をつけて!」
そして結論から言うと、爆豪君以外はろくに応戦することもできず、文字通りワンパンで全員ノックアウトされた。
緑谷君は先輩のワープ先を読むなど一瞬の閃きを見せたが、実体化のタイミングを合わせられず攻撃を当てることはできずダウン。最後に残った爆豪君が、自身の爆破で生じた煙で通形先輩の視界を塞ぎ、渾身の一撃を掠らせるという執念の善戦を見せたものの、直後に放たれた凄まじいカウンターを浴びて、盛大に撃沈されるのだった。
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「ギリギリ見えないように努めたけど、すみませんね女性陣! とまぁ、こんな感じなんだよね」
「全員が訳も分からないまま、腹パンされただけなんですが……」
模擬戦を終えた皆が、それぞれに一撃を貰った腹部をさすりながら痛そうに呻いている。
クラスメイトたちの痛みが引いた頃合いを見計らって、通形先輩はあの日俺に投げかけたのと同じ質問を口にする。
「俺の個性、強かった?」
「強すぎッス!」
「すり抜けたかと思えばワープするし……無敵じゃないですか!」
「筒美君みたいなハイブリッド型の個性なんですか!?」
俺とは異なり、クラスの皆は通形先輩の『透過』のカラクリを見抜けなかったようで、それぞれが驚きと質問の声をあげる。
「無敵か……違うぞ一年坊。羨むべきはミリオの技量だ。まだ始まったばかりだからしかたないが、ミリオがしてきた途方もない努力を感じ取れないのなら一矢報いることすら叶わない。それに、
「天喰先輩……そんな壁に向かって喋ってないで、相手の顔を見てもっとはきはき喋りましょうよ」
一方、少し離れた場所では相変わらず体育館の壁に額をピッタリとくっつけた天喰先輩が、ぼそぼそと低い声で長い独り言を呟いていた。
相変わらずのノミの心臓っぷりに苦笑いを浮かべながら、俺は先輩へ声をかける。
「いや、一つ!」
「えっ……一つ!?」
「は~い!私知ってるよ! ねえねえ、言っていい?」
「ねじれ先輩……質問されてるのは通形先輩ですから、彼に答えを言ってもらいましょうよ」
予想外の答えに思わず聞き返す緑谷君。
そして俺の肩に回していた腕をひょいと外して手を挙げ、会話に割り込んできたねじれ先輩を優しく制し、改めて通形先輩に解説を促す。
「俺の個性は『透過』なんだよね! 君たちがワープと言うあの移動は推察されたとおりその応用さ!」
それでもまだ完全に理解しきれていない様子のクラスメイトたちに向け、通形先輩は自身の個性についてさらに分かりやすく解説を始める。
透過は決して万能な個性などではなく、むしろ使い勝手が悪い個性だということを。
それをインターンでの途方もない経験と研鑽によって、強い個性に育て上げたことを。
「そっか……覚悟しとかなきゃな」
「上等だっての! 相澤先生の除籍テストなんかにビビッてる場合じゃねえ!」
「そうだよ!私たちプロになるために雄英入ったんだから」
通形先輩の真っ直ぐな言葉に感化され、クラスメイトたちの顔から先ほどの動揺や不安の色はすっかり消え去っていた。
(通形先輩が、皆の不安を拭い去ってくれた……やっぱりすごい人だな。俺だって、絶対この人やオールマイトのようなヒーローになってみせる)
「まあ、こんなこと言ってるけど俺たち三人、この前の手合わせじゃ筒美君に引き分けさせられちゃったんだけどね!」
「「「………はァァァァァァァァァ!!?」」」
(何でこのタイミングでバラすんですか通形先輩!?)
通形先輩の暴露により、俺はクラスメイト全員からの容赦ない質問攻めを受ける羽目になるのだった。
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あれから一時間。クラスメイトたちの終わらない質問攻めもようやく落ち着いたタイミングを見計らい、俺は大きく息を吸い込んで本題へと移る。
「よし、皆出てこい!」
『ADVENT』
ねじれ先輩と障子君に預けていたブランウイングとデストワイルダーのカードを受け取った俺は、合計十一枚のアドベントカードを掲げて契約モンスターたちを呼び出す。
空を悠然と駆けるドラグレッダー、ダークウイング、エビルダイバー、ブランウイング。
地を這い回るベノスネーカー。
大地を重々しく踏みしめるメタルゲラス、バイオグリーザ、デストワイルダー、ボルキャンサー、そしてゼール軍団。
極め付きに、圧倒的な巨体を誇る重装甲のマグナギガ。
体育館の窓ガラスや天井の鏡面から続々と現れる契約モンスターたちの大行軍は、さながら一つの強力な軍団を思わせるほどに壮大で禍々しい。あまりの異様さと底知れない迫力に、クラスメイトたちは息を呑み、言葉を失ってその場で文字通り立ち尽くしていた。
「俺の個性は『ミラーライダー』。
床の上に
ずらりと壮観に敷き詰められた五十一枚という莫大な手札の数に、クラスの全員が目を丸くしていた。
「こんなに色々使えんのかよ……無敵じゃねえかよ」
「おっと、そうでもないぜ峰田君。たしかにカード自体は五十一枚あるけど、
俺が明かした個性の弱点に、クラスメイトたちは一様に驚きの声をあげる。
「生身の状態だと……ということは、さっき見せてくれたあの鎧を着た状態だと、その制限は無くなるということか?」
「その通りだよ、飯田君。この制約は龍騎――あの鎧を纏った姿になれば無くなる……と言っても、一度使ったモンスターの能力には9分55秒のクールタイムが発生するから、何回も連続で使い放題になるわけじゃないけどね」
クラスメイトたちの理解が及んでいるかを見計らって、俺はさらに説明を続ける。
「龍騎への変身自体にも9分55秒の時間制限があって、それを過ぎると9時間55分は個性が一切使用不能になる。だけど制限時間以内に変身を解いておけば、9分55秒経てば消耗がリセットされるんだ」
「なんか、あらゆる能力に『9・55』の制約が付きまとってんだな……」
「9・55に呪われてんのか、筒美?」
物騒なことを口にする峰田君と上鳴君だが、もしかしたら本当にその通りなのかもしれない。
「なあ筒美。このコピーベントってやつ二枚あるけど、左上の紋章以外に違いがあるのか?」
気さくな醤油顔の男子――瀬呂範太君が、
「ああ、それはな――」
口で説明するよりも、実際に見せたほうが早いと、俺は手本としてコピーベントをエビルダイバー、バイオグリーザの順に発動してみせる。
「エビルダイバーのコピーベントは単なる
「ひえ~……同じコピー系の能力でも、モンスターでそんなに差があるのかよぉ~」
「筒美君の個性って、パッと見は万能で無敵に見えるけど、かなり玄人向けの個性なんだ。十一枚にしても、五十一枚にしても、その中からどのカードを切るべきかを瞬時に判断して、状況に合わせて臨機応変に対応していかないといけない。今の僕には、とても真似できそうにないな……」
緑谷君がブツブツと独り言を呟きながら、エアノートに猛烈なスピードで情報を書き記していく。
かなりシュールな光景ではあるが、それだけヒーローとしての探究心が本物なのだと感心させられる。
「ねえ緋色! 折角だからファイナルベントもお披露目しない? すっごく盛り上がると思うよ!」
ねじれ先輩がパッと両手を叩き、目をキラキラ輝かせながら無邪気に提案してくる。
聞き慣れない単語にクラスの皆が首を傾げるので、モンスターの力を最大限引き出した必殺技だと簡単に説明する。
必殺技――その単語にクラスの男子陣、特に緑谷君や上鳴君が目を輝かせ身を乗り出し見たいと主張しだす。
「ええ~っ!?ずるいよ波動先輩! 私だって……私だってヒロ君のカッコいいところ、皆に見せたいもん!」
「私も賛成よ。緋色ちゃんの雄姿なら、何時間でも観ていられるわ」
「私もっ! 緋色君がどれだけ凄くてカッコいいか、皆に見てもらいたいです!」
ねじれ先輩の提案に何故か対抗心を激しく燃やした三奈ちゃん、梅雨ちゃん、お茶子ちゃんの三人が怒涛の勢いで便乗する。さらには四人に呼応するように、ベノスネーカー、バイオグリーザ、メタルゲラス、ブランウイングが「自分の技を見せろ」と言わんばかりに咆哮をあげる。
「ちょ、ちょっと待って皆! ファイナルベントは全部がかなり強力な技だから、そんなバカスカ撃っていい代物じゃないんだ。それに的も無いんじゃあ……」
「……それなら問題ない」
あれよこれよと話が進んでいってしまう中、なんとか中止する理由を探していると、背後からぬっと音もなく相澤先生が現れる。
手に持ったコントローラーのボタンを押すと、体育館の床が轟音と共に開き二十体のロボが地下からせり上がって来た。
「ちょうど備品庫で余っていた型落ちの訓練ロボだ。これならいくら壊しても構わん」
相澤先生の許可が出たことで、クラスターのボルテージは最高潮に達する。
準備良すぎだろと呆れつつも観念した俺は二十体の敵ロボに向き直ると、龍騎に変身してデッキから十枚のファイナルベントのカードを順にドラグバイザーに
『FINAL VENT』
「いくぞドラグレッダー! まずはお前からだ」
ドラグレッダーと共に空中を舞い、炎のブレスを纏い飛び蹴りを叩き込む『ドラゴンライダーキック』。
ウイングランサーを軸に、合体したダークウイングで全身を錐のように包んで敵を穿つ『飛翔斬』。
ボルキャンサーにバスケのトスの要領で投げ飛ばされる『シザースアタック』。
エビルダイバーの背に乗って猛スピードで突撃、すれ違いざまに切り裂き爆砕する『ハイドベノン』。
メタルゲラスの肩に乗り、鋭いメタルホーンで相手に突撃する『ヘビープレッシャー』。
ベノスネーカーの吐き出す毒液と共に滑空し、連続で蹴りを叩き込む『ベノクラッシュ』
デストワイルダーが鉤爪で引きずって来た相手をすれ違いざまにデストクローで貫く『クリスタルブレイク』。
ゼール軍団と共に飛び膝蹴りをぶちかます『ドライブディバイダー』
バイオグリーザの舌に巻かれ、振り子のように振り回されたのち、キン肉ドライバーの要領で相手の頭を地面に叩きつける『デスバニッシュ』。
ブランウイングの羽ばたきで生じた暴風に飛ばされた対象をウイングスラッシャーで両断する『ミスティースラッシュ』。
瞬く間に二十体の敵ロボは粉々に粉砕され、体育館には激しい爆煙と鉄くずの山が築き上げられた。
あまりの威力、バリエーションの多さにクラスメイトたちはただただ開いた口が塞がらず絶句している。
「すごい……すごすぎるよ、筒美君っ!!」
「これが……
緑谷君が目を輝かせ、爆豪君すらも悔しそうに歯を噛み締めながら、俺の圧倒的な火力をその目に焼き付けていた。
大喝采と大歓声が体育館に巻き起こる中、ファイナルベント十連発の反動で完全に体力が底をついた俺は、変身が解除されると同時に床の上で盛大に大の字になってダウンするのだった。
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