「はじめの一歩」に女の私が転生する需要はあるの?一応、需要はあるらしい   作:SUN'S

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視点は、ブライアン・ホーク


黄金の鷹は再起するらしい

オレは日本(ジャパン)で敗北を喫した。

 

世界の王者として君臨し、アメリカで王様の椅子に座り、酔しれていたオレにとって、あの一戦は死ぬよりも惨めで屈辱に勝るモノは無かった。

 

だが、4ラウンド目だ。

 

ミゲルがオレに左ジャブを教えた。あの土壇場でとち狂ったのかと思えばマモル・タカムラにオレの拳は確実に届いていた。

 

三発のジャブ、腰をひねって右ストレートを打った。腕力でねじ伏せていた頃とは違う、今まで戦ってきたオレよりスピードのあるヤツもオレよりパワーのあるヤツも使っていた。

 

左ジャブと、右ストレート。

 

身体の芯に響く衝撃をオレは確かに感じ取り、ダウンしたアイツを見下ろすよりもミゲルに初めて教わったボクシングの基本に確信を得ていた。

 

オレの拳は強い。が、オレの拳は弱かった。

 

自分の強さに酔しれていた。二度と負けるわけにはいかない。国辱の面汚しと罵られようが、チンピラ上がりのケンカ屋と言われようが関係ない。

 

オレは、ミゲルにボクシングを教わる。

 

ちと遅いかも知れねえが、これからのオレのボクシングには殺人許可証(マーダーライセンス)はもう必要ない。

 

「ハアッ、ハアッ!!」

 

トレーニングウェアを着込み、濡らしたマスクをつけ、ニューヨークのストリートを走り抜く。今までケンカで鍛えた腕力とタフネスで試合していた。だが、今のままボクシングで生き残る事は出来ねえ!

 

オレの街(マイ・タウン)、二度とオレは負けない。

 

マモル・タカムラに再戦(リベンジ・マッチ)を申し込み、必ず奪われたオレの王冠と玉座は取り返す!

 

「どうだッ、ミゲル!」

 

「全く君には驚かされるよ、新記録だ」

 

「ッシャア!!」

 

ストップウォッチを止めたミゲルの言葉に拳を握り、今まで飲みまくっていたアルコールを抜き、ジムに入ってベンチに座り、ミゲルの用意したフレッシュなサラダとカロリーを抑えたチキンを食う。

 

オレはジュニアミドル級の階級を変更し、現在は世界ミドル級6位をブッ倒してWBC・WBAの世界ランキングに名前を連ねている。

 

デビッド・イーグル

 

リチャード・バイソン

 

コイツらと試合を組み、勝つ。

 

そして、もう一度だ。

 

もう一度、オレはマモル・タカムラと戦う。

 

「ブライアン、プロテインいる?」

 

「ああ、フレーバーは?」

 

「チョコだけど」

 

ボトルを差し出すサツキのオレに対する態度も軟化した。以前は汚物を見る目だったが、今は親しい友人を見るようにトレーニングに口出しし、たまにプロテインを勧めてくるようになった。

 

「サツキ、お前を負かした女とはどうだ」

 

「ハナならクレアに勝ったおかげで、WIBF世界ランキング7位だけど。日本国内のランキングには乗っていない、まだB級ボクサーよ」

 

オレの鳩尾(ストマック)をぶち抜くパンチの女が、未だにランキングすら乗っていない。いや、元々日本はボクシング後進国だった。

 

あのカモガワって男の手腕が優れているのだ。

 

「雑談は終わったかね。ホーク、サツキ、私はとある人間を勧誘に向かうつもりだ。来るかね?」

 

「いや、止めておくわ」

 

「オレも止めておく。今はミドル級2位のヤツを倒すトレーニングに集中する。コイツに勝てばまた世界タイトルマッチだ。ミゲル、また頼むぜ」

 

「ああ、任せたまえ」

 

オレは、二度と負けるわけにはない。

 

この拳にも、確かな重みが出来たからな。

 

 

 

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