革命者イブリス   作:とある後

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生徒が講義って変じゃない?

さて、領主としての講義を頼まれたんでね。やっていきますよ。

とは言ってもね。私も領主ではないんですけどね。

ああ、まずは領主とは何か定義してみようか?

大丈夫。私もよくわかっていない。みんなで好きに語るで良いんじゃないかな?……本当はここでこういうのを学ぶと思っていたんだけどなぁ……。

まぁ士官学校だもんな。仕方ない……。となるか!

いやいや、ダメでしょ…さすがに。

経営の勉強しないの?それは普通部外秘?えぇ…。

というか。折角、三国の有力者が揃っているのに、違う国から来た生徒同士で交流なんてしないんやな。

え?何が不思議かって?

互いに交流していたら個人的な縁ができて戦争なんてしづらいやろ。でも、実際にやっていることは国でクラスを分けて、対抗させる。この士官学校はむしろ違う国同士の争いを誘っているように見えるよ…。

おっと、いらん事を話したね。

取り敢えず経営だ。

…の前に良い領主と悪い領主の定義をしよう。良い領主とは何?逆に悪い領主とは?

 

はい。カスパル君!

悪い領主は税金を取りまくって自分だけ溜め込んでいる?

うーん。ざっくりと行ったね……。じゃあこれが悪い領主としてみようか。何故、この領主は悪いと言える?

ふむ。領民が貧しくなるから。確かに。

しかし、領主の仕事は君主の代わりに徴税を行い、金を中央政府に決められた額を送ることだ。それを超える分を溜め込むだけで悪と言えるかな?

はい。フェルディナント君!

溜め込むのはよくないから使おう。そうだね。じゃあ何に使う?うん。分からない?いーのいーの。私にも分からん。というか正解なんてないんだと思う。

じゃあお前はどうしたのかって?フェリクスなら知ってるでしょ。ああ。だから聞いたんだ。

そう。私がまずやったのは農業改革。とはいえ王国領にはよくあることだけど、寒い場所では作物が育たない。だから寒いところでも育つ種を選別して育て、後は土に栄養を与えた。そのための魔法がこれ。

アナリシスだね。え?知らない?めっちゃ便利よ。ガラテア家でも使われてるし。え?言うな?

まあ私が口で説明したところですぐに真似できるもんでもないし。帝国は豊かだからへーきへーき。

で、農業の生産額が増えるそうなると税を取り立てたくなるわけだ。もちろん取るものは取る。だけど、まずは飢えないこと。これからだよね。

お、君はドロテアちゃんかな?

良い領主の定義が分かった?何?

領民を飢えさせないこと?

うん。正解。少なくとも私はそうだと思うよ。

まずは民衆を飢えさせないのが底堅い治世の実現だと思う。ガラテア家なんかが特に上手く実践できていますね。広い平地のおかげで、農産物の生産高はもううちを超えているよね?

え?何で知っているのかって?そらフェルミ推定をしたからよ。このくらい前世では普通ですよ?

抜かれて悔しくないのかって?

全然?イングリットは俺の嫁だし。嫁の領地で良いものが取れるのは良い事ですよ。このままの勢いで色々と研究していきたいよね。

だめ?私はすぐやり過ぎる?すまんね。性分だからさ。

話を戻して、勿論本当の意味で正解はない。私が勝手にそう思っているだけだ。違うと思ったら違うと言ってくれて良い。それで私も学べるからね。

それで、どう?ああ。なるほど、良い領主の定義が決まったね。

 

まずは民を飢えさせない。そうしないと戦う兵士の食べ物もない。つまり戦えないということになる。

これは領主をやっている父上の仕事を手伝い始めて気が付いたことさ。

そんなことを小さな頃から考えた上で、やっていたのかって?

違う違う。私はそもそもが農家の子供でね。最初は母親や村の人たちが豊かに、少なくとも飢え死にしなければ良いなと思って始めたんだ。別に領地のためなんて考えたこともない。

食べ物ができたら次は衣類だ。王国は寒いから着る物が大事でね。動物性の毛皮に植物性の布。寒さを防ぐにはなんでも作るんだ。

最終的には鶏をたくさん飼ってその羽毛を布で包むと暖かくなることがわかったから、次にやったことは養鶏だ。…本当はアヒルとかが欲しい。数が足りんよ数が!

とにかく、そうしているうちに男爵家に呼ばれて、土いじりをしているうちに領地が立ち直った。そんなところだね。

全てが成り行きだ。

思いついたことはなんでもやる。そうしないと王国という土地は人が死ぬんだ。金が余れば寒くても育つ作物の種を買う。そのためには遠くから来る商人に会う必要がある。

となると街道の整備は絶対に必要だ。

規模が大きくなればなるほど街道の守備に人が必要で、だけど、そうすれば商人は遠くからでもやってくる。

ダスカー人も沢山呼び込んだな。

どうした?ヒューベルト君?

ああ。王国では確かに彼らは迫害されている。だけど彼らを見たら殺せとまでは王国の法には定められていない。なら何故殺す必要がある?

むしろ彼らは保護して彼ら独自の産物を作ってもらうべきだ。

そうすることでまた他国の商人がそれを欲しがってやってくる。何故殺す必要がある?何の意味もない。だからうちの領地でダスカー人は迫害さらないし、する意味がない。なぜなら彼らが素晴らしい技術と知恵を持っているとみんなが知っているからだ。

君は?ペトラ君だっけ?

素晴らしい考え方?

褒めてくれて嬉しいけど、そんなに素晴らしい物じゃない。私は私の利益の為に彼らを守っているんだ。利益にならなかったらどうするつもりだったって?助けたさ。当たり前だろう?困難に陥った古くからの友人がいて、そいつが助けを求めている。助けなければ貴族の名折れだ。

お、おう。何かフェルディナント君テンション高いな。

いや、普通に見捨てるのが正解でもあるとは思うよ。何でかって?普通の領地ならダスカー人を受け入れるなんてあり得ないからさ。うちですら住む地域を分けないと問題が起こりかねないからね。他のところだと保護したくてもできないというのが実情だろうね。何せ一般民衆ですら彼らを虐げることを楽しんでいるからさ。

何か理由をつけて彼らから財産をはじめ色々なものを奪っている。

嫌な話だけどね。

まあそれはそれとしてうちは助けるさ。むしろ助けないような薄情者は危機に陥った時に誰も助けてくれない。巡り巡って自分が損をする。

いや、助けても同じか。ダスカー人を救ったら、次は別の人が助けて欲しいと言ってくる。プライデリはそれも助ける。だから王国でも名声があるんだ。だけど、それは力のある者からしたら嬉しくはないだろうね。

それにうちにはたまたま余裕がある。だから助けないという選択肢がなかった。

君は強さを求めているのか。

うん。それ自体は悪くない。フェリクスと一緒だな。何?違う?そうだな。折角だからフェリクスの言う強さとは何かな?

私は知っているつもりだけど、折角だしみんなが居る前で話しても良いんじゃない?

強さとは戦いだけではない、そこに至るまでの過程も含めて強さであって、戦闘での強さはただの一面に過ぎない。だから本当の強さをここで学びたい。

っかぁ~。良いこと言うね!さすが王国が誇る次世代のエースだよ。

ペトラ君さ。表面的な強さだけでは足りないのよ。勿論不要とまではいわない。でも戦争って負ければ死ぬだろ?だから負けないために死ぬほど準備するんだよ。

……やっぱ前世の偉人の言葉ってええもんやな!

 

さて、もうこの辺で良いかな?自分のことを語るのは恥ずかしいから、あまりしたくないんだ。

お、皇女殿下だね。あなたは綺麗事が通用すると思っているのかって?思いませんよ。結局のところ、今の理屈も自分が悪者になりたくないからやっているに過ぎないわけで。

寧ろ逆の人間が王国には多かった。いや、理性でやっている連中も居たかもしれないけれども、理性っていうのは感情があって初めて歯止めがかかるものだと思いますよ。

私はそもそも、最初から迫害なんてしたくなかった。利益の面から考えても、するだけ無駄だと思っていたからね。

一方で、そう考えなかった人たちもいる。彼らの中には、ダスカー人を憎む感情が先にあって、それを正当化するために理屈を組み立てた人もいたんだと思います。

人間は理屈だけで動くわけじゃない。何かを憎んでしまえば、それを憎む理由なんて後からいくらでも作れてしまう。

結局のところ、私も虐殺を働いた人たちも、同じ人間なんですよ。違うのは、何を感じ、何を選び、その結果として何をしたか。それだけなのかもしれませんね。

皆さんのためになったのなら嬉しいです。質疑応答は適宜受け付けております。

 

……お。リンハルト君じゃん。

え?何真面目くさって?や、私は常に真面目ですよ?あ、そうだ。リンハルト君も私の魔道具研究に参加しない?

する?ええやん!ヒューベルト君も?仲間がどんどん増えて嬉しいで!

シルヴァン?さすがに出しちゃいけない部分は俺が見張っておくかって?いやいや、私の事を何だと思っているのさ。

清く正しく美しいプライデリですよ?

イングリットさん?美し以外何一つ満たしちゃいないって?まあこの魔道具の理論の美しさを理解するとはさすが俺の嫁やな!え?違う?そう言う事じゃない?

フェリクスも?お前はやり過ぎるから監視をするって?何で!?

 

 

で、終わったら王国クラスに参加させられましたとさ。

で、殿下!?ってそりゃいるよね。

何?なかなか出てこないから心配した?

あ、あ、あっ、その…すみません…殿下が心配するようなことではないので…。何をしてたかって?

ああ!イングリット!言わないで!部屋にコンスタンツェと2人きりでこもって遊んでた!?悪意がある!間違ってないけど!

イングリッドは幼馴染だから粗末な扱いをするな?

いや、それはもう。こんなに綺麗な嫁さんをもらえて幸せっす!ゾス!

コンスタンツェとは恋愛関係とかそんなんじゃなくてですね。研究というか遊びというか…え?なんか変なこと言った?

あなたは?メルセデスさん?

王都の魔法学園で魔法をならっていた?ってコンスタンツェさん?お姉様…だと…

マジかー。あのコンスタンツェがここまで懐いてんのかぁー。え?お姉様をプライデリで雇いましょうだって?まあ良いけど、メルセデスさんはそれで良いの?

アン?あ、そちらのお嬢さんのこと?あ、アネットちゃんって言うんだ。どうもよろしくー。

え?女と見るやすぐに手を出すで有名?いやいや、シルヴァンじゃあるまいし…

ある意味で俺より酷いって?シルヴァンより酷いは無いよ。私は女遊びなんてしたことないからね。妹とイングリット一筋さ!それは一筋では無い?いや、家族だしノーカンでしょ。

メルセデスさん?コンスタンツェを捨てるのかって?いや捨てないよ?だけど、自分から出ていくのは止められないからなぁー。御家再興したいんだって。仕方ないよね。でも、新しく家を起こしてくれたら色々産物ができて販路にもなるだろうし、だけど共同研究できないのは辛いなぁー。

一生一緒にいるなら考えてくれる?マジで!?居るよ!コンスタンツェと一緒に居る!

メルセデスさんや。アネットちゃんに何を言っているんですか?あんな男に引っかかっちゃダメ?

私は悪い男じゃありません!別に普通の一般農民です!

それはおかしい?殿下がそれを言いますか!?

え?とりあえず自己紹介しろ?

えっと。イブリス=プライデリです。好きなものは研究と料理。嫌いなものは戦争と貧困。最近ハマっているものは芸術。よろしくお願いします。

こんなところで、ままええか。

何だ?君デカいなぁ…ワイ(189cm)よりもデカい人はなかなかおらんで…ドゥドゥー君って言うの?よろしく。

同胞を救ってくれてありがとう?まあ良いってことよ。困った時はお互い様だ。私が困った時に君が助けてくれ。と言うかうちもバカ兄貴がダスカーでいっぱいやらかしてくれたからね。

言うほど救えてないで。それに見返りもあるからな。

何かって?ダスカーの珍しい品物とか(以下略)

それに私、人殺しが苦手なんだよ。血を見るのも嫌。貴族に向いてないよなと思う。

え?人を殺す時はどうしているのかって?

えぇっ……殿下、流石にその質問はダメやで…。アネットちゃんなんてドン引きしとるやん…。

まああまり血が出ずに済むように、血の出ない殺し方をしとるで。だからうちの戦いでは殺すよりもできれば敵は無力化が基本だ。

デオドラにマイクラン殿には無理させてるし、アウレリアは……まああいつならそんじょそこらの敵は軽く無力化できるからええか。

代わりに支援は厚くしているよ。

具体的にどんなって?

デオドラやマイクラン殿、後はアウレリアやコンスタンツェとかマッマ、それとアンジェや父上殿と側室や妾の皆様には不意打ちを防ぐ魔道具を与えているね。勿論、バカ兄貴とその母親にもだ。

幾ら政敵とは言え、そこは区別せんよ。

まあ義母殿はともかく、義兄殿は付けてないみたいだけどね。

要らないなら傍仕えの人にでもくれてやってくれよ。道具は使ってなんぼだぞ…。

どういう効果かって?

魔法や弓矢での遠距離からの攻撃を感知して、オートで防御したり、食べ物に毒物が含まれていると反応する魔道具だね。

後は急激に生命力が低下したら、それを自動で補う回復術式も仕込んである。即死しなければどうにかなるはず。

本当は兵士全体に与えたいんだけど、これがなかなか貴重なものが必要だから量産がなぁ…。

ん?フェリクス。どのくらいの兵士に配っているのかって?それは飛び道具を防ぐ簡易版くらいしか配布できていないね。

魔法と弓矢をある程度無効化できるはず。

おい。体を揺らすな。

何だよ。何焦ってんだよ。……そうだな。プライデリの兵士が予備役含めなければ三万くらいだからその四割くらいかな。どうしても精鋭部隊にしか配れなくてさ。何か差をつけてるみたいで感じ悪いよな。

本当は最前線で戦う一兵卒にこそつけて欲しいんだけど、量産性がなぁ…。だから危険な任務が多い奴らには優先的に配備しとるで。

また変なものを作って?

あのさぁ。イングリットにあげたその首飾りにも組み込んでるからね?

あっ!だからイングリットも揺らすな。あ、頭ががが……。ふぅ。お前らは本当に幼馴染だな。

そんなものを何も言わずに渡すなって?いや、でも毎日つけてくれてるやん。そこは嬉しいで。

えーと。確か…見た感じあれだな。弓矢と魔法を一定の距離で感知して、弓矢は魔法で風を操って無効化、魔法は白魔法以外の魔力波を感知して逆位相の波をぶつけて消滅しさせつ、大怪我をしたら自動で回復魔法を発動する白魔法が組み込まれているね。白魔法を弾くと、この魔法が発動しないからさ。この分岐が大変なの……。ねー。コンスタンツェ!めっちゃ大変だったよね?

え?

イングリットに怪我して欲しくないからって必死になってる。イブリス殿は素敵でしたよって?

い、いや、そこはさ。ほら。婚約者だし?まだ結婚してないけど。……イングリット!なんか言ってくれ!顔を赤くするな!締まらないだろうが!

その魔道具は貴重かって?

よくぞ聞いてくれました!コンスタンツェと頑張って開発したんよ。これ。めっちゃ大変だった!魔法発動時にはさ。微弱なビーコン。ああ。どこの地点に魔法を発生させて物理現象を書き換えるかっていう目印みたいなものね。

それが発動するわけやけど、その微弱な魔力を感知して、魔法発動のビーコンを削除するんよ。そうするとどうなるのかって?

魔法を発動させた側は、目印がなくなる。でも発動していない魔法はどこかに現出させないといけない。間に合わなければ?普通に自爆だね。

上手い人ならどこかに魔力を逃がして事なきを得られると思う。理論上は。

出来た奴は見たことないけどね。

代わりにできたとして、撃ち込みたいところに練り上げていた魔法が咄嗟に奪われるようなもんやから、まあもう一度狙い直しからするのは無理やで。

ビーコンなんて知らんって?いや、普通の人間には感じ取れん。私も気づかなかったけど、アウレリアが魔法をやたら躱すからさ。どうやってんのか聞いたら「何か狙われてるのが分かる」って言うのよ。

で、流石に偶然と思えんかったから発動前に何かを感じ取っていると仮定して研究してたら見つけたんや。あいつマジでおかしいよな?人間辞めてるで。

アウレリアって誰?私の可愛い妹やで!兄として夫候補を募集中や!

…外に出すとうちが弱体化するからあまり出したくは無いけどなぁ…。寂しいし。

後さ。それ、貯めた魔力が消えたら使い捨てなんよ。大事にしてな。魔力を貯めるなりして使いまわしたいんやけどな…。やはり量産性と取り回しが問題やな…。

何?シルヴァン。そんな大事なことをこんなところで言うなって?いや、大切な人には死んでほしく無いやん。

まさか俺にもだって?

あげてるよ?後フェリクスにも。

お前らの誕生日にあげた指輪やな。あれは簡易版で小さいから回復魔法が付けられんかったわ。すまんな。

だから揺らすな!そんなとんでもないものをサラッと渡すなだって?いや、だから死んでほしくなかったんだって!

 

―――――

 

その男が自分のクラスに現れたのは新しい年が始まって、少し経ってからだった。

 

「あまり来ることが出来なくて済みませんね」

「まったくだ。今まで何をしていたんだ?」

 

そう答えつつも、俺はこの男の事を思い出していた。

初めて会ったのは、今から五年ほど前か。忌まわしいダスカーの悲劇。こいつはその時死に瀕していた私に治療魔法をかけてくれた男だ。

気が動転してその時は殴ってしまったのを申し訳なく思っているが、そのことを言い出せずにいた。お前にとってはなかったことになっているのか?

国内の政治的な事情からそのような事は聞けずにいた。

この男が叔父をはじめとした、王国の上層部に煙たく思われているのは周知の事実である。

中央を抑えてしまえば後はどうにかなると思っていたようだが、まさか西からこのような者が現れようとは想像もしなかっただろう。

気が付けばプライデリは、王国の統治をしている摂政ですら手に負えない貴族となってしまっていた。

 

「あなたがダスカーの同胞を!……本当に!本当にありがとう!」

「いや、そこまで感謝されるほどのことでは…人として当たり前でしょう?一方的に酷い目に遭わされていたら流石にねぇ…。それにダスカーの人にはお世話になっていますし」

 

あのドゥドゥーが目に涙を浮かべながら男の手を取って感謝の意を示している。

そうだ。

こいつはダスカーの民を保護している。

 

『王子殿下がダスカーの民を保護したのだ。私も保護して何が悪い』

 

王国の口さがない貴族たちはプライデリを詰ったが、こいつは逆にこう言い返したらしい。

 

『王国にはダスカーの民を見たら殺せという法はなかったはずですな?』

 

こいつが作った録音機という物で取られた記録を聞いた時は胸がすく思いだった。

思えば俺は、こいつからたくさんのものを間接的に受け取っている。なのに、俺は何も返せていない。それどころか、こいつの事を見て見ぬふりをしなければならない。

幼馴染のイングリットがグレンの死を乗り越えた。フェリクスは人として成長している。シルヴァンも最近はどこか憑き物が取れたようだ。

俺の幼馴染たちはこいつと関わって人生が好転しているような気がする。

 

『あいつはお前と関わるのは嫌がるだろうよ』

 

フェリクスに会った時にそう言われた。

無理を言って会わせてもらったが、確かに迷惑そうな顔をしていたのを覚えている。

顔に出やすいのは貴族としては失格だぞ。

そうアドバイスしても良かったが、出来なかった。俺の事は誰かが監視しているだろう。これ以上は迷惑がかかる。そう考えるとろくに話すことはできなかった。

いつか、きっといつかこいつに感謝を述べる日が来るだろう。俺はその日を心待ちにするしかできない。

 

イブリス=プライデリ

お前にもっと関われば、俺もイングリット達のように変われるのか?

幼馴染は皆成長した。俺だけが取り残されている。あの忌まわしい出来事があったあの日、あの時、あの場所からずっと。そこから抜け出せないままで居る。最近はまた一段と死んだ者たちの声が喧しい。

何故俺は生きている?生きていて良いのか?

プライデリ。俺は生きていて良いのか?教えてくれ。

お前ならその魔法の道具のように、俺の疑問に答えを出すことができるんだろう?

どうすればお前と腹を割って話せる?どうすればお前のようになれる?

血を見るのが嫌いか。

 

……俺とお前は全く逆の存在だよ。




タイトルがね。適当なんですわ。ピッタリのものが思い浮かばなかった。だから変えるかもしれないし変えないかもしれない
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