____霊夢は空に向かって飛んでいた。
「体を動かしたおかげか少し寒さが和らいだわ」
霊夢は雪女ことレティを懲らしめた後、レティの体から“何か”が上空に行くのを感じた。
その“何か”が異変に関係あるのかは分からないが霊夢の勘が告げている。
それを追えと。
霊夢はどんどん高度を上げる。
すると3つの人影が見えた。
「あんた達、こんなところで何をしているの?」
霊夢は3人に声をかける。
ここは雲より高い場所。
要件も無くふらつく場所では無いのだ。
「......私たちはプリズムリバー楽団。......そして私が長女でリーダーのルナサ」
金髪に黒色のベストとスカートの少女は気だるげに自己紹介をする。
「私が次女のメルランだよー!今日は冥界にお呼ばれしたの!」
水色髪に薄ピンク色の上下の少女は姉のルナサとは対象的に元気に自己紹介する。
「冥界?」
霊夢が疑問を口にする。
「そう、私達冥界の主様に花見を盛り上げるために依頼を受けてお呼ばれしたの」
最後に栗色の髪に赤の上下の少女が自己紹介を終える。
「ちょっと待ちなさい、花見?冥界には花が咲いているの?」
「......詳しくは分からないけど、そういう依頼で来ているわ」
ルナサが霊夢の質問に答える。
「そう、ありがとう」
霊夢は三人に感謝すると更に上空へ飛んでいった。
どうやら異変の元凶は冥界にあるようだ。
しばらく高度を上げていると何やら奇妙な結界が目に入る。
「どうやらここが冥界の入り口で間違いなさそうね......」
霊夢は躊躇うことなく結界を破る。
霊夢は軽くやってのけたがこの結界は最上級の術式が編み込まれたものだ。
平凡な術師であれば1日かけても破れないだろう。
空間に亀裂が生まれる。
見えるのは薄暗く、本能的に不吉さを感じる。
霊夢は空間の亀裂に飛び込んだ____
◇◇◇
「さて、では出口を教えてもらうか」
男は化け猫の首根っこを掴んで宙に吊るしている。
「離せにゃ!この!この!」
化け猫は手足をジタバタさせ抵抗するがその攻撃は全て空を切るだけであった。
「少し痛い目見た方がいいか」
男は化け猫を掴んでいる逆の手の平を開き、大きく振りかぶって_____
______化け猫の臀部目掛けて振り抜いた。
「ぎにゃああああああ!」
化け猫の悲鳴が響き渡る。
「さぁ出口を言いなさい」
「誰が言うもんか!ベロベロばーっだ!」
ペチン
男の鞭打が鳴り響く。
「うぎゃあああああああ!」
「さて、何回目で根を上げるかな」
しばらくの間化け猫の悲鳴と叩かれる音が鳴り響く。
____数刻後。
「分かったにゃ......教えるにゃ......」
遂に化け猫は観念し、男に出口を教える。
「あっちの方に進めば出口にゃ」
化け猫は出口の方向を指差す。
「ありがとう、ちなみにこの冬が終わらない異変について何か知らないか?」
「......知らにゃい」
答えるまでの妙な間を男は聞き逃さなかった。
男は再び大きく振りかぶる。
「待つにゃ!待つにゃ!えーと、紫様とそのご友人がこの前なんだか春度の集め方とかなんとか話してるのは聞いたにゃ!そのご友人は冥界に住んでる幽々子様にゃ。今回の異変と関係あるかは分からにゃいけど何か手掛かりはあるかも知れにゃいよ。これ以上は本当に知らにゃいにゃ!」
「ありがとう」
男はそう言い化け猫を手放す。
化け猫は素早く男から距離を取る。
そして安全なところまで離れた後に化け猫は男の方を向き。
「やーい、この鬼畜神主!藍様に言いつけてやる!」
そう言い残し姿を消した。
「さて、冥界か......冥界って確か空だよな......どうするかな」
男は出口に進みながら考える。
そう、男は自在に空を飛べないのである。
出口に着いた時、男はある方法を思い浮かべた。
「いや、待てよ?別に今回自在に飛ぶ必要はないのか......危険だけどやってみるしかないか......」
男は意識を集中させる。
体の中に流れる霊力を意識する。
霊力が全身の周りを鎧の様に囲うイメージをする。
頭上に結界を張る。
霊夢の結界に比べて不恰好で強度も弱く張るまでに時間がかかる。
しかしじっくりと時間をかけてそれを何重にも張る。
「よし、こんだけ防御すれば大丈夫......か?」
男は腰を落として足に力を溜める。
そして霊力を足に集中。
溜める。
やがて男の体が浮き上がりそうになる。
「まだだ、俺は空中で飛ぶ方向は制御できない。ならば方法は一つ」
溜める、溜める、溜める。
「今!」
男は思い切り地面を蹴る。
瞬間、爆音と共に、地面に大きなクレーターを残して男は消えた。
◇◇◇
霊夢は冥界内を飛ぶ。
長い石段を登る。
「これ飛ばずに登ったら1日かけても登りきれないわ」
霊夢は石段に文句を投げつける。
そして石段の横には満開になった桜が並んでいる。
「どうやらここで間違いないようね」
霊夢は異変の元凶がここにいることを確信した。
すると上の方から声がする。
「ここから先は白玉楼である!曲者には立ち退いてもらおう!」
銀色の髪に緑色の服。
腰には二本の刀を携えている。
「なんだかここなら花見が出来るって聞いたのだけれど?」
霊夢は銀髪の少女に問う。
「花見ならよそでやれ」
冷たく返す。
「それが不思議なことにここ以外幻想郷で桜が咲いてるところないのよね、不思議でしょ?」
霊夢は変わらず軽い口調で話す。
「知ったことではない......」
妖夢の声が少し小さくなる。
「あなた嘘が下手くそね。いいからささっと幻想郷の春を返しなさい」
霊夢は睨む。
「それはできない」
銀髪の少女は構える。
それを見て霊夢も構える。
いざ戦いが始まらんとした次の瞬間。
ドゴン____
何かが二人の横を通り過ぎ、石段に激突する。
土煙が上がるとそこにいたのは男の姿だった。
「イテテテテ.......なんとか成功したみたいだな」
男は頭を摩りながら立ち上がる。
「......何やってんのあんた?」
霊夢はジト目で男を見る。
「飛んできた!」
男は自慢げに答える。
試験で満点を取った子どもが親に見せつける時のようだ。
「.......あっそう。私、頭痛くなってきたわ.......」
霊夢は呆れた様子だ。
「さて、霊夢。この場は私に任せて先に行け!」
男は霊夢に向かって言うが当の本人は既に先に行っている。
「......締まらんなぁ」
男は一瞬ガッカリするが直ぐに気を引き締める。
「さて、私は博麗神社神主。冬が終わらない異変を解決しにきた」
銀髪の少女は一瞬のうちに膨大な情報が流れてきてポカンとしていたが男の名乗りをきっかけに気を取り直す。
「私は白玉楼の主、西行寺幽々子様の下部兼剣術指南役、兼庭師、魂魄妖夢!」
「......なんか一人で役職抱えすぎじゃないか?」
「うるさい!貴様が私たちの計画を邪魔するのであれば斬る!」
妖夢は腰を落とし刀に手をやる。
「妖怪が鍛えたこの楼観剣に______
______斬れぬものなど、あんまりない!」