ブルーアーカイブ ゲヘナ食堂いらっしゃいませ! 〜人型パンちゃんに転生した私、ゲヘナ給食部でパンちゃんたちを従えて無双…?〜 作:Di Gi O
作者は小説執筆の経験がないのはおろか、ブルーアーカイブも既プレイではありますが絆ストーリーやイベントストーリーはにわかもいいところです。
原作との設定の乖離、キャラ崩壊など多々あると思いますが何卒お目こぼしをお願いします。
誤字修正などの指摘も頂ければ大変ありがたいです。
それでは本文どうぞ。
プロローグ 給食部の日常
転生モノ。
現代人、それも若者なら大抵は知っている概念だろう。
ラノベやアニメでよく見るジャンルだ。
現代を生きる人間が、何らかの原因で死んだ後、別の世界に飛ばされるというものだ。
一口に転生モノと言ってもその内容はまさしく千差万別だ。
ある作品では転生特典などと称して特段努力もせずに神のような存在からチート能力を与えられ、現代より遥かに技術が劣る中世を想起させるような世界で無双するというものもあれば、特典も何も得ず、その身一つで危険な魔物が溢れる世界に放り出される鬼畜なダークファンタジーもある。
今のが極端な100と0の例えと言うだけで、この例の中間に当たる作風だっていくらでもあるだろう。
とにかく異世界転生とは今を燻る厨二病患者たちの心を刺激してやまない、素晴らしい妄想だ。
そう、妄想。
どこまで行っても妄想だ。
現実的に考えてみて、生物とは死ねばそこでおしまいだ。
実際に死ぬまでは天国も地獄も異世界もあるかなど判断のしようがない。
少なくとも私が生きていた現代、20世紀の始まり辺りにはそんな現象は確認されていなかったはずだ。
鬼〇の刃の上弦の弐だって言っていたではないか。
神なんて存在しない、人は死ねば無になるだけと。
もし仮にテンプレのように道を走る無碍の人間の運転するトラックに突撃して確実に転生できるという保証があったとして、いくら転生したいからと言ってそれを実行出来る狂人がいるだろうか。
正気の人間なら無理だろう。
もっともそれをなし得るからこそ狂人は狂人たりえるのだろうが。
とにかく長々と語ったが結局は何が言いたいのか。
つまるところ転生という現象は、作り話とわかっているものを傍から見るから楽しい、面白いと思えたという事だ。
その現象が起こると分かっていれば、狙って起こしたならまだ楽しみようがあったかもしれない。
退屈な現代から抜け出し、夢と希望、魔法とファンタジーが広がる異世界に思いを馳せることができたのかもしれない。
しかし、目の前に広がる新たな現実が私に見せたのは。
私に夢でも希望でもなく。
「けほっ、けほっ!もうジュリ!またなの!?またパンちゃんが…え?」
「うぅ、ごめんなさいフウカ先輩、またやっちゃいまし…はぇ?」
「げっほ!何これ煙た!?というか寒っ!え、何!?全裸!?ちょ、なんで私すっぽんぽんなん!?」
「「…」」
「ん?…え…ジュリ!?フウカ!?待って可愛い!!…というか嘘!?ってことはこの世界…キヴォt」
「「きゃあああああああぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!」」
牢獄にぶち込まれる自分の未来予想図を見せてきた。
キヴォトス。
この世界における生徒と呼ばれる少女たちは例外なく誰もが銃火器で武装しており、頭上に『ヘイロー』なる謎の光輪を戴いている。
『神秘』と呼ばれる超常的なエネルギーによって構成されているらしいそれは、ただ存在しているだけで生徒の耐久力を強化し、多少の銃弾程度では致命傷を負うことがなくなるのである。
キヴォトスの生徒たちが当然のように実弾兵器を持ち歩いている理由がこれである。
純粋な身体能力も強化されると思われる。
じゃないと軽量なハンドガンですら数kgあるのに、アサルトライフルやらスナイパーライフルやらを担いでいる生徒は筋肉モリモリマッチョマンの変態扱いになってしまうからである。
そんなイカれた箱庭の中、数千ある学園の中でもひときわ目立つ学校のひとつ。
ゲヘナ学園。
自由と混沌を重んじる校風であり、生徒は大抵角に尻尾、翼などの悪魔のような身体的特徴を持つ。
年がら年中暴動が起こるのは当然で、生徒同士のいざこざだけなら可愛いもの。
何が酷いと言えば、特に悪名高いふたつの部活が原因の一つであろう。
災害の片割れ、温泉開発部は無駄に多い部員数もさることながら、『温泉が湧けばなんでもいい』というあまりに杜撰な行動指針のせいで、ゲヘナ自治区どころかありとあらゆるゲヘナ外地区に出張っては許可も取らず道のど真ん中で開発をするという無法っぷり。さらに幹部の二人は高い能力を有しており、大抵の有象無象なら数の暴力と幹部、下倉メグの戦闘力。そして部長たる鬼怒川カスミのカリスマと計画性のせいで正攻法で抑えることは非常に困難である。
鬼怒川カスミ、ひいてはメグを除く温泉開発部全員に恐れられるゲヘナ学園風紀委員長、空崎ヒナの活躍が無ければ、キヴォトスは今頃温泉に沈んでいただろう。
過言ではないとはっきり言っておこう。
そしてもうひとつの災害、美食研究会。
こちらもゲヘナ内外問わず活動するアクティブな部活だが、なまじ厄介なのが温泉開発部のよく言えば竹を割ったような清々しい程の、悪く言えばTPOのTの字もない矢鱈滅多らな活動と違い、彼女らは赴いた店で出された料理、店の清潔さ、内装、接客などの質が高ければ正当に評価し、決して危害を加えない性質にある。
少なくともゲヘナ自治区においては、彼女らの来店後に形を残している店舗はまず一流の料理店だと認識される程に、彼女らが認めたという事実はネームバリューに与える影響が大きいのだ。
しかし、それだけ合格点のハードルが高く、評価が跳ね上がるということはそれ相応のリスクがあると言うこと。
彼女らは美食の為ならどんなことにも手を染める。
自らが所属する学園と犬猿の仲たるトリニティへ『ゴールドマグロ』なるト〇コにでも出てきそうな珍味を手に入れる為だけに4人でカチコミをかけて、正規の治安部隊たる正義実現委員会に追われるのはまだ可愛いほう。
何を隠そう、彼女らのお眼鏡に敵わなかった店は、爆破されるのである。
比喩ではない、物理的に。
例えその店舗の運営者が誰であろうと。
恐らく相手が神であろうと決してスタンスは変えないだろう。
『Eat or Die』。美食研究会が掲げる絶対的な行動指針。
食べるか、死ぬか。
彼女らに取って美食とは命そのものなのである。
こうして例を上げると、ゲヘナにはオツムハッピーセットしかいないのかと思われてしまうだろうがまだ待って欲しい。
雨の後には虹がかかるように、厳しい寒さや干ばつを耐え忍んだ果物は糖を蓄え極上の味となるように。
まさしく地獄たるゲヘナにも癒しを感じられる穏やかな部活がある。
そう、給食部である。
給食部。名は体をあらわすとはよく言ったもの。
その名の通り、給食を作る部活。
小学校、中学校に通っていた読者諸君は懐かしいと思う、現在進行形で通っている少年少女たちは今週の献立を思い出すであろう。
あの給食を作る平和な部活である。
高等部になると弁当持参の場所も多いだろうが、ゲヘナ学園では自由。
学園で彼女ら給食部に提供される給食を食べようが、自分でお弁当を持ち込もうが、お昼休みにその辺の料理店に駆け込もうが、コンビニやスーパーに重火器を片手にカチ込んで食料を強奪しようが、絶食の後野垂れ死のうが全ては自由なのである。
なにはともあれ給食部は平和な部活。
温泉開発部や美食研究会のように自ら火種を燃え上がらせるようなことはしない平和を愛する彼女らは今日も厨房にてお腹を空かせた少女たちのために腕を振るう…
「ジュリィ!!今日のオーダーあと何皿!?」
「目標数まで7020皿です!!」
「なんなの!!もぉぉぉぉぉぉ!!!またなのぉぉぉぉぉぉぉぉ!?」
なんて事はなかった。
ここはゲヘナ、キヴォトスでも有数のマンモス校である。
数千を越える学園が存在する学園都市において、『三大校』として名を挙げられると言えば、その規模が少しは伝わるだろうか。
何を隠そう、生徒の在籍人数は優に5桁を越えるのである。
もちろん給食部はあくまで所属している生徒たちが楽しく料理を作りながら、それを生徒たちに振る舞う活動をしている部活動。
誰かから圧力がかかっている訳でもなく、生徒全員が確実に給食を食べに来る保証もない。
彼女らが身を削って全校生徒分の給食を作る必要は無いのである。
では何故彼女らは料理を作り続けるのか。
料理への愛と責任感、ただそれだけである。
給食部部長、愛清フウカ。
ゲヘナ学園所属2年生。
綺麗な黒髪と曲がったおしゃれな角、素朴で優しい性格と素晴らしい料理の腕が魅力的な高校生。
当然ながら給食部に所属しているのは料理が好きで、それを誰かに振る舞うのも好きだからである。
前述した通り、偶にある上層部からの発注を除いては、誰かに指示されて無理やり料理を作らされている訳ではない。
しかしそれでも彼女は体に鞭を打って料理を作り続ける。
それを褒めてくれる人間がおらずとも。
ほとんど食堂に生徒が訪れず、作った料理の殆どが学園で飼っている動物たちの餌や自分たちの晩御飯、次の日の朝ごはんなどになるとしても。
「はぁ、はぁ!何よ!いっつも私たちが必死に人数分作ってもいっつも『食えなくはないけど…』とか『冷蔵庫にほとんど食料がない時に苦し紛れに作った残り物チャーハンくらいの味』とか言って残したり食べなかったりすることばっかりの癖に!今日に限ってなんで何千人も並んでるのよ!!」
「美食研究会の人達が今週は『美食強化週間』と称していつもの3倍の速度でチェーン店を潰して回ってるみたいで、あんまりお金が無い生徒さんは今週はずっと給食を食べに来ようとしてるみたいです!!」
「え、赤い彗星!?」
\カラアゲテイショクマダー?/
\ザッケンナコラー!/
\スッゾコラー!/
「都合のいい時だけ食べに来て!!!…うぅ、文句言いながらもちょっぴり人がいっぱいなのが嬉しい自分が憎いわ…」
「フウカ先輩、泣かないでください…私も頑張りますから!」
「ジュリ…気持ちは有難いけど本当に下処理だけでいいから…って、カットした鶏ももがもうない!?ごめんジュリ、角切り30kg追加!」
「分かりました!」
ここで読者諸君は思ったことだろう。
あれ?数千人分、下手したら5桁人数分の給食を作るのに、なんで2人しか出てこないの?他の部員は?と。
おぞましいことにこの部活、所属メンバーは二人である。
ミレニアムサイエンススクールという三大校の1つたる学園では、部活動は最低4人の部員がいなければ成立しないという校則があるが、ゲヘナはどうなのであろうか。
まぁ存在している以上、成り立っているという扱いなのだろう。
しかし書類でまかり通っていたとしても、人道的には通らない現実がここにある。
労基はどうなってんだ労基は。
「お待たせしました〜!唐揚げ定食のAセットです!お冷はセルフでお願いします!」
「やっときた、お腹ぺこぺこだよぉ。いただきまーす。」
シナッ。パサッ…
「…うーん…冷めてる…肉汁少ないし、パサパサだし…味付けは良いんだけどなぁ…」
「分かる〜。ねぇおばちゃん、レンジないのレンジ。」
「誰がおばちゃんよ!!?」
彼女の名誉のため言っておくが、まずフウカの料理の腕は1級品である。
どれくらい凄いかというと、先程述べた
ではなぜそんな彼女の手料理が生徒たちに酷評されるのか。
ひとえに、時間と人手不足である。
当然フライヤーが巨大とはいえ、一度に揚げられる唐揚げの数には限度があるし、数十人分を皿に持っては受渡し口で順番に渡すため、揚げたての唐揚げも冷めてしまう。
フウカがどんなに頑張っても精々一度に提供できるのは10〜20人前が限界。
大抵は提供する頃にはご飯は冷えてβ化し、揚げ物は表面がしなびて汁物は冷めてしまう。
そうなればいくら元が美味しくても完全なポテンシャルが発揮できないのも当然である。
「ジュリ!キャベツの千切りのストックも切れた!野菜庫からキャベツ50玉取ってきて!」
「は、はいっ!分かりました!…きゃぁっ!」
「ちょっ、ジュリ!?大丈夫!?」
「はい、大丈夫です、ごめんなさい!床に空薬莢が落ちてて転んじゃいました!」
「気をつけてね、安全第一だから!」
厨房に空薬莢が落ちているこの世界の正気を疑いたくはあるが、その前にもう1人の部員についても触れよう。
牛牧ジュリ。
ゲヘナ学園給食部所属、1年生。
整ったスタイルにピンクのロングヘア、角付きの頭に可愛らしい三角巾を身につけたこれまた可愛らしい生徒である。
愛清フウカと同じくゲヘナ生としてはとても珍しい善性を持ち、尊敬するフウカの為に日々料理の下準備に精を出す頑張り屋。
…下準備だけ、である。
ただでさえ2人しかいない給食部で、何故下準備だけ?と思ったことだろう。
無論サボっている訳でもないし、ましてや料理が下手な訳でもない。
彼女の料理の腕はフウカほどでは無いかもしれないが、十分人に振る舞えるだけの実力がある。
ではなぜ料理を本格的に手伝わないのか。
「あ、フウカ先輩!この皿、ミニトマトの盛り付け忘れてます!私がやっておきますね!」
「…え!?ちょ、ちょっと待ってジュリ!私がやるから待って!」
ちょこん。
「はい、完成で…へ?」
うじゅるっ…
ぐじゅっ…ぎゅぷっ!
「あ…」
「きゃああぁぁぁぁ!?千切りキャベツが全部マリモみたいな触手の塊にぃいいぃ!?」
どういう原理なのか。
呪いなのか祝福なのか、メカニズムは全く分からないが、何故か彼女が作った料理は尽くが謎の化け物へと変貌するのである。
この作った、という判定も中々曖昧なもので、どんなに丁寧にレシピ通り手順を踏んで作っても化け物に変貌するし、なんなら今回のように仕上げのトッピングをしただけでも突然変異を起こす。
彼女が料理を作った、完成させたという判定そのものがトリガーになるのかもしれない。
ねちょ…にちゃっ…
ずりずり…
「あぁ!ダメですキャベちゃんたち!せっかく作った唐揚げの上を這いずらないで!」
「呑気に名前付けてる場合じゃないでしょ!なんとかしてジュリぃ!」
「あ〜!唐揚げが粘液まみれに…でもなんか白くてねっとりしてるし、マヨネーズみたいで案外美味しそうじゃないですか?」
「(눈_눈)…」
とにかくこの性質のせいで、ジュリは本格的に料理に関わることができない。
故にフウカは毎日数千食、酷ければ5桁食の給食を必死こいて一人で作らなければならない。
生徒会である『万魔殿』から出される予算もギリギリであり、下手な仕入れをすればたちまち資金不足になるため、買い出しもフウカ本人があらゆる店舗へ直接赴き長期取引の交渉をしたり、直売所で直に仕入れたりしている。
こんな生活が続けば普通は部活を辞めるか、妥協するだろう。
無理に続ければ心も体も壊れるはずだ。
それでも彼女は料理を続けるのである。
料理を愛しているが故に。
それはそれとして休息は取って欲しいものである。
「ふぅ…今日の営業も終わりですね!」
「えぇ、お疲れ様…その、キャベツ…?どうするの?」
「うーん、うちで飼いますか?」
「却下。」
「うぅ、可哀想ですが自然に還すしかないですかね…」
「自然に還すというかもう別の何かに変貌してると思うんだけど。これ生態系壊れない?大丈夫?」
「これも私が至らないせい…フウカ先輩!私、明日こそは美味しい料理を作って少しでも先輩の力になりますから!」
「…ありがとう、ジュリ。気持ちだけで十分嬉しいわ。」
「そうと決まれば早速特訓です!一番の得意料理、パンケーキを今度こそパンちゃんにせず作って見せます!」
「えぇ、今からやるの…?うーん…あんまり増えたり巨大化したら困るから、とりあえず1枚だけ焼いてくれる…?」
「はい、分かりました!」
ここで出てきたパンちゃんという単語。
ざっくり言えば、『パンケーキの怪物』。故に『パンちゃん』である。
ブルーアーカイブ本編のジュリの衣装のひとつ、アルバイト制服姿の時のEXスキルでも描写されている通り、ジュリがパンケーキを作れば大抵これになる。
紫色のスポンジに緑色に溶けだしたバターのような何か。
重なったケーキ本体の段の隙間からは蛸のような触手が生えており、自由自在に動いて壁も這い回れる。
ある要因で巨大化することもあるらしく、知性も確認されており非常に厄介な生物(?)なのである。
「よし、ホットケーキミックスと、牛乳と、卵!バターも良いものを用意しました!」
「それじゃあ、私が隣で見てるから。手順通りにやってみて。」
「はい!まずはホットケーキミックスを計量して…しっかりふるいにかけてボウルに入れたら、牛乳と卵を入れて、しっかり混ぜて…」
「ダマにならないようにちゃんとかき混ぜるのよ…そうそう。」
「よし!次はフライパンにバターを入れて、加熱してしっかり溶かして…」
「あんまり強火にしたらダメよ。焦げ付かないように中火でしっかり中まで火が通るようにね。」
「はい!」
\フシャー!/
「キャベちゃんたちも応援ありがとう!私、頑張るから!」
「これって応援なの?威嚇とかじゃない?」
先輩が後輩の料理を指導する微笑ましい光景。
このワンシーンだけ切り取ればまさしく青春の1ページである。
しかしこの時の彼女たちは思いもしなかっただろう。
この後、またしても新たなパンちゃんを目にすることになろうとは。
「しっかり余熱ができたら、ミックス液を流し入れて…最初は下手に触らず見守る。ですよね!」
「うん。厚みやフライパンの大きさにもよるけど、すぐには火は通らないし、ひっくり返すのが早いと生地が崩れちゃうから。火の通りの見分け方は覚えてるわね?」
「もちろんです!加熱されて表面に気泡が浮き始めたら、ですよね!」
「そうよ。ミックスに入ってるふくらし粉が中で気泡を膨らませるから、それが沢山出始めたら焦らずにしっかりフライ返しを差し込んでサッとひっくり返すの。」
「はい!火が通るまでじっくり待ちます!」
\シャァーッ!/
「キャベちゃんたちも楽しみですか?美味しいパンケーキが焼けたら皆で食べましょうね♪」
「この子達ってパンケーキ食べるの?というか口どこ?」
そうしているうちに、生地の表面に気泡がうき始める。
ただようバターとバニラの混ざったいい香り。
「ジュリ、そろそろじゃない?」
「はい!焦らずフライ返しを入れて…やっ!」
「…うん、良い色ね。焦げ付きもないし形も綺麗。やっぱり上手いじゃない!」
「えへへぇ、上手く行きました!」
「もしかしたら今回は本当に行けるのかな…私、お皿とメープルシロップ取ってくる!」
「分かりました!」
フウカがタッタと駆け出して行く。
ジュリはニコニコと嬉しそうに火が通っていくパンケーキを見守っていた。
しかし油断はできない。
いつパンちゃん化するか分からないのだ。
しかしそんな警戒心とは裏腹に、特段トラブルもなく完全に火が通る。
「…もう、大丈夫ですかね?」
「お待たせ。お皿とシロップ取ってきたわよ。…うん、いい感じね。もう火は止めていいんじゃない?」
「はい!…火を止めて…お皿に重ねて…うん!綺麗です!」
「うーん、いい香り…美味しそう!」
「それじゃあ次は、盛り付け…ですね…。」
「…私がやろうか?」
「…いや、最後のトッピングまでが料理です!やらせてください!」
「…うーん…分かったわ。…一応、銃取ってきていい?」
「う、うぅ…そうですね、もしパンちゃんになったら危ないですし…」
いつもの顔(눈_눈)をしながらサブマシンガンを持ってくるフウカ。
調理場にMP7が持ち込まれている光景は現実を疑いたくなるが、冗談でもなんでもなくこのパンケーキは生物兵器になり兼ねないのだ。
読者諸君も自宅で料理していて突然完成品がタイラントになる可能性があるなら、火器の一つも準備するだろう。
最も現代日本ではハンドガンですら一部の警察官くらいしか持てないが。
「い、行きます…!」
「ゆっくりよ、ゆっくりやってね…?」
恐る恐る皿の上の重なったパンケーキに、四角いバターを乗せるジュリ。
何も起きない。
ホイップクリームを絞る。
何も起きない。
「…最後に…シロップ…。」
メープルシロップの蓋をポンと開け。
ゆっくりと傾ける。
光の反射で輝きながら注がれていく甘い蜜。
バターの上に折り重なるように注がれ、広がってパンケーキからこぼれ落ちていく。
ボムッ!!!!!
「きゃぁっ!?」
「ひぃっ!?」
突然皿の上のパンケーキが爆発し、煙を巻き上げる。
2人の少女は悲鳴を上げながら咄嗟に後ろに飛び退くが、上手く着地できず尻もちをついたりこけてしまったり。
いくら何度も経験しているとはいえ、食品が謎の爆発を起こして変異するなど慣れるに慣れないものだ。
「あぁっ、キャベちゃん!落ち着いてください!」
床を走り回るキャベツの千切りのような、マリモのような何かたち。
当然だ。どんな生物でも目の前の美味しそうな餌が突然自爆すれば焦って逃げ回るくらいはするだろう。
強いて奇妙な点があるとすれば。
そのキャベツたちは、
ここで先に言っておくと、ジュリが不本意に生み出してしまうパンちゃんは、基本的には同じ形だ。
材料によっては偶に巨大化したり、パンケーキ以外の形になることもあるが、大抵は紫と緑のパンケーキの見た目をした怪物であり、温泉卵を作っていてもパンちゃんとなる事がある。
つまり、今回のキャベツの千切りがその姿のまま異形と化したことは、ちょっとした異常事態なのである。
そもそもパンケーキ型の怪物自体が異常な存在ではあるが。
とにかく何が言いたいかというと、このキャベちゃんたちの発生事態が今回の異変の先駆けだったのかもしれない。
「けほっ、けほっ!もうジュリ!またなの!?またパンちゃんが…え?」
「うぅ、ごめんなさいフウカ先輩、またやっちゃいまし…はぇ?」
そして段々煙が晴れてくる。
2人は互いの無事を確認したあと、煙の発生源を見つめる。
またパンちゃんが産まれてしまったのだろうか。
脱走する前に早く捕まえて処理しないと。
そう考えるフウカ。
しかし、やがて完全に煙が晴れ、壊れた机とお皿の残骸の上。目の前に佇んでいたのはパンケーキ型の化け物ではなく…。
「げっほ!何これ煙た!?というか寒っ!え、何!?全裸!?ちょ、なんで私すっぽんぽんなん!?」
「「…」」
「ん?…え…ジュリ!?フウカ!?待って可愛い!!…というか嘘!?ってことはこの世界…キヴォt」
「「きゃあああああああぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!」」
腰あたりから緑色の粘液を垂らしながら蠢く紫色の触手を数本生やした、触手と同じ色の髪色をした
「…どういう状況?」