進撃の巨人の世界に15m級の無垢(?)の巨人として転生してしまった……(リメイク版)   作:感謝君

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第四章
第二十九話


 

 

リーシェとの身を裂かれるような別れから半年。

 

 

暦は、843年の夏を迎えていた。

 

 

うだるような熱気が壁外の森を包む中、俺はあの別れの日以降、文字通り修羅の如く己を鍛え上げ、狂気の修練に没頭していた。

 

 

すべては、あの日彼女と交わした「人間に戻る」という、途方もない約束を果たすために。

 

 

まずは、硬質化能力の応用と拡張だ。

 

 

度重なる自己破壊と再生、そして硬質化の訓練により、今や巨大樹の森の岩盤下には、一つの街がすっぽりと収まるほどの広大な地下空間が形成されていた。

 

 

これほどの巨大な空洞が崩落しないのは偏に、俺が床から天井に向けて、直径数メートル、高さ二十メートルにも及ぶ純白のクリスタルの柱を、神殿のように何百本と生成し、寸分の狂いもなく岩盤を支えているからだ。

 

 

(硬質化の範囲と生成速度、そして強度は……最早、原作の『戦鎚の巨人』に迫りつつある。いや、練度で言えばもしかしたら既に凌駕しているかもしれない)

 

 

空間の確保を終えた俺は、その圧倒的なスケールを利用した新たな物理トレーニングを始めていた。

 

 

それは、森に生える高さ八十メートルはある超巨大な樹木を根元から引き抜き、頭上まで持ち上げたまま、地上と地下空間を繋ぐ巨大なスロープを行き来するというものだ。

 

 

その重量たるや、おそらく数年後のトロスト区奪還作戦でエレンが持ち上げるあの『大岩』に匹敵するか、あるいは優に超える重さだろう。

 

 

最初は、八十メートルの巨木一本を担ぎ上げるのが限界だった。

 

 

だが、超回復(?)を繰り返しながら筋繊維を破壊し続けた結果、今ではその八十メートルの巨木を二本同時に担いだまま、地上と地下を一往復できるまでに筋力が跳ね上がっていた。

 

 

このトレーニングの真髄は、ただの馬鹿力だけじゃない。

 

 

いかにして力の配分をコントロールするかにかかっている。

 

 

少しでも力みすぎれば巨木は自重と俺の膂力でへし折れ、足腰の使い方が甘ければ、踏み込んだ瞬間に地盤が陥没してしまう。

 

 

十五メートルの巨躯と、八十メートルの巨木二本という天文学的な質量を、ミリ単位のバランスで制御する。

 

 

それが俺の身体操作能力を別次元へと押し上げていた。

 

 

次に、遠距離攻撃の確立だ。

 

 

俺は硬質化能力により、手元に直径二メートル程の極めて分厚いクリスタルの球体を生成する。

 

 

ただの石の塊ではない。その球体の内部には、リーシェの立体機動装置のガス補充にも利用した、超高圧・超高温の巨人蒸気を限界まで圧縮して充填してあるのだ。

 

 

俺はその特製爆弾を右手に握り込み、広大な地下空間の端に立つ。

 

 

そして、前世の野球の知識と、極限まで高めた身体操作能力を総動員し、十五メートルの巨体で『完璧な投球フォーム』を描いて全力投球する。

 

 

 

──────ヒュガァァァァンッ!!!

 

 

 

腕を振り抜いた瞬間、空気が爆ぜた。

 

 

放たれた二メートルの球体の瞬間速度は、容易く音速を超える。

 

 

コンマ数秒後。

 

 

遥か彼方の硬固な岩盤の壁に球体が着弾したと同時に、硬質化の殻が砕け、内部に何百倍にも凝縮されていた超高圧蒸気が一気に解放される。

 

 

─────ドゴォォォォォォォォンッ!!!

 

 

地下空間全体が激しく揺れ、着弾地点の分厚い岩盤が爆発したように吹き飛び、巨大なクレーターが形成される。

 

 

そして、遠く離れたマウンドにいる俺の元まで、遅れて凄まじい蒸気の衝撃波と熱風が叩きつけてきた。

 

 

(……完璧だ。『獣の巨人』の投石の投擲力も破壊力も、遥かに上回っている)

 

 

この蒸気爆弾を直撃させれば、鎧の巨人の装甲ごと中身を木っ端微塵に消し飛ばせるだろう。

 

 

仮に超大型巨人が相手だったとしても、着弾時の衝撃波と内部爆発で、奴のあの巨大な肉や骨の大部分が跡形もなく弾け飛ぶはずだ。

 

 

他にも、空気抵抗を極限まで減らした徹甲弾や、空中で無数のクリスタル片に分裂する散弾など、状況に応じた手札を次々と開発し、精度を高めていた。

 

 

だが、俺にとって、これらの破壊力の向上など、あくまで副産物にすぎない。

 

 

一番重要で、最も心血を注いでいる究極の訓練。

 

 

それは、自らの肉体の奥深くを知覚し、うなじの奥に『人間体を宿す』ことだ。

 

 

投球訓練を終え、静まり返った地下空間の中央で、俺は胡座をかいて目を閉じた。

 

 

破壊と再生を繰り返し、己の細胞の隅々まで神経を行き渡らせるイメージ。

 

 

度重なる修練により、もはや無限に近いエネルギーを宿すに至った奔流の中に、たった一つの小さな『核』を見つけ出す作業。

 

 

薄暗い精神の海を深く、深く潜っていく。

 

 

やがて……進捗は、確かにあった。

 

 

(……感じる。何となくだが、一番奥底に……俺の『本体』の輪郭を)

 

 

気の遠くなるような訓練の末、俺は微かに、だが確かに、十五メートルの肉の鎧の奥深くに眠る本来の俺の存在を知覚することに成功していた。

 

 

ただ、そこへ意識を完全に同調させ、肉体として再構築し『宿す』には未だ至らない。

 

 

分厚いガラス越しに、自分の手を見つめているようなもどかしさがある。

 

 

それでも。ただ知覚出来ただけでも、これは俺にとって途方もなく大きな成果だった。

 

 

「……待っていろよ、リーシェ」

 

 

誰もいない地下空間で、俺は静かに呟いた。

 

 

人間へと戻るための扉の鍵穴を、ついに見つけたのだ。あとは、これをこじ開けるだけ。

 

 

彼女が壁の中で、絶対に死なずに俺を待ってくれていると信じているからこそ、俺はどんな地獄の修練にも耐えられる。

 

 

俺の決意は、843年の夏の熱気よりもさらに熱く、地下の暗闇の中で確かな炎となって燃え続けていた。

 

 

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