The Arrow of Silver 銀弓の運命は砕け得るか   作:Delphinus

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6 好きが止まらない、ウルサスも止まる

「何をやっていると言うのだぁ! この反逆者どもがぁぁぁっ」

 

 そいつらがチェルノボーグの中枢部に現れた瞬間、空気は一気に凍結した。タルラに巣食う誰かは倒れた。サルカズ傭兵も、遊撃隊も、スノーデビル小隊も、そしてカジミエーシュの銀槍も、あの金のチャンピオンも、皆がそれぞれの役割を果たした筈だった。

 

「し、信じられねえ、顔削ぎのデーモン!?」

 

「な、何なんだよ、何なんだよあいつ」

 

「もう駄目だ、駄目なんだ逃げろ、か、敵う訳が無いっ」

 

 兵士達に一気に恐怖が広がる。これまでとは比べ物にならない何かが襲い来る。そして、パトリオットが告げる。

 

「狼狽えるな!」

 

「パトリオット? 、そ、そうだ、まだ終わっちゃい無いんだ」

 

「フロストノヴァはもう倒れて、スノーデビルが医務室に連れて行った。銀槍の奴も煙と、無駄に眩しいアーツ光のせいでどうなってるか分からない。タルラだって倒れたままだ。でも、俺たちにはまだパトリオットが付いてる。ならやれる。俺たちだってやってやるぞ!」

 

「距離を取って撃ちまくれ! アーツとボウガンを雨霰のように浴びせてやるんだ!」

 

 アーツユニット、ボウガン、弓矢、拳銃、更には投石器まで、あらゆる種類の火器が次々と装填される。そしてあえて距離を取り、隊列を組んでの一斉射撃。それを指揮するのは

 

「勢いを止めるな、撃ち続けろ。止まらないウルサスに楔を打ち込め!」

 

「はい、ヘラグ将軍、うおおおっ今ならやれるぞっ」

 

「おのれ、感染者の分際で数だけは小賢しい」

 

 数100人単位のレユニオン兵士による猛射撃が、皇帝の利刃すらも追い詰める。幾ら帝国の象徴といえども、こうも物量の差があっては対抗しきれない。だが

 

「侮るなよ反逆者共! ここはウルサスの国土、我々の大地なのだ」

 

「うわァァ、な、何か黒い靄が」

 

「隊列を整えよ、生き残りたいなら足を止めるな!」

 

「そ、そうだ、動き続けるんだ、足を止めたら駄目だ。恐怖なんか気にするな、ボウガンを撃ちまくれ、良いから撃つんだ!」

 

「あぁ駄目だ、もう弾が切れた」

 

「弾が切れたら後退しろ、後ろで弾を込め直せ!」

 

(パトリオットは既に交戦中。ヘラグ将軍は、部隊を率いて抑えている。だとしたら)

 

「見つけたぞ、カジミエーシュの銀弓。貴様だけは、貴様だけはここで葬ってくれる」

 

「僕なんかにそこまで注目して良いのですか?」

 

「そうよねぇ、はい爆弾」

 

「舐めるなぁぁっ!」

 

 ズシャァァッ、Wの起爆した爆弾が、剣閃に引き裂かれて塵と化す。悪魔の斬閃に対して、通常の源石爆薬は通じないようです。

 

(利刃は、何人いる。奴らは制空ドローンで空挺降下した。パトリオットに3人、ヘラグ将軍の方に3人。僕達に3人。合計9人!)

 

「忌まわしき反逆者共が、いい加減断罪の時だ。今までの罪を泣き喚いて、皇帝陛下に詫びるが良い」

 

「罪で済むならお甘い物です」

 

 罪にのぼせ上がった断罪者共。お前達が正義を為すのは、実際に殺した時だけでしょう。殺せなければ、お前達の正義は所詮はそれまでだったと言う事ですから。でも

 

「でもそんな事はどうだって良い!」

 

 二アールが金の光槍を構えている。僕は銀の光弓を引き絞る。Wはいつもの調子で爆弾を構えた。そして僕は叫んだ。

 

「マーガレット! 愛してる! 大好きです! 生まれた時からずっとあなたに夢中だった」

 

「お、お前、な、今何を言って」

 

「好き、結婚したいぐらい好き。ずっとあなたを愛していた。そして何より今だって夢中なんです」

 

「な、ななななななぁぁっ、わ、私は、私はどうなのよっ」

 

 何だか慌て出したWさんに、僕は構わず向き直った。

 

「Wさん、愛しています。ごめんなさい、本当は最初に見た時からこうでした。ずっとあなたが好きでした。いつだってあなたに夢中なんです」

 

「え、あ、あ……」

 

「ふざけるなぁぁぁっ、のぼせ上がった叛徒共がぁぁっ」

 

「くっ、だが、国土に影響が生じている? 信じられんっ、氷原の悪魔が狂っているだと、たがが、たかが告白如きで!」

 

「ええい、短期決戦だ。カジミエーシュの銀弓を殺せ! それで、それだけで帳尻が合う!」

 

 パトリオットに、ヘラグ将軍が受け持つ利刃までこっちに来る。ここからが、本番。

 

「くそ、行かせるな、銀弓を守るんだ!」

 

「ヒュー、さすが幽霊様は言う事が違うぜ、俺たちのヒーローを守れ。石でも消火器でも投げつけてやれ!」

 

「一世一代の大告白だ。あんな黒ずくめに邪魔させんな!」

 

 ズガガガガッッシャァァァァンン、とでも言わんばかりに、その辺の瓦礫や消火器、スパナからガラス製品に至るまで、ありとあらゆる物体が皇帝の利刃に投げつけられる。契約停止したスマートフォンが投げつけられて引火。そのまま炎上。ウルサスの国土がまた燃える。

 

「うおおおお喰らえっ、契約停止したスマホアタァァッッック!」

 

「タブレットをバリスタで投げまくれぇ! 契約が止まったこんな物どうせ役に立たねえ!」

 

「うおおっ食らえっ、ドローンの工作で失敗した端材アタックッ!」

 

「ふざけるなぁっ、このウルサスで電子機器がどれだけ貴重か分かっているのかぁぁ!」

 

 皇帝の利刃が尚も吠える。だが一度始まった流れは止まらない! 

 

「知らねえ! よし、その辺のソファをぶん投げろ!」

 

「壊れたテントも持ってけえええ!」

 

「割れたキャンプギアも食らえ! クルビア製で無駄に高価だったんだぞチクショー!」

 

「こいつも持ってけぇっ、プラモ用の無駄に固いペーンチ!」

 

 ドガッ、バキッ、ベコンッ、ベシィッ、何度も叩き付けられるよく分からない物体の数々。契約が止まった電子機器から壊れたキャンプ用品まで、中途半端に役に立たない文明の利器がウルサスを襲う。

 

「成る程、戦争は変わったのだな」

 

「ヘラグ将軍?」

 

「一般兵士が壊れたドローンや電子機器を投げつけ、文明の利器を適切に使いこなす。これも我々の時代を大きく超えた、新しい時代のあり方なのだろう」

 

「我々が変わらないと思っていたこの国にも、確かに変革の風が吹いているようだ」

 

「……成る程。確かに……そうかも、しれない」

 

 パトリオットはヘラグの言葉にそう答える。そしてあれを指さした。

 

「だが、新しい時代は、今そこにある」

 

「愛してる、大好き。好きが止まらない。マーガレット。お願い、僕と結婚しよ。して下さい。お願いします。命と力の全てをあげます。全部差し出すから、僕の全てで愛してる!」

 

「もう、やめろ、流石に恥ずかしい」

 

 銀弓の幽霊は、いつまでも告白をやめない。マーガレットに告ったと思えば今度はWに。何度も何度も愛を伝えて、伝える度に国土を打ち建てる悪魔すら鈍らせてしまう。

 

「大好き、もう一人にしないから、W。僕の全部捧げて尽くします。断言したって良い。だって愛してるんだから、あなたが本当に大好き!」

 

「もう、やめて……恥ずかしいわよ」

 

「国土が、乱れるだと、クソッ、最悪も良い所だ。ええい撤退だ。全員チェルノボーグから脱出しろ、この作戦は失敗した!」

 

 一瞬の内に、皇帝の利刃は脱出態勢に入る。ウルサス軍の制空用ドローンが再び降下し、ジップラインを射出する。そして見る間も無く、利刃達を空の向こうへと連れ出す。

 

「え、あ……終わった、んだ」

 

 そして、僕が気がついた時には、利刃達は既にいなくなっていた。彼らにとって残念ながら、チェルボーグはウルサスの国土ではなかった事が証明された。

 

「ヒュー! すげえぜ銀弓! お前が英雄だ!」

 

「キャー、素敵な告白だったわ! さすがは英雄様!」

 

「我らが新たなヒーローに万歳! 感染者の権利は確かに守られたんだ!」

 

 そして、どこからともなく歓声が聞こえて来た。それがチェルノボーグ全域の、文字通りあらゆる人から届いている事に、少し経たなければ気付かなかった。

 

 

 

 

「レディ────ス&ジェントルメン! ようこそロアー競技場へ!」

 

 圧倒的な熱量。そして歓声がロアースタジアムを包む。マリア・二アールの騎士競技は、この日もまた不安の中で開始される。

 

「それでは迎え入れましょう。冠する称号はチープ、しかし実力はエクスクルーシヴな競技騎士_____「合成樹脂」“プラスティック”シェブチック!!」

 

「シェブチック! シェブチック!」

 

「ぶちのめせシェブチック! こちとら大金を賭けてんだ、がっかりさせんじゃねーぞ!」

 

 ロアーガード最新の鎧に身を包んだ競技騎士。 “プラスティック”シェブチック。未だ経験の浅いマリアにとっては、充分に厄介な相手。

 

「さあ皆様、熱い声援で迎え入れましょう! ロアースタジアムナンバーワンの美貌を持ち、伝説の姉妹の一人でもあります二アール家最年少の競技騎士」

 

「マ──リ──ア──、二ア────ル!!」

 

「二アール! 俺の全財産が……え?」

 

「う、嘘だろ、何なんだよあれ……、あの変な槍!」

 

 競技騎士、マリア・二アールが持ち込んだ槍は、あまりにも異様で異質だった。極端な大型、そして大重量。まるで鉄塊のような代物の上に、無骨な上に途方も無い出力の、大型ブースターまでもが組み込まれている。

 

「見ていて、お兄ちゃん。私、絶対勝つから」

 

 その大型槍が唸りを挙げる。搭載された余りにも大出力の超小型機関は、ヴィクトリア技術を参考にし、資本の制約を無視した事で圧倒的な出力と機関の小型化を両立した。

 

「く、クソッ、ふざけるなよ、あれは、まさか征戦騎士の槍とでも言うのか」

 

 バシュッバシュッ、シェブチックが何重もの速射を浴びせても、圧力充填を開始した超大型蒸気槍は止まらない。蒸気の鼓動が弾丸を跳ね返す。スチームの出力が余りに高過ぎて、ただ噴き上げるだけで射撃が押し返されているのだ。

 

 ウルサスの重装歩兵を、挙句の果てには蒸気騎士すら穿つために生まれた、カジミエーシュ史上最も危険な戦争の槍が、合成樹脂の鎧の騎士に向けられる。

 

「蒸気圧力……80、90、100、110……、120%!」

 

「だ、だがこの鎧もロアーガードの最新型なんだ。そんな前時代のデカブツ風情にぃ『インパクト、行っけええぇ!』グギャァァァッッッ」

 

 合成樹脂騎士、シェブチックは蒸気槍突撃を受けて、余りにも呆気なく暁に倒れ伏した。マリア・二アールの伝説は、今この時から開始されたのだ。

 

「見ていて、天国のお兄ちゃん。私、お兄ちゃんの槍で勝ってみせるよ」

 

「それに二アール家のコンビニ化だって、絶対防いでみせるんだから!」

 

 全ては、二アール家をお兄ちゃんの家みたいなコンビニにさせない為に。マリア・二アールの挑戦が始まる。




怒号光明 完

悲報。ロドス製薬、最後まで空気。ついでに龍門も空気。

この作品のR-18需要はありますか?もしあるなら、ヒロインは誰が良い?

  • ニアール
  • W
  • マリア
  • プラチナ
  • タルラ!?
  • その他(感想やメッセージで伝えて下さい)
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