進撃の巨人の世界に15m級の無垢(?)の巨人として転生してしまった……(リメイク版)   作:感謝君

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第三十五話

 

 

新兵たちに陣形へ戻るよう指示し、私自身も手綱を引いて本隊へ合流しようとした矢先のことだった。

 

 

ふと空を見上げると、一筋の赤い煙が風に流されていくのが見えた。

 

 

どうやら、パニックに陥った新兵のうちの一人が、逃げ出す直前に救援の信号弾を撃ち上げていたらしい。

 

 

地鳴りのような多数の蹄の音が響き、こちらから向かうまでもなく、前方から調査兵団の本隊が土煙を上げて駆けつけてきた。

 

 

到着した本隊の兵士たちが一斉に手綱を引き、馬の嘶きが響き渡る。

 

 

しかし、彼らは誰一人として言葉を発することができなかった。

 

 

人工物が一切存在しない、ウォール・マリア外の広大な荒野。

 

 

本来なら見晴らしの良いはずのその地平は今、大小様々な巨人の死骸と、そこからもうもうと立ち昇る凄まじい熱量の蒸気によって完全に覆い尽くされていたからだ。

 

 

白く濁った視界の中、本隊の先頭に立つ金髪の男──調査兵団をまとめるエルヴィン・スミス"団長"が、ゆっくりと馬を進み出て、重々しく口を開いた。

 

 

「……また君か、リーシェ……」

 

 

人類の希望を率いる冷静沈着な指揮官の声には、隠しきれない深い疲労と呆れが滲んでいた。

 

 

壁外からの帰還以降、私が叩き出し続けているバケモノじみた戦績に対し、いつも私の報告書を処理してくれている彼からすれば、また頭痛の種が増えたというところだろう。

 

 

「何か問題が?」

 

 

私は馬上で姿勢を崩さず、さも『私は何も悪いことはしていません』と言わんばかりの冷徹な態度で返答した。

 

 

エルヴィン団長は眉間を揉むようにして、ふぅ、と深い溜息をつく。

 

 

「……君が無双する度、新兵達が無茶をしだす。自分たちでもやれると錯覚してしまうからな。状況的に単独で殿を務めたのは仕方ないとは言え……はぁ……この惨状を、どう上に報告したものか……」

 

 

「ありのままを報告すれば良いのでは」

 

 

私が感情の起伏を一切見せずに淡々と提案すると、エルヴィン団長は私から視線を外し、私の背後で未だにガチガチと震えている新兵の一人を指差した。

 

 

「そこの君。巨人は何体いた」

 

 

突然団長から指名された新兵は、弾かれたように背筋を伸ばし、裏返った声で叫んだ。

 

 

「は! はい! 遭遇した巨人は、三メートル級から十五メートル級を含め、計二十四体であります!!」

 

 

その報告が平原に響き渡った瞬間。

 

 

背後に控えていた本隊のベテラン兵士たちから、「はぁ!?」「二十四体だと!?」「それをたった一人で……無傷で!?」「……人間じゃねぇ」と、どよめきと悲鳴の入り混じった声が一斉に湧き上がった。

 

 

無理もない。どう考えても人類の限界を超えている。

 

 

喧騒を背に受けながら、エルヴィン団長が再びスッと顔をこちらに向けた。

 

 

その青い瞳が、私をジトッと睨みつけている。

 

 

「……誰がこんなふざけた戦績を信じる」

 

 

指揮官のそのごもっともなツッコミに対し。

 

 

氷の女王の仮面を被った私は、一切の表情を崩さないよう必死に努めながらも。

 

 

「…………」

 

 

気まずさのあまり、そっと無言で視線を逸らしたのだった。

 

 

(ごめんなさいね、エルヴィン団長。でも、これも全部アトラスが私を強くしすぎたせいだから。文句なら彼に言ってちょうだい)

 

 

内心でこっそりと最愛の彼に責任を押し付けながら、私は蒸気が晴れていく荒野の風を、ただ静かにやり過ごしていた。

 

 

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