「はじめの一歩」に女の私が転生する需要はあるの?一応、需要はあるらしい 作:SUN'S
平成◇年8月20日
調整を済ませて、鴨川ジムの地下リングに立つ
スパーリングは減量しなくて良かったと安心しつつ、うっすらと腹筋の厚みの出来た、くびれたボデェーを見据え、ボディーブローを見せる
芦田選手の顔は引き釣り、彼女の後ろに控えるアメリカ人のセコンドは何かを伝えている。英語は分からないけど、3ラウンドもある。
1R
ゴングの音を聞き、振り返ると目の前に迫り来ていた芦田選手のワンツーを顔面に受け、ヘッドギア越しに顔に突き刺さる痛みに頭を揺らす
「バカ野郎!前を向け!」
鷹村さんの言葉にガードを上げ、右ストレートを受け止める。こ、この野郎。意趣返しみたいに軽やかに動きやがって…!
インファイトで攻める
「シッ!」と息を止めて、左ジャブを打って右側に回り込もうとする芦田選手に右ジャブを打つ。ストレートを警戒して、油断してたろうめぇ!
貴様の肋骨はサウスポーで奪ったのだ
ビックリする芦田選手に踏み込み、ボディーを警戒してガードを下げる彼女の顔面にワンツーを叩く
苦し紛れに放たれた右のフックを避けるとき、オーソドックスに足を入れ換え、左のボディーブローをめり込ませ
追撃の瞬間にゴングが鳴った
インターバル
「驚いたよ、いきなりサウスポーなんてさ」
「いや、幕之内君の練習の時もしてましたよ?」と八木さんに話しながら、ショットガン対策の時に使った左右のラッシュを教えると「つくづくボクサーとしては生まれる性別を間違えとるな」と鷹村さんに言われた
いや、前世から女ですけど
2R
サウスポーで構えると芦田選手は警戒し、足を使って攻めてくる。けど、宮田君や木村さんよりも見えやすく、パーリングで受け、間合いを縮める
「(お前の肋骨を寄越せ!)」
肩をぶつけるほどに密着し、芦田選手が下がる方に足を組み替え、右のボディーブローをめり込ませ、「うぎっ」と呻く声が聴こえた
ミシィ…!と右こぶしが突き刺さる
ガードを固めるボディーに連続してボディーブローを打っていき、くの字に曲がる身体をアッパーで突き上げず、座り込んだ芦田選手の傍を離れる
ニュートラルコーナーにもたれ掛かる
「す、すごいよ!今のボディーへのラッシュ、速水さんに使おうと思っていたヤツだ!」と、幕之内君は興奮気味に言ってくれた
テン・カウント
試合は終わった
PS
「やっぱり、アメリカに行きましょう」と言ってくる芦田選手は、マゾなのかも知れない
ボクサーって、変態ばっかりなのかしら
平成◇年8月22日
鴨川ジムに行くと藤井さんがいた
どうやら2日前の地下リングでのスパーリングを聞き付け……いや、芦田選手が伝えて「日本女子ボクシングを作りましょう!」と伝えているらしい
しつこい女は嫌われるわよ
「日頃の妬み!」と突撃してきた友達のボディーに、トリプルを叩き込んでおいた。「女の子と思っていたが、随分と足腰が仕上がっているな」と藤井さんに言われ、サッと手で隠した
「えっち」と言えば友達も「JKの足をガン見はだめよ」とか「大根みてえだろ!」とか言った
お前は、あとで人間サンドバッグだ
PS
友達、鷹村さんと付き合えたらしい
大丈夫なのだろうか
平成◇年8月27日
久美ちゃんと勉強する
間柴さんに「次の石川鉄矢選手との試合、がんばってくださいね」と伝えたら「……おう」とだけ返事が返ってきたけど
ちょっと、うれしそう?
久美ちゃんも「もっと勉強会増やせる?」と言っているし、お邪魔していいのかな
PS
藤井さんに写真の使用許可を聞かれた
変じゃないなら、構わないけど