ミラーモンスターたちと征く、俺のヒーローアカデミア ~七人のヤンデレを添えて~ 作:グランドスタン
今回は原作で登場したある二人がちょっとだけ登場します
部屋に充満する甘い匂いのおかげか、不思議と快眠できた俺は、リラックスした気分で雄英高校に着いた。
「ふぃ~……やっぱり晴れてても二月は寒いな――」
「おはようございますッス!!」
寒さに震えながら校門をくぐると、スピーカー越しに喋っているのかと思うほどの大音量の挨拶が周囲に響く。何事かと驚き声がした方に目を向けると、大柄でガタイの良い丸刈り頭の男子が、道行く受験生全員に挨拶して回っていた。
(熱い子だなぁ……スーパー戦隊だったらレッドになっても不思議じゃないくらいだ)
「おはよう! 俺は筒美緋色だ。君は?」
「おはようございますッス!! 自分、夜嵐イナサッス!!」
俺も負けてられないなと自己紹介もかねて挨拶すると、ガタイの良い彼も地面に頭をぶつけるほどの勢いでお辞儀しながら名前を口にする。
試験場に向かいながら話してみたところ、彼――夜嵐イナサ君は想像通りの典型的な体育会系男子で、その見た目に違わず、ヒーローに一番大切なのは『熱さ』という持論を持っていた。
「『ヒーローに大事なのは熱さ』……か。俺の母さんはスナイパーだから、熱さよりも冷静さと好機を見極める判断力を大事にしているかな」
「なるほど! ヒーローの専門分野ごとに大事な物は変わる……目から鱗ッス!」
――頑固な奴かと思っていたら、けっこう柔軟な思考の持ち主のようだ。
そう感心していたら、かなり目を引く髪色をした少年の後ろ姿が目に留まる。
左半分が赤色で、右半分が真っ白。前世の小学生の体育の授業の時、こっそり紅白帽の表と裏を半分ずつ出して遊んでいたのを思い出す。
(スプーンが二つあれば、目を隠して完璧なウルトラマンになれるのにって思ってたっけ)
前世を懐かしんでいると、イナサ君が少年に挨拶をしに向かう。
あの少年もイナサの大声に驚くんだろうな……と思っていたが、そうはならなかった。
イナサの挨拶で振り向いた少年の瞳が、あまりにも冷たかったからだ。
(名探偵コナンのジンみたいだ……『人を殺したことがあります』と言われても信じちまいそうなくらい、怒りとか憎しみに染まりきってる)
「…………邪魔だ」
少年は一言イナサに吐き捨て、先を行く。
「大丈夫か、イナサ?」
「……大丈夫ッス! ささ、筒美君も急ぎましょうッス!」
呆然としていたイナサに声をかけると、何でもないように振舞い俺の背を押して試験場の教室に入室させた。
だが、俺はイナサの言葉を全く信じられなかった。だって――
(君の目……あの少年と同じくらい冷たくなってたよ)
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筆記試験は自己採点で、九割五分は取れたと思う。
続く面接試験も、『俺の背中を見た人たちに、前に進む勇気をあげられるヒーローになりたい』という動機は、面接官を務めたプロヒーローからのウケも良かったようだ。
そして最後の実技試験。個性を駆使した三キロメートルマラソンは大波乱となった。
イナサ君を冷たくあしらった少年――轟焦凍君がスタートと同時に生み出した氷塊によって、ほとんどの受験生が脱落させられたんだ。
俺はちょうど仮面ライダー龍騎に変身している最中なのもあり、氷塊に捕まる事はなかった。だがこの時点で無事なのはトップを独走する轟君と、個性で操った風で空へ避難したイナサ君、そして変身した俺の三人だけとなった。
俺とイナサ君、そして轟君三人のデッドヒートは、イナサ君一位、俺と轟君が同着二位という結果で幕を閉じた。
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「へ~……じゃあ今年の推薦男子枠は、緋色といさな?君の二人で決まりなんだね」
「まだ決まってませんよ、ねじれ先輩。あといさなじゃなくてイナサ君です」
試験が終わり、ねじれ先輩の家に戻った俺は、何故か帰宅していた彼女に背中から抱きつかれたまま帰りの準備をしつつ、試験での出来事を話していた。
個性で体を浮かせながら抱きついているせいで、女性の胸に標準装備されている柔らかいマシュマロ(個人差アリ)の感触が後頭部から伝わってきて、色んな意味でドキドキが止まらない。
「え~? だってトロトロキ君って、かなり人柄悪いんでしょ?だったらその子が落ちて、緋色といなさ……君が合格するのが普通でしょ♪」
「トロトロキじゃなくて、轟です!わざとですか先輩……。そのイナサ君なんですけど、試験が終わったあと辞退を申し出ていたから、雄英には来ないんですよ」
「そうなの? 推薦受けるくらいなのに辞退なんて不思議……あ!もしかして、筆記試験ダメだったとか?」
「詳しい理由は言ってくれませんでした。ただ『ここには居られない』って言ってて……あと先輩、そろそろ離れてくれませんか? 色々とまずいです」
試験官に辞退の旨を伝えるイナサの姿を脳裏に浮かべつつ、帰宅の準備を進めていたら片付けが済んでしまい、いよいよ後頭部に押し付けられた柔らかい主張を無視できなくなってしまった。
体のある場所に血流が集まるのを悟られるわけにもいかず、何とか離れてもらえるよう説得を試みる。
「え~……やだ♪」
説得は失敗した。
ねじれ先輩はなおさら離れないと言わんばかりに、体を密着させはじめ、それに合わせて彼女のマシュマロも形を変えて俺の後頭部から側頭部を包み始める。
「ちょっと…俺もう帰りますから、離れてくださいよ」
「え~、帰っちゃうの~……もっとゆっくりしていけばいいのに」
「いや俺明後日も学校ありますから、いい加減帰らないと」
頑なに留まらせようとするねじれ先輩のダル絡みを躱しつつ、なんとか駅までたどり着く。
「じゃあさ、合格したら一緒に暮らそうよ! 初めての一人暮らしってなにかと大変だし、雄英の授業って慣れるまで大変だから一人よりも二人の方が安心できるよ」
「なんで合格してること前提で話進めてるんですか!?ってかそれよりも、年頃の男女が一つ屋根の下で暮らすなんて問題しかないじゃないですか!」
「え~?いいじゃん。私と緋色の仲なんだし、それに私インターンでお給料出てるから、もう少し広い部屋に引っ越すことも出来るよ」
「いやそういう話じゃ――」
「何をしている……小娘、緋色」
駅に着いてなおべったりしてくるねじれ先輩をどうにか離そうと四苦八苦していると、地獄の底から漏れ出てきたかのように体の芯から冷えてしまいそうな冷たい声が耳に入る。
「か……母さん……何でここに? 任務で鹿児島に行ってたんじゃ……」
「早めに済んだから、迎えに来たんだ。で、大事な推薦入試に挑んでたはずの息子が何故そんな小娘にべたべた引っ付かれてるのかお母さんに説明してくれないかな?」
(マズイマズイマズイ!!)
顔こそ微笑んでいるが、目が一切笑っていない火伊那に戦慄しつつ何とか言い訳を考える。
ここで説明をミスれば、その瞬間この駅に血の雨が降る。
そんな悪い予感に身をすくませつつも、時間をかけすぎるとそれだけで危険が増してくるため、何とか言葉を紡ごうと震える唇を動かす。
「えっと、それは――」
「私の部屋に泊まってたからだよ、緋色のお母さん♪」
(おいいいいいいいっ!!!!何で本当のこと言っちゃうんですか先輩!!)
火伊那の出す殺気に気付いていないのか、ねじれ先輩は見せつけるように俺の腕に抱きつきながらあっさりと暴露した。
「ほう……誤魔化さずハッキリ言うのは頭が悪いからか、単なる色ボケか……どちらにせよ私の緋色に手を出しといてただで済むと思うなよ」
「きゃー怖~い。ねえ緋色、こんなおっかないお母さんの居る家なんて出て私と一緒に暮らさない? 私は緋色に仲のいい女が一人や二人くらいいても目くじら立てないよ」
(アカン……俺の母さんと先輩が修羅場過ぎてマジぴえんなんだが……)
理由は分からないが、バチバチに睨み合っている二人を落ち着かせる方法が思いつかずに嘆くしかなくなってしまう。
そんな俺の視界に、新幹線の出発時間を表示する電光掲示板の画面が入る。
「ヤバッ!? 帰りの新幹線まであと五分しかない!」
日頃の行いが良かったおかげか、この冷え切った空気を断ち切るチャンスが生じた。
(――このままじゃ済まさないからな、小娘)
(ふん…いいもん。最後に勝つのは私だもん)
「緋色ー! 一緒に暮らす話、考えててね。私返事待ってるから!!」
未だにバチバチ睨み合っている二人の間に割り込み、火伊那を引っ張って新幹線ホームへ連れて行く。その間もねじれ先輩が爆弾発言をかまし、そんな彼女に火伊那は絶対零度の視線を向けるのだった。
なお、帰宅後から翌日の日曜夜までずっと火伊那にムスコニウム補充の名目で抱きしめられ続けたのはここだけの話だ。
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