「はじめの一歩」に女の私が転生する需要はあるの?一応、需要はあるらしい 作:SUN'S
平成□年9月1日
温水プールでスクワットを繰り返して、しなやかな下半身を手に入れた幕之内君の話を聞きながら、友達のパンチをミットで受け、試合に向けた調整を見る
八木さんは問題ないって言っている
ミニフライ級
相手の選手も新人だ。私は芦田選手と戦っていたおかげで緊張しなかったから速攻を決めたけど、友達は緊張してしまうかも知れない
「守さん、出来るかしら」と不安になる友達に「お前は問題なく戦える。この俺様とフルラウンド以上に渡り合えるからな!」と宣言した
フルラウンドもスパーリングしたのかとビックリしていると鴨川会長の杖が鷹村さんの頭を捉えた。多分、良くない言葉だったんだろうね
幕之内君の新兵器、ガゼルパンチを聞く
ダッキングと同時に打つパンチなのね
「青木さんのカエルパンチとどっち強いの?」と木村さんのストレッチを手伝っていた友達の呟きに面食らった面々が二人を見比べた
PS
ガゼルパンチはカエルパンチに勝った
アゴに打ったわね、見事に
平成□年月5日
私の友達の試合だ
東谷椎名対水島やよい
ミニフライ級、どっちも新人だ
そして、なぜか解説席に座る鷹村さんに「どちらも新人。それも女子ですが、チャンピオンはどう動くと思いますか」と質問する実況
「そうさな。俺様の隣に立つなら最低でも無敗のまま日本チャンピオンぐらいなるだろ」と鷹村さんはわざとらしく煽るように言った
1R
ゴングが鳴る
二人とも緊張しているけど
鷹村さんが近くにいる友達は深く深呼吸し、鋭く速い左ジャブを打って打って打つ。3連続のジャブに驚き、水島選手がビビって下がる
下がった水島選手の顔に友達の、椎名の右ストレートが深々と突き刺さって鼻血を吹く水島選手も右フックを打つ。バックステップしてフックを回避し、椎名はワンツーをガードの上から叩き込み、退ける
鷹村さんが近くにいるおかげだね
私のパンチを避けたりしているし、あのパンチは見ているんだろうと考えていたけど。高校でジムに来てから、椎名はずっと鷹村さんだけを見ていた
だから、鷹村さんの早さになれているんだ
軽やかなステップで踏み込み、フックに見える下からのパンチが水島選手のボディーを突き上げた
「ホウ。ショベルフックとは珍しいのう」と浜トレーナーがいつの間にか隣にいた
ショベルフック……
テン・カウント。椎名が勝った
PS
感極まったのか
椎名が鷹村さんに飛び付いてキスしてた
うぅ、私までドキドキしちゃってる
平成□年9月6日
昨日、打たれた回数は少ないけど
「ホイミ」と「リベホイミ」をかけて、鷹村さんに「ちゃんと送り届けてあげてくださいね」とお願いだけはしておいたはずなんだけど
妙に鷹村さんは満足している
なぜ?
そんなことを疑問に思ったりもするけど。ガゼルパンチを確実に当てるために、ダッシュを繰り返す幕之内君と指導する鴨川会長を見送る
ヴォルグ・ザンギエフ。アマチュア世界王者の肩書きは伊達ではなく、アウトボクシングもインファイトもこなしていた
PS
浜トレーナーから電話が来た
私のボディーブローを真田先輩に使って、ボディーの耐久力を確かめ、酸欠からの回復を調べたいらしい
平成□年9月7日
大学の帰りに木下ジムに来た
鴨川会長の連絡を受け取っているらしく、真田先輩も既にアップを終えている。私も更衣室を借りて、運動着に着替え、バンテージを巻き、ストレッチを始める
浜トレーナーに「お主、慎みはないのか。全く鴨川は自分の孫娘に」とブツブツと勘違いして、鴨川会長の文句を言い始めるので「あの、私は会長の孫じゃないですよ?」と返したら困惑していた
ボディーブローのフォームがそっくりらしい
グローブを嵌めて、リングに立つ
ヘッドギアを着けていない真田先輩を見ながら「オーソドックスとサウスポー、どっちですか?」と聞いたら「ああ、そうか。スイッチヒッターだったね」と言葉が返ってきた
まずは、オーソドックスで構える
左ジャブを避けて、進んだ瞬間、私の頭は真横に弾けた18オンスの衝撃が響く
これだ、この軌道の曲がるパンチ
前の防衛戦で見たやつだ
ガードを固めず、ジャブをミットで受けるようにパーリングし、間合いを詰め、左ボディーブローをブロックする右腕ごと突き上げ、動きを止めた真田先輩の鳩尾に二度目のボディーブローをめり込ませる
苦悶に歪む顔、後ろにさがる
PS
「ありがとう。参考になったよ」と言われた
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