ミラーモンスターたちと征く、俺のヒーローアカデミア ~七人のヤンデレを添えて~ 作:グランドスタン
雄英BIG3のお二人と波動ねじれの友人が先行登場します。
三月某日。
冬の寒さが遠のき、春の象徴たる桜の木に淡紅色の花弁が咲き乱れるこの日に、俺の学校は卒業式を迎えた。
いつもは退屈で仕方がない校長先生の長い話も、この日ばかりは身に染みていたのは……周りを見る限り俺だけみたいだった。
校長先生の長話が終わり、来賓祝辞、在校生代表による送辞と滞りなく進み、卒業生代表として選ばれた俺からの答辞をもって卒業式は終わった。
その後も皆、時間が許す限り、友人たちや三年間お世話になった学び舎、そして先生方と最後の時間を過ごして解散した。
俺と火伊那はいったん家に戻り、明日の朝の出発の準備を進める。
夜になると、クラスの皆で近くのカラオケ店で喉が枯れそうになるまで歌い倒し、解散時には皆から「推薦入試合格したんだから、しっかり大活躍するんだぞ」とエールをもらった。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
翌日昼。
新幹線で静岡の新しい家に着いた俺と火伊那は、先に着いて出迎えの準備を済ませていたメイドさんたちから、丁寧なお辞儀で迎え入れられた。このメイドさんたちは、『雄英生としての忙しい日々で疲れるであろう俺の代わりに家事をしてもらうため』と火伊那が雇った人たちだ。
ついでに、この人たちの給料は家の購入・改修費の30億円とは別途で払っているようであり、それを昨日聞いた俺は再びショックで気を失いそうになったのは内緒だ。
「お待ちしておりました。火伊那様、緋色様」
メイドに様付けで呼ばれる。
前世どころか今世でも無縁だと思っていた出来事に、緊張のあまり少し体を硬くさせつつ、俺はメイドたちに案内されて家の中を回ったのち、届いた荷物を抱えて自室へ向かった。
「ふう……とりあえず完了だな」
私物がそれほど多くなかったことと、俺専属メイドさんたちの的確なサポートのおかげで、作業は二時間ちょっとで終わった。
「あとはダンボールを片付ければ……」
「へぇ~ヒイロッチって、可愛いぬいぐるみ好きだったんすね~。ちょっと意外っす」
褐色の肌と薄い金髪を持つメイドのアミさんが、畳んだダンボールに紛れていたテディベアを手に持ち、俺に見せてくる。
全体的に少し汚れており、ところどころ糸がほつれている。人によっては、さっさとゴミに出していてもおかしくないくらいにはボロボロだった。
「え? 俺の私物にテディベアなんてないはず……これ、俺が昔母さんにプレゼントしたやつだ」
顔を近づけてよく見た俺は、これが七歳の時火伊那にプレゼントしたあの時のテディベアだと思い出す。
「へ〜……火伊那様って、こういう可愛いモン好きなんすか〜?」
「おう、そうだぜ! 世間じゃクールビューティーで、こういうのに興味ないって思ってる人も多いけど、本当はファンシーなものが大好きなんだよ」
「で、俺が七歳の時にお小遣いを貯めて誕生日にプレゼントした物がこれなんだ」
そう言うと、「もしかして緋色様って……マザコンってやつっすか?」と失礼なことを言い出してきた。
すかさず他二人のメイドにしばかれるアミを視界の端に捉えつつ、俺は火伊那の部屋に向かう。
「母さん、入って大丈夫?」
「緋色か! ちょっと待ってくれ!」
ノックすると、慌てた様子の母の声が返ってきて、ドスン、ドスンと何かが崩れる音も聞こえてくる。
何事かと驚きつつドアを開けると、その先には崩れたダンボールの山に埋まっている火伊那の姿があった。
「もしかしてさ……これ探してた?」
「それだ!! そっちに紛れてたのか!?」
いくつかダンボールを踏み潰しながら脱出した火伊那は、俺が持ってきたテディベアを愛おしそうに抱きしめる。
「それもう十年ほど前の物だけど、まだ大事にとっててくれたんだな」
「当たり前だろ。お前がプレゼントしてくれた、私の宝物なんだからな」
愛おしそうにぬいぐるみを撫でる火伊那を見て、俺は前世のクソ親と比べるまでもない『素晴らしい母親』の姿に感動していた。
故に、俺は全く気付いていなかった。
愛おしそうに微笑みを浮かべ、胸にぬいぐるみを抱きしめる火伊那の瞳の奥に宿る、深く歪んだ熱情に。
(当たり前だろ……お前が私にくれた『最初の愛』なんだから。絶対に手離すものか……私の緋色)
親としての慈愛などではなく、一人の男に向けられた狂おしいほどの独占欲を彼女が胸に秘めていることに、俺が気づく術はまだなかった。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
「火伊那様、緋色様。お取り込みのところ、よろしいでしょうか?」
右手で眼鏡のずれを直しながら部屋に入ってきたメイド長が問いかけてくると、火伊那は怪訝そうな顔で「なんだ?」と聞き返す。
メイド長は、俺宛てのお客が来ているので確認に上がったのだと手短に告げた。
「俺に客?
「チッ……どこのバカだ? 私と緋色の愛の巣に土足で踏み込んでくるのは」
詳しく話を聞くと、俺の客は男二人女二人の四人組で、水色の髪の女が俺の知り合いだと名乗っているらしい。
水色の髪と聞いて、もしかしてと思った俺は足早に玄関に向かう。
「あ、緋色来た~♪」
「ねじれ先輩!? どうしてここ――」
「おい小娘……何故ここにいる?」
玄関には、文化祭で少し話した有弓さんと、黒い髪に鋭い目つきでエルフ耳な男――天喰環さん、そしてどことなくオールマイトを彷彿とさせる金髪の男――通形ミリオさんと一緒に、ねじれ先輩がいた。
引っ越し先の住所はまだ話した覚えがないのに、なぜここが分かったのかと問いかけようとした矢先、俺の背後にいた火伊那が敵意のこもった声色でねじれ先輩を睨みつける。
「それはね……やっぱり秘密♪」
「きさま……ふざけてるつもりならただじゃ――」
「先輩、教えてくれませんか?」
何故かぶりっ子ぶったポーズではぐらかすねじれ先輩と、そんな彼女に対しイライラを隠そうともしない火伊那。
一触即発な空気を察した俺は、ねじれ先輩の両手をギュッと握り締め、教えてほしいと頼み込む。
「引っ越し祝いにこれ持ってきたの♪ 場所は前の電話で緋色が言ってた特徴の家を全部調べて、ここだって当たりをつけたの」
右手に持っていた紙袋を俺に手渡しながら、ねじれ先輩は引っ越し先を特定した経緯を笑顔で話してくれた。
アニメの探偵みたいな恐ろしい調査能力に、これもプロヒーローの下で鍛えられた
「そうかご苦労。用が済んだらさっさと帰れ」
「え~? やだ」
そう言って、ねじれ先輩は紙袋の中身を見て顎が外れていた俺にぎゅっと抱きつく。
火伊那とねじれ先輩が火花を散らして言い争っているが、中身の豪華さに驚く俺の耳には欠片も入ってこなかった。
「A5ランク近江牛極上ロース900グラムって……先輩、いくら何でもこれはもらえませんよ!」
「いいのいいの♪ 前も言ったけど、インターンでお給料出てるからこれくらいなんともないし……それに私たちも今夜同席させてもらうから」
「貰っといてなんですけど、ちょっと図々しすぎません?」
「おお、ナイスツッコミだね」
まさかの同席発言に、思わずツッコミを入れてしまう。
火伊那が「勝手なことを言うな」と口にしようとした矢先、通形先輩が俺のツッコミに笑顔で反応する。
「ところで後輩君。君が良ければなんだけど、俺と戦ってみないかい?」
「え、良いんですか!? BIG3のお手を煩わせて」
「ああ。ネジレちゃんが一目置いている後輩の実力……俺も見ておきたくてさ!」
文化祭の帰りにねじれ先輩から聞き出したことだが、通形先輩と天喰先輩、そしてねじれ先輩の三人合わせて『雄英BIG3』と呼ばれているらしい。
それほどの実力者の胸を借りられるというなら、断る選択肢は俺の中にはない。
「アミさん! 訓練場ってどこにありましたっけ?」
「案内しますよ~」
端で蹲る天喰先輩の鼻を自身の金髪で擽って遊んでいたアミさんに案内を頼み、一同で訓練場へ向かう。
その間、俺にコアラの如く抱きつくねじれ先輩と、それを力ずくで引き剥がそうとする火伊那の攻防に巻き込まれ、かなり歩きづらかったのはここだけの話だ。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
「ほんじゃあ……制限時間十分、勝敗はどちらかが『参った』と宣言するまで決まらず。お互い、求めるヒーロー像に恥じない戦いを……はじめっ!」
主審を務めるアミの宣言と同時に、体操着に着替えて向かい合っていた俺と通形先輩は、互いの出方をうかがい身構える。
(通形先輩……去年の体育祭リレーで、スタートと同時に全裸になるという珍事を巻き起こした人。個性は非攻撃型と考えていいはずだ)
『SHOOT VENT』
頭の中にシュートベントのカードを思い浮かべた俺の両肩に、マグナギガの両脚から展開される砲を模した大砲『ギガキャノン』が召喚され、装着される。
先手必勝とばかりに、二門の砲口から光線を放つ。
着弾と同時に爆発が起き、煙が晴れるのを待つ。だが、そこに残されていたのは、焦げて元のサイズの半分ほどしか原形を留めていない体操着だった。
「消えた!? いったいどこに――!?」
周囲に鋭く目を走らせた瞬間、背後に強烈な気配を感じる。振り返ると、そこには全裸の通形先輩が変なポーズで仁王立ちしていた。
「POWER!」
すかさず拳を振るう通形先輩。突然背後に現れたカラクリは分からないが、充分防げると速やかに思考を切り替え、両腕を交差させて防御姿勢を取る。
だが、信じがたいことが起きた。
通形先輩の拳は、まるで霧のように俺の両腕をすり抜け
(なにが起きたッ!?)
『HOLD VENT』
胃袋の中身が口から押し戻されそうな激痛に耐えながら、バイオグリーザの眼を模したヨーヨー『バイオワインダー』を速やかに召喚し、牽制のために振り回す。
左側から通形先輩のおでこへと向かったバイオワインダーは、やはり先ほどの拳と同じく先輩の頭部を滑るようにすり抜けて空を切った。
間髪入れずにギガキャノンから光線を放つが、これもすり抜け、一発も当たらないまま距離を取られる。
「なかなかタフだね。大抵の子は今の一撃でノックアウトしてるんだよね!」
「どうも……
感心している通形先輩に応えつつ、脳内で彼の個性のカラクリについて思考を急回転させる。
(こちらの攻撃や防御をすり抜けたり、突然消えたり現れたり……下手をしたらNARUTOの『神威』みたいな個性って可能性もあり得るのか? でも体育祭での慌てっぷりや、服がいちいち脱げる様子を見るにそこまで万能ってわけじゃなさそうだ。なら、やりようはあるはず)
(すでに二枚切っちまった……残る手札は九枚。よく考えて切らないと……勝てない!)
『SWING VENT』
個性の制約上、マグナギガとバイオグリーザの力は模擬戦中にもう使うことができない。ならばと、残された手札の中から少し離れた相手にも通じ、かつスタン効果も期待できるエビルダイバーの尻尾を模した鞭『エビルウィップ』を召喚し、通形先輩の胸めがけて振るう。
だが、これも先ほどまでと同じくすり抜けて空を切る。
「うおっと!?」
(今のは!?)
悔し紛れにエビルウィップを捻った瞬間、通形先輩の身体が見えない物体に弾き飛ばされたみたいに右にズレる。
(さっきの『うおっと』って言葉は、弾かれるのは想定外だったってことか? だがすり抜けられる範囲が狭かったとしても、見ていれば冷静に修正できるはず。だけどあの動き……もしかして先輩は、
仮説と呼ぶにはお粗末な代物。だが、答えは模擬戦が終わった後に聞き出すこともできる。
(残り三分……できれば使うのは避けたかったけど、勝つにはこれしかない!)
『FINAL VENT』
勝負に出ることを選んだ俺は、龍騎のファイナルベントを発動する。
窓からドラグレッダーが飛び出すのに合わせて、俺は足を大きく広げて四肢立ちとなり、右手を広げて上へ、左手を握り込んで下へ構え、体全体をゆっくりと沈み込ませる。その間ドラグレッダーは口から
両足を合わせて真上へと跳躍し、俺と共に空を舞うドラグレッダーに合わせて体を捻り、右足を突き出した飛び蹴りの姿勢を取る。
同時に、ドラグレッダーが咆哮と共に吐き出すドラグブレスを全身に纏い、通形先輩へ流星のような飛び蹴りをお見舞いする。
「なにあれ!? ねじれ知ってる?」
「ううん……初めて見る技。でも、なんか凄そう!」
観客席の有弓さんとねじれ先輩が驚いた声をあげるが、試合開始時からずっと俯いていた天喰先輩に動揺は見られない。
通形先輩も同じで、着弾のタイミングを見計らっているのかこちらに突っ込んできて、やがて右足が床へと沈みだす。
(今だ!)
『CONFINE VENT』
通形先輩の身体が完全に沈みきる直前に、ひび割れたガラスのイラストが描かれたカードの力を使う。
その瞬間、首まで沈んでいた通形先輩の身体は、ゲームのバグみたいに空中に弾き出されて無防備な姿を晒し出す。
「個性がッ!?」
(もらった!)
個性発動が強制キャンセルされた通形先輩の動揺が収まらない内に、ドラゴンライダーキックを叩き込む。
「はは……今のは一番焦ったよね!」
だが、着弾の爆煙から姿を現した通形先輩は、胸に少し火傷痕ができただけでほとんど無傷だった。
(嘘でしょ……わずかな差で避けやがったよこの人)
十五キロ先も視認できるレッドアイのおかげで分かった。着弾のほんの一瞬、斜め後ろに跳んで直撃を回避したのだ。
(この人……今更だけど、波動先輩よりも強い)
『SWORD VENT』
だからこそ、相手にとって不足ない。
そう思った俺は、ソードベントのカードでダークウイングの尻尾を模した槍型の武器『ウイングランサー』を召喚して通形先輩へ突撃を――
「そこまで! 時間切れッス」
かまそうとした矢先に制限時間に達してしまい、勝負は引き分けで終わるのだった。
コンファインベントの扱いは、ヒロアカ世界に適応させるならこんな感じかなと思っています。
感想・評価待ってます