この世で淫魔は生きづらい! 作:つれづれ猫
お願いだから、エロい力はエロい奴に渡してほしかった。
笹倉創一、16歳。俺はつい
規律には厳しいが、習い事や学費の高い私立高校に文句も言わず通わせてくれる両親に恵まれ、その学校でも成績ではトップ層とまではいかないが、上位層。
友人だって多いほうだったし、少しいい感じの雰囲気になった女の子もいた。
けれど、今俺がいる場所は10月のド平日、河川敷の橋の下。
つい一週間くらい前まではまだ暑い日が続いていたはずなのに川上から流れる風は昼間だというのに少し肌寒い。
風に乗って三日前まで通っていた高校のチャイムが聞こえる。
時計はないが、時間からして二限目の開始チャイムあたりだろう。
つまるところ今の俺はホームがレスの16歳。
高校生という肩書もなくし、両親からは勘当されてしまったので果たして今の俺は笹倉家の創一なのかどうかも疑わしい。ただの創一なんじゃないだろうか……。
いったい何故こんなことになってしまったのか。
理由は明白だった。
9月7日の誕生日。
その日、俺は目が覚めたら淫魔になっていたのである。
いや、これは別に妄想だとか、ましてや性欲が暴走しただとかそういうわけではない。
この世界。
国のいたるところにダンジョンというものが存在し、人間に生まれたからには遅かれ早かれ様々な能力が勝手に芽生える。
単純に腕力が強くなったり、魔法のような力が使えたり、自然を操ったり、空想上の生物の力を得たり、夢のような力から、使い勝手の悪い力まで。
それが俺の場合、淫魔だったというだけのこと。
別に翼が生えたり、尻尾が生えたり、見た目上に変化はない。
ただ、
いや、いらん。
いらんすぎるにもほどがある。
この世界の小学生の将来の夢ランキング一位は年号が変わってもずっとAランク冒険者。俺だって強い能力に目覚めて冒険者になる夢を高校生になっても密かに抱き続けていた。
こんな力でどうやって敵と戦うねん!
悪い言い方だが、そりゃ異性を使役して戦わせるみたいなあくどいことのできる性格だったら使いようもあるかもしれないが、そもそもそんなトリッキーすぎる立ち位置の冒険を俺は望んでいない。普通に剣で戦いたい。
話はそれたが、俺がここまで転落した理由はまさにこの能力のせい。
確かに強い側面はある。
精神干渉やベッドの上では強力なのかもしれない。だがしかし。
この能力にはとんでもないデメリットがあったのである。
それこそ。
ぐぅー。
お腹がふいに鳴る。
お腹減った。
これだ。
食事が吸精になってしまったことである。
つまり、人を抱かないとお腹が膨れない。
しかも、燃費がまぁ悪い。具体的にどれくらい悪いかというと休憩ニ時間でおにぎり一個分。
四日食べないとたぶん死ぬ。
それが俺の体感である。
逆に俺は聞きたいよ。
こんな力を得て誰かに言えるだろうか。
両親は大学の教授と小学校の先生の教師一家で性の乱れには特に厳しく、俺が通っていた高校だって割かしいいとこでそういった規律は非常に厳しかった。
だから俺は隠しながら一人で何とかしようと頑張ったのだ。
入っていた陸上部はやめてその代わりにこっそりとバイト。正直俺はそこまで性欲が強いわけではなかったし、そういった行為は好きな子とするものだという幻想も抱いていた。
しかしながら背に腹は代えられないし、能力を得て三日目くらいにはお腹がすきすぎて見境なく人を襲ってしまいそうな怖さすら感じた。
もちろん催眠や魅了を使って……という手段も頭をよぎったことは認めるが、この世界は能力者の世界。普通に考えて見ず知らずの相手に試すというのは怖すぎるし、見知った相手にというほど俺は良心を捨てきれなかった。
だから、さらば青春。初めては1万円。相手は優しいお姉さんだった。
その日から俺の地獄の天国の日々が始まった。
バイトで金を稼ぐ、お風呂に行く。バイトで金を稼ぐ。お風呂に行く。
放課後はキツイ日雇いバイトとお風呂の無限ループ。俺はそれなりに死にたかった。
ちなみにお風呂は高いので出会い系も使ったことはあるが、なんだか怖いお兄さんたちに有り金全部持ってかれた上にぼこぼこにされたので行為にはキチンと対価を払うことが大切だ。
それが、この数週間で俺が得た教訓だった。
そして、そんな生活を続けてたら、どこからか情報が漏れるのはもはや必然だっただろう。そこからは本当に一瞬だった。
両親と教師、校長との地獄の五者面談。結果は問答無用の退学措置。
父にはぶん殴られ、母にはビンタされ、その日の夜に
その日から俺の家は、各所から集めた段ボールで構築したマイダンボールハウスである。
「…………」
だめだ。学校とか家とかのことを考えるとちょっと涙が出てくる。
俺はくしくしと涙を拭いて、流れゆく河川のほとりでぺしゃりと顔を洗う。
居場所もない。
家族もいなくなった。
お金だってないし、お腹は空いている。
スマホもないのでバイトも応募できない。
こんな状況なのだからもう犯罪でも……なんてことも少し思うが、そんなことするくらいなら餓死でもいいかなと思う程度には悪人ではないと信じたい。
でも。と俺は少しだけ思った。
冒険者になるのは密かな夢だったが、たぶん、親元で普通に生きていたらそこそこの大学に進学して、そこそこの企業に就職して。
もしかしたら、一生ダンジョンに入ることなく生涯を終えていたかもしれない。
剣もない。防具もない。
はたして淫魔の力が魔物に通じるのかもわからない。
でも、なりたくないけどなってしまった種族は淫魔。
どうせ死ぬなら、夢の中で死のうか。
そんな風に少し笑って、俺は冷たい秋風の中を歩きだした。
書きためはないです。
ぼちぼち書いてきます。
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