「はじめの一歩」に女の私が転生する需要はあるの?一応、需要はあるらしい 作:SUN'S
此方の転生者は、「糸色さん達」とは無関係の世界線のごくごく普通の転生先の失敗した女の子です。そして、自分の「特典」の一つが使い道を無くしました。
平成○年4月8日
東京都某所の高校に進学した。
そこで私は自分の転生した世界の名前を理解した。この世界はボクシング漫画の金字塔「はじめの一歩」の世界であり、私の想像していた現代ファンタジーは起こることは絶対に無くなってしまったわけだ。
転生するときに五人の神々っぽい人に貰った「二つの特典」の一つは完全に使い道を無くしてしまった。
こういう事を想定して、「特典」の一つは世界を選ぶ事に使えば良かったと思いながら自己紹介を終え、私はガチガチに緊張している幕之内一歩君の挨拶を聞く。
うん、やっぱり良い声だと思うね。
今日の日記はここまで。
PS
私の「特典」は「回復系超能力」だ。
平成○年4月10日
幕之内君は部活動には参加せず、直ぐに下校する。
彼の家の事情を知っている分、何か手助けしてあげたいと思ってしまうのは元読者として仕方ない事なんだろうと思いながらも学校の勉強を進める。
もしものときはノートを貸そう。
PS
席替えで、幕之内君が隣になった。
意外と爽やかな童顔だった。
平成○年4月13日
幕之内君の休みの日だったので海沿いを歩く。
釣り船幕之内の看板を見つけ、お店の中を覗くと幕之内君のお母さんがレジに座っているのが見え、「いらっしゃい。初めてのお客さんね」と言ってくれた。
折角なので釣竿とエサを借りて、テトラポッドの向こうに移動して、釣りをやってみた。スカートだから潮風で捲れそうになって焦った。
今日は一匹も釣れなかった。
PS
幕之内君と会ったら、名前を覚えててくれた。
ちょっと嬉しくて、笑ってしまった。
平成○年4月18日
幕之内君が虐められていた。
止めに行こうとしたら、クラスの女の子に止められたけど。無視して注意したら「けっ」と三人組は離れていったものの、幕之内君に「ごめんなさい。助けてくれて、ありがとう」と謝罪とお礼を言われた。
多分、今のは梅沢君達だけど。
流石に、見過ごせなかった。
身勝手で理不尽で自己満足の転生者あるあるみたいな正義感を振りかざして、恥ずかしい。
墓穴を掘るとは、正にこのことだ。
PS
今日も釣りに行ったけど、釣れなかった。
平成○年4月20日
幕之内君と良く話している気がする。
他のクラスメートとも話しているけど、隣の席だから話すことが多い。あと文系の幕之内君に教えてもらえることも多い。
転生者特有の記憶力?
そんなものは私には備わっていない。
ただ、幕之内君が怪我することが増えた。
……何も教えてくれない
PS
今日は釣れた。サワラらしい。
おばさんに捌いてもらった、美味しかった。