ミラーモンスターたちと征く、俺のヒーローアカデミア ~七人のヤンデレを添えて~ 作:グランドスタン
そんな緋色は通形先輩の知られざる苦労を聞き、自身の目標を定める――そんなお話
「俺の個性、強かった?」
模擬戦は判定こそ引き分けだが、ファイナルベントとコンファインベントを切って一撃掠らせるのが精一杯――制限時間が長ければ、俺が負けていたのは明らかだ。
「ええ……先輩の個性ってよりも、
体操着から私服に着替えた俺は、通形先輩の問いに思ったことを答える。
「エビルウィップを使った時の感触から見るに……先輩の個性って、『すり抜ける個性』ですよね? 瞬間移動は、個性のオンオフ切り替え時に生じる
(ミリオの個性を初見で見極めるなんて……!? やっぱり、この新一年坊普通じゃない!!)
模擬戦で得られた情報から導き出した推理を通形先輩に話すと、天喰先輩は驚いたように目を丸くし、通形先輩は笑って正解だと答え種明かしを始める。
「……正解!一回の模擬戦だけで俺の個性を言い当てたのは、学生の中では君が初めてなんだよね!!」
「俺の個性は『透過』なんだよね! 君が瞬間移動と言ったあの移動は推察どおりその応用さ!……あぁゴメンて」
会話に割って入ろうとしていたねじれ先輩だったが、通形先輩に先に言われてしまい不機嫌になった彼女は頬を膨らませる。
「全身に個性を発動すると、俺はあらゆるものをすり抜ける! 地面もさ!!」
「じゃあ、ドラゴンライダーキックをお見舞いしようとした時も、地中に落ちていたんですか!?」
「そう! 地中に落ちる。そして落下中に個性を解除すると不思議なことが起こる。質量のあるものが重なり合うことはできないらしく、弾かれてしまうんだよね! つまり俺は瞬時に地上へ弾き出されているのさ! これがワープの原理。体の向きやポーズで角度を調整して、弾かれた先を狙うことができる!」
「ゲームのバグみたいッスね」
「イイエテミョー!」
アミの感想に通形先輩は吹き出しながら笑う。
一方の俺は、この個性が強いどころか、むしろ不便極まりない厄介な個性である可能性に思い至る。
「それって……個性を全身に発動している間は、
「そのとおりだよ! 個性発動中は何も感じることができず、ただただ質量を持ったまま落下の感覚があるだけなんだ。だから案の定俺は遅れた。ビリっけつまであっという間に落っこちた。服も落ちた」
服の件は別に言わなくても良かったんじゃないかと思ったが、自身の額を指で高速で突つきながら説明を続ける通形先輩は真剣そのものな表情だったので必要なのだと受け入れる。
「だけど俺は、あるヒーローと出会い、その人の教えを受けた事で一気に伸びることが出来た」
「大切なのは予測! 周囲よりも早く、時に欺く。そしてその予測を可能にするのは経験! 経験則から予測を立てる!」
力強く答える通形先輩に俺は圧倒された。
ドン底から這い上がった偉大な先輩……どれ程の経験を重ねたのか、どれ程の試行錯誤を繰り返したのか。
「想像もつかないな……」
弱気そうな言葉と裏腹に、俺の胸の内には熱い思いが沸き上がっていた。
「ご指導、ありがとうございました! 通形先輩、おかげで新しく目標ができました」
「あなたが卒業するまでに、コンファインベント無しであなたに一撃を喰らわせて勝つ。それが俺の当面の目標です」
残された時間は一年。あまりにも短く、実現困難なのは火を見るより明らか。
だが、だからこそ挑む価値がある。これが俺の雄英生として最初の
「ハハ、なかなか活きのいい後輩だね! 君のように元気溌剌な後輩は大歓迎さ!」
それから俺はすき焼きができるまでの間、俺の個性『ミラーライダー』の説明や、ねじれ先輩、天喰先輩との模擬戦を行った。
天喰先輩の個性『再現』は食べたものの特徴をそのまま肉体に再現できる代物で、その応用性と万能性はねじれ先輩の『波動』や通形先輩の『透過』を上回るものだった。
下半身で牛を再現した『キメラ・ケンタウロス形態』や、タコの擬態能力とサソリの毒針を再現した『オクトパスミラージュ+スコルピウストキシン形態』といった何でもありな必殺技には大いに驚かされた。
だが、遠距離攻撃主体のねじれ先輩や、攻撃を当てること自体が困難な通形先輩と比べれば、中近距離攻撃が中心の天喰先輩は戦いやすく、先に戦った二人よりも優位に立ち回ることができた。
雄英BIG3との模擬戦はすべて引き分け――通形先輩には実質劣勢、ねじれ先輩とはお互いに決め手に欠けた泥沼試合、天喰先輩には優勢、といった結果で終わったのだった。
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「ふ~食べた食べた」
先輩たちとすき焼きを共にした緋色は、帰路に就く彼らを見送ったあと自室のベッドに腰掛けて膨れ上がったお腹をさすっていた。
(相澤先生……ヒーロー名『イレイザー・ヘッド』。個性は相手の個性を発動できなくする『抹消』……アングラ系ヒーローでメディア露出も少なく、知名度も低い。……この人が俺の担任になるかもしれないのか)
スマホでイレイザー・ヘッドについて調べながら、緋色はねじれ先輩が話していたヒーロー科1年A組の担任になると思われる男について思考を巡らせる。
(入学したてでも、お眼鏡にかなわなければ除籍処分ってヤバすぎでしょ。一応結果を見せれば復帰できるって先輩は言ってたけど、それでも去年の一年一クラス全員除籍って……一歩間違えればただの横暴な人になっちまうよ)
それでも、二年前にイレイザーの生徒だったねじれ先輩、天喰先輩、有弓先輩からイレイザーへの悪感情が感じられなかったあたり、多少厳しい範疇で済むよう本人なりに調整しているのだろう。
だとしても、入学前からそんな話を聞かされると嫌でも緊張が走る。
(『緋色なら大丈夫だよ』って先輩言ってたけど、現役プロヒーローが課すハードルにいきなりついていけってのは流石に無茶ぶりすぎ……)
弱気になりかけた思考を断ち切るように、緋色は両手でパンッと自分の頬を叩いた。
(いかんいかん。決めただろ筒美緋色! この一年で通形先輩に勝つって……だったらプロヒーローの課す試練くらい突破してみせろ!)
仮面ライダーのようなヒーローになる。俺をここまで育ててくれた火伊那に恩返しする。後悔しない人生を送る。
第二の人生を送るにあたって定めた誓いを胸に、緋色は入学式までの残り一週間を無駄にせず過ごすと改めて誓うのだった。
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