Fate/Gray night 作:Fateスタレ大好き浮気惚れ込みマン
2004年、夏
———朝、布団の中で目覚める。いつも通りだ。不眠症の体にとって、夜ほど辛いものはない。
「……はぁ、今夜には聖杯戦争でのサーヴァント召喚だってのに……ん、暑いな。」
それもそうだ。今は夏の沖縄、猛暑日以外の何でもない。この暑さは、病弱の体には中々に効く。
「っ……魔眼殺し魔眼殺し……」
布団の横にある応急の眼鏡を手に取り、掛ける。普段はコンタクトレンズなのだが、今はまだ朝。付けなくてもいいだろう。
「はぁ……やれやれ、アトラスの契約書を使ってロゴスリアクトをゲットしてよかったよかった。一応これは予備の触媒もなんだが、ロンゴミニアドメインだしな」
アトラスの契約書。アトラス院が昔発行した7枚の契約書。これを持つ者にはアトラス院は契約の限り協力しなければならない。これを集めるのがアトラス院の当面の目標なのだが、これを上手く使いアトラス院の七大兵器の一つ、再演の理を持つロゴスリアクトを手にいたのである
ロンゴミニアド:かの伝説のアーサー王が持ったとされる槍
「はぁ……さて、ひとまず朝飯を取らないとな。病弱でも、飯食って魔力少しでも貯蓄しないとな」
布団を出て、いつも通りの和服に革ジャンを着る。
「おーい、朝飯できたかー?」
居間に出ると、柔らかい和食の匂いが鼻に入る。味噌汁に、魚の匂い。そこに立つ数多の人間、料理人。
「おはよう、お前ら」
「おはようございます、お館様!」
元気に声を掛ける料理人たち。この様子から、彼……七夜陸生が慕われている様子が分かる。
「ああ、今日は多めで頼む。魔力が必要だからな」
料理人達が頷き、料理長が指示を飛ばす
「はぁ……やれやれ、今回の聖杯戦争も魔境だな」
陸生はメモを取り出しながら複数の思考を巡らせる。陸生は魔術使いだ、時計塔の西洋魔術も扱えば、アトラス院の分割思考、高速思考も扱う。ならば、全てを使うのは当然の理。今回の亜種聖杯戦争はアーチャーはかの英雄王、キャスターのマスターは冠位の魔術師、蒼崎橙子。
そんな時、料理長と数名の召使いが料理を持ってきた
「お館様、できました。鮭のホイル焼きと白米、味噌汁に蒲焼きでございます」
「ん、ありがとう」
料理人が料理を置いて恭しく一礼する。
「恐悦至極です、お館様」
「あー、いいいい。別にそんな恭しくする必要もないしな」
「ですが当主様には少なくとも私たちは自ら敬意を払っておりますので……」
陸生は困った様に頬を掻いた。
「ま、慕われるのは嬉しいけどさ……無理するなよ?」
料理人達は顔を上げ、一斉に頷く
「はい!お館様」
「あー、そうだ。今日は一日瞑想するから、部屋には入れないよう伝えといてくれ。」
料理人達は重要書類を手にしたような顔持ちで頷く
「ええ。お館様の言うこと、必ずやお守りいたします」
「ああ……いただきます」
陸生は頷いて料理を食べ始める。
鮭のホイル焼きは焼き加減は完璧で、味付けのバリエーションも豊富、白米は言わずもがなの炊き立て特有の暖かさ、それに蒲焼きが合わされば反則も同然だろう。味噌汁は味噌が程よく入っていて、陸生の体調を気遣ってか野菜も多く、薄く切られている。
「……ご馳走様でした」
食事を終えた陸生は、部屋に戻りいつも通りの訓練を始める。瞑想、鍛錬に入る。いつも通りの筋トレ、刀の素振り、瞑想、魔術と剣術の併用など……。
「……ありゃ、もう夜か?」
気がつけば、もう夜だ。深夜一時、陸生の絶好調タイムは1時間後の午前二時。
「やれやれ……さて、このロンゴミニアドは1000年単位の神秘だ。これで何か来ないはずがない」
陸生は家を出て沖縄の空が広がる美しい平原……その奥にある、魔法陣。
「……波長よし、魔力よし、体調よし。これなら残り枠最強のランサー……アーサー王を召喚出来るはずだ」
今日一日、誰にも心配させないために付けてた手袋を外す。その先にあるのは、令呪。
令呪…サーヴァントを律する3回限りの絶対命令権。サーヴァントに命令を聞かせることも出来れば、サーヴァントが本来不可能なことまでを実現させる、魔法の域に近い代物。
……歯車と、運命が動き出す。
「———素に銀と鉄。礎に石と契約の大公。 祖には我が初代当主七夜星夏を。降り立つ風には壁を。 四方の門は閉じ、王冠より出で、王国に至る三叉路は循環せよ 」
最初は順調だ。星の巡りもいいし、分割思考も続けていいと言っている
「閉じよ。閉じよ。閉じよ。閉じよ。閉じよ繰り返すつどに五度。 ただ、満たされる刻を破却する」
はぁ、老害共もよく考える。死徒や鬼、混血を殺すのが仕事なら、聖杯で死徒を根絶すればいい、か。
光が上がる。鮮やかな光が、一言毎に強く成る。
「――――告げる。汝の身は我が下に、我が命運は汝の剣に。 聖杯の寄るべに従い、この意、この理に従うならば応えよ。」
まあ、それだと殺し合いは出来ない。ならば面白くないだろう。俺も殺し合いを求めて聖杯戦争に参加したのが半分の理由なのだから。
光が強まっていく。確かに、儀式自体は簡単だが、魔力量がだいぶ持っていかれるのがキツイが……。
「誓いを此処に。 我は常世総ての善と成る者、 我は常世総ての悪を敷く者。」
常世総ての善と成る者か……俺は常世総ての悪側だと思うんだが、まあそこはいい。この戦争の聖杯なんてどうでもいい。血を死を屍を呪いを鮮血を求めて、殺し合うために———!
光が、夜の平原を、夜空を照らしていく。
「汝三大の言霊を纏う七天、 抑止の輪より来たれ、天秤の守り手よ―――! 」
光が、爆発した。……なんだ、俺はロンゴミニアドを触媒にアーサー王を呼んだはずだ。なんだ、この影の薄さは……?アサシンみたいだ。
光が収まると、そこに居たのは—————————
フードを目深に被り、尻餅を付いている灰色髪の少女。
……え?少女?待て待て待て。アーサー王は男だ。ちゃんとアーサー王伝説も読み解いた。なのに……少女。ひとまず俺は、この言葉を口にする。
「問おう。お前が俺の、サーヴァントか?」
この日、歯車は動き出す。
頑張った。フフ、存外楽しい