東方博麗伝   作:Lup

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第二章「春雪異変」
其の一「春の行方」


 ___時は流れて暦は四月の終わりを迎えていた。

 

 例年であれば人々は花見を終え、夏に向けて準備をする季節だ。

 

 しかし今年は花見を楽しんだ者は誰もいなかった。

 

 ____冬が終わらないのである。

 

 「うう......寒い......」

 

 霊夢は半纏に身をくるみ、震える。

 

 「どうなってんのよ......もう五月になるってのに冬が終わらないじゃない......」

 

 寒さに弱い霊夢は愚痴を吐く言葉にも、いつものような覇気がない。

 

 「これはあれだな、異変だ」

 

 男は確信をもって言った。

 

 「ったく、冬を終わらせないなんてどんなもの好きなのよ......」

 

 「というより春を独り占めしているのかもな」

 

 「ふざけんじゃないわよ......ちょっと懲らしめに行きましょう」

 

 「そうだな、このままじゃ飢饉が起こる」

 

 冬が続くというのはただ単に寒い日が続くという訳ではないのだ。

 

 作物が育てられない。

 

 暖を取るにも燃料には限りがある。

 

 生命の危機に直結する問題なのだ。

 

 こうして博麗の二人は異変解決に向かうのであった。

 

 

 

 ◇◇◇

 

 霊夢は当てもなく空を舞う。

 

 外に出ると改めて寒さが身に染みる。

 

 風が吹けば耳は痛み、手はかじかむ。

 

 「もはや寒い通り越して痛いわ......」

 

 霊夢は体を震わせながら独り言を言った。

 

 その独り言に反応する者がいた。

 

 「あらあら、そんなに震えて可哀そう。抱きしめてあげようか?」

 

 青を基調とする服に身を包み、髪は薄紫色だ。

 

 その服はゆったりとしており、防寒性は感じられない。

 

 「いや、遠慮しておくわ。冬眠どころか永眠しかねないから」

 

 「そう?残念」

 

 「それよりも冬が終わらないのはあなたのせい?雪女」

 

 彼女の名前はレティホワイトロック。

 

 冬の間のみ見かける妖怪だ。

 

 「くろまく~」

 

 どうやらレティは冬が終わらないことで躁になっているようだ。

 

 霊夢は調子に乗ってる雪女に腹を立てる。

 

 「あら、自白してくれるのね。では覚悟」

 

 霊夢は即座に攻撃を開始する。

 

 「え、いや、ちょっと待って~」

 

 レティは慌てて抵抗するのであった。

 

 

 

 ◇◇◇

 

 「ここは、どこだ......?」

 

 男は道に迷っていた。

 

 長期間続いた積雪により、辺り一面が白銀の世界となっていたのだ。

 

 どこを見ても同じ景色に見えてしまい、いつの間にか男は自分がどこにいるのか分からなくなっていた。

 

 「困ったな......」

 

 「さては道に迷ったな」

 

 後ろから声を掛けられる。

 

 男はとっさに声が聞こえた方に振り返る。

 

 そこには赤と白のワンピースを着た少女___に見えるが頭には猫耳、更には立派な尻尾が二本生えている。

 

 「化け猫か?」

 

 「正解!」

 

 男の問いに対し、化け猫は腕で丸を作り正解のジェスチャーをする。

 

 「ここはどこなんだ?」

 

 「ここはマヨイガ。道に迷うと辿り着く不思議な場所だよ」

 

 「......それはマヨイガを目的地にした場合どうなるんだ?マヨイガに向かいたいけど道に迷わなくては辿りつけない。けど辿り着くってことは道に迷ってなくて.......?」

 

 男は考え込む。

 

 「......お兄さん周りの人から“考えすぎ”とか“肩の力を抜いてみろ”とか言われない?」

 

 「な......!」

 

 男は図星を疲れて言葉が出ない。

 

 「にゃはは!お兄さん分かりやすい!」

 

 化け猫は声高に笑う。

 

 「でもね、お兄さんが心配するのはそこじゃない」

 

 化け猫の爪が鋭く伸びる。

 

 男は瞬時に構える。

 

 「お兄さんが心配すべきなのは、ここから無事に出られるかどうかだよ!」

 

 化け猫は男に飛び掛かった。

 

 

 

 

 ◇◇◇

 

 ___魔法の森。

 

 「どういうつもり?魔理沙」

 

 金髪の魔女アリスは魔理沙に問う。

 

 「......お前、春度集めているだろ......?」

 

 春度____春に採取できる特殊なエネルギーである。

 

 魔法の中にはこの春度が必要なものがある。

 

 「そうよ?この時期しか取れないからね。貴方も魔法使いならこれの貴重性が分かるんじゃないかしら?」

 

 「......この冬が終わらないのはお前が原因か......?」

 

 その言葉には怒気が込められていた。

 

 「......どうしてそう思うのかしら?」

 

 アリスはその怒気を受け流す。

 

 「春度を集めるヤツなんて私は魔法使いくらいしか思いつかないんだよ!」

 

 魔理沙は声を荒らげる。

 

 「はぁ......なるほどね。ちなみに違うって言えば素直に見逃してくれるのかしら?」

 

 魔理沙は答えられない。

 

 「そして分かっているはず。貴方じゃ私を倒せない」 

 

 「ああ......最近ようやく分かったよ。人間の私じゃ魔女のお前には勝てない」

 

 魔理沙は下唇を噛む。

 

 「......そう。人間の魔法使いと、種族の魔法使いの違いを知ったのね。さて、あなたにそんな知恵を授けたのは誰なんでしょうね?」

 

 アリスは魔理沙に問いかける。

 

 ___私よ。

 

 しかしその問に答えたのは魔理沙ではなかった。

 

 アリスは声の主を見た瞬間、自分の警戒度を最大にした。

 

 「パチュリー......ノーレッジ......!」

 

 アリスの問いに答えたのはパチュリーだった。

 

 「魔理沙貴方、とんでもない人から魔法を教わっているのね......」

 

 魔理沙は何を言っているか理解していない様子だ。

 

 「......パチュリー・ノーレッジ。現在の魔法の基礎を生み出した最古の魔女の一人。魔女の頂点に君臨する人よ」

 

 魔理沙はアリスの解説に目をぎょっとさせ、パチュリーの方を見る。

 

 「ずいぶんとまぁ古い肩書を知っているものね......。でもアナタだって相当な血筋じゃない?魔界神の娘、アリス。神綺は元気かしら?」

 

 瞬間、アリスは全身から魔力を放つ。

 

 右手には一冊の魔導書が開かれ、左手からは透明な糸が伸びている。

 

 糸の先には武装した人形が群れとなってアリスを守っている。 

 

 「あいつがあの魔導書を使うの初めて見たぜ......」

 

 魔理沙は額に汗を浮かべる。

 

 「Grimoire of Alice......」

 

 パチュリーはつぶやいた。

 

 「お母様とも繋がりがあったとは知らなかったわ。全力で行かせてもらうわ!」

 

 アリスは構える。

 

 「下がってなさい、魔理沙。よく見ておくのよ。これが魔女同士の戦いよ」

 

 パチュリーも魔力を放つ。

 

 しかし激流のように放たれるアリスとは違い、パチュリーの魔力は清流の如く緩やかに、滑らかに流れ出す。

 

 

 

 魔女の頂上決戦が始まった____




 いやはや、ようやく本編再開です!

 私個人的な意見なのですけど、東方の魅力の一つに世界観ってのがあると思っているのですよ。

 東方の知識を入れれば入れるほど、本当に幻想郷があるんじゃないか?きっとある!行ってみたい! 

 って思えるところが一番の魅力だと思うわけです。(あくまで個人的に)

 なのでこの物語の人物たちはストーリー以外でも息をしているんだっていうのを少しでも感じてほしい思いから季節を巡らせました。

 さて長くなってしまったのでこの辺で!

 皆さん引き続きよろしくお願いします!

 高評価と感想もお待ちしています!(笑)
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