___空が紅く染まる異変が解決してから幾日が過ぎた。
新聞は異変についての記事で埋まる。
紅霧の主犯は吸血鬼!?博麗神社の使いが成敗!
そこにはレミリアと対峙する霊夢の写真が大きく載っており、新聞の一面を飾る日が何日も続いた。
その新聞を読み込む白黒の魔法使い。
「ちぇ、私だってがんばったんだけどなぁ」
魔理沙は一躍有名となった霊夢に嫉妬する。
「あなたは命があっただけでも儲けもんだと思いなさいよ。」
少し遠くからパチュリーが紅茶を啜りながら魔理沙に言う。
ここは紅魔館内にある大図書館。
魔理沙はパチュリーと激闘の後、紅魔館にその身を寄せていた。
「まぁ、そうだよな~。生かしてくれてありがとうな!」
「そう思うなら少しは感謝を行動に移していいんじゃない?」
「だからこうしてパチュリー様に教えを乞うているじゃありませんか~先生~」
魔理沙はパチュリーを肘で軽く突きながら言った。
「そこのどこが感謝から来ている行動なのかしら?」
パチュリーはだる絡みしてきた魔理沙を軽くあしらう。
「あなたはまず基礎がなっていないわ。独学だから仕方がないけど、まずはそこからね」
「はい先生!ただの魔法使いと種族としての魔法使いの違いはどこなんだぜ?」
魔理沙は寺子屋の子どものように力いっぱい挙手をし、パチュリーに質問する。
「魔力が尽きない永久機関を確立しているかどうか。人によってやり方は違うけどね」
そう言い終えるとパチュリーは自分の周りに五行の属性をそれぞれ持たせた魔法の球体を出す。
「私の場合は五行の特性を利用して魔力を補完しているわ。水は木を育て、木は火が燃える燃料となる。燃えた後は灰となって土に還る。土は金を生み、金は水を浄化する。こうしてお互いの魔法が補完し合うの。」
やがてパチュリーの周りの球体は一つに収縮し、結晶へと変化した。
火水木金土符『賢者の石』
魔理沙はその光景に感動し、目を輝かせる。
「すっげぇ~!」
「ただこれには精密な魔力操作が必要よ。五行の内どれかが強かったり弱かったりすると今度は互いを相殺してしまうわ。水は火を消し、火は金を溶かす。金は木を傷つけ、木は土の養分を吸い取り、土は水を汚す。」
パチュリーは五行に均衡をわざと崩す。
するとたちまち結晶に亀裂が入り、砕けてしまった。
「よっしゃ!わたしも」
「基礎すらままならないあなたができるわけないでしょ」
ボスッと魔導書で頭を叩かれる。
「しかしなんでここまでよくしてくれるんだ?お前にメリットないだろ?」
魔理沙はパチュリーに問う。
「......あなたを見て思い出したのよ。自分は魔法が好きだってことを」
パチュリーは恥ずかしそうに答える。
しかし魔理沙には言葉の意味が通じず、ぽかんとしている。
二人の勉強会はまだまだ続く____
◇◇◇
「要件は何かしら、妖怪」
レミリアは目の前にいる妖怪__八雲紫に問いかける。
周囲には西洋の甲冑が一列に並び、天井に吊るされた照明は夜の星々のように煌びやかな光を放つ。
その最深部には豪華な装飾が施された玉座が一つ。
そこに腰かけ足を組みながら頬杖をつくレミリア。
「あなたは自分の立場が分かっているのかしら」
紫は扇子で口元を隠しながらレミリアに問い返す。
今回の異変の敗者はレミリア。
にもかかわらずレミリアの勝者の如き立ち振る舞いについて紫は若干の憤りを感じた。
「どのような結果になろうと私達吸血鬼は誇りを捨てない。媚びへつらい命を乞うぐらいなら死を選ぶわ」
レミリアは答える。
「それでは先代巫女に対しての行動はどういう事なのかしら」
紫はからかうような笑みを浮かべる。
「......」
レミリアは言い返せない。
紫を睨みつけることで回答とした。
「そういうところがまだまだお子様なのよね。まあいいわ。今回はこの異変の首謀者__あなた達の処遇についてお話にきましたのよ。いくら霊夢達が許したとしても何もなしに
はいそうですか
では済まされないの」
「......要するにケジメをつけろというわけか」
レミリアは眉をひそめる。
「こちらから提示する条件はこれよ」
紫はレミリアの横に空間の亀裂をあけ、そこから書類を渡す。
一つ、“賢者”の許可なく人間を殺害、傷つけることを禁ずる。
一つ、眷属を作ることを禁ずる。
一つ、正当な理由なく、他種族との敵対を禁ずる。
一つ....
そのような条件がその紙にはびっしりと書き込まれていた。
そして最後の一つに目を通した時。
「...は?」
レミリアが予想だにしていない一文が書かれていた。
◇◇◇
「暑い.......」
霊夢は神社の縁側で団扇を仰ぐ。
しかし内輪によって霊夢に当てられる風も生温く、思ったように涼めない。
霧によって気温が下がっていたここ数日。
気温の低下の原因が失われた今、幻想郷は再び夏の気候が戻っていた。
「こんなことなら夏が終わるまで異変解決しなくてよかったかしら」
「馬鹿言うな。そんなことのために異変を放置できるか」
霊夢の冗談に男は真面目に答える。
「そんなこと分かってるわよ...暑いわ~」
霊夢が夏の暑さに苦しまされていると
神社の石段を登ってくる二つの人影が見えた。
「ご機嫌麗しゅう、霊夢様神主様」
「れいむ~遊びに来たよ~」
そこにはフランに日光が当たらないように日傘を持つ咲夜とこちらに手を振るフランがいた。
「いらっしゃい、二人とも」
歓迎する男とは反対に。
「うへぇ、参拝者以外は立ち入り禁止よ」
露骨に面倒くさそうにする霊夢。
「ではこれで参拝客ですね」
咲夜は指先に硬貨を乗せ、指で弾く。
チャリン と甲高い金属音と共に硬貨はきれいな放物線を描き、賽銭箱入って行く。
「あんた二礼二拍手一礼って知ってる?」
霊夢は苦笑いしながら咲夜に問う。
「生憎キリシタンなため他宗教の作法には疎く」
「悪魔に仕える身としてそれはどうなのよ」
二人は冗談交じりに会話する。
霊夢が神社の陰に視線を移すと男とフランは遊んでいた。
「おにーさんも先代様みたく”コォォォォォ”ってやつやったり壁を走ったりできるの?」
「師匠程ではないけどできるよ。見てろ!」
男は独特な呼吸を始める。
念のためフランに離れておくよう言い、神社の柱に足をかける。
すると足と柱がまるで強力な磁石のように引っ付き、男は垂直に歩いていく。
「どうだ凄いだろ__」
男がフランに視線を移した瞬間、急に磁石の効果が切れたかのように足は柱にくっつくことなく滑る。
男はそのまま落ちて行き、後頭部を強打する。
「いってぇええ!!!!」
男が痛みに地べたを転がり回るのを見ながらフランは腹を抱え笑っている。
「できもしないことやるんじゃないわよ。その壁にくっついたり水の上あるいたりするのもこの前やっと覚えたばかりでしょ」
霊夢は呆れながら言う。
男は異変の後、あの奇妙な呼吸について先代に聞いていたのだ。
先代は目をキョロキョロさせ、落ち着かない様子だったが、やがてその視線は男を真剣に見つめた後、語り始めた。
おそらくキョロキョロ視線が行き来していたのは周りに誰かいない確認したのだろう。
技術が知らない他人に漏れるのは防ぎたい。そう先代は考えたのだと男は納得した。
先代曰くそれは波紋の呼吸というらしい。
仙道のひとつでその呼吸をすると様々な効果を得られる。
まず細胞の活性化、呼吸により細胞が活性化されることで体の若さを維持できたり軽い止血、鎮痛などの効果もあるみたいだ。
次に引っ付く力と離れる力を生み出す。水面を歩いたり、先ほど男が柱を垂直に歩いたり出来たのはこの効果だ。
そして最後、吸血鬼に対しての特効。
どうやら波紋の呼吸で得られるエネルギーは吸血鬼の弱点となる太陽エネルギーと似たようなものらしい。
レミリアの再生を阻害できたのはこの効果によるものらしい。
しかしなぜ吸血鬼に特別効果があるような呼吸を生み出したのだろうか。
先代にそのことを質問すると激しく視線を移動させた後、たまたま呼吸で得られたエネルギーが太陽エネルギーに似ていただけと言っていた。
解説中にも周囲の警戒を怠らない師匠の姿に男は感動した。
男は後頭部を抱え、少し涙を浮かべる。
咲夜は霊夢に近づき
「意外と神主さんって面白い人?」
と耳打ちした。
「真面目なんだけど空回りするというか、間抜けというか...まあ面白い奴ではあるわね」
霊夢と咲夜は軽く笑う。
___ここは全てを受け入れる幻想郷。
幻想郷は今年の夏を受け入れ始めた____
いやぁ~、なんとか第一章を書き終えることができました。
ここまで来られたのも、読んでくださる皆さんがいたからです。
本当にありがとうございます!
そして、祝!500UA!
ありがとうございます!
さらに感想コメントもありがとうございます!
もうね、今なら感謝しすぎて感謝の正拳突き打てるよ!
さて、今後の方針ですが、しばらくは第一章の誤字脱字や表現の見直しを考えています。
なので、しばらく更新が空くかもしれないし、筆が乗ってすぐ更新するかもしれない。そこは神のみぞ知る。
そんなわけで、もし楽しんでいただけたなら、お気に入り登録や感想、評価などいただけると作者がめちゃくちゃ喜びます!
今後ともよろしくお願いします!(笑)