ブルーアーカイブ ゲヘナ食堂いらっしゃいませ! 〜人型パンちゃんに転生した私、ゲヘナ給食部でパンちゃんたちを従えて無双…?〜 作:Di Gi O
感想もたくさん……感無量です……。
改めて、評価やここすき、感想や誤字報告などを下さる皆様、本当にありがとうございます!
今後とも当小説をよろしくお願いします!
〜前回のあらすじ〜
昼営業を追えた給食部に突然訪問してきた風紀委員会の4人。
どうやら約束していた銃の用意が出来たらしく、わざわざ持ってきてくれていた。
渡されたのは機関銃『MG42』。
カスタマイズされたそれは給食部によって『給食部の護身用銃TypeC』と名付けられた。
しかしヒナは銃以外にも用があると続ける。
なんでも幹部揃ってお昼を食べるために給食部に行くはずが、アコの暴走と予想外の給食の人気のせいで時間に間に合わなかったらしい。
それならばとカレーを用意しようとする給食部だったが、ヒナに黙らされていたアコが委員長に得体の知れないものは食べさせられないと抗議。
給食部のプライドにかけてアコを納得させる為に、3人は彼女からの挑戦を受けるのだった。
「4種のカレーチャレンジ……?」
フウカが首を傾げる。
「はい!ただ委員長の口に合うカレーを作れと言うだけでは簡単過ぎるでしょう。故に今回は我々4人の風紀委員会幹部それぞれがリクエストするカレーを個別に作ってもらいます!」
「な、なるほど……?」
ニロも多少納得する。
要するに4人それぞれが食べたい味のカレーを別に作れということだろう。
手間はかかるが仕方ない。
「それって行政官が自分の好きな物を食べたいだけなのでは?」
「断じて違いますよチナツ!これは給食部の能力と信頼を試す試験なのです!」
「そういうのって万魔殿の仕事じゃないのか?」
「あんなタヌキ共の評価など当てになりません!我々の頭と舌で判断します!」
幹部2人のジト目を伴った疑問を全て否定するアコ。
「……はぁ。本当にいいの?フウカ。ただでさえ激務だったでしょうに。」
「いいのよ委員長。せっかくなら食べたいものを作ってあげたいし。どうせこれを拒否したら今後も絡まれるでしょうから……。」
「悪いわね……。」
申し訳なさそうなヒナ。
アコは普段はとても優秀なだけに、こういった時の謎の行動力は目に余るところがある。
「それでは、皆さんのリクエストをお聞きしましょうか?」
ジュリがメモを片手に4人のリクエストを聞き出す。
「それでは私から!ズバリ、『高級感溢れるカレー』です!風紀委員たるもの、食事も優雅でないと!」
「なぁ、やっぱり自分が美味いもん食べたいだけなんじゃ……。」
「お黙りなさいイオリ!」
「高級感溢れる、ねぇ……。何を使おうかしら。」
アコがリクエストしたのは『高級感溢れるカレー』。フウカは既にどうするか考えているようだ。
「うーん、リクエストかぁ……私はそもそもカツカレーが目当てだったからなぁ……。」
「なんて捻りのない。もっと困るようなリクエストをしてください!」
「なんでアコちゃんはそんなノリノリなんだよ?……そうだなぁ、それじゃあどうせなら『ボリューム満点のカツカレー』にしとこうかな。お腹すいたし。」
「ボリューム満点ですね!ただ大盛りにするだけでは味気ないですし、色々と工夫してみましょうか!うふふ、腕が鳴ります♪」
イオリの学生らしい素朴なリクエストに、ジュリが母性を溢れさせながら反応する。
「では、私は『健康重視のヘルシーなカレー』をお願いします。救護担当として、栄養管理は軽視できませんから。」
「ヘルシーなカレー……よし、やってみよう!」
チナツのリクエストに、ニロがどうしようかと考えながら答える。
「あとは委員長ですね。どんなリクエストをされます?」
チナツが後ろで考え込んでいたヒナに話しかける。
「うーん……その……」
すると、ヒナが少しだけ俯いて顔をあからめる。
「あ、あまり辛いと食べられないから……『甘口のカレー』を……/////」
小声で恥ずかしそうにリクエストするヒナ。
「「「「「「かわいい……」」」」」」
「はぅ……/////」
全員が口を揃えてヒナの可愛いらしさを褒め、ヒナは両手で顔を覆った。
「こ、コホン!聞いていましたね!ヒナ委員長は甘口をご所望です!」
「は、はい……えっと、まとめると……。」
「って感じですかね。」
4種のカレーをまとめるニロ。
「結構方向性が違うわね……。カレーの味付けから変えないとダメそうね。」
「私はイオリ先輩のカツカレーを担当しましょうかね♪」
「え、ジュリ単独で作るのか?」
「はい♪」
「……なぁアコちゃん、わたしはパスd「ダメです!」なんで食い気味なんだよ……。」
イオリが自分の運命を悟ってげんなりする中、給食部はそれぞれ今から作るカレーの方向性を決めていく。
「さぁ、作るカレーを決めたならさっさと作ってください!委員長は空腹なのですよ!」
「なんでそんな上から目線なの……?」
勝手に場を仕切るアコにいつもの顔( 눈_눈)を向けるフウカ。
「まぁまぁフウカ先輩、ヒナ委員長に恩返しする為ですし……。」
「……はぁ、文句言ってても仕方ないわね。早速作るわよ!」
「ここが厨房……ちゃんと手入れされているようね。」
「たった2人……いや、今は3人か。とにかく少人数で回してるからもっと汚れてるもんかと。」
「失礼ですね!ちゃんと掃除してますよぉ!」
「イオリ、失言ですよ。……でも確かに、整理整頓もきちんとされていますね。」
「ふむ、まぁ衛生面は及第点ですかね?」
「いやなんで当たり前みたいに厨房に入ってきてるの!?部外者立ち入り禁止なんだけど!?」
ごく自然な流れで厨房に入り込んできた4人の風紀委員に抗議の声を上げるフウカ。
「当然でしょう?そこの変な編入生の方とジュリさんがどんな変なものを入れるか分かったものじゃないんですから!これも審査の一環です!」
「いや、私たちはなんか流れで着いてきちゃって。悪かった。」
アコが当然だと言う中、イオリは素直に謝る。
「さっきから変な編入生って、失礼です!うちの子には麦焼ニロって言うちゃんとした名前があるんですけど!」
「そう、そこも疑問なんですよ!なんですかうちの子とは!生徒名簿に登録されている情報では彼女は15歳!出生記録だって正式なものがあります!一体貴方たちはどんな関係なんですか!?」
(サツキ先輩、もうそこまで情報を偽装してくれたんだ……さすがだなぁ。)
アコが質問攻めをする中、ニロは情報部長、京極サツキの手腕に舌を巻いていた。
一方ジュリは。
「い、いえ!確かに私の子です!」
「だからそれが意味がわからないと言っているのです!記録にはちゃんとした出生に関する情報が!」
「記録が勝手に言ってるだけです!!」
「記録が勝手に言ってるだけ!?」
「ジュリ、ややこしいからもうそれ以上はやめて……。」
「ママ、そこまでにしとこ……。」
「ママ!?今貴方もママって呼びました!?」
「アコうるさい。」
ベギャンッ!
「サントリーッ!?」
「……ふぅ、これで静かになったでしょう?折角だから私にも手伝わせてくれない?」
ごく自然な手つきでアコにゲンコツを食らわせ気絶させたヒナが、フウカに手伝いを申し出る。
「それはありがたいんだけど、大丈夫なの?これって試験なんじゃ?」
「アコが勝手に言い出した事だから良いのよ。それに営業時間外にいきなり押し掛けた上食べたいものを要求して見てるだけなんて失礼でしょ?」
「委員長がそう言うなら私も手伝おうか?」
「では私も。」
「うふふ、皆で仲良くお料理ですね♪」
「誰もアコ先輩の事は心配してあげないんです?」
「ほっとけほっとけ。自業自得だよ。」
ニロだけが崩れ落ちたアコの容態を心配したが、イオリは余計な心配だと言わんばかりに吐き捨てたのだった。
「それじゃあこれだけ人数がいる訳だし、チーム分けしましょうか。」
「あら、いい考えですね♪」
「どういう風に分けます?」
フウカの提案に乗り気なジュリとチーム分けについて質問するニロ。
「まぁ、さっきの流れ的に私が担当するのは行政官の高級カレーでしょ?ならリクエストした本人とコンビを組んで作ればいいんじゃないかしら?」
「そうなると私がチナツさんと組んで、ママはイオリ先輩とかな?」
「チナツ、で構いませんよ。ニロさん。」
「そう?……なら折角だからチナツちゃんって呼ぼうかな。よろしくね!」
「はい、よろしくお願いします。」
互いに挨拶し微笑み合うニロとチナツ。
「美味しいカレーを作ってあげますからね、イオリ先輩!うふふ、娘ちゃんが増えたみたいで嬉しいです♪」
「お、おう……それは良いんだけど……大丈夫か……?」
ジュリがニコニコと笑むなか、まともなカレーが出来るか半信半疑のイオリ。
「わたしは行政官と……って、そういえば気絶してたわね。……まぁ後回しで良いでしょ。委員長、先に一緒に作る?」
「良いの?……なら、そうしようかな。」
「ふふ、宜しくね。」
「……えぇ。よろしく頼むわ。」
ヨダレを垂らして気絶しているアコを尻目に苦労人同士で仲良く笑うフウカとヒナ。
「よし、それじゃあ各自調理開始!」
「「「「「おー!(。)」」」」」
[SIDE:ニロ&チナツ]
「さて、それでは始めましょうか。」
「わぁ、チナツちゃんのエプロン、すごく可愛い!」
「そ、そうでしょうか?これを使うのは中等部の家庭科の授業以来なのですが……。」
厨房に立つニロとチナツ。
チナツは赤と白を基調にしたシンプルながら可愛らしいデザインのエプロンと三角巾を身につけていた。
「うん!すっごい似合ってる!えへへ、給食部の人以外と料理するのは初めてだから、なんだか緊張するかも。」
「ふふ、そんなに気張らなくても大丈夫ですよ。さぁ、レシピを確認しましょうか。」
「はーい。私の即興のアレンジレシピだけど、大丈夫かな……。」
チナツはニロに優しい声をかけながら、ニロが書き上げたレシピに目を通す。
【ヘルシー救護カレー】
[材料(2人分)]
『味付け』
・カレー粉:5g
・トマト缶:100g
・コンソメ:5g
・プレーンヨーグルト:30g
・小麦粉:30g
・にんにくチューブ:2g
・しょうがチューブ:2g
・塩:3g
・はちみつ:2g
・オリゴ糖:2g
・マーガリン:3g
・水:1L
『具材』
・鶏胸肉:0.5〜1枚(125g)
・玉ねぎ:0.5〜1個(100g)
・じゃがいも:0.5〜1個(75g)
・人参:0.25〜0.5本(50g)
・きのこ(まいたけ、しめじ等):150g
・マヨネーズ:適量
・調理酒:適量
『ご飯』
・白米:2合(300g)
・雑穀:30g
・水:400ml
「ふむ……なんというか、ダイエットメニューみたいですね。」
「まぁ、ヘルシーなお肉の定番ってやっぱり鶏むね肉だからサ……。」
「確かにそのイメージは強いですね……さぁ、早速作りましょうか。」
2人は袖をまくり、料理を開始した。
[(1):むね肉はあらかじめマヨネーズと調理酒に漬け込んでおく。白米を洗って炊飯器へ入れ、雑穀を混ぜて水を入れ炊飯。野菜とむね肉を角切りする。]
「そういえば、調理酒に漬けるのは臭み抜きだというのは分かるのですが、何故マヨネーズに?」
「マヨネーズに入ってるお酢が臭みを抜いたりお肉を柔らかくしてくれるんだ。あとは油分でお肉が包まれて、水分が抜けにくくなるからこれやるだけで全然パサつかないんだよ。」
「なるほど……合理的な理由なのですね。」
「まぁ正直合法的にマヨネーズ入れてるだけなんだけどね。だって美味しいし。」
「感心を返してくれませんか?というかこれってヘルシーカレーなんですよね?」
[(2):鍋に油をひいて、野菜類を入れ中火で炒め合わせる。野菜に油を纏わせたら鶏胸肉を入れる。]
「野菜、切れました。」
「ありがとう!それじゃあこれを炒めて……。」
「野菜は火の通りにくいものから、でしたね。」
「そうそう。人参、じゃがいもを先に炒めて、その後玉ねぎときのこだね。」
「分かりました。えっと、きのこの入ったボウルは……。」
\シャッ。/
「あぁ、ありがとうございます。はい、ニロさん。」
「うん、ありがとう!これで火が通ったらお肉も入れないとね。」
「そうですね。……いやちょっと待ってください!?え、この生物は一体!?」
メガネをずり落ちさせながら、ようやく突っ込むチナツ。
当たり前のようにチナツにボウルを差し出してきたのは、薄緑色の四角い身体に触手を生やした小柄な生物だった。
「あ、ガムちゃん。お手伝い?えらいねぇ。」
\シャ〜。/
「そんなペットみたいな扱いされても流されませんよ!?なんなんですこれは!?」
「うーん、何と言われても……私が産んだ子?」
「産んだ!?え、産んだんです!?」
「うん。この子がヒナ委員長と会った時にに私を助けてくれた子だよ。」
「……あ、もしかして委員長の報告にあった不良を目潰しした怪物ってこの子なんです!?」
「あー、多分そう。凄いでしょ。」
「凄いのは間違いないんですけどもね!?」
メガネをどんどんずり落ちさせるチナツ。
「というかこの子の触手って明らかにジュリさんが作るあの怪物と同じものですよね!?そんなのが厨房を自由に動き回って衛生面は大丈夫なんですか!?」
「それがビックリなんだけどね、このガムちゃんの出す粘液とか粉ってね、抗菌作用と粘膜の補修機能があるみたいで。この子が這い回った所ってすごく綺麗になるし、ミントのいい香りがするの。」
「そんな馬鹿な……って待ってください、粘膜の補修機能!?昨日回収された不良の方々が視覚の好調を訴えてたのってその子が原因じゃないですか!?」
「え、そんな事が!?凄いねガムちゃん、目医者さんじゃん!」
\フシュルル。/
「いや凄いねじゃなくて!……と、とりあえず衛生検査だけさせてください、キット持ってくるので!」
「あ、チナツちゃん!……行っちゃった。仕方ないか、続き作っとこ。」
\シャァ。/
[(3):水以外の『味付け』材料をすべて鍋に入れ中火でしばらく炒め合わせる。全体に馴染んだら水を入れ、弱火でとろみがつくまでしっかりと煮込む。]
「よし、水も入れたしあとは焦げ付かないよう混ぜながらしばらく煮込むだけだね。」
「……ほ、本当に危険物質が検出されない……phも弱酸性寄りの中性、危険な濃度ではない……。」
「あ、おかえりチナツちゃん。どうだった?」
「……す、少なくとも私の扱えるキットでは衛生面や毒性は問題ないという結果が出ました……信じ難いですが……。」
「ほら、そうでしょ?大丈夫だよ。私も最初は心配だったけど、他の子もさっき野菜切って貰ったり揚げ物してもらったりしたけど誰も食中毒とか起こさなかったし。」
「他の子!?まだ別個体が!?」
「あ、うん。キャベちゃんとかトンカツちゃんとか……。」
「すぐここに持ってきてください、全員チェックします。」
「え〜……まぁもう煮込むだけだしいいか……。」
もう調理もほぼ終了したようなものなので、他のチームのカレーが完成するまで大人しくチナツの指示に従うことにしたニロだった。
[SIDE:イオリ&ジュリ]
「さぁイオリ先輩、料理を始めますよ!」
「お、おう。というかチナツが血相変えて飛び出していってたけど何だったんだ?」
「うーん、あ!マイ食器を取りに行ってたとか?」
「それであんな慌てて出てくか?」
「あら、マイ食器は大事ですよ。私もこのパンちゃんカラーのお皿とコップを愛用してます♡」
「めっちゃ紫と緑の原色なんだけど!?食欲下がるだろ!」
「え〜?可愛いのに。」
「あっそ……まぁ好きにすればいいけども。とりあえず早く作らないと他のチームに遅れちゃうだろ。ほら、レシピを見せてくれ。」
「はいはーい♪では、こちらが私の考案したイオリ先輩の為のカレーレシピになります!」
イオリが白い三角巾越しに頭を掻きながら急かす中、ジュリはニコニコしながらレシピを取り出した。
【ママのたっぷりカツカレー】
[材料(2人分)]
『味付け』
・カレールウ:4欠片(60〜80g)
・ウスターソース:ひと回し(10〜15g)
・水:500ml
『具材』
・牛こま切れ肉:150g
・玉ねぎ:0.5〜1個(100g)
・じゃがいも:0.5〜1個(75g)
・人参:0.25〜0.5本(50g)
・ソーセージ:4本
『トンカツ』
・豚ロース厚切り:2枚
・塩コショウ:適量
・小麦粉、パン粉:適量
・卵:1個
『ご飯』
・白米:4合(600g)
・水:800ml
「……レシピに特に変なところはないな……。」
「当然ですよぉ!ちゃんと美味しいカレーを作りますからね♪」
「まぁ、これならあの変な怪物になる訳……ないよな?」
「さぁ、調理開始です!」
[(1):野菜と肉を全てカットし、鍋に油をひいて中火で炒め合わせる。厚切りロースには縮まないよう筋切りをし、塩コショウをまぶして小麦粉と卵にくぐらせ、パン粉をつける。白米は洗って炊飯する。]
「筋切り?なんだそりゃ。」
「お肉が縮まないように包丁でいくつか脂身に切込みを入れるんです!これで繊維を断ち切ってあげる事で、引っ張る力がなくなってお肉が縮まなくなるんですよ!」
「へ〜。切り方1つでも色々あるんだな。」
「うふふ、料理に興味が湧きましたか?」
「興味はあるけど時間と体力が足りないな。」
「……苦労されてるんですね……。」
[(2):野菜と肉に油をまとわせたら水を入れて中火で暫く煮込む。その後カレールウとソーセージ、ウスターソースを入れて弱火で暫く煮込む。]
「ルウは中辛なんだな。」
「はい!辛口だとかえって辛味に具の味が負けてしまいますし、甘口では味が重たくなってしまうと思うので、間をとって中辛にしました!」
「確かにご飯をいっぱい食べるなら中辛がちょうどいいかもな。……ところでこのウスターソースって実際なんのソースなんだ?」
「野菜や果物と酢、塩、スパイスを熟成させたソースです!イギリスのウスター市という場所で偶然生まれたことから名付けられたそうですよ。」
「……イギリス?ウスター市?キヴォトスにそんな地区あったか?」
「イオリ先輩、それは触れないお約束というものですよ♪」
「……???……あれか、キヴォトスの外から伝わったとかか?」
「そういう事だと思っておいてください!」
「あ、あぁ……。」
[(3):油を180℃に熱し、トンカツを衣がきつね色になるまで揚げる。粗熱を取ってから6等分する。]
「よく揚げ物の目安できつね色って言うけど、実際のところきつね色ってどんな色なんだ?」
「#C38743ですね。」
「カラーコードで言われて分かるか!?」
「うふふ、冗談です♪明るい茶色と覚えてもらえれば。」
「うーん、そうなのか……。適量とかひとまわしとか、料理のレシピってたまに大雑把だよな。」
「まぁまぁ、そういう所から偶然美味しい物が出来たりするのが面白いんじゃないですか♪」
「偶然で怪物が産まれるのが怖いんだけどな?」
「それも醍醐味ですよ♪」
「そんなことは無いと思うけどな……とりあえず、カツが揚がったらあとは米が炊けるのとカレーが煮えるのを待つだけか。」
「そうですね♪他の皆さんはどんな調子でしょうか?」
一旦出来ることを終えた2人は他のチームの様子を見つつ待つことにした。
[SIDE:フウカ&ヒナ]
「さて、それじゃあ始めましょうか。」
「えぇ、よろしくお願いするわ。」
「それにしても、委員長のエプロン姿なんて初めて見たわね。当然と言えば当然かもしれないけど……。」
フウカはヒナのエプロンをまじまじと見る。
いつもの上着を脱いだ代わりに可愛らしい猫のマークが入った薄紫の差し色が映えるシンプルなエプロンである。
「……あ、あまり見ないでちょうだい……似合ってないのは分かってるから……。」
「そんな事無いわよ!似合ってるしとっても可愛い!」
「あ、ありがとう……////」
「ふふ、それじゃあレシピを確認しましょうか。」
フウカは照れるヒナに癒されながら、考案したレシピをヒナに見せる。
【やさしい甘口バターチキンカレー】
[材料(2人分)]
『味付け』
・カットトマト缶:200g
・にんにくチューブ:3g
・しょうがチューブ:3g
・カシューナッツ:30g
・バター:10g
・生クリーム:50ml
・砂糖:15g
・塩:5g
『スパイス』
・パプリカパウダー:15g
・クミン:5g
・コリアンダー:5g
・カルダモン:1g
・シナモン:1g
・スターアニス:1g
・カリメスティ:1g
『具材』
・鶏もも肉:1〜2枚(400g)
『ご飯』
・白米:2合(300g)
・水:400ml
「……なるほど……なんというか、聞いたことないスパイスばかりなのね。シナモンはトーストにかけたりコーヒーに入れたりするけど……。」
レシピにずらりと並んだスパイスの名前に面食らうヒナ。
「ふふ、スパイスから作るカレーって面倒だと思われがちだけど、これは意外と簡単に作れるのよ。それにこのスパイスも全部香り付けや風味付けのためのものだから、全然辛くないわよ。」
「……辛そうって思ったの、分かったのね。」
「顔に書いてるもの。」
「笑わないでちょうだい……。」
「大丈夫よ、私も甘口派だから。それじゃ、早速作りましょ。」
[(1):白米は研いで炊飯しておく。フライパンに味付け用の材料を全て入れて中火にかけ、沸騰したら弱火にする。暫く煮詰めた後粗熱をとってミキサーかハンドブレンダーで攪拌する。]
「ハンドブレンダー……先端の円形部分に回転する刃がついてるのね。」
「えぇ。これがあればいちいちミキサーに移し変えなくてもフライパンや鍋の中で直接材料をペーストに出来るのよ。やってみる?」
「いいの?それじゃあ……。」
フウカからハンドブレンダーを受け取り、先端を鍋の中の具材に付けてボタンを押す。
すると刃が回転し、みるみるうちにカットトマトもペースト状にとろけていく。
「おぉ……」
「どう?気持ちいいでしょ?」
「不良の大群に弾幕撃ち込んでる時に近い爽快感ね。」
「やっぱり委員長も大概ゲヘナ生なのね。」
[(2):鶏もも肉と粉末状にしたスパイスを入れ、再び中火にして煮込む。沸騰したらまた弱火にして蓋をし暫く煮込む。]
「よし、これであとは焦げにだけ注意して煮込めば完成ね。」
「あら、もう終わりなの?……予想していたよりずっとシンプルなのね。」
「そうね、もっと本格的なやつならスパイスはホールのままで油で炒めてから取り出したりするんだけど、今回は全部パウダーにして全部混ぜちゃったから。簡単だったでしょう?」
「そうね。……い、いいのかしら。他のチームに比べてなんというか、撮れ高というか……。」
「委員長、無理にボケる必要はないのよ?というか撮れ高って何?」
ヒナの少しズレた配慮に困惑するフウカ。
すると、くぐもった声が聞こえてくる。
「う、うぅん……何かいい匂いが……はっ!委員長のカレー!!」
「あ、起きたのね。」
「生憎だけど、もう委員長用のはほぼ完成してるわよ。というか行政官用以外もう全部ほぼ完成してるみたいね。」
「そ、そんな!委員長用のカレーは私がしっかりと監修して完璧に仕上げるつもりだったのに!」
「これって給食部の試験って言ってなかった?私情しかないじゃない。」
「うぅ、今回のメインイベントが……。」
「……行政官っていっつもこんな感じなの?」
「……有能なのは間違いないのよ?」
起きて早々自分の狙いが砕かれ項垂れるアコと、2人揃って呆れ顔( 눈_눈)をするヒナとフウカ。
すると、他のチームも集まってくる。
「フウカ先輩〜、私とチナツちゃんのはもうほぼ完成したよ〜。」
「あら、ニロちゃんももう終わったんですか?私とイオリ先輩の方もあとは煮込むだけですよ♪」
「……イオリ、なんだかやつれていませんか?」
「お前こそなんかげっそりしてるぞ。」
「……なんというか、結果的に無害と分かっても、得体の知れない生物が厨房を闊歩しているというのは受け入れがたくて……。」
「こっちも同じような感じだ……。あと普通にジュリのボケに突っ込むのに疲れた。」
料理の進捗を笑顔で伝えるニロとジュリ、対してどこか疲れた表情をするイオリとチナツ。
全員がフウカたちの所へとやってきた。
「あら、両方もう完成間近なのね。……それじゃあ行政官の分は皆でサッと作っちゃいましょうか。」
「あら、良いですね♪最後は皆仲良くやりましょう!」
「はぁ、まぁこれが終わったらやっとカレーを食えるんだ、早くやっちゃおう。」
「ですね。7人でやればすぐ終わるでしょうし。」
「悪いわね、フウカ。もう1品分も頼むわ。」
「ふふん、委員長の分は後でじっくり私が味を確かめるとして、私の分はしっかりと料理過程を見定めさせてもらいますからね!」
「はいはい……えっと、豪華なカレーだったわね……それじゃあ、こんなのはどうかしら。」
全員の準備が整ったところで、フウカがレシピを提示した。
【ワイン香るごちそうビーフカレー】
[材料(2人分)]
『味付け』
・カットトマト缶:200g
・にんにくチューブ:3g
・しょうがチューブ:3g
・小麦粉:5g
・バター:30g
・オイスターソース:10g
・砂糖:15g
・塩:5g
・こしょう:3g
・赤ワイン:すね肉が浸る量
『スパイス』
・カレー粉:15g
・ローレルの葉:1枚
・タイム:1g
『具材』
・牛スネ肉:300g
・玉ねぎ:2個
・マッシュルーム:3個
・セロリ:2本
『エビフライ』
・エビ:2尾
・パン粉、小麦粉:適量
・卵:1個
・塩コショウ:適量
『ご飯』
・白米:2合(300g)
・水:400ml
『その他』
・乾燥パセリ:適量
・フライドオニオン:適量
一通りレシピに目を通した一行。
「おぉ……なんというか、確かに豪華というか……。」
「赤ワイン煮込みですか!なんだかオトナな感じですね♪」
「また随分手のかかりそうなレシピだな……。」
「仕方ありません、これが最後ですから頑張りましょう。」
「そうですよイオリ。風紀委員たるもの食べる物も上等で無くては。さぁ委員長♡私と愛の共同料理を……♡」
「早くおわらせましょうか、フウカ。宜しくお願いするわ。」
「食い気味ね……。」
「そっけない委員長も素敵です……♡」
「そっちは無敵ね……。」
呆れ顔のフウカに目もくれずクネクネしながら恍惚とするアコ。
全員が構ってられないとばかりにさっさと作業に移るのだった。
[(1):白米は研いで炊飯しておく。5cm角にカットしたすね肉に塩コショウと小麦粉をまぶし、オリーブオイルをひいたフライパンで全面をこんがりと焼く。焼き色がついたら薄切りした玉ねぎと5mm幅に切ったセロリも入れて15〜20分弱火で炒める。]
「お米の準備できました。」
「ありがとうチナツ。今のうちにフライヤーの準備をお願いしていいかしら?」
「わかりました。」
手馴れた様子でお米を研ぎ、炊飯するチナツ。
フウカは玉ねぎやセロリをカットしている。
一方イオリとジュリはすね肉をカットしていた。
「こ、このお肉、中々切れないな……。」
「もう少し角度をつけて、引く時に力を入れるといいですよ!」
「おぉ……流石に給食部だな……。」
「うふふ、慣れたものでしょう?……って、なんだか言い方に含みがないですか?」
「関わった料理が軒並み怪物になるものだとばかり……。」
「そ、そこまで酷くありません!」
ジュリが腕をぶんぶんと振りながらイオリの言葉を否定している後ろで、ヒナとニロ、そしてアコはフライパンの準備をしていた。
「見て見てヒナ委員長。オリーブオイルこんな高くから注げるよ。」
「わざわざ触手使ってまで高いところから注がなくても……。」
「料理中に遊ぶなどとても給食部とは思えませんね!やはり任せておけません、貸しなさい!私が本物のSaltareを見せてあげます!」
「なんて?」
「
ニロが聞き返すと、代わりにフウカが答えてくれた。
「へぇ……ってアコ先輩、そんな服で炒め物なんてしたら……。」
パチッ!
「あっっっっっっっつ!?」
「言わんこっちゃない。」
「何してるのアコ……。」
「というか誰も突っ込まないから言うけどなんでそんな小さいサイズのエプロンなんだ?」
「大きいエプロンでは胸が隠れてしまうでしょう!?」
「エプロンが意味を成してないんだよ!!」
[(2):圧力鍋に(1)とタイム、ローレル、すね肉が被るくらいの赤ワインを入れる。スライスしたマッシュルームをバターで炒め、そこにバターとカットトマトを入れる。すね肉に火が通ったらローレルとすね肉を取り除き、煮汁をハンドブレンダーで攪拌する。]
「なるほど、すね肉なんて煮込むのに何時間もかかるんじゃと思ってたけど、圧力鍋を使うんだな。」
「えぇ。流石に今から2時間も3時間も煮込んで居られないから。」
「ふふ、わたしはニロちゃんが料理を作ってくれるなら何時間でも待てますよ♪」
「やだママったら、やめてよぉ。」
「なんで急にイチャイチャしだすんです……?」
イオリがフウカの調理工程に感心する中、突然イチャイチャし出したニロとジュリに呆れるチナツ。
「ふん、甘いですね!わたしはヒナ委員長が手ずから作ってくれる料理を食べられるなら何日、何週間、何ヶ月だって待てます!」
「一回の料理にそんなかけたくないんだけど。」
「短時間の料理なら作ってくださると言うことですか!?」
「またアコちゃんがヒナ委員長にだる絡みしてる……。」
「……まぁ、普段から頑張ってくれてるし、料理のひとつくらい作ってあげてもいいけど……///」
「ブッフォオ!!!!」
「うわぁ!アコ先輩が鼻血吹いて倒れた!!」
「致死量じゃないですかこれは!?」
「だ、大丈夫ですか行政官!」
「掃除するの私たちなんだけど!?」
「フウカ、アコの命の心配もしてあげて……。」
[(3):攪拌した(2)をマッシュルームを炒めているフライパンに入れて、カレー粉を入れる。混ぜてから塩で味を調整。エビは背わたを取って形を整え、塩コショウ、小麦粉、卵、パン粉を付けて油で揚げる。]
「カレー粉を入れると一気にカレーらしくなりますね。」
「本当だな。酒臭さも全然感じないし、元々赤ワインで煮込んでたなんて分からないや。」
完成が近いカレーのビジュアルに感心するチナツとイオリ。
「ジュリ、ワタとれた?」
「はい♪丸まらないよう筋切りもしておきました!」
「いい感じね。それじゃあ衣を付けて揚げましょうか。」
いつも通りの分担ですぐにエビフライの準備を終わらせたジュリとフウカ。
一方フライヤーの前では。
「……ねぇ。なんか泳いでるんだけど……。」
\フシャシャ?/
ヒナが熱された油の中をスイスイと泳ぐトンカツのような謎生物を発見し困惑していた。
「ん?あぁ、その子はDJトンカツちゃんです。」
「DJトンカツ???」
「はい。私にだけパンちゃんの声というか、伝えたいことがなんとなく伝わるんですけどね。なんか陽キャっぽいというか、チェケラとか言ってたので。」
「チェケラとか言ってたの?」
\チェケラ。/
「今言いましたね。」
「今言ったわね。」
「な、なんですかこの化け物は!?こんなのが浮いている油で揚げ物をするなど有り得ません!そもそも身体に影響はないのですか!?」
「それが全然無くて。むしろこの子、泳ぎながら油に浮いてるカスとか全部食べてくれるから油の寿命がすごく伸びてて。」
「めちゃくちゃ有能じゃないですか!?」
「……問題ないなら良いのだけど、この子、油なんて熱くないのかしら……。」
「まぁ元はトンカツですし大丈夫なんじゃないです?」
「もう突っ込む気にもなりません……。」
ヒナが心配する隣で呆れ顔をしながら思考を放棄するアコ。
結局トンカツちゃんは最後まで油を遊泳していたのだった。
\♪/
「さて、これで4品全て揃いましたね。」
アコのリクエストした豪華なカレーも含めて残りは盛り付けのみとなったカレー作り。
給食部と風紀委員の7人はエプロンを脱いで食堂の椅子に座っていた。
「それじゃあ早速盛り付けましょ「私がやるからママはゆっくりしてて!!」そ、そんな食い気味に……?」
ジュリが全員分のカレーを盛り付けようとするのをニロがすぐさま阻止し自らご飯を盛り始めた。
「まぁ、そうなるな。」
「こればっかりは仕方ないかと……。」
「うぅ、無念です……。」
「気持ちは嬉しいから、あまり落ち込まないで……。」
風紀委員たちに慰められるジュリを横目に、それぞれがリクエストしたカレーが配膳されるのだった。
「よし、人数分配ったわね?」
「折角だから4種のカレーを全部少しずつ配膳してみました。それじゃあ冷めちゃわない内に食べましょうか。」
「ふん、あまり緊張していないようですが、試験はこれからなんですからね。給食部のお手並み、拝見といきましょうか。」
「はいはい、いいから早く食べましょう。お腹が空いて仕方ないわ。」
「よし、それじゃ……」
「皆さん、手を合わせて。」
「「「「「「「いただきます!(。)」」」」」」」
[給食部のウワサ vol.3]
生ゴミを食べるキャベちゃんに、油カスを食べるトンカツちゃん、這った場所を消毒&消臭してくれるガムちゃん。
今まで食堂や厨房の掃除に畑用の生ゴミ肥料作りなどを担当していたジュリはパンちゃんたちの活躍で仕事が減り、結果的に料理練習の時間が増えてパンちゃんの生産速度が上がったらしいぞ!
「ちょっと待ってくれ!?今回これで終わるのか!?実食は!?」
「なんでも『文字数がいつもより3000字くらいオーバーしちゃったので区切ります、申し訳ない』とのことで……。」
「文字数?な、なんの話だ?」
「イオリ、触れてはならない次元の壁というものがあるのですよ。」
「ほんとになんの事だよ!?」
「イオリ、うるさいですよ。今回は我々風紀委員会が次回予告担当なんですから。ヒナ委員長のタイトルコールを一字一句邪魔することなど許されません!」
「いや、私前回担当したから今回は貴方たちでやってちょうだい。」
「そ、そんな!?なら私は一体何のためにこのコーナーに!?」
「行政官、良いですから早く次回予告しますよ。」
「うぅ……仕方ありません。それでは次回、[ゲヘナ食堂いらっしゃいませ!]『Folge 5 カレーと風紀と新生活』見てくれないと貴方の服も私仕様にカットしますよ!」
「なんの嫌がらせだよ!?」
「はぁ、最後までこの人は……。」
「そんな事させないけど、また見てちょうだいね。風紀委員会がお送りしたわ。」