___紅霧異変が解決してから数か月。
木々は紅く色付き、幻想郷に秋が訪れた。
「きのこっのーこーのこげんきのこ♪」
魔理沙は歌いながらキノコ狩りを楽しんでいた。
「オニターケ、クロハツ、カキシメジ♪」
余談ではあるが全部毒である。
「こんだけ採れば十分だな!」
籠いっぱいに入ったキノコを見て、魔理沙は満足気にうなずく。
◇◇◇
博麗神社___
魔理沙はいつものように玄関をあけ居間へ向かう。
「霊夢ーいるかー?」
居間では男と霊夢が茶を啜ってのんびりしていた。
「いらっしゃい、魔理沙」
「今日は何しにきたのよ」
男と霊夢は魔理沙にはいつものように挨拶を交わす。
「じゃじゃーん!今日はキノコ祭りだぜ!」
そう言って魔理沙は籠いっぱいのキノコを霊夢達に見せつける。
「あら、ありがとう魔理沙、これで食費が浮くわ」
霊夢は上機嫌になり、魔理沙からキノコを受け取ると台所へ向かった。
「なぁなぁ、前から思ってたんだが、そんなにお金に困っているのか?」
魔理沙は男に尋ねる。
「いや、別にそういうわけではないんだが......あれだな、貰えるものは貰っとくを極めているというか、どれだけ得をしたかではなくて得をした事実に喜びを感じているというか......まぁそんな感じだ」
実際、霊夢達は異変解決の際に感謝の気持ちとしてそれなりにお布施をもらっているし、更には人里でのトラブルや困り事を解決してはお金を貰う、万事屋的なことも霊夢はしており、お金には困っている状況ではなかった。
「......小さいころ貧困だったとか?」
「そういう話も聞いたことないな......」
そんな話を魔理沙としていると数刻が過ぎていた。
「お待たせ、キノコ鍋よ」
霊夢は熱々の鍋をちゃぶ台に乗せる。
匂いを嗅ぐといかにも秋を感じさせるいい匂いがする。
「やっぱり秋はキノコだよな!」
魔理沙は待ちきれない様子でいる。
三人でいただきますのあいさつをし、鍋をつまむ。
やはり旬であるためかとても出汁が出ており美味である。
三人は夢中で食べていると突然。
「うっ!」
霊夢が苦しそうに胸を押さえる。
「どうした霊夢!」
男は慌てて霊夢の状態を確認する。
「毒キノコは確実に避けたぜ!?」
魔理沙は自分のミスで親友の命が脅かされるのではないかと焦り始める。
「シャーー!」
霊夢は声にならない、風切り音をだす。
やがて霊夢はうずくまり。
猫耳と尻尾が生えた。
「は?」
男は見たことない現象に唖然とする。
「しまった!マタタビタケだ!」
なんだそれは。
男の心を読んだかのように魔理沙が答える。
「猫の死体を栄養に育ったキノコが魔力を帯びると稀に生えるんだよ!」
いや、そのりくつはおかしい。
男はそう思ったが、何せ何でもありのエネルギー、魔力に起因するものだ。
そういう事もあるのかと納得する。
「霊夢は大丈夫なのか?」
男が魔理沙に尋ねた。
「ああ、時間が経てば元に戻る」
男は安心した。
改めて霊夢の様子をみる。
頭からはふさふさとした猫耳が生え、すらりと伸びた尻尾が腰の付け根から生えている。
ねこ巫女れいむ
そんな単語が思い浮かんだが男は頭振り、なかったことにする。
霊夢は右手をペロリと舐めたり、ミャーと鳴いたりしている。
「まさしく猫だな......」
「てことはやることは一つだな」
魔理沙はどこから出したのか一本の猫じゃらしを取り出す。
そして霊夢の前で左右に揺らす。
すると_
「みゃ!」
霊夢は猫じゃらしを取ろうと手を出すが、魔理沙は素早く猫じゃらしを引き、捕られないようにする。
「みゃ!」
諦めず何度も挑戦するが霊夢は猫じゃらしを捕らえられない。
「ひゃー!こんな可愛い霊夢めったに見れないぞ!」
「あ、ああ......」
男は困惑していた。
霊夢とは長年一緒に暮らしており、いわば家族のようなものだ。
そのせいなのか男は今まで霊夢に対し可愛いという感情を抱いたことがなかった。
しかし、猫という愛くるしい動物とクールな性格の霊夢が合わさり男は胸の高鳴りを感じていた。
突然、
「みゃー!」
霊夢が男に飛び掛かる。
男は後ろに倒れないように堪える。
霊夢はあぐらをかいていた男の足の上に四つん這いで乗り上げ男の顔を見上げる。
そして、
「みゃー」
と鳴く。
男の頭の中で何かが弾けた。
「よーしよしよしよし!」
男は霊夢に頬擦りしながら顎を撫でる。
「ゴロゴロゴロ.......」
霊夢が喉を鳴らすと男は再び撫でる。
男がふと尻尾の付け根がどうなっているのか気になり付け根にトンと手をおいた。
すると霊夢が
「みゃ~」
と気持ちよさそうに甘い声で鳴く。
「ここがいいのか!ここがいいのか!」
男は尻尾の付け根をトントントンと一定のリズムで叩くと、霊夢の尻尾はピンと伸びとても気持ちよさそうな鳴き声を上げる。
「こやつめ~かわいいやつよのぉ~」
男は再び頬擦りしながら撫でる。
夢中で頬擦りしているとふと鳴き声がしないことに気付いた。
「.......なにしてんのアンタ?」
男の時が止まった。
ゆっくりと霊夢の顔の方を向く。
その動きはどこかぎこちなく、油を差していないブリキのおもちゃの様であった。
そこには顔を真っ赤に染め上げた霊夢がこちらを睨んでいる。
男は素早く飛びのく。
その動きはまるで猫の様であった。
「ち、違うんだ!そうだよな!?魔理沙!?」
男は周囲を見渡すが魔理沙の姿は見えなかった。
魔理沙は一足先に逃げたようだ。
「覚悟はいいかしら......?」
霊夢は男ににじり寄る。
男はただただ顔を青くする事しかできなかった。
_____ぎゃあああああああああ!!
翌日、男の頬には綺麗な紅葉ができたそうな。
◇◇◇
___先代はいつものように修行していた。
今日は滝行である。
この修行が具体的に何を鍛える修行なのかは分からない。
ただ修行と言えば滝行といった考えがあったからやっている。
林の影から少年が見ている。
先代は気にせず滝に打たれる。
物珍しさで見ているだけでそのうちいなくなるだろう。
しかし、少年は先代の滝行が終わるまでその場を離れなかった。
翌日、今日は拳の部位鍛錬だ。
目の前の岩が砕けるまでひたすら正拳突きを繰り返す。
昨日の少年がまたこちらを見ていた。
しかし今度は隠れている訳でなく近くで見ていた。
しばらく正拳突きを続けていると、少年がふと動き出す。
何をするかと思って見ていると少年は別の岩の近くに行き___
__岩に殴り掛かった。
無論、少年の柔い拳が耐えられる訳もなく、すぐに拳の皮がめくれて出血する。
幸い少年の拳に勢いがなかったため骨折はしていなかった。
先代は化膿止めを少年に渡し、その場を後にした。
翌日、今日は動きの確認だ。
相手がいることを想定し、虚空に向かって拳を放ち、蹴りを繰り出す。
そこにはまた少年がいた。
少年は真似をするが拳を放てば重心がブレて転び、蹴りを繰り出せば足がもつれて転ぶ。
さすがに見ていられなかった先代は少年に拳の握り方、構え、殴る時の姿勢、蹴る時の重心など基本的なこと教えた。
そうして来る日も来る日も少年は先代の修行の後をつけ、真似事をしていた。
最初はそのうち飽きていなくなると思っていたが、少年が来始めて一年が過ぎた。
ある日、先代はいつも修行す場所に足を運ぶとそこに少年はいた。
先代はとうとう少年に尋ねた。
「どうして私の修行を真似ているんだ?」
少年は少し間を置いた後に口を開いた。
「僕は、『強くならなきゃいけないんだ!』」
その言葉が、先代の心を動かした。
「......うちに来るか?」
そう尋ねると少年は頷いた。
___こうして博麗神社神主は生まれた。