「はじめの一歩」に女の私が転生する需要はあるの?一応、需要はあるらしい 作:SUN'S
試合後の鈍った身体を解すために軽くロードワークをこなして、ジムのドアを開けると珍しくパーカーとスウェットズボンを履いた渚が立っていた。
コイツも試合が終わったばかりだが、俺様の栄光を広める鷹村銅像の販売を請け負ってくれた。器用にパソコンを使って鴨川ジムの公式サイトというものを設立し、内装や器具、トレーナーや俺様達の簡単なプロフィールも載っている。
今時の若いのはパソコンで情報交換し、現地を散策したりするそうだ。しかし、俺様の事を讃えるサイトが幾つも存在しているとは知らなかったぜ。
「鷹村さん銅像、売れましたよ。そろそろ青木さんも許してあげたり……」
「いくら椎名の親友である貴様の頼みでもその願いは聞くことは出来ん!俺様の左腕を外しておいて、隠蔽しようとした罪は許せん!!」
そう話しながら渚の差し出す分厚い茶封筒を受け取って、何十枚か抜いて八木ちゃんに渡す。地下の部品が壊れたとか言っていたからな。
この俺様が
「しかし、お前も成長したなあ」
「そう?」
「今年でもう成人したろう?背が伸びてるぞ」
「えー、背が伸びるのは困るよ」
サツキ・アンダーソンとエキシビションマッチしたとき、確かに適正階級はフライ級だった。だが、コイツは俺様と同じく「何でも出来るタイプ」のボクサーだ。
普段は足を止めて待って打つが、アウトボクシングも出来るスイッチヒッター。まあ、そのおかげか。鴨川ジムのプロボクサーはサウスポー対策は万全。
フリッカージャブを容易くマスターしてしまった俺様のおかげで変則的なブローにも対応できる度胸は身に付いている。
しかし、また胸がデカくなってやがるな。
間柴のヤツは渚のコレであんなことやこんなことやそんなことをしてもらっているのだろう。宮田も一歩もさっさと告白しておけば良いものを────。
「鷹村さん、スパーリングしましょう!」
「ムッ。もう来たのか剛夫!」
コイツ、熊野剛夫は板垣と一緒に鴨川ジムにやって来たホモだ。一歩の周りはゲロ道や板垣、宮田とネットリとしたホモの友達───略して、ホモ達の巣窟と化していやがる。
俺様は妻帯者だぞ。
誰がホモの沼に堕ちるか!
「守さん、スパーするの?」
「椎名も見ていくか」
「うん。胎教になるかも」
「音楽の代わりだね。将来は無敗のボクサーになるのかしら?」
渚の呟きに笑みを浮かべる。
リングに上がって、剛夫を見据える。
「俺様と椎名の子供だ。無理に強いる気はねえが。もしも、なりたいものがボクサーになったら、そのときはソイツの自由だ!!」