ダンジョンの一室が俺の領地《テリトリー》なのでレベルUPさせてたら、なぜかラスボス扱いされています 作:黒おーじ
目が覚めると灰色の部屋にいた。
「あ? どこだココ……」
『ここは万駄ヶ谷ダンジョン地下99階の一室。今日からこの部屋はあなたの領地です』
寝ぼけた頭にそんな声が響く。
万駄ヶ谷ダンジョン?
日本にある世界最大級のダンジョンが確かそんな名前だった気がするが……
「ざけんな。誰だオマエ。出て来い!」
『出ては来られません……というか、出て来てはいるのです。私はこのダンジョンそのものですから』
「……ちょっと何言ってるかわかんねーけど? つーか、帰せよ! 拉致だぞコレ!」
『まあ、お聞きなさい。帰るのはいつでもできます』
ダンジョンそのもの、とやらはため息をついて続ける。
『あなたは昨日、お亡くなりになったおじいさんからの土地相続にハンコを押したでしょう』
「え……ああ」
確かに、そんなのあったな。
オヤジの話だと、じいさんが「この土地は悠太に」って言ってたらしい。
『でしょう? それですよ。だから、今日からこのダンジョンの一室はあなたの領地、テリトリーです。20畳あります』
「じいさんが持ってた土地って、ダンジョンの中だったのかよ……」
『正確には違います。あなたのおじいさんが持っていたのは、この万駄ヶ谷ダンジョンが発生する前の土地です』
どういうことだ?
『私がこの土地に発生したのが30年前。しかし、もともと地表と土地はあなたのおじいさんのモノだった。まことに申し訳ない話ですが、元の土地はダンジョンの入口として使い続ける必要がある。だから、私の内部の一区画と管理権限を与えることにしたのです』
「そう言われてもなあ……」
どうにも信用ならない。
「本当にここはダンジョンの中なのか? どっかの倉庫に閉じ込められているだけじゃねーの?」
『ダンジョンの最下層ですよ。壁の視覚透過率を上げてご覧いれましょう』
声がそう言うと、四方が急に森の風景に変わった。
「なっ……外? 壁が消えた!?」
『視覚上のことだけです。ほら、あちら』
気づくと、向こう側から何か生物が走ってくるのが見える。
……速い。
恐竜みたいなデカいのだ。
『レティノ竜ですね』
「わー、死ぬ!」
恐竜みたいなのは大口を開けてこちらへ突っ込んでくる……
が、その時。
牙が止まり、何かにぶつかったようにその場で横転した。
「な、何が起こった……?」
『言ったでしょう。壁は視覚上透過しただけ』
確かに、よく見るとさっきの細い線で部屋の縁だけ四角く区切られている。
『安心してください。少なくとも、あなたよりも戦闘能力が高い個体は、あなたの許可なく侵入することはできません。あくまでここはダンジョンの一室で、安全地帯なのです』
「ダンジョンって……どう見ても外じゃん」
森には木漏れ日がこぼれ、その向こうには青空がかいま見えている。
『最下層であるここ99階は、大陸一つほどの広さがあります。天井には光源もある。地上とそう変わらないでしょう?』
「大陸一つ?」
そんなに広いのかよ。
俺は改めて、細い線で区切られた部屋を見回した。
「だったら、もっと広い土地をくれてもいいじゃんか。じいさんの土地だって、20畳どころじゃなかったはずだぞ」
『今は20畳ですが、テリトリーを強化していけば広くなります』
「強化?」
すると、目の前に半透明の画面が浮かび上がった。
――――――――――――――――
領地レベル1(0/100)
広さ:20畳
領民:0
建設可能施設:井戸、畑、小屋
――――――――――――――――
「……ゲームかよ」
『こちらが現在の
「このレベルはどう上げればいいん?」
『横の数値を100まで貯めてください。領地を経営していれば自然と増えていきますが、初めのうちはアンロック項目をクリアしていくことをお勧めします』
画面の下に、新しい文字が並ぶ。
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アンロック項目:
施設を一つ建設する
施設を一度使用する
施設を三つ建設する
施設を一つレベル2にする
領民を一人に増やす
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とりあえず、何か作れってことか。
「施設って、どうやって建設すりゃいいの?」
『建設可能施設の中から作りたいものを思い描いて、土地へ手をかざしてみてください』
井戸、畑、小屋。
さっきの画面にあったのは、その三つだ。
じゃあ、井戸でいいか。
言われたとおり、井戸を思い浮かべながら床へ手をかざす。
すると、足元に光る四角形が現れた。
「お?」
6畳くらいはあるだろうか。
手を横へ動かすと、光の四角形もついてくる。
『その枠が建設に必要な範囲です。この位置でよいというところで手を地面へ置いてください』
「ここでいいか」
部屋の隅へ枠を寄せ、しゃがんで床に手を置いた。
四角形の内側が、ぱっと光る。
次の瞬間、そこには石造りの井戸があった。
小さな屋根までついていて、縄につながれた桶がぶら下がっている。
「すご……」
井戸の縁を叩いてみる。
硬い……
ちゃんと石だ。
その横で、画面の文字が変わった。
――――――――――――――――
領地レベル1(30/100)
施設を一つ建設する(済)
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「ああ、数値が上がった」
『その調子で領地を発展させていってください。では、私はこのへんで』
「え?」
『困った時には来ますんで』
「あ、ちょっ……おーい」
……静かだ。
本当に行ってしまったようだ。
ダンジョンそのものだって言ってたくせに、どこへ行くんだよ。
「どーすっかな」
目の前には、できたばかりの井戸がある。
中をのぞき込むと、暗い底で水面が光っていた。
とりあえず、使ってみるか。
桶を落とし、縄を引っ張る。
水をいっぱいに汲んだ桶を縁へ載せると、手ですくって口へ運んだ。
「……冷た」
うまい。
寝起きで喉も渇いていたので、もう一口飲む。
≪『施設を一度使用する』を達成しました≫
ふと、声が響く。
ダンジョンかと思ったが、「戻ってきたのか?」と問いかけても返ってこない。
代わりに画面をみるとこうあった。
――――――――――――――――
領地レベル1(60/100)
――――――――――――――――
「おお。あとちょっとじゃん」
作って、使うだけでこれか。
案外すぐに広くなりそうだ。
次はどうしようか。
畑か、小屋か……。
しかし、それらを思い浮かべて手をかざすと、部屋の区切りからはみ出してしまう。
≪施設『畑(LV.1)』は20畳必要です≫
≪施設『小屋(LV.1)』は15畳必要です≫
ああ、土地が足りないのか……
しまった。
不用意に井戸を作っちゃったのはマズかったかな。
どうしよう……
そう考えていると、視界の端で何かが動いた。
「ん?」
なんか小さい人影が、いつのまにか部屋に沸いていた。
その小ささは尋常じゃない。
背丈は俺のひざくらいか?
可愛らしい少年の人形みたいなヤツである。
「怖ぁっ……」
小人はジッと俺を見上げている。
何も言わない。
ただ井戸へ向かっていった。
「水かい?」
「……」
小人はそのまま桶に両手をかけ、顔を寄せて「ンぐンぐ……」と水を飲み始める。
ずいぶん喉が渇いていたらしい。
やがて顔を上げると、口元をぬぐい、井戸の脇へぺたんと座った。
≪施設『井戸(LV.1)』が使用されました≫
また不意に声が響いた。
≪領民が1人増えました≫
「え?」
≪領地レベルが2にあがりました≫
足元を囲んでいた細い線が、綺麗な緑いろに光った。
そのまま、機械のように外側へ動き始める。
「お、広がって……」
――ズオオオンッ!
なんかヘンな音がした。
見ると、さっきの恐竜が宙を舞っていた。
まだ部屋の近くにいたのか。
動いた透明な壁に押され、吹っ飛ばされたのだ。
地面に転がった恐竜は、起き上がって頭を振った。
そして、トボトボと森の奥へ去っていった。
可哀想に。
ヤツには災難だったな。
画面を見ると、レベルが上がっていた。
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領地レベル2(0/200)
広さ:30畳
領民:1
建設可能施設:井戸、畑、小屋
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確かに、井戸から向こうの空間が広がっている。
30畳になったってことは、畑か小屋のどっちかは建てられるってことか。
そして、領民1人……か。
「あいつ、もう領民ってこと?」
井戸の脇では、小人が足を投げ出してくつろいでいた。