「はじめの一歩」に女の私が転生する需要はあるの?一応、需要はあるらしい 作:SUN'S
平成☆年4月20日
後楽園ホール
日本ジュニアライト級タイトルマッチ
木村達也対寺田軍平
寺田選手は20戦14勝6敗14KO
王座2度防衛中
典型的なインファイターであり、得意技は左右のフック。6敗の内の4敗はアウトボクシングに徹した選手に打たれた末の判定負け
木村さんの勝率は七割だと鷹村さんは言っていた。インファイトに持ち込まれて、負ける可能性を考えれば妥当の割合だと私は思うけど
青コーナーを登り、木村さんが立つ
赤コーナーを登り、寺田選手が立つ
1R
ゴングが鳴る
山の合宿のおかげで木村さんのフットワークは軽快さを増して、素早く接近して左ジャブの連打を打ち込み、寺田選手の右のロングフックに左ストレートのカウンターを決め、バックステップする
ガクンと膝の落ちる寺田選手だが、両腕を固めて突進し、軽やかに動き回る木村さんを追い回す。
けど、中量級のフットワークに追い付けず、突進気味に放った左右のフックは木村さんは躱し、ボディーストレートを打つ
兎に角、木村さんは動いて打つ
アウトボクシングの教科書だ。亜依子も感心したような表情で眺めながら、頬は赤く染まっている。見惚れているのが、簡単に分かる顔だ
「よっしゃあ!行け、木村!」とトミ子先輩と一緒に応援する青木さんの声援に答えるように、木村さんのスタンスが変わり、インファイトに打って出る
超至近距離の猛打をショルダーブロックで防ぐ木村さんに「アイツ、フィリー・シェルを覚えやがった?」と鷹村さんが怪訝そうに言う
「フィリー・シェル。L字ガードの事ね、篠田さんのメモによると山の合宿のときね」と、当たり前のように椎名がメモ帳を見ている
「あの構えの利点は肩のブロックだけじゃなくて、木村君のフィニッシュブローに繋ぎやすいのもあるわ。L字からボディーに行きやすい」
その言葉通りに木村さんはL字を引き、腰のひねりに合わせて、ボディーブローを繰り出し、寺田選手の左フックをスウェイとウィービングで避け、2発目、3発目のボディーブローをめり込ませていく
レフェリーが割り込み、1ラウンドが終わる
インターバル
被弾していないのにひどい汗をかく木村さんの身体を拭き、篠田さんが指示を出している
亜依子は「達也、かっこいい」しか言わない
セコンドアウトのアナウンス
マウスピースを噛み、木村さんが構える
2R
ゴングが鳴る
幕之内君の様に両腕を構えて、ウィービングを始める寺田選手に「先輩に似てる。けど、重厚感があるような」と山田君のつぶやく
「当たり前だ。寺田はジュニアミドル級の体格をとっくに越えているんだよ。見たところ、適性はウェルター級だろうぜ」と鷹村さんが告げる
だから、あんなに疲労しているんだ
階級を落として試合をしている
鷹村さんと同じだけど
寺田選手の左右のフックに捕まった木村さんはガードを固めるとコーナーに追い込まれ、背中をコーナーポストにめり込ませながら耐えていたそのとき、
寺田選手の頭が突き上がった
左のショートアッパー、続けざまに木村さんの右ストレートが叩き込まれ、寺田選手がたたらを踏み、ガッチリとガードを固めて、踏ん張る
木村さんが踏み込もうとする。が、ラッシュを受けすぎたのか。足が震え、倒れそうになる
20秒が経過し
ズルズルと寺田選手が動き始め、コーナーに背中を預けたまま動けない木村さんはL字ガードを止め、左ジャブを打つ、打つ、打つ
しかし、寺田選手は止まらない
寺田選手のボディーブローが木村さんのボディーにめり込み、マウスピースを吐き出しかけた木村さんが歯を噛み締め、ラッシュを繰り出す
ボディーを打ち合う
息切れを起こした方が負ける
木村さんのストマック・ボディーブローが決まり、先に顔の上がった寺田選手の頭に龍魚が食らい付き、彼の巨体をキャンバスに叩き伏せる
ニュートラルコーナーに移動する木村さんの後ろで、片腕をキャンバスに押し付け、立ち上がる寺田選手の目はまだ生きている
4カウントで立ち上がり、ゴングが鳴る
インターバル
木村さんの足をマッサージする篠田さんと八木さんに代わって、鴨川会長が身体を動かし、攻めるポイントと相手の状態を教えている
「鷹村さん、勝つわよね?」と亜依子が腕を組み、「勝つ可能性は五分だ。3ラウンド目は相手も形振り構わずに攻めて来る、上手くドラゴンフィッシュが決まれば勝つ」と率直な言葉を話した
セコンドアウトのアナウンス
3R
ゴングが鳴る
鷹村さんの言ったように突撃してきた寺田選手に木村さんは左ジャブを打って勢いを止め、更に左フックを続け、左ストレートを織り混ぜて牽制する
亜依子の「隼」だ
アレは足に力が無くても打てる
出鼻をくじき、焦れったくて右フックを打ってきた寺田選手の顔面に左ストレートがめり込み、カウンターを決めると、寺田選手がたたらを踏み
木村さんが攻める
身体を押し付けるように張り付き、左ボディーを執着的に狙い、ガードを固めさせたところに、右のオーバーハンド・ブローの龍魚が食らい付く
だが、寺田選手は倒れず、身体をくの字に曲げながら踏ん張っている
「貴様の拳は右だけかァ!!突き上げろ!!」
鷹村さんの言葉に呼応する
二匹目の龍魚が、真下から駆け昇る。左のアッパーカットが寺田選手の頭を叩き上げ、仰向けに倒し、ダウンを奪った
カウントが、進む
テン・カウント
ゴングが鳴り響く
15戦11勝3敗1分10KO
3R1分51秒
日本ジュニアライト級王座、獲得!
PS
鴨川ジムに三人目のチャンピオンが生まれた
亜依子はガチ泣きし、服がベタベタになる
けど、良かったぜ、へけっ
平成☆年4月23日
鴨川ジムに日本王座のベルトが並んだ
「やったな、俺達」
「ああ、4年目でついにな!」
嬉しそうに肩を組み、やって来た篠田さんに抱きついて何度も「ありがとうございます」と繰り返しながら、泣いている木村さんと青木さんに笑顔になる
幕之内君も「僕も頑張らなきゃ!」と山田君と一緒にロードワークに行ってしまった。鷹村さんは「日本タイトルを獲ったわけだが、気を抜くなよ。貴様らもチャンピオンだ」と激励を与える
PS
鴨川会長に呼ばれた
フェザー級に階級変更できたようだ
鷹村さんと同じく5月だ
平成☆年4月25日
山のペンションでお世話してくれた猫田さんが鷹村さんと私のクマやシカを倒すところを椎名のハンディカムで録っていたらしく、テレビに出ていた
一緒に夕御飯を食べていた幕之内君とおばさんと梅沢君が「マジで倒したのか」という視線を感じ、「まあ、銃には負けるから」とだけ答えておいた
PS
鷹村さんに「明日は楽しみにしておけ」という電話を受けた。いったい、なにが?
平成☆年4月26日
鴨川ジムの通過儀礼はクマ殺し!?というキャッチコピーが新聞に乗り、お昼のニュースに鷹村さんと猫田さんが出演していた
学食なのに、居心地が悪い
久美ちゃんとトミ子先輩も「この細腕のどこに?」とか困惑され、真田先輩が来たかと思ったら「君の身体を見せてくれ!」ととんでもないことを言われた
変態はノーサンキューなんだぜ
PS
骨密度も筋肉密度も平均より高いものだった
いや、やめよう
トレーニングのせいだ
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