The Arrow of Silver 銀弓の運命は砕け得るか   作:Delphinus

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2章 地を這う星々は天穹に届き得るか (イベント 騎兵と狩人〜風雪一過)
11 滴水村 大地を彷徨って


 カジミエーシュでも最大の都市、大騎士領カヴァレリエルキの喧騒。飲まれそうな程に巨大な街。その陰影に満ちた街路で、無胄盟の現在のプラチナは、ビルの影に隠れてこちらに矢を向けた。

 

「実は、あんたを殺すように命令されているんだけど」

 

「おや、やっぱりそうなりましたか」

 

 弓同士の対決になるのは久しぶりだ。無胄盟式の特殊弓を構える。とは言えプラチナの弓は、どう見てもこちらより上に見える。無胄盟の装備は、資本によって絶えず改良されるからだ。その弓から目を離してはならない。離せば必ず死ぬ事になる。

 

「早く僕を殺しにいらっしゃい」

 

「全く、人の気も知れないで!」

 

 バシュゥゥゥンッ、そして圧倒的な強弓が解き放たれる。僕はと言えば

 

 

 

 

「所で時間ができたら、ムリナールおじさんに顔を見せに行かないか? きっと今も心配している」

 

「んー、それもそうですね。仕事が多過ぎて暫く休みも取れてませんし、タルラさんには休暇として申請してみます」

 

 チェルノボーグの仮設市長舎。今日も死ぬ程忙しい僕の元に、マーガレット・二アールは今日もやって来る。確かに、いつまでも死んだふりと言うのも考え物ですよね。

 

「へええ、銀ピカ様が今度はカジミエーシュに行くって言うの」

 

「ええ、正直死ぬ程忙しいんですけど、いつまでも放っておく訳にはいきませんし」

 

「よし分かったわ。それなら私も行く」

 

 Wさんは即戦即決した様子。僕はと言えば頬杖を突いて、少しだけ考える。

 

「報酬は出ませんよ。言っときますけど」

 

「何よそれ、ケチぃ。私だって金が必要なのよ?」

 

「そんな事を言われても、今回は単なるカジミエーシュ旅行ですから」

 

「んーまあ良いわ。取り敢えず旅行と言う事で納得してあげる」

 

(でも、即戦即決ってあんまり好きじゃないんですよね)

 

 即戦即決というスタイルそのものは、そんなに好きではない。銀弓家の戦争は、時間を味方に付けてじっくり進行する物です。相手が大勢力であれば尚更。ですが

 

(今回は、即戦即決の機会が増えるかもしれませんね)

 

「で、金ピカはどうすんの?」

 

「私も行く。当たり前だろう。それに金ピカとは言うなW。このアーツは好きで光っている訳ではなく……」

 

「はいはい、好きで光っては無いのね。金ピカさん」

 

「全く」

 

「ええ、無駄に光るのは仕方ないんです。だってカジミエーシュですから」

 

 僕はデスクから立ち上がった。そろそろタルラさんに休暇を連絡しなければね。

 

「そして、無駄に影が多いのも仕方ありません。だってカジミエーシュですから」

 

「何それ、カジミエーシュってそんなに陰気臭い国なの?」

 

「陰気臭いと言うのは、ちょっとだけ違いますね。スポットライトの光が強過ぎて、スポットライトの当たらない場所は良くも悪くも影になるんです」

 

「そして、その都市の影こそがカジミエーシュの裏の名物、無胄盟の狩場です」

 

 

 

 

「しかし、なんでこうなったんでしょうね」

 

「知らないわよ、何とかしなさい、あんた騎士なんでしょうが」

 

「滴水村の皆さんがそう呼んだだけですから」

 

 そうしてカジミエーシュに入った後。乗っていた移動用トレーラーが悲しいくらいあっさりと故障した。僕たちは滴水村と言う、カジミエーシュ辺境の農村に放り出され、そして今。

 

「頑張れぇ騎士様、うおおそこだっ、やっちまえ!」

 

「お願いです、騎士様だけが頼りなんです。あーもう、童話で何度もウルサス軍をやっつけた銀弓の騎士様が、ここぞと言う時助けに来てくれるなんて、夢みたい!」

 

「……ですから、僕は騎士じゃありませんよ」

 

 何故か、この辺を荒らす賞金稼ぎとバトルしている。

 

 

 

 

「と言うか、何で私達こんなボランティアをしてるのよ」

 

「仕方が無いですよ。別の事件があったせいで、二アールが別の方に行ってしまいましたし。僕だってこの滴水村の辺りが賞金稼ぎの狩場になっているなんて、想定外も良い所なんですから」

 

「あーもう、タダ働きなんて嫌! 良いからアンタが何とかしなさい」

 

「言われなくたってぇ!」

 

 銀のアーツを迸らせる。弓撃を一閃してクルビア製と思わしき賞金稼ぎの武器を突き飛ばし、賞金稼ぎの部隊に圧力をかけた。すると、賞金稼ぎの側に動揺が広がる。

 

「あ、あれは、あの銀の光、まさか銀弓のアーツ!?」

 

「嘘だろ、カジミエーシュの銀弓家と言えば、何百年も辺境を守り続けて来た賞金稼ぎの天敵、賞金稼ぎ狩りの悪魔共じゃねえか!」

 

「そんな、あり得ねえ、銀弓の騎士家はもう壊滅した筈だ。生き残りなんかいる訳がっ」

 

(はあ、そう言えばそうでした。長い間忘れてましたね)

 

 銀弓家は中央よりも、むしろ辺境で名が知られていた。

 辺境の警備を固め、田舎の騎士を育て、無法者を何百年も追い回してきたのですから。

 

 ……つまりそれは

 

「今の僕、もしかして超が付く程有名人なんですか?」

 

 こう言う事なのかもしれません。

 

「ひいぃお前ら逃げろおおぉ、賞金稼ぎ狩りが来るぞおおぉ」

 

「賞金稼ぎを征戦騎士を育てる訓練の餌扱いしやがる連中だ、ダメだ敵う訳無えっ」

 

「な、何で今更こんな目に遭わなくちゃいけないんだよっ、銀弓はもう壊滅したって、カジミエーシュの農村は衰退が止まらねえって話じゃねえかぁぁっ」

 

「賞金稼ぎ狩りが来ちまったらそれだけじゃねぇ、下手に腕を見せちまったら、あいつら無理矢理捕まえて騎士に仕立てやがんだよぉっ、嫌だぁぁっ、俺は金が欲しいだけなんだぁぁっ」

 

「……何でこうなったんでしょう」

 

 何だか凄い勢いで、賞金稼ぎ達が村から逃げ出してしまう。いえ、逃げてくれるならそれで良いんですけど。

 

「流石は銀弓の騎士様ですね、素晴らしいご威光です!」

 

「……いえ、別にそんな事はありませんよ、どうかお気遣いなく」

 

「ああ、謙遜の仕方まで童話に聞いた銀の騎士様そっくり。なんてお可愛い顔の方なんでしょう。まさか童話の通り、本当に可愛い騎士様だなんて」

 

「その、光栄ですが、僕は騎士ではありませんので」

 

 キャロルと名乗ったその方の話は、暫く終わりそうに無かった。

 

 

 

 

 賞金稼ぎを追い払った後、僕達は賞金稼ぎによる幽閉で消耗した村人達を慰撫する為に、大鍋でボルシチを煮る事にした。村の広場にテントと大鍋を置いて、食材はトレーラーから持って来た物で調理開始。

 

「ボルシチと言うのは、征戦騎士の伝統的な野戦料理なんです。疲れ切った遠征先で煮込んだボルシチは、都市で味わうどんな美食よりも美味しいと評判だったんですよ」

 

「ふぅん、成る程。ならジャガイモはたっぷりでお願いするわ」

 

「分かりました。今回はジャガイモ入りのボルシチにしましょうか。それに黒パンも付けましょう」

 

 銀弓家の騎士教育で、伝統的なレシピは徹底的に教えられる。ボルシチに黒パンを合わせるのは、黒パンに付けてから食べる事で、食器を代用する為の工夫でもある。

 

「おお凄い、これは伝統的なボルシチですな。しかもレシピが本当にしっかりしている」

 

「でも、滴水村のボルシチとは随分違うわ。それに、よく見たらジャガイモが多過ぎない?」

 

「ジャガイモが多いのはWさんの好みの結果ですよ。そんな事より、出来ました。さあ、みなさんもどうぞ」

 

 仕上がったボルシチを使い切りのカップに盛って、黒パンと共に村人達に差し出す。そうすると、あちこちから賞賛の声が聞こえて来た。みなさん気に入って下さったようで何よりです。

 

「うう、何これ、アンタこんなに料理上手だったの? 銀ピカ」

 

「僕が料理上手かは知りませんが。騎士教育の一環で、野戦料理のレシピは一通り叩き込まれますから」

 

「やっぱりうちの部隊に入らない? 遠征先に一人欲しいわ」

 

「それは嬉しい。覚えておきます」

 

 そう言ってボルシチを美味しいと言ってくれたW。僕も口を付ける。ああ、今日もいい味になりました。

 

 そうしていると、村の外周部が俄かに騒がしくなって来る。賞金稼ぎ達が次々に騒ぎ出す。

 

「姉御ォ!」

 

「賞金稼ぎ狩りをぶっ倒してくれ!」

 

「俺達の救世主だ!」

 

「何でも良い、賞金稼ぎの厄星を賞金稼ぎ狩りにぶつけてやれぇっ」

 

(こ、これは……!??)

 

「ここが目当ての場所ね」

 

 そいつは、余りにも異質に見えました。種族はエーギルのようでしたが、あれは一見して分かる。普通のエーギルとは身体組成が根本的に違う。常軌を逸脱したパワー。おまけにアーツ反応が無い。アーツを使わない兵士? それ自体は珍しい訳ではありません。でも、こいつは! 

 

(源石に依存しない兵士?)

 

「取り敢えず、ボルシチでも食べて行きません? 今作りたてです」

 

「うん、食べるわ」

 

 仕方ないので、取り敢えずボルシチを入れた皿を差し出した。普通に美味しそうに食べ始めてますね、何よりです。

 

「はーあ、何やってんのよアンタ」

 

「仕方ないですよ。あの人イベリア人……かもしれないんですよ?」

 

「は? イベリア人って何で分かるの」

 

「いえ、もしかしたら、イベリアより不味い奴かもしれません。Wは大いなる静謐についてはご存知ですか?」

 

「大いなる、何?」

 

「大いなる静謐。イベリアが黄金時代を失った、その原因となる事件です」

 

「彼女は、それに最も近い存在なのかもしれません」

 

 そう言って、僕は考えを巡らせていた。ですが

 

「うわァァッ、もうダメだぁ、厄星が賞金稼ぎ狩りに餌付けされたァッ」

 

「チクショウ、もうやってられねえ、撤退だ。こんな茶番付き合ってられるかっ」

 

「あっ、ちょっと待てェッ、て逃げるなアア! 責任から逃げるなアア!」

 

「賞金稼ぎに責任なんか無え! 騎士の宝なんか良いから脱出しろぉっ!」

 

(この状況、少々不味いかもしれませんね)

 

 賞金稼ぎが散り散りになれば、分散して各地の金目の物を狙う可能性が高まる。その一つには、間違い無く。

 

「そうだ、村の外で擱座していたトレーラーを奪ってやろう!」

 

「なんか知らねえが金目のものが無駄に一杯ありそうだ。あそこで損害分を補填してやろうぜ!」

 

(ま、こうなりますよね……)

 

 僕達が乗って来たトレーラーが、略奪の標的になると言う訳です。

 

 

 

 

 




ニアーライトの前に騎兵と狩人、スタート。
Q.グラニの数少ない出番はどこ? A.グラニは置いて来たよ

この作品のR-18需要はありますか?もしあるなら、ヒロインは誰が良い?

  • ニアール
  • W
  • マリア
  • プラチナ
  • タルラ!?
  • その他(感想やメッセージで伝えて下さい)
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