「はじめの一歩」に女の私が転生する需要はあるの?一応、需要はあるらしい 作:SUN'S
平成☆年12月17日
両国国技館
WBC世界ジュニアミドル級タイトルマッチ
「たっかむら!たっかむら!」と声援が響く
何の憂いも心配もなく万全の状態でリングに立つ鷹村さんは鷹を模したガウンを羽織り、悠然と甲冑を纏ったブライアン・ホークの入場に「よっ!待ってました!」や「日本通のブライアン!」なんて合いの手が飛び交う
本人はものすごく不満そうだけど
レフェリーの言葉を聞き
ふたりはニュートラルコーナーに戻った
鴨川会長にマウスピースを渡され、口に入れて噛んだ鷹村さんは勇ましくガウンを脱ぎ捨て、ホーク選手も甲冑をパンプアップで弾き飛ばす
1R
ゴングが鳴る
鷹村さんは珍しくオーソドックスなアップライトに構え、リズムを刻み、ホーク選手は両手を下げて、ユラリと身体を揺さぶるように身体を動かす
鷹村さんが間合いを詰め、左ジャブを打つ
ホーク選手はしゃがむように避けるも完全には避けきれず、額から血を流してビックリしたような顔を見せ、滴る血を舐めて身体を起こす
鋭く速い左ジャブの連打を打つ鷹村さんの攻撃を紙一重で避けるホーク選手。重量級に見合わない軽やかな動きでジャブを防ぎ、下から殴った
アッパーじゃない
下から、フルスイングで殴っただけ
いや、上体だけのけ反った体勢からのパンチだ
いきなり視界から消えたと錯覚した鷹村さんの身体がパンチの衝撃で大きく後ろに傾き、続けざまにホーク選手は身体を起こす反動で右のフルスイングを鷹村さんの顔面に叩き付けた
豪快な打撃音が響き、鷹村さんがたたらを踏む
負けじと鷹村さんがワンツーを打つ
また上体を逸らそうとしたホーク選手の右脇腹に鷹村さんのリバーブローがめり込み、強打の痛みでホーク選手の動きを止めたところに右フックを打ってテンプルごと頭を殴り飛ばし
今度はホーク選手の身体が真横に弾ける
「よっしゃあー!!」と青木さんと木村さんの二人がガッツポーズを作り、みんなで叫ぶ。まだまだ、始まったばかりだけど
気合いは十分に溜まっている
ゴングが鳴り、レフェリーが割り込む
インターバル
鷹村さんは鴨川会長の指示を聞き、うがいしながらマッサージを受けている。強さはまだまだお互いに拮抗しているし、大丈夫だ
鴨川会長の張り手が鷹村さんの背中を打った
痛そうな音が響き、私も眉間にシワが寄る
セコンドアウトのアナウンス
2R
ゴングが鳴る
ホーク選手の速攻
コーナーで迎え撃つ体勢で鷹村さんが右ストレートを打つ。ヘッドスリップで鷹村さんの右こぶしをかわし、ホーク選手が攻める
ワイルドな左右のパンチで鷹村さんの頭が右から左、左から右へと弾け、お返しのようにホーク選手のボディーブローが鷹村さんの腹筋にめり込む
鷹村さんの巨体がくの字に曲がり、落ちた頭にホーク選手の左フックがめり込み、鷹村さんがキャンバスに倒れ、ダウンを奪われた
カウントが始まる
鴨川会長の叫びとリングを叩く音が響き、8カウントで鷹村さんが跳ねるように起き上がり、ファイティングポーズを取り、レフェリーのボックスの声が聴こえる
一瞬、いや、5秒は意識は飛んでいた
鷹村さんの名前を呼ぶコールに応えて立ち上がったんだと理解し、ニュートラルコーナーを飛び出すホーク選手の顔に鷹村さんのワンツーが決まり、続けざまに放たれた左フック、返す刀の右アッパーでアゴを突き上げる
そのまま踏み込み、右ストレートがホーク選手の顔面を貫き、彼の巨体をフルスイングのパンチでキャンバスに叩き落とした
カウントが始まる
5カウント
立ち上がったホーク選手はたたらを踏み、怒り心頭の形相でファイティングポーズを取り、左右のフックめいたパンチで鷹村さんと殴り合う
ゴングが鳴り、レフェリーが割り込む
インターバル
鷹村さんの汗を拭き、鴨川会長はアドバイスを送る。ホーク選手のほうもミゲルトレーナーが何かを指示しているのが見える
鴨川会長もミゲルトレーナーも旧知の関係だし、お互いに手の内は分かり合っているのかな
セコンドアウトのアナウンス
鷹村さんはマウスピースを噛む
3R
ゴングが鳴る
オーソドックスな右利きのアップライトを止めた鷹村さんの踏み込みからのフルスイングの左右の連打をホーク選手クロスアームブロックでガードする
しかし、鷹村さんの鉄骨をへし折る剛腕パンチはアームブロックを容易く弾き、左ボディーブロー、右ボディーブロー、と続けるように腹筋を砕き、ホーク選手は苦悶の表情で腰を落とす
が、真下からのパンチが鷹村さんのアゴを突き上げ、鷹村さんの身体がのけ反り、膝が沈み、鷹村さんもホーク選手も足を揺らし、踏ん張る
ホーク選手のワイルドなロングフックが鷹村さんの頭上を通過し、鷹村さんのフルスイングの右アッパーがホーク選手の眼前を突き抜ける
お互いのパンチ一つ一つが決定打なり得る試合に私達は息をのみ、それでも「負けるなー!」「鷹村さん、勝ってくれ!」「守さん!!」とみんなで叫び声を張り上げて、必死に応援する
そのとき、鷹村さんとホーク選手の右のフルスイングがお互いの顔面を弾き、同時にダウンした
レフェリーがカウントを始める
二人とも足腰が震えながら、8カウントで立つ
ゴングが鳴り
ニュートラルコーナーに戻る
インターバル
僅か9分間の出来事とは思えないほど鷹村さんもホーク選手もボロボロになっている
いつ意識が途切れてもおかしくない
セコンドアウトのアナウンス
マウスピースを噛み、立つ
4R
ゴングが鳴る
鷹村さんはトレードマークのリーゼントが崩れ、ホーク選手は余裕の笑みを消し、いつ終わるのかも分からないフルスイングのパンチが空を切っていたそのとき、
パァン!と軽音が響く
ホーク選手が左ジャブを打つ、打つ、打つ
突然の左ジャブに面食らった鷹村さんの顔に3連発のジャブが決まり、ホーク選手の右ストレートが鷹村さんの顔面にめり込み、キャンバスに殴り倒す
レフェリーがカウントを始める
ニュートラルコーナーに戻ったホーク選手はミゲルトレーナーに左腕を向け、ふたりは笑った
「立てぇ!鷹村ぁ!」と鴨川会長が叫ぶ
この土壇場でボクシングの基本を使った
9カウントで鷹村さんが立ち上がる
ボックスの掛け声が聴こえる
左ジャブの銃撃戦が始まる。素早すぎる左ジャブの速射砲が肩口や耳、顔の近くを切り裂き、鴨川会長の教えた左の技術が世界チャンピオンとしのぎを削る
野性と科学の融合の融合した姿
「ボクサーの理想像」と近くに座っていた伊達さんがそうつぶやき、続けるように「この土壇場でお互いに急成長していやがる。……ミックスアップだ」と、初めて聞く言葉を言い切った
ゴングが鳴り
レフェリーが割り込む
インターバル
まだまだ鷹村さんもホーク選手も戦う
更に強くなって、更に速くなって
鷹村さんも
ホーク選手も
どんどんボクサーの純度を高めていく
セコンドアウトのアナウンス
二人は立って構えた
5R
ゴングが鳴る
鷹村さんとホーク選手の防御はスウェイバックとヘッドスリップ以外に存在しない超至近距離のパンチの応酬の均衡は崩れず、更にお互いを強くする
ホーク選手の右フックをダッキングでかわし、踏み込んだ鷹村さんは突き上げ型の左フック
私のグランパス・キャノンをホーク選手のストマックにめり込ませ、がら空きの左脇腹に幕之内君と山田君のリバーブローが決まり、負けじと放たれるホーク選手の右ストレートに木村さんのオーバーハンドのドラゴンフィッシュ・ブローがカウンターで決まり
ホーク選手がのけ反ったところに青木さんの飛ばない2連続のアッパー、ツノガエルパンチがアゴを突き上げ、ホーク選手がたたらを踏み、後ろに下がったところに右拳を内側にねじり込み、伊達さんのコークスクリュー・ブローがめり込み
ホーク選手はダウンし
レフェリーが腕を振る
ゴングが鳴り響く
19戦19勝19KO
5R2分21秒
WBC世界ジュニアミドル級王座、獲得!
PS
鷹村さんの勝利者インタビュー
「俺様的には当たり前の事なのだが、皆さんがこんなに喜んでくれるとは、少々戸惑っている」と珍しい困った顔の鷹村さんに「超かっこいいぞー!」「英雄が下向いちゃさまんなんねえぞ!」と言われ
鷹村さんが驚き、リングを見上げる椎名に気付く
「こんな目出度い日に言うのもアレだが……いや、今日だから言わせてくれ」
ゆっくりと鷹村さんがマイクを強く握った
「椎名、お前が好きだ。結婚しよう」
そう言って鷹村さんがリング下の椎名を引っ張りあげ、抱き締めているのが見えた
平成☆年12月18日
翌日
ニュースは世界チャンピオン就任と公開プロポーズに対する事で盛り上がっていた
話題性の尽きない人だなと思いながら鷹村さんとホーク選手に「ベホマラー」と「リベホイミ」を重複させすぎて、カロリーを消費しすぎた
PS
椎名が指輪を着けていた
すごく似合っていた
了くん、私もほしいぞ
平成☆年12月21日
鷹村さんが鴨川ジムにやって来た
鷹村さん銅像もあったけど、お父さんが欲しがっていたので買った
いい文鎮になるらしい
PS
青木さんは2日ぐらい見ていない
かわいそうに
平成☆年12月22日
鷹村さんは満足そうにマッサージを受け、今日も「ベホマラー」をかけたから、大丈夫だろうけど
ずっと使っている
PS
伊達さんが沖田さんとまた
鷹村さんに父親のいろはを教えにきた