東方博麗伝   作:Lup

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幕間其の三

 _____季節は巡り、冬。

 

 男は紅魔館を訪れていた。

 

 「武器の扱いを教えてほしい?」

 

 美鈴は男のお願いに首を傾げる。

 

 「いやいや、あなた徒手空拳で十分じゃないですか?」

 

 「いや、これから先なにがあるか分からないからな。覚えておいて損はないだろう?」

 

 男と霊夢、そして魔理沙はレミリアからお茶の誘いを受けていた。

 

 その際、美鈴が武器も使えるという話を聞いたのだ。

 

 男はその話を聞いた途端、居ても立っても居られずお茶会を抜け出してこうして門前に来て教わりに来たという訳だ。

 

 「そういう訳でどうか教えてもらえないだろうか」

 

 男は頭を下げる。

 

 「ちょ、やめてください。まぁ別に構いませんが......」

 

 「本当か!ありがとう!」

 

 男は美鈴の手を両手で握る。 

 

 美鈴は頬を一瞬赤らめた後、咳払いをする。

 

 「手、放してもらえませんか?」

 

 「ああ、すまんすまん」

 

 男は美鈴の手を放す。

 

 「......あなた少し接する相手との距離感とか考えた方がいいですよ」

 

 男は首を傾げる。

 

 「......まぁいいです。で得物は何を?」

 

 美鈴は男に尋ねた。

 

 「いや~、実はそこから相談したくて......」

 

 この男、見切り発車が過ぎる。

 

 美鈴はため息をして質問を変える。

 

 「どういう状況で武器を使いたいのですか?」

 

 男は顎に手を置き考える。

 

 「んー相手が武器を持っている場合かな」

 

 「それなら短刀とかはどうです?あなたの踏み込みなら素早く間合いを潰せますし、携行もしやすいですよ」

 

 美鈴は男に提案した。

 

 「あーでもその間合いなら素手でいいんだよなー......こう、間合いでの有利を取りたいかも」

 

 「それなら杖ですね。これなら棒さえあれば武器になります。そして間合いをとれる。」

 

 美鈴は庭に生えている木の枝を四尺程の長さで手刀で切り落とし、軽く振って見せる。

 

 男はその光景に目を輝かせて見ている。

 

 「軽く立ち会ってみます?その方が杖の良い点と悪い点を体で感じられると思います」

 

 「いいのか!?」

 

 男は誕生日に贈り物をされた子どもの様に喜ぶ。

 

 

 

 美鈴と男は適当な距離を取り互いに構える。

 

 いや、美鈴の方は一定の構えを取るというより常に体の周りで杖を回している。

 

 左右、上、腰の周り。

 

 それはまるで、別の生き物が美鈴の体を這っているのかと錯覚した。

 

 男は間合いを潰そうと踏み込む。

 

 しかし、

 

   ブオン

 

 杖は左から右へと凄まじい風切り音と共に男の鼻先を掠める。

 

 男は再び美鈴の懐に入ろうとするが、今度は下から上へと薙ぎ払われる。

 

 「なるほど、これは踏み込みずらい......」

 

 男は杖の利点を身をもって感じる。

 

 「しかし、大体間合いは分かった」

 

 間合いの外ギリギリで躱し、空振らせた後を抑える。

 

 男は脳内作戦を実行に移した。

 

 「果たして本当にそうですかね」

 

 男は美鈴が丈を振るのを確認し、間合いの外ギリギリでブレーキをかける。

 

 杖は右から左へと流れ_____

 

 __ることなく男のこめかみに当たる。

 

 男は衝撃で横に飛ばされる。 

 

 「本気だったら意識飛びますよー!」

 

 美鈴が男に警告する。

 

 男はすぐさま身を起こし構える。

 

 男は見ていた。

 

 美鈴は杖を振り始め男が止まるのを確認したのち、遠心力を利用して持ち手を後方に移動させたのだ。

 

 それにより間合いが変わり、直撃。

 

 「面白いなぁ......」

 

 男は不敵な笑みを浮かべた。

 

 男は再び踏み込み、間合いを潰す。

 

 美鈴の杖が左から右へと迫る。

 

 男はそれを腕で受ける。

 

 無傷とは言わないがこれでだいぶ威力が落ちる。

 

 男はすかさず間合いを詰め、美鈴に拳を放つ。

 

 しかし気付くと杖は左から迫っていた。

 

 男は腕で防御するが半分不意打ちの状態だったため衝撃を抑えきれず飛ばされる。

 

 美鈴は男に杖を当てた後、跳ね返る衝撃を利用して頭の上で逆回転させ、再び攻撃したのだ。

 

 「さて、どうします?」

 

 美鈴は男を軽く挑発する。

 

 「こうするさ!」

 

 男は再び美鈴に向かって駆けだす。

 

 美鈴の杖が男の胴目掛けて右から迫る。

 

 男は防がず進む。

 

 杖が男の胴に入りかけた瞬間、迫ってきた方とは逆の手、左腕で受ける。

 

 すかさず男は杖を右手で抱え込み、右の脇の下で固定する。

 

 男は美鈴に前蹴りを放ち美鈴を吹っ飛ばした。

 

 杖は男の脇の下にある。

 

 武器を取り上げることに成功した。

 

 「お見事です」

 

 美鈴が男に賞賛の言葉を掛ける。

 

 「まだまだ荒削りですけど上出来です。長物相手に徒手で戦うときは振り下ろす前、もしくは振り終わった後を狙うのが定石です。今回は長物の中でも振りが早い方の武器なので振り下ろす前を抑えるのは難しいでしょう。」

 

 美鈴は続ける。

 

 「そして、徒手の場合は武器を無力化する事を考えてください。相手を効率よく制圧する事を考えて作られた物が武器です。よって武器がある状態というだけで既に不利なのです。相手の土俵に立つことなく武器を無力化し、そこからを考えましょう」

 

 男は頷く。

 

 しかし、一定の熟練度を持つ者だと棒一つでここまで戦い方が難しくなるとは。

 

 男は一つ疑問が浮かぶ。

 

 「ん?そういえばなぜ美鈴は異変の時武器を使わなかったんだ?」

 

 「理由はいくつかあります。一つは私が一番得意なのが徒手だから。二つ目は相手がどのくらい武器に精通しているか分からないから。武器というのは一長一短あるものです。対武器の対策を知っている物であれば逆に短所になりかねません。そして三つ目が臨機応変に対応できるのは徒手が一番だからです。相手を殺すのも、制圧して捕らえるのも自由です。例えば、もしあの時あなたを捕らえられればお嬢様のところへ持って行って眷属にして戦力を増やすこともできたわけです」

 

 男は美鈴の説明に納得した。

 

 加えて男は質問する。

 

 「......ちなみにこの杖術は誰に教わったんだ?」

 

 男は自分の思っている回答ではないことを期待する。

 

 「......?書物で読んで後はその通りにやっているだけですよ?」

 

 男はガックリと肩を落とす。

 

 いるのだたまに、こういう天才と言われるヤツが。

 

 ......そういえば身近にも天才がいたなと男は某巫女を思い出す。

 

 「さようでございますか......さて、じゃあ今度は使い方を教えてもらおうかな」

 

 「分かりました。まず持ち方からですね」

 

 こうして男と美鈴の修行は続く_____

 

 

 

 

 

 ◇◇◇

 

 _____大晦日。

 

 霊夢と男は炬燵に入りながら新年を待っていた。

 

 「今年も終わりね」

 

 霊夢はみかんを食べながら言った。

 

 「ああ、年を取るごとに一年が早くなる気がする......」

 

 「ちょっとやめてよ。おっさんくさいわ」

 

 男と霊夢はそんなくだらない会話をしている。

 

 すると、

 

   ボーーーーーーーン.......

 

 どこからか鐘の鈍い音か聞こえる。

 

 「明けましておめでとうだな」

 

 男の新年の挨拶に対し

 

 「今年もよろしくお願いね」

 

 霊夢も答える。

 

 「そういえば無間の鐘って知ってる?」

 

 「なんだそれ」

 

 「なにやらそれを鳴らすと今世では______」

 

 霊夢と男はそのまま雑談を続ける。

 

 幻想郷に迫る危機を知らずに___

 

 

 

 ◇◇◇

 

 「首尾はどうかしら」

 

 「はい、着々と進んでおります」

 

 一人の従者とその主人は計画を進めていた。

 

 「今年はあの木が満開になるところ、見たいわね」

 

 「必ずやその要望に応えて見せましょう」

 

 「ああ、春が待ち遠しいわ」

 

 幻想郷の春はまだ遠い___

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