革命者イブリス 作:とある後
先生はまだか?と血眼になって探しているが、どうにも見つからん。本当にこの年だったのか?各クラスに次期王と次期皇帝と次期盟主が配置される疑似三国志状態。王国は呉ってところか?絶対今年だと思ったんだけどな。やめてよね!先生が居ない世界線なんて!凡人の私がチートなしで未来なんて読めるわけがないじゃないか!
真面目な話、未来とは予測するものではなく備えるものである。おかしなことが起きても対処できるように構えておこう。
それにしても呉かぁ…。一番目立たない脇役じゃん……。しかも主君は末期孫権。正直終わっとる。
いや、表面上はさわやかイケメンやから見た目だけならイメージは孫策なんよ。
孫策……良いよね。太史慈との一騎打ちとか。まあそのくらいしか見どころが無い人でもあるんだが…。
うちの次期陛下も見た目全振りで中身が伴っていない。
戦場で真っ先に突っ込む大将とか舐めてんの?そんな戦い方で勝てるほど世の中甘くないから。……先生が居たら主人公補正でどうにかなるんだろうなぁ。
フェリクスが止めても聞かないらしい。
うちの士官教育なら落第。残念ながら幾ら強くても一兵卒にすらなれません。周りがフォローしないといけない人間なんて厄ネタ以外の何物でもない。
そう言う意味では私も才能ある者を、しっかり取り立てられているわけではないと言える。難しいところだ。
私の考えとしてあるのは、突出した個に常にお任せではいけないということ。その人がいるうちはいいけどね。だからアウレリアを全面に出した布陣は組まない。先陣を切るのは大体マイクラン殿だ。
あいつ基本に忠実だからミスしないんよ。大崩れしない目立たない名将。三国志ネタで言うなら徐晃枠である。
マイクラン殿でなければデオドラ。こいつは搦め手も使える万能型。仕事が溜まり過ぎて軍事に一本化できないのが玉に瑕。
やっぱり指揮官が足りんわ。良い指揮官。どこかに居らん?アウレリアにも頑張ってもらう?一応教育はしているし、本人もやる気があって頑張っている。ただなぁ…指揮能力よりも本人の勘に従った暴れっぷりの方があの子には合ってると思うんだよなぁ…。それこそ平準化してしまったら勿体ない。
後はコンスタンツェとアンジェリカ。この辺りは魔法使いの部隊の指揮をしてもらおう。
工兵隊は私が指揮をするしかなくて…まあうちには父上殿が作ったたくさんの妾とそのお子さんが居るから、そこから適性を見ながら育成かな。工兵部隊の指揮なんて地味なことはアンジェもコンスタンツェもやりたがらない。
魔法が得意で、地味な作業も厭わない人…誰かいるかねぇ…。
コンスタンツェもアンジェも目立ちたがりな側面があって、使う魔法はどれもド派手だ。こいつらも平準化しない方が良い人材だろう。
改めて思うと誰でも替えが聞く人材って実は貴重やねんな。派手に突出してる連中が目立つせいで重要性が薄れるけど、現実世界で組織を回して維持しているのは歯車に徹してくれている人だ。前世では『お前の代わりは幾らでも居る』という殺し文句があったが、それを言ったら組織はおしまいだ。
前世日本みたいな組織を作っちゃいかんね。替えの効く人間だからと粗末に扱うと、史実日本のようにうちの領の発展も終わりだ。
となると次期陛下のような突出した個も採用して、最低限の教育はするべきではある。それはそれとしてアウレリアの教育はやっぱり無しだ。
私が考えた凡人のための平準化プログラムなんて、彼女ほど突出した人間には必要ない。『論理的』なんて枕詞を付けて、偉そうな顔をしたところであの子の直感に適うはずもない。世の中そう言うこの世の論理が通じない非常識な奴もいる。
王子殿下も先生もその中の一人だ。
先生がうちのクラス選ぶんかねぇ…そうなったら正直あまりいい未来は思い描けない気がする。
既にうちは王家から睨まれているし、そこに先生と王子殿下がタッグを組めば、家としては面白いことが無い。
でも、うちのクラスを先生が選んでくれるのが一番楽ではあるのが辛いところ。何故かって?危険人物を近くで見守れるからさ。代わりに王家の言う事をへーこら聞いてなければいけない。
ごめん…。やっぱつれぇわ…。
先生の意思は世界の意思でもある。いや。冗談抜きで。神(ニンテンドー様)が決めた絶対的な法則に逆らうことはできないのだ。
……待てよ?先生と殿下がタッグを組んで私を領主の座から引きずり下ろすというのなら、それはそれでよくないか?
どうせ先生が居るところが勝つ。論理的に考えれば他の貴族たちの反発があるはずだろうが、先生ならどうにかする。そして私は負けた側として大人しく田舎に引きこもれば好きな研究をできる。
ハンネマン先生を引き抜こう!あの人の紋章学おもろいねんな!前世では紋章なんてなかったから新鮮やで!
で、田舎でハンネマン先生と研究をする。
うん。この方針で行こう。先生がどのクラスを選んでもハンネマン先生は引き抜き対象だ。政争で負けるならそれはそれでいい。後は勝手にやってくれ。私が居なくなることで安定するならその方が良いし、世界の意思がそうするのであれば、私にできることはない。意地汚く生き残るだけだ。
という事でハンネマン先生!紋章学学びに来ました!……お?君もか?帝国のリンハルト君だっけ?
紋章良いよね!具体的にどこがって?
私みたいな凡人にはまったく理解できないところさ!
理解できないからこそ面白い!研究の価値がある!
お、良いやん!君!私とめっちゃ波長が合うね!卒業したら私とハンネマン先生とで紋章の研究をしないかい?ダメ?お金ならいっぱいあるよ?ガンガン研究しようぜ!
……何ならもう私貴族を止めてここで教師やろうかな。ハンネマン先生の紋章学の助手をやりたい。
っぱ貴族位なんてゴミだわ。はよ廃嫡して。どうぞ。
何かリンハルト君ギョッとした顔してて草なんだ。
うちが呉だとすると帝国は魏か?となると消去法で同盟が蜀?
皇女殿下は風格とカリスマを感じたし、盟主殿は結構慕われてる感あるもんな。
なぁリンハルト君や。帝国クラスはどうだい?
自由で良い感じ?
ええなぁ。皇女殿下はカリスマ性あるし、ヒューベルト君はかなり気を遣ってくれるでしょ。マジで良い人達だよな。
うちのクラスなんてアレだ。イーーーーーーってなる。意味わからん?だからイーーーーーー!だよ。ならん?リンハルト君?
なんか面倒そうなことを任される時のアレ。分かる!?だよなぁ!あれマジでクソだわ!
えっ?ヒューベルト君ってそんな感じなん?
…そっかぁ…。うちはどうかな。うーん。あれ?そう言えば私、うちのクラスの集まりとか一度も参加してへんわ…。誰がクラスに居るのかもよう知らんで…。
…何ドン引きしてんだよ!?
貴族として流石にどうかと思う?豪胆すぎ?
やかましいわい!学校なんだから好きに学べばええんや!いや知ってるし!?シルヴァンにフェリクスにイングリットにコンスタンツェが居る!
他?……他は知らん!やべぇ……王子様怒ってへんかな?
婚約者は何て言ってるって?……あいつの機嫌が悪かったのはそういうことかな?長い付き合いだけど未だにわからん。王国クラスに配属されながら講義に一度も出てないのはヤバい。え?帝国にも引きこもりがいるからセーフ?マジかよ…。そいつ、やべぇな…。
ああ。そうそう同盟クラスもおもろそうやったで。帝国クラスも良さそうやな。王国クラスは知らん。そっかぁ。まずは自分のクラスから把握せなな。すまん。そしてありがとうやで!てことで講義に行ってくるわ
ーーーーー
「…行っちゃった」
「ふむ。我輩が思っていた人物像とは全く違うようだな」
「先生は知っているんですか?」
「ここに来る者の情報は一通り目を通すのでな」
「どういう人と思っていたんです?」
「よくある成金の嫌な者か、もしくは相当な自信家が来ると思っていたぞ。実際はアレだったわけだが…」
「なるほど」
僕は彼の事を会う前から知っていた。
同じ帝国クラスのヒューベルトが『隙があればイブリス殿の情報を取ってきてほしい』と頼んできたというのが理由の大半だが。
「…実際のところは隙だらけだったわけだよね」
「ほう?」
「ああ。帝国の方針として彼の情報が欲しいと言われていまして」
「それは否定せんよ。学校の教師としてはそれは止めさせるべきなのだろうが、帝国貴族として見ればその判断は正しい。吾輩は見て見ぬふりをするべきだろうな」
「そうしてくれると助かります。…あそこまであけすけだとは思いませんでしたが」
「貴族位は不要か…。相応の覚悟があるようには見えなかったな。本心から思っているのか、果たして」
「うーん。僕としてはかなり親近感を抱いていますけどね」
「それはどういう部分から感じたかね?」
「単純に貴族のいざこざを面倒がっているように見えました。勿論本心からかどうかはわかりませんが、生い立ちを考えればそれも不思議ではないと思います」
「なるほどな…。情報を見るに、かの者の家族に向ける情愛は深そうだ。そこさえ間違えなければ力になってくれそうだとは思うがね」
「はい。これでヒューベルトに良い報告ができる。……目を付けられて面倒なことをせずに済みそうなだけ、イブリスには感謝しないとですね」
「……ここは元帝国貴族として注意するべきか否か悩ましいところだな」
ハンネマン先生と別れて自分のクラスに戻ったら、イブリスともう何人かの王国の生徒がなぜか帝国のクラスで講義をしていた。
…なんで?
――――――
王国のクラスに行こうと思っていたが、今実証中の試作機の調整に夢中になっていたせいで行けんかったわ。すまんな(テヘペロ)
で、引きこもってたら部屋に来たヒューベルト君に領主の仕事について講義してくれと言われた。
いや、私は生徒なんですけど!え?将来領主になる奴ばかりなのに、講義で戦闘に関することばかりやらされて参考にできるものがない?
ままええわ。
つってもあれよ?私だって領主じゃないよ?あ、良いんだ。
とか言ってたらフェリクスとイングリットとシルヴァンも来た。どしたん?話聞こか?
え?殿下が私の顔を見てないから心配してる?今試作機の調整中やからな。ちょっと忙しいんや。来週からは出る!ん?それ先週も言ってた?
………。まあそういうこともあるさ。
で、そのデカい機材は何だって?
へへへ。これこそが私とコンスタンツェ、後アンジェの共同作業でできた新しい発明品!ポケベル(特大)じゃい!
そんなことより部屋を片付けろ?
無理!
そんなことより、いい加減王国のクラスに参加しろって?いや、今行こうとしてたんよ。
ちょい待って!実証試験するから……。おっ!来たな!
ああ、この音はこの機械から鳴っとるんや。で、この画面見てみ!コンスタンツェからのメッセージが……。
………。
ははは。あいつめ!素晴らしいメッセージだな!実験の成功にはぴったりだ!
イングリットさん?何でため息を?
…何?知ってた?何を知ってたん?私にもわかるように説明しなさい!
はぁ?フェリクスまで何で呆れる!シルヴァン!お前なら…お前なら何とか私の弁護を…しない?…友達甲斐のない奴め!
ままええわ。
おーい!コンスタンツェ!大成功だぞ!
何顔を赤くしてんだよ?
成功すると思ってなかった?バッカ野郎!技術は進歩してなんぼなんじゃい!失敗ばかりだったから油断した?言い訳にならんわい!そんなことより見てみ!ちゃんとコンスタンツェが私に送ったメッセージがちゃんと出とるで!『あいしています』だって!最高のタイミングで最高のワードチョイスやな!
って何故逃げる!?
お、ヒューベルト君はいつものククク笑いしとるな。ええやん!
え?その機械欲しいって?
うーん。魔法がある程度使えないと、メッセージ送れないんだけど。今実証試験中だしなぁ…。目標は誰でも使えるようにするのと小型化やね。割とデカくて重いからなぁ…。本当は半導体で作りたかったんだけど、魔法で代用するしかなかったんだよなぁ…。録音機に比べたら本当に難しいわ。技術レベルが二段階くらい上。
録音機って何だって?
以前、コルネリアのくそババアがうちの領地に文句つけて来た時に一言一句を全て記録して、再生できる機械で逃げ場を封じてやったんよ。そしたら反論できなくなってて草。
所詮はババアの浅知恵。大したことないわ。過去の栄光に縋り付くなんてみっともないから早く隠居してくれんかね?
まあ表舞台から消えたら人体実験のモルモットにしてやるけどな(小声)
それにしても、アンジェも居てくれたらもっと早く出来たかもしれん。あいつの理解力と微妙な魔法の発動の巧さがないとなかなか難しい。私とコンスタンツェですら何度も失敗したからね。再現性に問題あるよなぁ…。まあ成功したということは、少なくとも理論上は可能だということが実証できた訳だ。
半歩前進ってところだな。
実はマッマもそういう微妙な魔法の調整が上手いんや。
よく魔法でケーキを作って父上や妾のみんなでパーティーしとるからな。マッマに手伝ってもらうのもありやな。
……ままええわ。
欠陥機やけどヒューベルト君これ要る?
まだまだ改良せな使い物にならんで。再現性の問題をクリアしても、どれだけの距離が空いても通信ができるかと、内容の正確性、後は傍受されないかどうかも問題やねん。
ん?何震えてるん?
これは戦略を根底から変えるだって?
んな大袈裟な。欲しいならあげるけど、ってフェリクス?そんな物を他国にくれてやるな?
…まぁそうやな。すまんな。適正価格でそのうち売るから正式に買ってくれ。
イングリット?そもそも売るなだって?でも売ったら儲かるで?
シルヴァン?加減しろバカ?
加減してたらこんなもの作れないだろ!いい加減にしろ!
…それはそれとして領地経営の講義やな。分かったで。やったるわ!フェリクスも来るんか?ええやん!
イングリットも?
貴方を放置していたら何をするか分からない?婚約者の私が管理しないと?…何でそんなに信用がないんですかねぇ…。
お。シルヴァンも来る?もう本当にお前は良いやつだな!
折角だし、幼馴染揃い踏みで帝国のクラスに乗り込もうやないか!
…あくまで親睦を深めるためですよ?
CSどうなると思う?私は横浜とホークスだと思う