The Allow of Silver 銀弓の運命は砕け得るか   作:Delphinus

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1 変わり果てた再会

 

「ロドスアイランド製薬……何を考えてる?」

 

 チェルノボーグの占領開始から既に数日が経過している。メフィストに麻痺薬を撃ち込んで気絶させた後、パトリオットの命令を盾にレユニオン各部隊の統制を回復。市民への報復を軍規によって阻止した。その後は都市機能の復旧を急いでいる段階。

 

「……分からないですね」

 

 分からないと言えば、そもそもチェルノボーグを制圧した理由です。ウルサス軍に戦争を仕掛ける気なのでしょうか。だとしたら、何故今龍門を攻撃しようとしているのでしょう? 

 

「で、どうしてくれんのよ、アンタ」

 

「見ての通りですよ。狙撃兵を拘束しただけです」

 

 Wと名乗ったサルカズ傭兵の一人。優秀だが、無敵と言う程ではない程度の彼女に、僕は縛り付けておいたロドスの尖兵を見せた。無胄盟仕込みの毒矢による遠射で気絶させた後、ロープでぐるぐる巻きにして拘束した状態。後は倉庫にぶち込んでおしまいでしょうか。

 

「彼らの事は倉庫にぶち込んでおきます。毒で眠らせておけば、まあ暫くは起きないでしょう。これで食費も節約出来ると言う寸法です」

 

「はっ、カジミエーシュの亡霊様は相変わらずえげつない事」

 

「僕は亡霊ではありませんよ。ただのテロリストです」

 

「征戦騎士の家系がテロリストをやってる状態って、ウルサスには悪夢より酷いわよね」

 

「アンタ、今誰を倒したか分かってんの?」

 

「いえ、全く」

 

 Wは倒れ込んだそいつの事を指差す。周囲にも仲間と思わしき武装兵がロープのぐるぐる巻きで昏倒している。若干シュールな状態。

 

「Scout。そいつはサルカズで最も優れた戦士よ。それだけ覚えておきなさい」

 

「成る程、よく覚えておきます」

 

 Scout……それはコードネームでしょうか。意味からして斥候のようだ。成る程、狙撃兵らしい名前。

 

(あの頭ひとつ抜けた練度でScoutと言う事は、同格の兵士が数十人程度はいる可能性が高い。ロドスの艦規模からして、最大動員兵力は数100人程の筈。規模的には大隊と同レベル。成る程、あの練度と装備水準を維持しているなら、本格的な作戦はともかく、戦争の裏で作戦を遂行する、第二部隊としては十二分ですね)

 

「所で、Wさんはロドスについて『あなた、もう片付けたの? そろそろやめて欲しいわ。あんまり獲物を取られるとこっちの取り分まで減るのよ』イネスさん、ああすみません、仕事はまた別に」

 

「いえ、そこまでは良いわ。そんな事よりあなた、今日はロドスについて考えていたの」

 

「それは考えますよ。こんな所まで来る高度に武装した医療企業だなんて。僕だって一応レユニオンの幹部と言う事ですし」

 

 そう言って、僕はレユニオンの仮面を外す。この仮面が好きな訳では無いけど、役には立つ。これ一つで所属を証明出来ると言う事になっているのだから。どんなに得体の知れない過去を抱えていても。

 

「相手は企業なんですから、薬を買ったら帰ってくれませんかね?」

 

「はっ、何それ、本気で言ってんの?」

 

「僕は本気ですよ。こっちには薬が足りなくて、向こうは薬を売る会社なんです。では取引するのが早いでしょう?」

 

「アンタの言葉、たまに現実味が無くなって来るわ」

 

「これでも出身は商業国家ですから」

 

 仮面の下から出てくるのは、銀の髪色をしたクランタの姿だった。カジミエーシュで最も偉大な征戦騎士の家系。二アール家のアーツは金の輝きを行使する。銀槍のペガサスの語源となった、銀のアーツを支配する家系は実は別に存在する。まあ今となっては最早何も残ってはいない。そんな顔が、見れば妙に可愛いのは傲慢なのだろうか。

 

「それで、商業国家から落ちぶれたテロリストが、次は何をする気?」

 

「勿論、ウルサスとの戦争を。感染者の、非感染者の生存権を賭けて」

 

「……そう」

 

「それからイネスさんに言っておいて下さい。Scoutは罠を張って、あなたをタルラさんの元に誘導する気でした。だからこちらから合図するまで、タルラさんに近づいてはならないとね」

 

「ま、そのくらいは言っておくわ」

 

 Wは興味なさげにそう言って歩き出した。僕は別の方向に歩き出す。Scoutと縛った兵士を、やってきた部下の運転するトラックの荷台に積んだら、そのまま倉庫に向かうのを見送った。

 

「用事は済んだか?」

 

「ああ、エンカクさん。すみません。ビッグボブの農場はどんな感じでしたか?」

 

「農場なら順調だったぞ。だが、お前はそれで良いのか?」

 

「それで良い、とは?」

 

 エンカク。サルカズの傭兵だと言う彼は、Wさん達とは違うルートでレユニオンに合流したと言う話を聞いている。そんな彼は僕にこう伝える。

 

「お前は自分がやった事を覚えておくべきだ。誰を倒したか、何を為したのか」

 

「ロドスの斥候部隊を捕縛して、申し訳程度に勢いを削ぎましたね。結果には何の影響も無いでしょうが」

 

「お前の悪い癖だな。そう言う所に出る」

 

「将軍であり過ぎるのはお前の数少ない欠点だ。お前が倒した人を、踏みしだいた物を、人として忘れるなよ」

 

「ふふ、そうですね。痛み入ります」

 

 そう言って、僕はまた歩き出した。今日この時も、夕焼けが眩しい。

 

「ああそれと、お前がいなければ俺はレユニオンを裏切っていた」

 

「あはは、それは気をつけておきましょう」

 

 

 

 

「ロドスには僕の部隊で対処します。各部隊は天災への対応と市民の保護を急いで」

 

 状況は急転直下と言った所。ロドスの偵察部隊が消えたと思ったら、いよいよ本隊が突入してきたらしい。天災の近くなって来たこのクソ忙しい状況で。いえ、寧ろ忙しいからでしょうか。

 

(メフィストがロドスを追い詰めている……それは良いですが、あっちに構い過ぎると時間を稼がれる。第一、ロドスの部隊は、役目を終えたら撤退する気の構成に見え……!??)

 

 ロドスには正直、構う必要を感じない。この布陣だと、短時間で突入し、目的を達成したら即座に脱出する構えに見える。天災が落ちるまでに作戦を仕上げる気なのでしょう。何の作戦か見えないのが、問題ではあります、がっ! 

 

 ガキイイィンッッッ、斬光が光輝いた。見間違える筈が無かった。何度も、何度も見て来た光ですから。銀槍の騎士家として、すぐ隣りの家にいた彼女の事を、僕は、ああ、どうしようも無く忘れられないみたいだ。

 

 圧倒的な速度で突入する、金のアーツを纏った突撃に対して、こちらは銀の弓撃を叩き付ける。金槍と銀弓が火花を散らして、戦場を無駄に華やかに照らし出した。また無駄にキラキラしてるのが、何とも言えないけど、実にカジミエーシュらしいですよね。

 

「んなっ、お前は何故そこにいる!」

 

「あなたこそ、何でそんな所に?」

 

 マーガレット・二アール。カジミエーシュ騎士競技のチャンピオンになった後、鉱石病の発覚によって国を追われた所までは覚えている。何で、こんな所にいる? 

 

(駄目だ、全然分からない)

 

「今まで何をしていたんだ。どれだけ私が探したと思っている?」

 

「それはすみません、ちょっと鉱石病で無胄盟を追い出されて、アハハ」

 

「笑い話にならん。と言うより、無胄盟が出るとはどう言う意味だ」

 

 ガキイイィッッ、ギィィンッ、流れるようなウォーハンマーの刺突に対して、こちらは防戦一方になる。金と銀のアーツの火花が散る。やはり、練度では向こうが上ですか。それでも距離をとって、逃げ続けながら遠射の構えを止めない。

 

「言葉のままです。実家が全滅した後、無胄盟のクロガネから電話が来たんです。色々面倒なので略して言えば、無胄盟に入って生き延びるか、この場で死ぬかとね」

 

「そんな事でか、お前は!」

 

 ガキイイィンッッッ、金の光を纏ったシールドバッシュが、いよいよ弓を捻じ曲げる程の衝撃を叩き付ける。そろそろ余裕がありませんね。一応、無胄盟時代から使ってる特注品なんですが。

 

「すまんが、お前の事は連れ帰るぞ。こんな所でくだらん戦争に加担するのはやめろ」

 

「それは否定出来ませんね。この状況がくだらない戦争なのも、僕はこんな所にいるべきでは無い事も、実にその通りです」

 

「ですが、世の中には戦争でなければ解決しない問題があるのです」

 

 ガチャッ、部下に命じておいたバリスタ群のセットアップが完了。合図はいらない。後は勝手にやってくれる。

 

(斉射、今)

 

 ズドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドォォォォォォォォォ────────────────ンンンッッッッッ、恐るべき量のバリスタが、たった一人を為目掛けて殺到する。二アールはそれすらも捌いて、でもいつまでもは耐えられないでしょう。

 

「僕は、僕たちレユニオンは戦争でなければ片付かない問題を片付けます。具体的にはウルサスの内政問題。そして鉱石病問題です」

 

「それを認めないなら、武力で踏み潰しなさい」

 

「そんな、二アールさんっ」

 

 二アールの仲間と思わしき、ロドスの兵士がこちらに手を伸ばして来る。でも想定以上じゃない。設置済みの地雷を起爆する。やたらと盛大に爆発して、まるでカジミエーシュと言う国家みたいに無駄に明るく火花を散らす。

 

「二アール、撤退だ。ドクターの救出が完了した」

 

(ドクターの救出、それが本当の目的?)

 

 ロドスの兵士はドクターの救出と言った。だがレユニオンは現状、ドクターと言う名前の捕虜は捕えていない。それにロドスが向かったのはよりによって石棺。あれはレユニオンどころか、ウルサス時代のかなり前に研究が進んでいた代物の筈。

 

(だとしたら、ドクターの救出にレユニオンは無関係?)

 

「だが良いのか。Scoutもまだ救出していないんだぞ」

 

「Scoutさんなら、倉庫にぶち込んでありますよ。別に死んではいませんから、いずれ捕虜交換でもしましょう」

 

「倉庫に、ぶち込んだ?」

 

 二アールに変わって出て来た男性兵士。Scoutと似た装備構成の盾持ち。二アールはカジミエーシュの騎士装備を引き継いでいた、ロドス基準の特殊品だとしたら、こちらの装備はロドス基準の純正タイプと思われる。

 

(つまり、こいつはロドスの中枢により違い存在!)

 

「盾を構えろ、相手はカジミエーシュの征戦騎士だと思え!」

 

「残念ながら、僕は騎士ではありませんよ」

 

 その後、誰だか分からない兵士と、その部隊は倉庫にぶち込まれた。後からWさんが教えてくれましたけど、Aceと言うそうですね。はあ、コードネームが覚えにくい。

 




ここ半年くらいかけてAIの補助でアークナイツの勉強をしていたので、そろそろ成果を小説にしようかなと思います。実験作品なのでもし良ければご覧になって下さい。
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