ブルーアーカイブ ゲヘナ食堂いらっしゃいませ! 〜人型パンちゃんに転生した私、ゲヘナ給食部でパンちゃんたちを従えて無双…?〜   作:Di Gi O

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 お気に入り登録数、400突破ありがとうございます!!
 初投稿の駄文でまさか赤評価まで頂けるとは思いませんでした……!
 これもお気に入り、ここすき、感想などを下さる読者の皆様のお陰です!
 今後とも当小説をよろしくお願いします!

 また、今回より本格的に給食部やゲヘナ学園での生活の描写をしていくのですが、ゲーム内で明かされていない情報や作者の知識不足で把握できていない箇所は推測を交えたオリジナル設定を前提に執筆して行くので、原作との大きな乖離が出てくる可能性があります。
 展開次第で後々修正したりする可能性もありますのでご了承くださいませ。
 原作ではっきり情報が出ている箇所との矛盾がありましたらコメントやメッセージでご指摘いただけると大変助かります!






 〜前回のあらすじ〜

 突如給食部一行の前に現れた風紀委員長、空崎ヒナ。
 なんでも給食部たちが来ていた商業地区の住人から救援要請を受け救援ついでに調査に来たらしい。
 3人を怪しむヒナに対しフウカはここまでの経緯を説明、ニロの特異な能力に驚かれはした物の普段の行いのお陰かなんとか信じてもらうことに成功。
 その後成り行きとはいえ給食部たちが不良たちを制圧した事に対する謝礼として、ニロのために風紀委員会の制式採用銃を工面してもらう事になった。
 ヒナにお礼を言い別れた給食部たちはニロの入学祝いにささやかなパーティーを開催。
 ニロが望まなければ何かを食べてもパンちゃんが産まれないという新事実も発覚しつつ、楽しくご飯を食べたあとはジュリの部屋でお泊まり。
 明日から始まる新生活に思いを馳せつつ、眠りにつくニロだった。


間章:自由、混沌、ゲブラーテン!
Folge 1 給食部、始業!


 朝、窓から射し込む朝日の光。

 静寂の中、聞こえてくるのは鳥の鳴き声とそよ風に揺れる木々の枝と葉の擦れる音だけ。

 1つの部屋で仲睦まじく眠っていた3人の少女は、1人ずつ目を覚ます。

 

「……ん……んん……朝……?」

 

 最初に目覚めたのは黒髪に長い角の映える少女。

 ゲヘナ給食部部長、愛清フウカである。

 

「はぁ……あんまり寝れた気がしないわ……結局ニロの粘液もどうしようもなかったから放置したし……うわ、布団がベトベト……。」

 

 フウカはため息を着きながら自分が被っていた布団を畳み、隣でまだ寝ているジュリとニロを見る。

 

「……仲良いわね……触手がジュリの身体に絡みすぎて神話の絵みたいになってる以外は平和ね……。」

 

 どうやら寝ぼけていたのかジュリがニロを抱きしめて眠っており、抱き返すようにニロが4本の触手をジュリの肢体に絡みつかせている。

 寝言を言いながら眠っているニロ。

 

「うへへ……新キヴォ都ス……アリス……」

 

「ZzzってそのZzzだったのね……。」

 

 フウカは呆れながらも夢を見ている少女を見て微笑み、起こさないよう立ち上がって部屋を出る。

 現在時刻は06:00前後。まだ起こさずとも良いだろう。

 ジュリの部屋を出て、隣の自分の部屋の洗面台で顔を洗い、制服に着替える。

 身だしなみを整え、エプロンを付ける。

 

「さて、泊めて貰ったわけだし、朝ごはんくらいは作ってあげるとしましょうか。」

 

 フウカは笑顔で自室備え付けのキッチンを使い、テキパキと朝ごはんを作り始めた。

 ベーコンを焼き、トーストを焼き、目玉焼きを焼く。

 レタスをちぎって水に晒し、焼きあがったトーストにバターを塗ったあとレタスをしっかり水を切ってから乗せ、その上に焼きたてのベーコンと目玉焼きを乗せれば塩コショウとマスタードを軽くかけて完成。

 特製ベーコンレタストーストである。

 

「うん、いい出来。あの子たちもそろそろ起きてるかしら?」

 

 フウカは3つ作ったトーストを容器に詰めて袋に入れ、腕にかけてまたジュリの部屋へと戻る。

 ドアを開け、布団を敷いてあった場所に向かって声をかける。

 

「おはよう、2人とも。もう朝よ。朝ごはん作って……き、た……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ぬちゃ……にちゃぁ……

 

「う〜ん……そこは……らめぇ……♡」

 

「へへ……やわこい……マシュマロ……。」

 

 

 

 

「ナニしてんのよぉおおぉぉおおぉぉ!!?!?」

 

「うわあぁあ!!?!?」

「きゃああぁあ!?」

 

 

 部屋に入って最初に目に入った光景が、後輩が触手でもう1人の後輩を持ち上げパジャマの隙間から全身を舐っている光景であれば、このような悲鳴も出ると言うものだろう。

 突然の悲鳴に飛び起きる二人。

 

 ドンッ!

 

「あいたっ!?え、あれ!?なんで私今落っこちたんですか!?」

 

「んぇ!?あ、あれ?ジュリママ?何でそんなネバネバなの!?」

 

「うわ、本当です!?なんで私ヌメヌメに!?」

 

「なんでじゃないわよ!!朝っぱらから触手プレイ拝まなきゃ行けないこっちの身になってくれる!?」

 

「え、触手プレイ!?」

 

 困惑するニロとジュリに怒るフウカ。

 さすがにこれは怒っても許されるだろう。

 

「ってうわ!?本当だ!?布団がベトベトだし、ママも!?」

 

「あら、本当ですね……。うふふ、全身でニロちゃんを感じれて悪くない気分です♡」

 

「私の気分も案じて欲しいんだけど???」

 

 朝っぱらからナニを見せられているのだろうか。

 フウカはいつもの顔( 눈_눈)でため息をつく。

 

「とりあえず先にシャワー浴びたら……?」

 

「うふふ、そうしましょうか。流石にこれでは登校できませんし。」

 

「私、触手のカバーかなにか探してみる……。」

 

「そうしなさい……普通に一人で寝る時も毎回ベトベトになるのは悲惨すぎるし……。」

 

 ニロ自身もべっとりとした紫色の粘液に染まった布団と枕を見てフウカと同じ顔でげんなりしながら、布団を畳んで浴槽へ運んで残り湯に漬けるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「それじゃあ気を取り直して……。」

 

「「「頂きます。(!)」」」

 

 ジュリがシャワーを浴びてニロと共に制服に着替えた後、3人は気を取り直して朝食を取ることに。

 ジュリの部屋の机にココアとフウカが作ったトーストを置いて、一緒に食べ始める。

 

サクッ

ジュワァ……

 

 3人がトーストにかぶりつくと、軽快な音で食パンの耳が潰れ、同時に口内にベーコンの旨みと塩気、目玉焼きの白身の柔らかい食感、バターの香りと脂気が口に突き抜ける。

 

「ん〜!おいしい!」

 

 ニロが触手を揺らしながらご機嫌な声を上げる。

 

「さすがフウカ先輩、ちょっぴり冷めてるのにサクサクで美味しいです♪」

 

 ジュリは笑顔のニロを見つめて自分も笑顔になりながら、美味しそうにトーストを食べ進める。

 

「ふふ、我ながら良い出来。2人の口にも合ったみたいで良かったわ。」

 

 フウカもココアを飲んでほっと息をつきながら、2人の反応を見て微笑みを浮かべる。

 

 ついさっきまで布団も身体もヌメヌメしていたとは思えない平和な光景である。

 

「それじゃあ黄身も……はむっ!」

 

ジュワァ……。

 

 ニロがトーストの真ん中にかぶりつく。

 すると歯が入った黄身の膨らみから黄金色のねっとりした液体が溢れ出し、ニロの口内を濃厚な旨みで満たす。

 

「ん〜♡最っ高!」

 

 ニロは口をほころばせながら感嘆の声を上げる。

 

「うふふ、ニロちゃん♡お口から黄身が零れてますよ♡」

 

「ん……えへへ、ありがとママ。」

 

 ジュリがティッシュでニロの口元を拭いてあげる。

 ニロはされるがまま拭いてもらい、ジュリに撫でられ顔を綻ばせている。

 

「……どうしよう、2日目なのにもう傍から見たら本当に親子に見えてきたわ……。」

 

「うふふ、私と先輩の子ですよ、あなた♡」

 

「それは遠慮しておくわ……。」

 

「あはは……。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 時刻は07:30頃。

 3人は着替え、登校準備をして寮から出発し、校舎へと向かう。

 学生寮はゲヘナ第1校舎から少し離れた場所にあり、徒歩で15分ほどの距離である。

 登校時間は基本的に07:30〜08:00。始業が08:15であり、下校は16:30。

 しかしこれはあくまで学校が定めている時刻であり、実際は部活動によっては07:30よりずっと早く登校する生徒もいるし、16:30を過ぎても校内で部活動や勉学に勤しむ生徒、好き勝手に暴れる生徒もいる。

 給食部に関しては基本的に平日は規定通りの時間に登下校し、土曜に大規模な仕込みをして、日曜は自由に過ごすというスタイルを取っている。

 本日は水曜日、週半ばである。

 つまり、通常通りの登校をし、通常通りの昼営業をするのである。

 

「さて、とりあえず今日からニロには給食部の部員として、一通りの仕事を覚えてもらうわ。最初は分からないことも多いと思うから、気楽に質問して頂戴。」

 

 フウカが振り返りながらニロに微笑みかける。

 ニロはジュリに手を引かれフウカの後ろを歩いていた。

 

「うふふ、ママとパパがしっかり教えてあげますからね♪」

 

「ありがとうママ。……えっと、フウカ先輩。早速質問いいです?」

 

「あら、まだ登校中だけど、なにかあった?」

 

「えっと、一応私たちって学生なんですよね?時間割見たんですけど、始業時間の08:15の後、昼休みと放課後まで全部空きコマって書いてあるんですけど……授業とかって……?」

 

「あぁ。キヴォトスでは基本的に形式ばった授業はないの。キヴォトスの外ではクラス分けして教室事に色んな授業をするって聞いたことあるけど、少なくともゲヘナでは教育用BDを使った自主学習がメインね。」

 

「へぇ〜……つまり、勉強は全部自己責任でやるって事です?」

 

「そういう事ね。一応学期事に定期試験はあるけど、それもまぁ形式上やらないといけないから仕方なく学校側も準備してるって感じだもの。あと何より……。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「まともに授業したところで、ゲヘナ生の9割9分くらいは参加しないでしょうし。」

 

「あぁ……。」

 

 ニロは大体察した。

 そういえばブルアカ本編でも授業らしい授業ってあんまり見たことが無かった気がする。

 先生以外の人間の大人はいないらしいし、そもそも先生と呼ばれる人物がプレイヤーの先生しか居ないということは、そういう事なのだろう。

 ましてやゲヘナでは真面目に授業を受けるどころか登校している生徒すら半数を切っている。

 授業に割くコストすら無駄なのだろう。

 

 

「ま、そういう事だから、登校したら私たちなんかはそのまま部活動ね。午前中はひたすら仕込みをして、お昼に営業。それが終わったら片付けや次の日の仕込みをして、終わったら自由時間にしてるわ。自分たちの勉強は大抵自由時間や帰ってからしてるわね。」

 

「ニロちゃんのお勉強もママが見てあげますからね!」

 

「ありがとうママ、確かに勉強もしないとなぁ……。」

 

 流石に数学や物理法則などは元いた現実と同じだろうが、それ以外の部分、特に歴史や地理は間違いなく異なっているだろう。

 せっかく入学出来たのに成績が振るわず落第、退学なんて事になったら間抜けすぎるのでそれは回避しなければ。

 

「ま、別に勉強出来なくても大丈夫だと思うけどね。」

 

「え?それまたどうして?」

 

「なんでもほぼドロップアウトした4人のゲヘナ生が自分たちで勝手に会社を立ち上げて活動してるらしいの。たしか便利屋……69?」

 

「68だと思います。風俗業でもない限り。」

 

 あんまりな間違いを速やかに訂正してあげつつ、今出た名前を反芻する。

 便利屋68。風紀委員会、特に空崎ヒナと並んでもはやブルアカの顔の1つと言っても過言では無いほどのゲヘナ屈指の人気キャラの集まり。

 そういえばアビドスでのメインストーリーでは指名手配犯としてアコに本来の目的を隠すための隠れ蓑のターゲットにされていたはず。

 

「学園の許可なく勝手に会社を作った上、登校もテストも放棄してるから、ほかの学園なら退学でもおかしくないはずなんだけど、うちに回ってくる生徒名簿にまだ名前があったから、一応まだ生徒扱いなんだと思うわ。それだけの問題児が放置されてるんだし、成績が振るわないくらいでは学籍が消えることは無いと思うし、安心しなさい。」

 

「へぇ……。まぁでも、勉強はそんな嫌いじゃないですし、部活に迷惑がかかるのも嫌なので、程々に勉強しておきます。」

 

「ふふ、真面目なのね。そういうことなら頑張りなさい。」

 

「真面目ないい子に育ってくれて嬉しいです♡」

 

「生後1日だけどね。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 給食部。

 月曜から金曜の11:00〜13:00まで営業しているゲヘナの部活動であり、今までは部員数二人で毎日数千人分の給食を作っていたが、今日から3人で作ることになる。

 

「さて、それじゃあまずは点検から始めましょうか。」

 

 食堂にたどり着いた給食部一行。厨房に入り、フウカが二人に指示を出す。

 まずは設備の点検である。

 給食部でなくとも、何かを生産、加工する職業であれば使う道具の点検、手入れは大切な事だ。

 ましてここは給食部、飲食に関わるなら衛生管理は特に入念に行うべきである。

 

「コンロやオーブン、換気扇……とにかくある設備は全部ちゃんと点検するのよ。」

 

「私は料理に直接関わるとダメにしちゃうので、ここで頑張りますよ!」

 

「健気すぎてすごく辛い……。」

 

 少しでも役に立とうとするジュリに少しうるっときながらも指示通りに点検していく。

 

 2人の手入れは普段から丁寧に行われているようで、換気扇には油汚れのひとつもなく、コンロは錆びもなく、オーブンは焦げ付きもない。

 点検は順調に終わっていく。

 

「えっと、冷蔵庫は……」

 

 パカッ。

 

\シュイ?/

 

「うん、プリちゃんの状態も良し、ですね♡」

 

 ジュリが冷蔵庫で寝ていたプリちゃんを見て微笑む。

 

「……今更なんですけど、パンちゃんの存在は衛生的に問題ないんです?」

 

「……今のところ、パンちゃんを直接食べる以外の健康被害でのクレームは入ってないから……多分、大丈夫じゃないかしら……。」

 

 サラッと質問され、いつもの顔で答えるフウカ。

 産みの親の一人のニロではあるが、それはそれとして気になるものである。

 

\シャー!/

 

「あ、キャベちゃんは野菜庫でしたか。今日も良い瑞々しさですね!」

 

 ジュリが野菜庫を開いて、棚の中で蠢いているキャベちゃんを撫でる。

 

「犬猫みたいに撫でてますけどあの子の手触り千切りキャベツですよね?」

 

「本人が好きで撫でてるんだからいいんじゃない?」

 

 ジュリの無償の愛をスルーするフウカ。何はともあれ点検完了である。

 

 

「さ、そしたら仕込みをしましょうか。えっと、今日の曜日限定メニューは……。」

 

 フウカはメニュー表を見る。

 

「お、メニューですか?どれどれ?」

 

 ニロは横からその表を覗き込む。

 そこには

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

〜限定メニュー表〜

 

 

 

月:野菜炒め

 

火:唐揚げ定食

 

水:カレー定食

 

木:焼魚定食

 

金:焼肉定食

 

 

 

 

「おぉ〜……なんか、思ってたより豪華ですね。もっとこう、学校給食って感じのメニューを想像してました。」

 

 まるで定食屋のような素朴ながらご飯の進みそうなメニューに感嘆するニロ。

 

「まぁ食券制でちゃんとお金取ってるしね。ある程度のクオリティは無いと誰も食べてくれないし、ご飯は楽しく食べるものでしょ?」

 

「出来るだけ豪華なメニューを安く食べてもらうために、小規模ですけど野菜もうちで作ってるんですよ♪」

 

「へぇ〜……そっちもまた手伝わないとですね。」

 

「うふふ、焦らなくてもゆっくりでいいわよ。それじゃ、お昼の準備をしていきましょうか。」

 

「「はい!」」

 

 3人はしっかり手を洗い、準備を始めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「それじゃ、まずは野菜の準備ね。野菜庫の場所はさっき見たわよね。そこからジャガイモを取ってきてくれるかしら?」

 

 フウカがニロに指示を出す。

 

「わかりました!ちなみに量はどれくらいで!」

 

「160kgくらいね。」

 

「え何て?」

 

「160kg。」

 

 サラッととんでもない事を言うフウカ。

 冗談でもなんでもない様子である。

 

「……ちなみにそれはどう言う計算で?」

 

「全校生徒が大体1万人として、毎日確実に給食を食べに来るのが2000人くらい、ただ最近は美食研究会とか色々と騒ぎを起こしてる人達のせいで飲食店が休業したりしてこっちに食べに来る子が増えたから保険をかけてもう2000人分。合計4000人分ね。」

 

「ちゃんとした計算だった……。」

 

「ちなみに玉ねぎは240kg、人参は120kgですよ!頑張りましょうね、ニロちゃん♪」

 

「OMG……。」

 

 遠い目をするニロ。しかし現実問題作らなければならないのだ。

 ましてやこの量なら早く始めないと間に合わないのは明白である。

 

「ほら、放心してないで始めるわよ?ジュリ、皮むきと水洗い、カットまで教えてあげてくれる?その間にお肉運んでおくから。」

 

「わかりました!それじゃ、やってみましょうか!」

 

「ウィ……。」

 

 既にゲッソリしながら、2人は野菜庫に入った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「じゃがいもはここにあります。紙袋ひとつに20kgで分けてあるので、8袋持っていきましょうか!」

 

「分かった。……そういえば、私触手あるし、これで運べないかな?」

 

 ジュリから場所と数の指示を受け、早速運ぼうとするニロ。

 試しに触手で持ち上げられないかやってみると……。

 

 

 ヒョイっ。

 

「おぉ。」

 

「まぁ!ニロちゃんは力持ちですね♪」

 

 思ったより簡単に持ち上がった。触手1本で1袋、両手で1袋抱えて計5袋、重量にして100kgである。

 

「あぁ、袋がぬめっちゃうから次からなんかカバーつけないと。とりあえず運んでくる!」

 

 ニロは急いで野菜庫を出る。

 

「よぉし、私も負けてられませんね!」

 

 ジュリは自分も負けじとじゃがいもの袋を抱える。

 

 

 

「ふぅ、これで5袋か。あと3袋……って……。」

 

「うんしょ、うんしょ。」

 

「え、すご……。」

 

 ニロが5袋を調理台の上に置き、残り3袋を取りに行こうと振り返ると、既にジュリが3袋を重ね、抱えて運んできていた。

 サラッと持ってきているが、60kgである。

 概ね男子高校生1人をスタスタ運んできていると考えてもらえば分かりやすいだろうか。

 

「ママ、力持ちだね……。」

 

「うふふ、これでもちゃーんと鍛えてますから♪さ、次は人参と玉ねぎですね!行きましょう!」

 

「おー。」

 

 

 

 

 

 

 人参と玉ねぎも運んできた二人。

 机の上には紙袋にパンパンに詰まった野菜が所狭しと乗っている。

 

「……避難所の炊き出しみたいな光景。」

 

「さ、それじゃあ剥いていきましょうか!ニロちゃんはピーラー派ですか?それとも包丁派ですか?……というかそもそも産まれたてでしたね?刃物って危ないんじゃ……。」

 

 ジュリがパンと手を叩き、ニロに質問する。

 

「あ〜、うーん……なんというか……本能?で、分かるから大丈夫。ピーラーは使えるよ。」

 

 少し考えた挙句、苦し紛れの説明をするニロ。

 普通の人間なら間違いなくどういう事と聞き返す内容だが。

 

 

「おぉ!やっぱりうちの子は天才ですね♪」

 

「呑気で良かったぁ……。」

 

 親バカの極みたるジュリは特段疑いもせずそういうものだと受け入れてくれた。

 転生者どうこうは必要になればいずれ話せばいいし、自分のことも鮮明には思い出せないからありがたくはあるのだが。

 

「それじゃあ私はカレールーとお鍋の用意をしてきます!その間はお任せしますね!何かあったらあっちにいるのですぐ呼んでください!」

 

「分かった、やってみる!」

 

 ニロに指示を残したジュリは鼻歌を歌いながら食料庫へと入っていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 早速皮むきをしてみるニロ。

 ピーラーでするすると皮を剥いていく。

 しかし。

 

「……効率悪いかなぁ……1個150gくらいって考えても1000個近く剥かないといけないんだよね……」

 

 手でジャガイモを取り、全体の皮を剥いてボウルに入れていくという工程。丁寧にやっていれば早くとも1つ1分程度はかかる上、たまに芽が出ているものもあるためそれを取り除くとさらに時間がかかるのだ。

 このままではジャガイモを剥いているだけで日が暮れてしまう。

 

「うーん……触手使っても私1人じゃなぁ……。」

 

 試しに触手も使ってみる。ニロの触手はパワーとスピードだけでなく精密動作性も精巧なシュガークラフトを作れるほどに高い。1本でジャガイモを持ち、1本でピーラーを使う。

 これで手と合わせて3つを同時並行できる。

 しかし、それでも1分間に5つ程度が限界だ。

 

「だいぶペースは上がったけど、これだけじゃまだまだだなぁ。……はぁ、猫の手も借りたいなぁ。」

 

 ため息をつきながらジャガイモを剥き続けていると。

 

 ちょんちょん。

 

 足を何かに突っつかれる感覚が。

 

「ん?」

 

 足元を見るニロ。

 するとそこには。

 

\フシャ!/

 

 

「キャベちゃん?……もしかして、手伝ってくれるの?」

 

オマカセ。

 

 数匹のキャベちゃんが、ニロの足元に擦り寄って触手でちょんちょんとつついてきていた。

 思念波から考えても、料理を手伝ってくれるつもりらしい。

 

「ありがとう!……あーでも、さすがに皮むきは無理かなぁ……?」

 

 キャベちゃんの全長は5〜10cm程な上、触手も全身からキャベツの千切りのような形のものが大量に生えている形のため、器用に道具を持って使うのはさすがに難しいだろう。

 そう判断したニロは好意を無下にしまいと簡単な命令をしようとする。

 

「よし、それじゃあ机の上からこっちにジャガイモを渡してくr……って何してるの?」

 

 ニロが指示を出そうとキャベちゃんの方を見ると、何故か机に登ったキャベちゃんの一体がおもむろに机の上のジャガイモに張り付いた。そして。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ギャルギャルギャルギャルギャルッ!!!

 

 

 

 

 

「いやグラインダー!!?」

 

 

 

 

 

 なんとキャベちゃんは全身の触手をピンと尖らせて、凄まじい速度で回転を始めた。

 その回転スピードが発生させる破壊的なパワーは瞬く間にジャガイモの皮をタワシでこすったかのように抉り取り、さらに芽まで丸ごとこそぎとってしまった。

 この間わずか3秒程度。

 皮も芽も丁寧に取り除かれた丸いジャガイモが出来上がっていた。

 しかも回転の遠心力によってキャベちゃんの触手から分泌されている粘液はほぼ付着せず、隣のシンクに飛んで行っている。

 これなら軽く水洗いするだけで良さそうだ。

 

 

「す、すごい……!このスピードなら余裕で終わる!……よーし、キャベちゃん、全員集合!!」

 

\\\\\シャー!/////

 

 ニロがキャベちゃんを集合させると、5匹程がニロの前に整列した。

 

「このまま全部皮を剥いちゃうよ!それが終わったら人参と玉ねぎも!」

 

\\\\\フシャーッ!/////

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「戻りました〜!どうですかニロちゃん、上手くやれてまs……」

 

 

 

ギャルギャルギャルギャルギャルッ!!!

 

 

 

 

「いやどういう状況です!?」

 

 

 

 

 戻ってくるや否や調理台の上で高速回転する5つの緑色の物体を目の当たりにし困惑するジュリ。

 さらにその横には。

 

「……って、嘘!?もうジャガイモの皮むき終わったんですか!?水洗いもしてあるし、人参ももう終わりかけてます……!」

 

 なんとニロ一人では流石に終わらせられないだろうと思っていたジャガイモの皮むきが既に終わっており、ジャガイモが山積みになった巨大なボウルが数十個できていた。

 既に人参のボウルも大量にできている。

 

「あ、ママ!おかえり!」

 

「あぁ、ただいまです……って、挨拶は嬉しいですけどこれは一体?」

 

「えっとね、昨日産まれてから食堂に住み着いてたキャベちゃんが手伝ってくれて……あとはまぁ、ご覧の通りと言うか……。」

 

 触手を片手間に動かしつつ、キャベちゃんを指さすニロ。

 5匹のキャベちゃんがひたすら人参を全身で削り取っている。

 

 

「な、なるほど……キャベちゃんたちの身体にそんな使い方があったとは……すごいですニロちゃん!この効率ならあっという間に終わっちゃいますよ!」

 

 困惑のち大興奮するジュリ。

 愛するニロとパンちゃんが大活躍でママも面目躍如である。

 

「えへへ……よぉし、それじゃあカットして行こう!」

 

「おーっ!」

 

 ニロとジュリは皮むきをキャベちゃんたちに任せ、一緒に剥けた野菜のカットを始めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「戻ったわよ〜。どうニロ、ジュリ。さすがにあの量はすぐには無r」

 

 

ギャルギャルギャルギャルギャルッ!!!

 

 

トントントントントントントントントントントントントントントントン!!!!

 

「打打打打打打打打打打!!!!!」

 

 

「いやどういう状況!?」

 

 

 手押し車に山積みの牛肉を載せて戻ってきたフウカが厨房に入ると、そこではキャベちゃんたちが回転しながら玉ねぎを削り取っており、さらにジュリが普通に野菜をカットしている隣でニロが両腕と触手で3つのまな板を使って凄まじい速度で野菜をカットしている。

 ジャガイモは既に全てが乱切りされており、人参も終わりかけである。

 

「あ、フウカ先輩!ジャガイモは切り終わって人参も終わりかけなんであとは玉ねぎだけです!」

 

「いやそれはありがたいんだけど先に説明が欲しい!脳が理解を拒んでるから!」

 

 ジュリが笑顔でフウカを迎え入れるが、流石に優先順位というものがあるだろう。

 フウカは説明を求める。

 

「説明と言われましても……キャベちゃんが手伝うって言ってくれたので任せてみたらこれになりました。」

 

 

ギャルギャルギャルギャルギャルッ!!!

 

 

「その子って元はキャベツの千切りだったわよね!?なんでそんなウニみたいな姿になって高速回転してるの!?」

 

「まぁ元がトンチキな生き物ですし……。」

 

「献身的で可愛いですよね♡」

 

「献身が物理的すぎるのよ!」

 

 フウカが突っ込んでいる間に玉ねぎ剥きも終わってしまったようで、回転をやめたパンちゃんたちが玉ねぎをポイポイと運んでボウルに投げ入れている。

 

「あ、終わった?ありがとねキャベちゃんたち。」

 

「助かりました!さすが私の孫♡」

 

「孫判定なの?」

 

 ニロとジュリは仕事を終えたキャベちゃんたちを撫でる。

 

\シャー!/

 

「……すごい鳴いてるけど、ニロって何言ってるか分かるんだったわよね?」

 

「あぁはい。えっと……。」

 

ナンカクワセロ。

 

「なにか食べたいって言ってますね。」

 

「何かって何を?」

 

「さぁ……。」

 

 翻訳するニロ。しかし相手は生態がまるで理解できない珍生物。

 一体何を与えればいいと言うのか。

 するとキャベちゃんたちはシンクへ向かい、自分たちが剥いた野菜くずの山の上に身体を乗せる。

 

「ん?何してるの?」

 

 ニロが首をかしげたのもつかの間。

 

ジュブジュブ……

 

「……うわ……。」

 

 フウカがものすごい顔のしかめ方をする。

 なんとキャベちゃんは野菜くずの上で触手を蠢かせながら山を削り始めた。

 

「……これって……野菜くずを食べてるんですかね……?」

 

「いや私に聞かれても……。まぁ、そうなんじゃないの?……って、えぇ!?野菜くずを!?いっつも処理して畑の肥料にしてもまだ使いきれなかったから困ってたのに!?」

 

 フウカが驚愕する。

 確かに給食部で管理している畑があるので、多少の野菜くずであれば肥料として処理できていたが、それではとても追いつかなかった野菜くずの処分。

 今後パンちゃんたちがそれを食べて処理してくれるなら万々歳だ。

 

「りょ、料理の手伝いをしてくれて、生ゴミの処理もしてくれて、それで餌代は浮く……?」

 

 フウカはボソボソと独り言を言う。

 

「ふ、フウカ先輩?」

 

 ガバッ!!

「おわぁっ!?」

 

 フウカが突然ニロの両手を掴んで顔を近づける。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ニロ……まだ産める!!?」

 

「いや直球!!!!!」

 

「聞き捨てなりません!!!!」

 

「ママ!?」

 

 文章からロジックが失われすぎてセクハラ紛いの発言をするフウカと、それを牽制するジュリ。

 キャベちゃんたちがすっかりゴミの山を食べ切りげっぷをしている横で、3人は暫く騒いでいたのだった。

 

 時刻は09:00。営業開始まであと2時間。




 [給食部のウワサ vol.1]

 夜中に食堂へ向かうと、天井裏の換気口から金属を引っ掻くような音や粘液が滴る音が鳴ることから、かつて給食部に調理されたタコの幽霊が祟っていると一部の生徒にウワサされているらしいぞ!

「……それってどう考えても……。」

「パンちゃんですね♪夜中も元気なのは嬉しいですが、ちゃんと寝てくれないとママは心配です……。」

「……パンちゃんって寝るの?」
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