追 憶
深遠の闇の中に彼女は立っていた。
ただ独り、いつ明けるとも知れぬ夜の
そして、一人の男に想いを馳せていた。
彼は、子供を欲しがっていた。
自分ではない、他の女性との子供を。
けれど、あの日、彼女の死によってその機会は永遠に失われた。
諦めきれなかった男は、私にその想いを託した。
彼女の代わりに、その子を産むようにと。
彼と彼女の愛の結晶を。
その時、私は深く考える事も無く、その想いを受け取った。
それを今、私は後悔している。
彼が必要としたのは、彼女の代わりに子供を産む者であって、私自身ではない。
そして、その子が産まれれば、私は必要とされなくなる。
それは最初から解っていたことだった。
でも、それがこんなにも堪えがたいものだとは、思いもしなかった。
私は、彼から託された想いを形にしなければならない。
それが、私の存在意義。それ以外に、私がここに在る意味はない。
だけどそれは、同時に私の存在を脅かす。
何時か私の内から産まれてくるその子を、今は愛おしいと想うと同じくらいに憎い。
この内に抱え込んだ矛盾を、どうすればいいのか……
答えの出ない迷路にはまり込み、夢と
その中で、在るべき姿を見出した彼女は、迷うことなくそれを実行した。
自分とその子と二人、誰にも脅かされる事なく、穏やかな笑みを絶やさずに過ごせて、そこには何の不安も苦痛もない。そんな「世界」を創る為に。
それが、彼から託された想いを叶え、同時に何時までも自分の存在意義を失わずにいられる最良の方法であると信じて——
二〇〇七年十二月二十四日、
このゲームの世界観は、あるドイツ人女性の書いた叙事詩〈黄昏の碑文〉を元にして、この世界は精霊と魔物との激しい争いの只中にあるという設定になっていたが、特に達成しなければならないシナリオがあるわけでもなく、プレイヤーはこの世界のコンテンツを利用して自分の好きに遊ぶことが出来た。
その自由度の高さと深い世界観が受け、『The World』は瞬く間に二千万以上のユーザーを抱える世界最大のネットゲームに発展した。
十カ国にあるサーバーの一つ
——そして、
また、狂気を宿した影が
〈ザ・ワールド〉というゲームの世界で「フィアナの末裔」の二人は英雄として有名ですが、アニメ、マンガ、小説でも名前は出てきても、二人について描かれているものはあまりありません。
ゲームでも片方は始まると同時に意識不明になってリタイア、もう片方は長らく主人公と対立して中々一緒に冒険できない。「フィアナの末裔」好きなのだが……
それと、このゲームをクリアした時、ふと「あれ?」と思った事があって、どうせならそれを題材に〈ザ・ワールド〉の英雄たちに、それらしい活躍をしてもらおうと書いたのがこれです。