___目の前にそびえたつ紅の館
もはや館と呼ぶには大きく一国の王が住むような城。
一見してここの主は只者ではないことを認識させる。
「...黒幕はここにいることで間違いなさそうだな...」
男は予感する。
紅の霧は一段と濃くなり、それがこの異変の発生元であることを示している。
男は歩を進める。
「そこで止まれぃ!」
唐突に怒声が鳴る。
館の門前に一人の女性が立っていた。
全身を緑のチャイナ服で身を包み、額には”龍”と書かれた帽子を被っている。
「ここから先は我らが主、『レミリア・スカーレット』様の居城である!何用か!?」
女性は警告を含んだ問を投げかける。
「私は博麗神社神主である!空一面を覆う紅の霧の異変を解決するために動いている!何か知っている事はないか!?異変に関係なければ踏み入るつもりはない!」
男が答える。
「...関係あるとしたら?」
「押し通る!」
二人の間に緊張が走る。
「我が名は紅 美鈴、この館の門番である」
「改めて、博麗神社神主、推して参る」
互いに構える。
男は腰を落とし、脚は前から見れば肩幅、横から見れば肩幅の一、三倍。左手を前にし掌を軽く開く、右手は顎の少し下に構える。
この構えは瞬時に踏み込みが可能にする。前に出した左手は牽制になるのと同時に相手との距離を測ることができる。右手は防御に使うことも、さらには打突の際に拳を引かずに強打することができる構えであり、男がよく好んで使用する構えだ。
一方女の方は、前から見ても横から見ても肩幅。
両脚の踵は浮かせ、その佇まいは猫を彷彿とさせる。
両手は完全開き脱力、左手は前にし、顔の高さ、右手は腰のあたりに置いている。
どのくらい睨み合って時間が経っただろうか。
互いに隙を狙っているのだ。
このまま夜になってしまうのでは、そう思い始めた矢先、静寂が破られた。
先に動いたのは男の方であった。
踏み込み、美鈴の懐へ一瞬で入る。
男は脚を地面に滑らせ、美鈴の前足に奔らせる。
美鈴は前に出ていた足を男の蹴りに対し垂直に構え、防ぐ。
男の足に返ってきた感触は肉を蹴った感触ではなくまるで鋼鉄に蹴りを入れたような、そんな感触であった。
わずかな痺れを感じると同時に素早く足を引く。
その引いた動作の勢いを利用し、男は左の拳を美鈴のこめかみめがけて奔らせる。
美鈴は難なく頭を下げ男の拳を躱す。
そしてその低い姿勢から男の顎を目掛け、掌での打突を試みる。
そのまま天を貫くかの如く掌底を、避けられた左の打突を戻す際に生まれた遠心力を利用し、左に体を捻り避ける。
男はそのまま相手に背を向け、後ろに脚を突き刺す。
すかさず美鈴は蹴りに対し肩を向け、その前で腕を十字にし、防御を試みる。
しかし、防御には成功したがそのまま美鈴は後方へ三尺ほど飛ばされる。
互いの間に距離が生まれ、仕切り直される。
「どうやら武の心得があるようですね」
男は美鈴に言葉をかける。
「心得と呼べるものではないが、書物にあったものを参考にし、鍛錬した」
「書物だけでか...つくづく自分の才能のなさを痛感するな...」
男は小声で愚痴を吐いていると
「今度はこちらから参る!」
美鈴が男目掛け襲い掛かった___
___どれほど時間が経っただろうか。
いや、実際にそこまで時間は経っていないのだろう。
しかし当の二人にはそう思えるほど濃密な時間が流れたのだ。
果たして地に伏せていたのは___女の方であった。
「...私の負けだ、人間」
美鈴は仰向けに倒れ、肩で息をしていた。
その美しかった顔は見る影もなく血に染まっていた。
瞼の上には裂創があり、鼻は折れ、頬にあっては腫れている。
手の指は何本か折れ、脚は赤を通り越し紫色に腫れあがっている。
「久しぶりに強敵との闘いでした。お見事です」
男の方は無傷__とは言わないが女に比べたら無傷といっても差し支えはないだろう。
軽い擦過傷、打撲のみだ。
「...強敵とは、寛大な評価をありがとう。さぁ、とどめを刺せ」
美鈴は覚悟を決める。
そして男は女に向けて拳を振り下ろした___
目が覚めるとそこは自室であった。
「...一体なにが?私は生きている...?」
美鈴は確かに死を覚悟した。
しかし目を覚ますと、そこは天国でも地獄でもなかった。
「おはよう、美鈴」
銀髪のメイドが声をかける。
「咲夜さん、一体何が?今どういう状況です!?」
「質問は一つずつお願いね。結論からいうと、失敗よ」
その言葉を聞き落胆する。
「私たちはどうなるんですかね...」
敗者の結末など想像に難くない。
少なくともよい待遇は期待できないだろう。
「それがそう悪い話でもないみたいよ」
咲夜は微笑みながら言う
「...しかし一体なぜ私は生きているのでしょうか?」
美鈴が疑問を漏らすと咲夜が答えた。
「それは生かしてくれた当の本人から聞くのがいいんじゃない?」
咲夜がふと視線を移す。
そこには男__博麗神社神主が立っていた。
「...もう訳が分かりませんがとりあえず一点だけ、なぜ生かしたの?」
「殺す必要が感じられなかったからですかね」
男は飄々と答える。
「というより殺したくなかったんですよ。あなたと拳を交えて、どうやら奇妙な友情のようなものを感じてしまったようです」
男は少し照れながら言った。
どうやら恥ずかしいことを言っている自覚はあるようだ。
「書物を読んだだけであそこまでの体術を習得できるなんて、羨ましいです。『いいセンス』です」
「いい...センス...?」
先ほどまで命のやり取りをしていた、それも赤の他人だった男だ。
そんな奴に褒められても何も嬉しくない___はずなのに
美鈴の眼には涙が浮かんでいた。
そしてそのまま再び眠りについた___
___紅白の巫女は館を探索していた。
「ったくなんでこの館は無駄に広いのかしら?外から見た時より広く感じるわ」
「それは実際、広くしているもの」
カツ カツと靴底を鳴らしながら銀髪のメイドは言った。
「あんたも大変ね、こんな広い館のメイドだなんて」
霊夢が嫌味を込めて言う
「それは時間がなければ大変だけど、生憎わたしは完璧で瀟洒なメイドですので」
負けじとメイドも返す。
「そうなのね、でも私、あなたと違って忙しいの。私の時間はとても貴重なのよ」
「あらそう、じゃあその貴重な時間、私が貰うわ」
巫女とメイド
本来出会うことのない二人の戦いが始まろうとしていた___
えー、そろそろなんの作品に影響を受けたかわかる人には分かると思います。
言い訳するなら、最近その作品みて書きたくなった訳ではなく、学生の時からいつかリスペクト作品作りたいなと思っていました。
そして、酒とヤニ吸ってたら、十数年前の記憶がふっと降りちゃったんですね~。
あくまでリスペクトで世界観は違うので三次創作にはしてませんけど指摘あった場合そのようにすることにまったく抵抗はありません。