進撃の巨人の世界に15m級の無垢(?)の巨人として転生してしまった……(リメイク版)   作:感謝君

59 / 59
第五十九話

 

 

アトラスが小走りでリーシェの元へ向かい、待ってましたとばかりに広げられた腕の中にすっぽりと収まるのを、私は手元のメモ帳を両手でギュッと握りしめながら見送った。

 

 

「…………」

 

 

平原の風が私の前髪を揺らす。隣ではエルヴィンが死んだ魚のような目で虚空を見つめ、ミケは完全に現実逃避して雲の形を数え始めている。

 

 

背後の兵士たちは、もはや信仰対象を見つけた狂信者のように、両手を組んでひざまずき祈りを捧げている者まで出始めている始末だ。

 

 

だが、私の脳内は違った。

 

 

沈黙していたのではない。あまりにも規格外すぎる情報量が処理能力の限界を超え、再起動を余儀なくされていただけなのだ。

 

 

そして数秒後。私の脳髄は、沸騰するような歓喜と探究心と共に、猛烈な勢いで稼働を再開した。

 

 

(え? ちょっと待って。待って待って待って待って!?)

 

 

私は手元のメモ帳を開き、自分が先程震える手で書き殴ったインクの文字を、食い入るように見つめ直した。

 

 

『持久力:事実上無限』

 

 

『肉体再生:本体が無事な限り一瞬で無限に可能』

 

 

「あはっ……あははははっ! 無限!? 巨人の活動限界って、日光の有無や体力の消耗に依存するはずだよね!? それが無限!? 一体どこからその膨大なエネルギーを引っ張ってきているんだい!? 物理法則はどうなってるの!?」

 

 

私は自分の髪を両手でガシガシと掻き毟りながら、喉の奥から込み上げる笑いを抑えきれずに呟き始めた。

 

 

『遠隔攻撃:超高圧蒸気を圧縮した直径二メートルの硬質化球体』

 

 

『投擲速度:超音速』

 

 

『バリエーション:散弾、徹甲弾』

 

 

「超音速の投擲……! 直径二メートルのクリスタル球が音速を超えて飛んでくる!? 摩擦熱はどうなる!? というか、硬質化の内部にあの超高温の巨人蒸気を『超圧縮』して封じ込めるって、どれだけの内圧がかかってるの!? それを破裂させずに安定維持できるクリスタルの分子構造って……! しかも徹甲弾って、標的の硬度に合わせて弾頭の形状や密度を任意に変化させられるってこと!? そんなの、もはや歩く要塞……いや、意思を持った超巨大榴弾砲じゃないか!!」

 

 

ヨダレが出そうだった。

 

 

今すぐあのクリスタル球体を解剖したい。超音速で放たれる散弾の弾道計算をしたい。どうやって蒸気を圧縮しているのか、その仕組みをこの目で確かめたくてたまらない。

 

 

だが、それらすべてを過去にするほどの、最も狂ったスペックが最後に書かれていた。

 

 

『全身硬質化状態での全力打撃』

 

 

『破壊規模:半径十キロ圏内の地盤が一撃で崩壊』

 

 

「……半径、十キロ」

 

 

私はゴーグルの位置を直し、呆然とその数字を反芻した。

半径十キロ。

 

 

それは、壁内人類が暮らすウォール・ローゼやウォール・マリアの『突出区』の面積が、丸ごとすっぽり収まってさらにお釣りがくる規模だ。

 

 

つまり彼女は、大地のど真ん中で「えいっ」と地面を殴るだけで、一つの都市を、そこに住む何万人という人間ごと、一瞬で地図上から消し飛ばすことができるのだ。

 

 

文字通りの『地形変動』。歩く終末。神の怒りそのもの。

 

 

私は、ゆっくりと顔を上げ、少し離れた先へと視線を向けた。

 

 

そこには、人類最強の鬼神リーシェに背後からギュッと抱きしめられ、首筋に顔を埋められて身をよじって笑っている、漆黒のメイド服を着た極上の超絶美少女の姿があった。

 

 

「あはははははははははははははははっっ!!!」

 

 

たまらず、私は平原の空に向かって大爆笑を放っていた。

腹が千切れるほど可笑しかった。

 

 

狂っている。この世界は、最高に狂っていて素晴らしい!!

 

 

あんな、そよ風で飛んでいってしまいそうなほど華奢で、花の匂いがしそうな可憐な女の子が! 本来なら兵士たちに守られるべき深窓の令嬢のような存在が!

 

 

その気になれば、たった一発のパンチでこの広大な大地の地形を書き換え、人類を滅亡させられる絶対的創造主なのだ!!

 

 

「最高だ!! アトラス、君は最高だよ!! 私のこれまでの巨人研究が、全部赤子の砂遊びに思えるくらいの超特大のパラダイムシフトだ!!」

 

 

私はメモ帳を放り投げ、歓喜のあまり両腕を天に突き上げた。

 

 

「ねぇ!! アトラス!! リーシェ!! 頼む、お願いだ!! ちょっとだけ、ほんのちょっとだけ、その超音速の徹甲弾を『私に向けて』投げてみてくれないかな!?

軌道と風圧を至近距離で体感したいんだ!! 死んでも構わないから!!」

 

 

私がヨダレを垂らし、目を血走らせながら二人の甘い空間へと猛ダッシュしようとした、その瞬間。

 

 

「……班長! 落ち着いてください! 本当に死にます! 蒸発します!!」

 

 

「エルヴィンの胃がこれ以上もたねぇんだよ! 頼むから自重しろ狂人!!」

 

 

私の両脇に、モブリットとミケが凄まじいタックルをかましてきて、力ずくで羽交い締めにされた。

 

 

「放せーっ! 私は真理に触れたいんだ! アトラスの超高圧蒸気で吹き飛ばされたいんだああああっ!!」

 

 

平原のど真ん中で繰り広げられる、完全に理性を失った巨人オタクの絶叫と、それを必死に押さえ込む幹部たちの乱闘。

 

 

遠くでは、アトラスが「ハンジさん、大丈夫かな……?」と心配そうに首を傾げ、リーシェが「放っておけばいいわ。それよりアトラス、もう一回匂い嗅がせて」とメイド服のフリルに顔を埋めている。

 

 

もはや、巨人への恐怖など欠片も存在しなかった。

 

 

我々調査兵団が持ち帰る最大の成果は、「世界の真理」でも「敵の正体」でもなく、この理不尽なまでに美しく、そしてデタラメな力を持った一人のメイド美少女そのものなのだから。

 

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
点
※参考:評価数の上限
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。


  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

読者層が似ている作品 総合 二次 オリ

進撃の巨人の世界に15m級の無垢(?)の巨人として転生してしまった……(作者:感謝君)(原作:進撃の巨人)

信じられないと思うが聞いてくれ ▼俺は昨日までしがない大学生としてベッドに転がりながらいつも通り動画を見て惰眠を貪っていたんだ▼別にトラックに轢かれたとか、手違いで殺しちゃったから転生させるね!おじいさんにあった訳でもない▼気付けば俺はだだっ広い平原の真ん中で全裸で突っ立っていて▼鋼のような肉体に転生していたんだ▼……進撃の巨人の世界に……▼【リメイク版】…


総合評価:5921/評価:7.34/連載:258話/更新日時:2026年10月25日(日) 18:00 小説情報

転生したらTSメイドさんだった件(作者:砂入ばけつ)(原作:転生したらスライムだった件)

ごく普通の社会人、多田野名斗は通り魔に刺されて死んでしまう!しかし、目を覚ますとそこは仄暗い洞窟の中だった!▼体はメイド服を着た美少女になってるし、近くにいるのは謎のスライムだけ、一体どうなってしまうのか! ▼作者はアニメ勢です初投稿なので色々拙いですが微笑ましい目で見てください


総合評価:328/評価:7.5/連載:16話/更新日時:2026年08月06日(木) 05:16 小説情報

ニチアサ系世界に転生したTS魔法少女は悪の幹部をやりたくない(作者:なはた)(オリジナル:現代/冒険・バトル)

▼フィジカルよわよわなTS銀髪魔法少女がクール系敵幹部を必死に装いながら魔法少女達と戦うお話。


総合評価:3785/評価:8.51/連載:15話/更新日時:2026年10月28日(水) 11:09 小説情報

【悲報】目覚めたら巨人だった【敵じゃないよ】(作者:佐東)(原作:進撃の巨人)

目が覚めたら進撃の巨人世界で無垢の巨人になってた。▼「オ゙エ゙ア゙ア゙!ガオガオ!」▼(俺は敵じゃない!善良な巨人なんだ!)▼何とか人類の味方になったり人間に戻ったりしたい男の話。▼↓なんとなくのイメージ図を載せてみたり。▼【挿絵表示】▼心優しい化け物になる人外転生が好きなので自給自足しました。誰か書いてください。▼☆カニ・バ・リズム☆様からイオリのファンア…


総合評価:13079/評価:8.43/連載:40話/更新日時:2026年05月12日(火) 18:00 小説情報

個性図書館によるヒーローアカデミア(作者:ヨガマスター)(原作:僕のヒーローアカデミア)

ヒロアカを見ながらLibrary of ruinaをやってたら死んだっぽい。▼そしたらなんかヒロアカの世界に転生した。▼しかも個性図書館。▼……どうしよ?▼ヒロアカ世界で図書館の機能を使えるように拡大解釈と強化が施されてるのでそこで無理になった人は素直に見るのをやめましょう。▼あと作者は割とヒロアカのにわかだから設定に矛盾があったらごめん▼ちなみに個性図書館…


総合評価:3277/評価:7.93/連載:33話/更新日時:2026年08月12日(水) 12:03 小説情報


小説検索で他の候補を表示>>