革命者イブリス   作:とある後

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何故こんなに脱線するのか分からない

先生はまだか!

 

世の中は表向きは平穏だ。

今日も平和。良い響きである。

これでアガルタとかナバテアとか知らなかったらなぁ…。クロニエ!夜伽をするとか言って夜中に押しかけてきて、私に変な事を教えてんじゃないよ!はぁ…。絶対こいつらラスボスだわ。というかここまで知って何もしないというのはあり得ない。

原作の知識なんて先生が居るくらいしか知らない。しかもその先生の顔も名前も覚えていない。

くぉれは詰みましたかね?でも、先生が来るはずなんだよ。でも居ない。居ないならしゃーない。こっちから探すのは不可能。

嫌だなぁ…。確定していない情報の為に右往左往するの。

どうにもならないから、どんな状況にも対応できるようにするしかない。

多分事が起こるとしたら、今年。そうでないはずがない。何故かって?状況証拠。

3カ国の偉い人が集まるとか、そこしかあり得ない状況。なのに主人公不在。

いや、待て。そもそも先生は主人公だったか?

教師が主人公とか聞いた事ないぞ。GTOとかぬーべーとか…。

後はどんなのがあったっけ?もう覚えていない。

だから覚えているうちに創作物として世に放つんですねぇ!

大丈夫!少なくともこの世界では私が創作主だ!よって著作権問題はクリア。良いね?

イラストの練習をして、マンガを書いて世に出す。

クオリティは前世の漫画家に比べるべくもないが、この世界では立派な先駆者だ。

この後抜かれるんだろうけどね。

いや、むしろ抜いてもらわないと困る!世の創作界隈の発展速度がぁ!私の屍を超えていけ…。その先に…何がある?

イグナーツ君。何が見えた?

これが新しい芸術の形だって?

ははは。仰々しいなぁ。こういうのは好きに楽しむもんだ。だから君も楽しむんだよぉ!オラァッ!喰らえ!昭和から令和にかけて進化した文化先進国の力を!思い知れっ!

そう言えばレオニーちゃんとマリアンヌちゃんも来てるんやな。あの二人もこういうの興味あるもんなんか?

ままええわ。

 

音楽祭は三か月に一回行われる。今回は私のわがままで日程を一週間ほど早めてもらった形だ。

いや、士官学校って家に帰れないもんと思ってたからさ。今年は無理やねと勝手に思っていた次第。でも飛行船も出来たし、良いかなと。重力を魔法で扱えるから専用の係留所みたいなのも要らない。地面に直置きできる。便利!

クロニエのおかげという事を除けばな!

はー。マジでクロニエ何なん?地味に使えるの。いや、別に地味でもなかったわ。派手に使える。もっと褒めろって?はいはい。すごいすごい。

うちの領地で飛行船運用できるのって闇魔法を教えてくれたクロニエのおかげなんよな。地味に。

これで私も黒棺が使える…。良いよね…黒棺…。男の浪漫だよ。鏡花水月は無理ですねぇ…。相手の五感を支配…。うーん。無理っぽい。

えっ?そんな変な女を褒めずに私を褒めろ?

アウレリアさん?人前で抱きつくのはやめようね。私たち兄妹だから流石にまずいって。手遅れ?結婚は?しない?そっかぁ…。

 

とりあえずイグナーツ君とプライデリ領にある美術館を巡る。

西方貴族の討伐の時の恩賞としてもらっておいたやつだ。王国は脳筋ばかりのせいか、こういう美術品よりも土地や金に目が向くらしい。

バカだよなぁ。これらの価値がわからんとは…。

いや、私にもわからんが。

とりあえず脳筋貴族には任せてられんので、うちで保管する事にした。

とりあえず、湿気と太陽光。これらはダメと。

入館料取るけど、私が出すよ。アウレリアも行く?しゃーない。三人分出したるわ。

イグナーツ君は絵画が好き?自分でも絵を描くんだったよね?

良い趣味やん。私はマンガしか描けんからな。芸術的な絵は無理や。これも芸術?うーん。それはなんか抵抗があるというか何というか。

デフォルメされたイラストとかは得意やで。私が前世で積んだ徳のおかげやな。何でもすぐできる才能。これには助けられている。イングリットも連れてくるべきだったかな?

ダメ?あいつは食べることばかり?

アウレリアが辛辣だが、まあ間違ってはいない。イングリットは私がフライドポテトを作ったら一人でほとんど食べるからな。食べ過ぎやて。シルヴァンを引かせるって相当だぞ。

最近は私が作ったラーメンが好きなもよう。アウレリアが割とキレてる。美術館では静かにね。

ちなみにアウレリアも音楽祭に出演する。何なら私もエレキギターを片手に参戦だ。ドロテアさんやマヌエラ先生の歌は私たちがやるようなものとはまた別だろう。というか、音楽祭の出演者はそこら辺の農民だ。楽器なんてそもそもないので、私を初め、教育中の音楽の講師陣が即興で歌に合わせて楽器を弾く。私がいなければどうしたかって?

…どうしたんだろう?考えないようにしよう。

アウレリアは武人の割に歌が上手い。アンジェリカは見た目に反して音痴だ。コンスタンツェは私が弾く曲は少し趣味が合わないらしい。

まあバリバリの貴族ですもんね。あなた。

イングリットは楽しければ何でも良いらしい。

何だろう?コンスタンツェが一番貴族している気がする。

 

イグナーツ君は私の絵画のコレクションに目をキラキラと輝かせている。ついでに私が書いたパク…じゃなくてマンガも同じように目を輝かせながら手に取っていた。

もうプライデリに住むかい?君の実家もここの方が商売しやすいんじゃない?

ああ。でもイリーナちゃん(本物)の実家と競合になるか…。まま。その辺はワイが何とかしたる。どうにかなるやろ。

 

―――――

 

「本当にすごいよ!プライデリ君!」

「君にそう言われるとは…面はゆいな…」

 

掛け値なしに率直な思いを伝える。

それだけプライデリ君の作った美術館という施設は素晴らしいと思った。

貴族から接収した美術品を領民にも公開して、美術に関する興味を持たせるという考えの下での行動だろう。

 

「入館料はこんなに安くて良いのかな…」

「安くないとすそ野が広がらないからな」

「うーん。でもお金が無いと芸術は続けられないから…」

「何。プライデリが責任を持つさ。才あるものはそれだけ貴重なんだ。政は私のような凡人が行うべきで、才能のある人間が煩わされるべきではない」

 

そうは思わないけどなぁ…。それはそれとして、プライデリ領への移動。これはありかもしれない。

ぼくの実家は商家だ。だからこれだけ道が広く整えられていて、安全で、商機もある土地はめったにないとも思う。

 

『本当に盗みが無いんだね!』

『ああ。うちの領地は飢え知らずだ。食べ物があれば、人は盗む理由を少なくとも一つ失う。そして芸術が広がって心が豊かになれば、盗む理由がもう一つ失われる』

『そんな簡単に行くかなぁ…』

『やってみないと分からないさ。それでダメだとしても、文化を底上げする必要は感じている』

『文化の底上げ?』

『そう。例えばプライデリで始まった新しい文化が周辺の領地に広がったとする。そうするとどうなる?』

『…ええっと。どう…なるんだろう?』

『……まさか!』

『お。ヒューベルト殿は気が付いたか。さすがだね』

 

何故か近くに居た帝国のヒューベルト君が愕然としている。僕としては芸術を振興するのは素晴らしいことだと思うけど、それはそれとしてお金の無駄遣いなんじゃないかとも思う。それで身を持ち崩した王侯貴族なんて山ほど居るわけで。

 

『…プライデリの作った文化が他の土地を侵食すれば、他の土地がプライデリを羨む。それらが受け入れられた時、他の地に住まう人々は……プライデリと戦うという発想を持てなくなる…こういうことですかな?』

『そう言う事だよね。教育と同じさ。自分にとって都合の良い事ばかりを教育と名付けて行うのと同じ。そこから学ぶのはプライデリの価値観だ。それが浸透すれば…』

『真の意味でプライデリの敵は居なくなる…!ということですか…』

 

すごいなぁ。そこまで考えているのかぁ。

僕はその程度だったけど、ヒューベルト君としては衝撃だったようだ。うーん。そこまで考えが到る君も凄いと思うけどなぁ…。

 

『とは言え、それも理想論。私としては単純に美術品を見て、領民の心を豊かにしたい。まずはそこからを考えている。文化を争いを無くす道具として使用するには、うちはまだまだ未熟に過ぎるからね』

 

これ以上上があるのか…。でも僕はそれを見てみたいと思う。

 

ーーーーー

 

おかしな人。

今までずっと自分の周りに悪い事が起きれば、自分のせいだと思ってきた。

 

『本当にそうですか?それを証明できるものは何かありますか?』

 

無遠慮な人。だけど、それが嫌ではない。

全てこの身に宿る獣の紋章のせいかと思ってきた。

 

『プライデリ君の紋章は…これは…!?』

『何ですか?言ってください』

『…本当に言ってもいいものなのか…』

『気になるじゃないですか』

『君の紋章は……獣の紋章だ…』

 

ハンネマン先生の言葉に周囲がざわめく。

不吉の象徴と言っても過言ではないその言葉。私にとっては呪いの言葉。不謹慎かもしれないけれど、彼が何と答えるのか気になった。

 

『へぇ。そうなんですね〜』

『…この紋章は曰く付きのものだ。プライデリ君はそうは思わないのか?』

『あー。不吉の象徴でしたっけ?』

『分かっているなら…何故…』

『いや、関係ないですし』

『何と!?』

 

私が悩み、苦しんだ紋章。実家ですらそれを持つ事を士官学校に隠すよう要求した。

それを彼は関係ないと一蹴したのだ。

 

『…ふふっ』

 

ちょっとだけ。面白くなって笑ってしまう。

そうですか。貴方は本当に気にしていないんですね。

 

『この紋章が気に食わないから変えてくれと言えばハンネマン先生が変えてくれるので?』

『いや、吾輩には無理だが…』

『ならどうにもなりません。それに獣の紋章は不吉を齎すのでしたっけ?でも私はこうして生まれ、今生きています。家族に恵まれ、部下にも恵まれ、そして学友にも恵まれています。これほどの幸福がありましょうか?』

『…君はそういう人間だったな…』

 

ハンネマン先生は呆れたように笑いながら言う。

私が生まれてからずっと悩んできたこと。すべての元凶。紋章なんてなければよかったという思い。それら全てが何もかもどうでもよくなるような、彼の言葉の数々。初めて会った時から何も変わらない。

そして『学友にも恵まれた』という言葉。

そうか。自分から動かないと友人なんてできない。彼は常にそうしていた。私はどうだろう?ただ、悩んで、人との関わりを絶っていただけ。行動しなければ何も変わらない。

 

『全く。君は紋章というものを何と思っているのだ…』

『権威付けや箔付けにはちょうどいい、ただのお守りでしょう。……まああまり邪険にするのも獣の紋章とやらが気の毒なので、ありがたく持っておくことにします』

 

だからだろう。貴方が近くに居ると自然と目を向けてしまうのは。

幸いなことに友人と言って良いのだろうか?

それはすぐにできた。

レオニーさん。

引っ込み思案な私とは違って、明るくていつも元気な女性。

 

『あいつまた変なことをしてるらしいぞ!』

『まぁ。一体何でしょうか?』

『分からん。分からんけど行ってみようぜ!』

 

彼女の明るさは周りも明るくする。素晴らしい女性だと思う。

…そんな彼女と『あいつ』で通じるのは私くらいだろうが。

レオニーさんに手を引かれて行った先は、丸くて大きな謎の物体。

 

『おいおい。何だよこいつは!』

『あれ?レオニーさんですか?』

『そうだよ!あんた!これ何処から持ってきたの!?』

 

レオニーさんはプライデリさんの胸元を掴みながら言う。

そんなレオニーさんに対して、少し苦しそうにしながらも、プライデリさんは自慢げに空を指さす。……空?

 

『意味わかんないんだけど!』

『だから、空です』

『空!?飛ぶのか?これが!?』

『……信じられません』

『マリアンヌさんも来たんですね。そうです。飛びます。そうでもしなければ一晩でこんな物をここに置けないでしょう?』

 

それは確かに……。でも…どうやってこんな大きなものが空を…?

 

『空を飛ぶのは明日です。ちょっと急ですが、領地に帰ろうと思いましてね』

『…えっ?』

 

私は思わず声を上げていた。

プライデリさんが帰る?実家に?もう会えないの?

 

『か、帰るってどういうことだよ!?まだ学校は始まったばかりだろ!?』

『いえ、ちょっと帰ってくるだけですよ?』

『ちょっとって…。どのくらいだよ』

『そうですね。10日から12日くらい…ですかね?』

『いやいや。そんなすぐに戻ってこられないだろう!』

『ふふふ!よくぞ聞いてくれました!この飛行船なら半日でプライデリまで行けるんですよ!』

『はぁ!?』

『レオニーさんもマリアンヌさんも私の領地まで行ってみませんか?』

『は、はぁ!?そ、そんな簡単に他国に行けるわけないだろ!』

『そうですね…難しいのでは…?』

『良いでしょう。この程度は簡単だという事を教えてあげましょう!』

 

果たして彼の言ったことは正しかった。

 

「そ、そんな…バカな…プライデリは大陸の端の方だったよな?」

「……そのはず…です」

「どうです?簡単に来れるでしょう?」

 

やっぱりこの人はめちゃくちゃだ。

昼前に出て、多くの士官学校の生徒を乗せてから出発したのに、夜にはもうプライデリだ。

 

「あれ?マリアンヌさん。どうかしましたか?」

「え?」

「いえ、ちょっと笑っているように見えて」

「私が……?」

「ええ」

 

少し呆気に取られて口元を撫でる。そうか。きっとこの人の傍にいると楽しい。何もかもがめちゃくちゃで。それが嫌ではない。常識外れのプライデリさん。

周りを見てみれば夜だというのに明るく、人の出入りが激しい。少し離れたところには修道院を超えるかと言うほどの高さの建物が立っている。

ここがプライデリ…。

 

「今日は遅いですし、皆さん。うちの館に泊まってください。…何か意図せず人が増えたけど、まあ入るでしょう」

 

プライデリさんは気負うことなく王国、帝国、そして私たち同盟の生徒を前に話す。

同じ士官学校に通うとは言え、将来の国を背負う者たちだ。立場があるのにこれだけの人が集まった。

やはり彼はめちゃくちゃで、だからこそ飽きない。

 

「あー。またマリアンヌ笑ってるな」

「そう…でしたか?」

「ああ。だけどさ。そうして笑ってる方が良いよ」

 

レオニーさんがそうやって私に笑顔を返してくれる。

そうか。これが彼の言っていた友達。そして幸福。

考えてみれば私は呪われてなどいなかったのだろう。初めてそんな気持ちになれた。




誤字報告滅茶苦茶助かる。
言い訳ですが、スマホで書いてるせいか誤字が多い。貴族というワードが毎回家族になってて頭に来ますよ!
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