進撃の巨人の世界に15m級の無垢(?)の巨人として転生してしまった……(リメイク版)   作:感謝君

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第一章
第一話


 

 

 昨日まで、ごく普通のしがない大学生だった俺は、今、見渡す限りの見知らぬ平原に立っている。

 

 

 一応最初に断っておくが、横断歩道で居眠り運転のトラックに豪快に撥ね飛ばされた記憶もなければ、純白の空間で白い髭を生やした神様に「手違いで君を殺してしまった、詫びにチート能力を授けよう」とテンプレ的な謝罪を受けた記憶もない。

 

 

 昨夜は普通に大学の課題をこなし、コンビニ弁当を食べ、ベッドでY〇uTubeを見ながら寝落ちしただけだ。本当に、ただそれだけだった。

 

 

 辺りを見渡す。

 

 

 視界は異常なほど高い位置にあり、見下ろす世界はやけに平面的に見える。

 

 

 しかし、パニックに陥るようなことはなく、思考も視界も信じられないほどクリアだ。

 

 

 まるで超高画質のVRカメラを通しているかのように、遠くの景色までくっきりと見通せる。

 

 

 自分の身体に意識を向けてみる。肉体は羽が生えたように軽く、思い通りに、いや、それ以上に自由に動く。

 

 

 さらに奇妙なことに、朝起き抜けに必ず襲ってくるはずの強烈な空腹感も、喉の渇きも一切ない。胃袋という概念そのものがすっぽり抜け落ちてしまったかのような、生物としてあるまじき欠如感。

 

 

 自分の腕を顔の前に持ち上げて観察する。……見事な筋肉質だ。無駄な脂肪など一切なく、筋繊維のひとつひとつが鋼のワイヤーのように隆起している。

 

 

 四肢のバランスも悪くない。いや、むしろダビデ像も逃げ出すほど均整の取れた、完璧なプロポーションと言っても過言ではない。

 

 

 ただし、その肌の色合いや質感が、どうにも人間離れして生々しいのだが。

 

 

 周りはただひたすらに広がる平原。微風が吹き抜け、青々とした草が波打っている。

 

 

 すると、視界の下のほうで何かが動いた。

 

 

 自身の膝下、ふくらはぎ程度の高さの「人(???)」が、近くをあてもなくフラフラと歩いているのだ。裸のようだが、どうにも様子がおかしい。

 

 

 あれはなんだ? 迷子か? と思い、確認しようと無造作に一歩踏み込んだ。

 

 

 ──────ドシン……ッ!!

 

 

 空気を震わせ、地面が悲鳴を上げるが如く重い振動が足元から伝わってきた。

 

 

 踏みしめた大地がひび割れ、土くれが爆ぜるように舞い上がる。

 

 

 そこで、俺の脳内を覆っていた違和感のパズルが、最悪の形でカチリとはまった。

 

 

 違う。視力が良くなったわけじゃない。

 

 

 周りがジオラマのように小さいのだ。

 

 

 木々が盆栽のように見え、背丈ほどあるはずの草が芝生のように感じる。

 

 

 そして、目線の先にいる幼児サイズだと思っていた「人(?)」────その顔を見て、俺は息を呑んだ。

 

 

 異常に大きな頭、アンバランスに細い手足、焦点の合っていない虚ろな双眸。

 

 

 そして、耳まで裂けた口からだらしなく垂れる涎。知性の欠片も感じられない、生理的嫌悪を催すほど醜く、それでいてどこか滑稽な姿。

 

 

 俺は、一瞬にして全てを察した。

 

 

 自分が今立っているこの世界が、恐らく「進撃の巨人」の世界であることを。

 

 

 そして、心の底から絶望した。

 

 

 (よりによってここかよ!)

 

 

 転生(?)したい漫画・アニメランキングで堂々のワースト上位、いやダントツのワースト1位に輝くであろう、死亡率と絶望感が高すぎるこの世界に放り込まれてしまったことを。

 

 

 平和なスローライフとか、可愛いエルフとイチャイチャする異世界とか、そんな甘っちょろい選択肢は俺の人生には用意されていなかったらしい。

 

 

 現状、俺のサイズ感から推測するに、おそらく15メートル級の巨人。

 

 

 そして足元をうろついているのは3〜4メートル級の巨人だろう。

 

 

 ここで冷静に思考を巡らせる。今が原作のどの時点なのか、それが最大の問題だ。

 

 

 少なくとも、壁の外と思われる平原をこうして巨人が呑気に闊歩しているということは、まだエルディアの勢力が外の世界へ到達し、巨人を一掃する前の段階だろうということは容易に予測できる。

 

 

 ウォール・マリアが突破された後なのか、それともその前なのか。エレンたちは今どこで何をしているのか。

 

 

 (……はぁ)

 

 

 考えれば考えるほど頭が痛くなり(物理的な痛みはないが)、俺は思わず深い溜息をついた。

 

 

 『ボォォォォォォン……ッ』

 

 

 口から漏れた溜息は、突風を伴う地鳴りのような重低音となって平原に広がり、足元にいた小型巨人がビクッと肩を揺らしてこちらを見上げた。

 

 

 ……待てよ。声帯が機能している?

 

 

 俺は、自分が言葉を話せるのかどうか、恐る恐る試してみることにした。

 

 

 「あー、あいうえおー」

 

 

 「……話せちまった」

 

 

 大地を震わせるほどのバリトンボイスだが、その発音は驚くほどクリアだった。あの獣の巨人(ジーク・イェーガー)並に、いや、それ以上に流暢に話せた事実に思わずツッコミを入れたくなる。

 

 

 本当に俺はただの無垢の巨人か?と自分自身を疑う。

 

 

 知性があるということは、九つの巨人のどれかなのか?

 

 

 俺は首の後ろ、うなじの辺りに意識を集中させ、人間体として抜け出せないかウンウンと力んでみた。

 

 

 ……が、何も起こらない。肉体と意識が完全に一体化しており、中に人間が「搭乗」しているような感覚は皆無だった。

 

 

 原作でも、OVA「イルゼの手帳」に登場した巨人のように、片言だが人語を話す無垢の巨人は存在していた。

 

 

 俺はあいつの超絶アップグレード版なのだろうか。

 

 

 今はまだ情報が足りないが、とりあえず人間には戻れそうにない以上、自分を『自我を持ち、人語をペラペラ喋る、ちょっと……いや、かなり奇行種気味の15m級無垢の巨人』と定義しておくしかなかった。

 

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