ブルーアーカイブ ゲヘナ食堂いらっしゃいませ! 〜人型パンちゃんに転生した私、ゲヘナ給食部でパンちゃんたちを従えて無双…?〜 作:Di Gi O
アルバイト以外の別衣装も増えますように!
「うふふ、それではパンちゃんの水着衣装を……♪」
「どこ需要なの?」
「それならがフウカ先輩とジュリママが水着着た方がいいんじゃない?」
「私は遠慮しとくわ。」
〜前回のあらすじ〜
アコからの挑戦を受けることになった給食部。
余計なことを言ってヒナに気絶させられたアコを横目に、各自チームを組んで風紀委員会の4人のリクエストに基づいたカレーを作っていく。
元より多少の交流があったフウカとヒナ、何かと努力が空回りしがちなジュリとイオリ、ボケるニロに振り回されるチナツは何だかんだ順調にカレーを完成させ、途中アコが目覚めてからは全員でアコのリクエストを完了し、ついに実食に移るのだった。
「「「「「「「いただきます!(。)」」」」」」」
一斉にスプーンを手に取りカレーを食べ始める一行。
それぞれが思い思いの順番で食べ進めていく。
「それでは早速、こちらから……。」
「私もこれから行こうかな。自分でも味が気になるし。」
チナツとニロは自分たちで作った【ヘルシー救護カレー】を食べ始める。
「はむ……うん……これは、優しい味ですね……。」
「はちみつのおかげかマイルドだね。それにキノコの旨みも引き立ってて美味しい!」
「ニロさんの言っていた通り、マヨネーズのコクとささみ肉のしっとり感もいい感じですね。」
「でしょ!ふふん、一緒に作った甲斐があったね!」
「私は途中からあの珍生物たちの調査にかかりきりでしたが……。」
仲睦まじくヘルシーカレーを食べ進めるニロとチナツ。
あっという間にひと皿を食べ終えてしまうのだった。
「おかわりいる?」
「ふふ、ありがとうございます。ですが、まだ他の皆さんが作ってくださったカレーもあることですし、そちらを先に食べてから考えましょうか。」
「それもそうだね。それじゃ、次は……。」
ニロとチナツは次の皿へ手を伸ばした。
「おぉ……なんというか、思ってたより大盛りなんだな……。」
「うふふ、ご飯もルーもたっぷりですからね!いっぱい食べて大きくなってください♪」
「おう……って今どこ見て言った!?」
目の前のカツカレーのボリュームに少し圧倒されるイオリと、母性を溢れさせるジュリ。
その目線は心做しかイオリの胸元に向いているように見えた。
「ふん……とりあえず、冷める前に食べちゃうか。……あむ。」
「そうですね、それでは早速!……はむっ!」
1切れのトンカツとカレーライスを1口食べてみるイオリとジュリ。
「……うん……美味い!やっぱりカレーはカツカレーだよな。」
「ソーセージもちょっとお高いやつを使ったのでパリッとして美味しいです!学生はお肉をいっぱい食べてこそ、ですからね♪」
口に広がる肉汁と脂の旨みに顔をほころばせる2人。
他の皿の2倍あったはずのカレーはすぐに無くなってしまった。
「……あれ、もう食べちゃった。」
「うふふ、おかわりもありますからね♪いっぱい食べて行ってください!」
「そうか?ならお言葉に甘えてもらっとくか。ありがとな。」
甘やかしたがるジュリに、イオリは遠慮することなくおかわりを要求するのだった。
「ほら、委員長も遠慮せず食べなさいよ?」
「……その、あんまり熱いとすぐに食べられなくて……。」
「あら、猫舌なの?ふふ、なら程よく冷まして火傷しないようにね。」
「うん、そうするわ……ふぅ、ふぅ……」
「委員長ッ!!ふーふーする役目はぜひこの私に!!」
「……食事中は静かに食べてくれないかしら……。」
「はっ、私とした事が。申し訳ありません。」
「情緒不安定が過ぎない?」
大騒ぎしたかと思えばすぐに落ち着くアコに呆れるフウカとヒナ。
「はぁ……まぁいつもの事を気にしても仕方ないわね。……そろそろ食べられるかしら。……はむ。」
「あぁっ!一口がちっちゃくてかわいい……!」
「行政官も早く自分の分食べなさいよ……まぁいいか。それじゃ私も。あむ。」
口を抑えて限界化するアコを無視してチキンカレーを食べるフウカとヒナ。
「……うん……本当だわ、辛くないわね……それに、スパイスとナッツの香りが鼻を抜けて、後味も柔らかい……。」
「ふふ、そうでしょ?スパイスも全部粉末にしてペースト状にしてるから口当たりも滑らかで、ご飯とよく合うのよ。」
もぐもぐと美味しそうに笑みを浮かべるヒナと、何だかんだ嬉しそうにそれを見つめつつ食べ進めるフウカ。
「はぁンッ!委員長の貴重な食事シーンッッ!!今日も麗しいッ……!」
パシャパシャパシャパシャパシャッ!!!
「……アコ……食事に集中できないんだけど……あとその写真全部消しておいてね?」
「そっ、そんな殺生なぁっ!?」
「恥ずかしいし普通に盗撮よ?」
「というか行政官も早く自分の分食べなさいよ……。」
「ふん、まぁ良いでしょう。それでは私も頂くとします。」
「なんでそんな上から目線なのよ……。」
ヒナの撮影を諦めたアコは目の前に配膳されたカレーを見る。
「ふむ……盛り付けは中々ですね。具のバランスも良く、ライスの上のパセリとフライドオニオンの色彩も食欲を引き立てる……。」
見た目のレビューをしながらスプーンを手に取り、片手で髪をかき上げながら目を閉じカレーを口に運ぶ。
「あぁむ……。ふん……ふむ……」
「……なんでそんな無駄にセクシーなの……?」
「放っておいていいわよフウカ。いつもそんな感じだから。」
「いつもこんな色気出しながらご飯食べてるの?」
「……これは……赤ワインのアルコール臭は一切なく、上品な香りが鼻に抜けていくような……すね肉はしっかりと火入れされ歯に挟まることもなく解ける食感、ライスとの相性も良い……。」
アコは淡々とカレーの出来を評価する。
「……はぁ、認めましょう。味も見た目も素晴らしいですね。」
「そりゃどうも……行政官ってそんな賢そうな事言えたのね。」
「私の事をなんだと思っているんですか!?」
「露出狂。」
「残念美人。」
「顔は良いのになぁ……。」
「ふ、服はともかく頑張り屋さんだと思いますよ!」
「横乳。」
「天雨アコ。」
「揃いも揃って!?」
ヒナ含む全員から散々な評価をされたアコはべそをかきながら自分のリクエストしたカレーを完食した。
「どう、ヒナ先輩。私とチナツちゃんのヘルシーカレー、美味しいでしょ?」
「えぇ。……あまり量を食べられないのが残念だけど……。」
「ジュリ、今回は何も起きなかったのね。」
「そうなんです!ちゃんとしたカツカレーですよ、褒めてくださいフウカ先輩!」
「いや、途中なんかカレーの鍋が独りでに震えて蓋も踊ってたぞ。私が慌てて火弱めたりしたら収まったけど、あのままだとヤバかったんじゃないか?」
「……( 눈_눈)」
「ち、違うんですイオリ先輩!フウカ先輩!途中までは良かったんですぅ!」
「アコちゃん、もうそのエビフライいらないの?ならちょーだい。」
「あぁっ!?1口食べて置いていただけです!返しなさい!」
「え〜?もう食べちゃったし。仕方ないからこのトンカツあげるよ。」
「全く、なんて行儀の悪い!具の横取りなんて品がないですよイオリ!」
「その服着てるやつだけには品性なんて語られたくないな。」
「う〜ん、このカツカレーも美味しい!さすがママ!」
「えへへ、ニロちゃんのお口にあって良かったです♡」
「……あれ?ところで貴方、料理食べたらパンちゃん産んじゃうんじゃ……。」
当然のようにジュリにあーんで食べさせられているニロを見て危機感を抱くフウカ。
「あ〜いや、昨日も力んで今は産まれるな!って考えてたらなんか産まれなかったので、多分大丈夫じゃないですかね?」
「あぁ、そういえばそう言ってたわね……今聞いても都合が良すぎるけど……。」
「でも、本来産まれるものを無理に止めているのってなんだか体に悪そうじゃないですか?」
「そうかな?」
ジュリの心配する言葉に首を傾げるニロ。
「ほら、おしっこもずっと無理に我慢していると膀胱炎になるとか言うじゃないですか。」
「例えがこの上なく最悪だけどまぁその通りね。」
「うーん、たしかに昨日揚げ物食べた時も産まなかったし……いつか産んどいた方が良いのかな?」
「とんでもないパワーワードね……産むにしても私たち以外がいないタイミングにしてよ?あんなのどう説明していいか分からないんだから……。」
「うふふ、次はどんなパンちゃんが産まれるのか、むしろ楽しみになってしまいました♪」
「私は不安しかないんだけど……。」
考え込むニロに注意するフウカ。
ジュリはそんなフウカにはお構い無しで新種のパンちゃんに思いを馳せるのだった。
「ふぅ、食った食った。大満足だ。」
「イオリ、行儀が悪いですよ。……ですが、確かに久々に満足感のある昼食でした。」
「改めて、いきなり押しかけて悪かったわね。フウカ、ジュリ、それにニロ。」
風紀委員会の3人は口元を拭いたりお腹をぽんぽんと叩きながら給食部に感謝の言葉を述べる。
「いやいや、むしろ片付けまで手伝ってもらって悪かったわね。」
「とっても楽しかったです!」
「銃までタダで貰ってるんだから気にしないでください!」
カレーを食べ終わったあと、片付けまで一緒に終わらせた一行。
現在時刻は14:30、風紀委員たちはそろそろ仕事に戻ろうとしていた。
「ふん、まぁ今回の料理は中々でしたし、少なくともお二人で回していた時よりは信用できるようですね。今後とも委員長のお昼ご飯の為に励むことです。」
「あ、あはは……精進します……。」
腕を組んで鼻を鳴らしながら給食部を見下ろして話すアコに軽く引きながらも返答するニロ。
「結局ちゃんと完食してた癖に、良くそんな上から目線で喋れるなアコちゃん。」
「う、うるさいですねイオリ!ご飯を残さないのは人として当然でしょう!?」
「ですが行政官、自分の豪華なカレーどころか、他の3種も全ておかわりを……。」
「わ、悪いですか!?……えぇそうですよ、美味しかったですよ!この味が食べられるなら給食部の常連になっても構いません!!」
「……ふふっ、何だかんだ気に入ってくれたのね。」
「素直じゃないですね、行政官♪」
「はぁ、最初からそう言えばいいのに……」
顔を少し赤らめながらギャンギャンと喚くアコにほっこりするフウカとジュリ、そしてため息をつくヒナ。
何だかんだで風紀委員会と給食部の間に絆が芽生えた瞬間である。
「それじゃ、そろそろ私たちは業務に戻るわ。今回の食事代は後でこっちの経費から回しておく。それと、ニロの銃のメンテナンスやアタッチメントの事で何か分からないことがあったら連絡して。」
「分かりました!改めてありがとうございました!」
「ふふっ、良いのよ。……今後貴方を捕まえる羽目にならない事を祈るわ。」
「……善処します。」
「……そんなことは有り得ないと言って欲しかったけど……まぁ良いわ。」
ヒナからのありがたい言葉を受け入れるニロ。
ゲヘナ生である以上、例え今後故意に起こそうとせずともトラブルに巻き込まれ、そこでヒナと関わることがあるだろう。
ニロは少し目を逸らしながらヒナに答えるのだった。
「じゃ、またな。毎日こんなクオリティなら明日も食べに来るよ。」
「改めて面倒をおかけしました。今後健康や衛生に関わることで何か問題があれば、お力になれると思いますので遠慮なくお声掛けを。」
「では、失礼します。……麦焼ニロ、私は完全には認めていませんからね!」
「アコ、余計なこと言わないの。」
バキャッ!
「ファンタッ!?」
「……あーあ……。」
「別れ際までこれですか……。」
最後の最後で余計な発言をしてヒナにぶっ叩かれ気絶したアコ。
ヒナに首根っこを掴まれながら引きずられていく。
「お、お達者で〜。」
「うふふ、また食べに来てくださいね〜♪」
「はぁ、どっと疲れたわね……。」
4人の後ろ姿を見送る給食部だった。
その後、食堂にて片付けや明日の営業準備を済ませた給食部の3人。
食堂に集まり各自水を飲みながら休憩していた。
「いやぁ、賑やかでしたね。」
「そうですね♪同じカレーでも色々と作れて楽しかったです!」
「まぁそれはそうだけど……行政官は困った人だわ……。」
ヘラヘラと笑うニロと穏やかなジュリ。
フウカは疲労感で呆れ顔をしながらも満更では無さそうだった。
そんな時、校内放送が室内に響き渡る。
『高等部1年生 麦焼ニロさん。支給品受け渡しがございますので、万魔殿本部までお越しください。繰り返します。』
「……あっ!そうだ!今日お昼から呼び出されるんだった!」
バッと立ち上がるニロ。
「そういえばそうでしたね……。ニロちゃん、準備は?付き添いはいりますか?」
「いや、大丈夫!場所は覚えてるし、制服とかカバンとか生徒手帳とか、多分そういうのの受け渡しだよね?ならすぐ済むと思うし!」
「そうですか?それなら大丈夫なのですが……。」
「ジュリは心配性ね……。まぁ戻ってきたら貴方の住む部屋の準備もしないといけないでしょうし、ジュリは畑のお世話もあるでしょう?気にせず一人で行ってきなさい。」
ジュリが心配そうにする中、苦笑しながらニロに話しかけるフウカ。
「分かりました!すぐ戻りますので〜!」
「あ、ちょっと!廊下は走っちゃダメよ!」
「ニロちゃん、気をつけて〜!」
触手をブルンブルンと揺らめかせながら廊下を駆けていくニロ。
フウカとジュリはその背中を見送った後、仕事の続きをするのだった。
万魔殿本部。
昨日見たばかりの無駄に豪華な装飾が施された回廊を歩き、やがて巨大な扉の前へ。
「すみません、校内放送で呼び出された麦焼ニロです!」
「あぁ、ニロさんですね。お待ちしておりました、中へどうぞ。おーい、開門!」
話を通すとすぐに聞き入れて扉を開ける体勢に入ってくれた門番の生徒。
やがて扉がゆっくり開かれ、その中には……
「変幻自在の
「いや福〇美里さん繋がり!?」
何故か室内ど真ん中にて四つん這いでイブキを乗せながらポーズをとるイロハの姿が。
「……あ……。」
「……?あー!ニロお姉ちゃんだ!昨日ぶり〜!」
「……あ、あぁ。イブキちゃん、昨日ぶり……。」
ニロの姿に気づくと一目散に駆けてきたイブキ。
ニロに抱きつき嬉しそうに擦り寄る。
「……その……見ました?」
「いやまぁ……あれは見るでしょ……。」
「……内緒にしてください……。」
「まぁ、はい……。」
一方顔はそっぽを向いているが明らかに赤面しているイロハ。
何事も無かったように立ち上がったと思えばこれである。
「……そ、それで、えっと……呼び出されてここに来たんですけど……。マコト議長とかサツキ先輩とかは……?」
「えっとね、マコト先輩は『キキキ、議長たるもの民衆の不満を受け止めねば!』って言いながら街の方に行ってたよ!でもあっちの方って最近温泉開発部の人達が暴れてた所なんだよね〜。大丈夫かな?」
「十中八九大丈夫じゃないね。」
「いいんですよアレは……サツキ先輩は普通に情報部の方で勤務中で、チアキは連邦生徒会に取材に向かってます。ですのでここに居る幹部は私とイブキだけです。」
「なるほど……え、でもそうなるとさっきの呼び出しってイロハ先輩ですよね?なんで私がすぐ来るって状況でイ〇ーごっこを……?」
「イブキがしたいと言ったのですからすぐしなければならないでしょう。」
「もしかしてイロハ先輩って結構アコ先輩タイプ?」
目を見開きながら当然だと言わんばかりに宣言するイロハに面食らうニロ。
「えへへ、最近見たアニメにかっこいいワンちゃんがいたから、イロハ先輩にまねっこしてって頼んでたんだ!」
「そっかぁ、良かったねぇ……1部は見ない方がいいかもね、ワンちゃん好きにはショッキングだから……。」
笑顔のイブキを撫でるニロ。
そしてようやく本題に入る。
「えっと、それで今回は昨日話してた支給品の受け渡しで呼び出されたってことでいいんですよね?」
「コホン……はい。ニロさんの入寮の準備もできましたので。まずはこちらが支給品です。」
「あ、ありがとうございます。」
袋に入ったいくつかの品を受け取るニロ。
中には何着かの制服や指定のカバン、生徒証などが入っている。
寮の鍵やパンフレットも入っているので恐らく必要なものは全てこの袋に詰まっているのだろう。
「生徒証は口座のクレジットポイントの管理にも使うので無くさないようにしてください。写真は昨日チアキが撮ってくれていた物を使っています。」
「分かりました……え、昨日私知らない間に盗撮されてたんです?」
「用途以外には使わないのでご安心を。」
「そういう問題じゃない気が……まぁいいか……いいのかな……?」
ニロは腑に落ちない部分がありつつも袋を手に提げる。
「次に校則やカリキュラムについてですが……。」
イロハは暫く片手で顎を抑えて考える素振りを見せ、そして一言発する。
「無駄ですので省略します。」
「無駄ですので省略します?」
あまりに投げやりな発言に思わずオウム返ししてしまうニロ。
「実際そうなんですよね、小難しい校則をベラベラと述べたところで、ゲヘナの9割9分9厘の生徒はまともに守ってくれないので。教育カリキュラムの方も同様です。どうしても気になるならそちらの荷物の中に校則や校歌、授業の時間割など全て載っていますのでご自由に閲覧してください。」
「あ、はい。分かりました……。」
「他になにか質問が無ければこれで終わりです。大丈夫ですか?」
「はい。何から何までありがとうございます。」
「いえ、仕事ですので。それではお疲れ様でした。」
イロハは用は済んだと言わんばかりにすぐお辞儀をして話を切り上げる。
「え〜?ニロお姉ちゃん、もう帰っちゃうの?」
そこに寂しそうにしながら話に入り込んでくるイブキ。
せっかく訪れた客がすぐに帰ってしまうのが嫌なようだ。
「ごめんねイブキちゃん、次来る時はまたプリン作ってくるね?」
「ほんと?分かった、約束ね!あとあと、ジュリお姉ちゃんがいつも一緒にいるあのぷにぷにのパンちゃんも一緒に連れてきて!お散歩するの!」
「え……お散歩してるの……?」
「うん!よくマコト先輩もたかいたかーいってされてるんだよ! 」
「私には縛り上げられて捕食されかけているようにしか見えませんでしたけどね。」
「止めてあげましょうよ!?」
「マコト先輩だからいいんですよ。あ、もし本当に連れてくるなら私がいない時にしてくださいね。あとイブキが襲われないようにお願いします。」
「あ、はい……いや多分私が無理に連れてくることはないと思いますけども……。」
「またね、おねえちゃん!」
困惑をそのままに、ニロはイロハとイブキに見送られながら万魔殿を後にするのだった。
「……ということがありまして。」
「……ジュリ、貴方いつの間にイブキちゃんにパンちゃんを……?」
「ち、違うんです!気がついたら逃げ出していたパンちゃんがイブキちゃんと仲良くなっていて、それからイブキちゃんがお散歩したいとせがむようになってしまって……!」
「最悪の場合私たち全員の首が飛ぶからね?」
「ごめんなさい……。」
「ま、まぁまぁフウカ先輩。今は私が命令できるから、きっと大丈夫だよ。……多分……。」
「確証ないんじゃないの……。」
呆れるフウカ。何かの手違いでイブキがパンちゃんにヌメヌメでもされようものなら、給食部は間違いなく廃部となるだろう。
「……ま、とりあえず今日の仕事は終わらせておいたから。残りの時間でさっさとニロが自分の部屋で過ごせるようにしてあげないとね。」
「そうですね!毎日お泊まりでも私は一向に構わないのですが……♡」
「二人で泊まるのは構わないけど隣が私の部屋なの覚えておいてね?」
「あ、あはは……お世話になります……。」
ニロは甘んじて自分の新生活の手伝いを2人に頼むことにしたのだった。
「……といっても、最低限の設備は元からあるので、すぐ終わっちゃいましたね。」
「まぁ、昨日産まれたばっかりのニロに私物も何もあるわけないものね。」
「それでも助かりましたよ!ありがとうございました!」
先程の場面から僅か2時間ほど。
既に3人はニロの部屋に必要なものを運び込んで整理し、今は室内でお茶を飲みながら談笑していた。
さすがにマンモス校の直営の学生寮ということもあり、度々爆発や銃撃戦に巻き込まれるためそこまで品質が良い訳では無いものの、十分に使える性能の洗濯機や冷蔵庫、IHクッキングヒーターにテレビやエアコン、ベッドなども備え付けられていた。
そのためニロが持ち込んだものと言えば、ヒナから貰ったばかりの銃と弾薬、イロハから貰った学生生活セットくらいのものだった。
「後は掃除機とか食器とか、しばらく生活する為の食料品とか……まぁそれは明日以降でもいいわね。ひとまず今日からプライベートはここでゆっくりしなさい。」
「はい!隣にジュリママとフウカ先輩もいるので安心です!」
「24時間いつでも訪ねてきてくださいね♪」
「それはさすがに遠慮するね……。」
お茶を飲みながら談笑する3人。
「必要なもの……そういえば、スマホくらい持ってないと不便かなぁ?」
ふとニロが思いつく。
現代の人々にとってもはや手放せないほどの便利ツールとなったスマートフォン。
花の女子高生がスマホを持っていないというのはあらゆる面において致命的だろう。
「あ〜、確かにそうね。でも……。」
「でも……?」
「多分ゲヘナじゃ普通のスマホはすぐ壊れちゃうから、こっちでオススメの防弾仕様のケースとかと纏めて頼んでおくわ。」
「今更だけどなんでみんなこの治安で普通に過ごせてるの?」
いつもの顔( 눈_눈)で提案するフウカに心からの疑問を投げつけるニロ。
死なないからって何をしてもいいと言うわけではないと思うのだが。
「まぁ、今の治安ではゲヘナのスマホショップに向かっても危ないでしょうし、通販の方が確実ですね……。早くニロちゃんにスマホをあげたいのは山々ですが……。」
ジュリも素直に同意する。
「まぁ仕方ないよ。贅沢言えないしね。」
「悪いわね。……それじゃあ、今日はこれで解散にしましょうか。晩御飯はどうするの?」
「さすがに昨日もご馳走になっちゃいましたし、冷蔵庫に数日分の食料も運んでもらったので、今日は自分で作って食べることにします。」
「そうですか?残念、さっそく愛の共同作業をしようと思ってたのに……。」
「別にこれから給食部でいくらでも一緒に作れるでしょう……。」
「あはは……明日また一緒に作ろ。ね?」
残念そうなジュリに呆れるフウカと慰めるニロ。
相変わらずの溺愛っぷりである。
「それじゃあ、早いけど今日は解散で。お疲れ様、ニロ。また明日、遅れないようにね。」
「もしお寝坊してたら私が起こしに来てあげますね♡」
「ありがとうございます。……って、この部屋の鍵私しか持ってないし、まだスマホも持ってないのにどうやって起こしに来てくれるの?」
「もちろんこの『マスターキー』で♡」
ガションッ!
「ショットガンのことマスターキーって言うの辞めて!?怖いよ!?」
「普通に合鍵作ってもらえば良いじゃないの……。」
当たり前のように鍵を破壊するという選択肢を提示するジュリにドン引きする二人。
そんなやり取りもそのままに2人は自分の部屋へ入っていった。
「……うん、やっぱり美味しい。こんな事ならもっといっぱい貰っておけば良かったなぁ。」
今日の昼に作った大量のカレーを食べ終えお腹をさするニロ。
余った分のカレーのうち、いくらかをフウカとジュリの好意で持ち帰っていたのである。
「今は……もう9時前か。……お風呂入って、歯磨きして……まぁ、明日も早いし夜更かしする理由もないか。」
独り言をいいながら食器を洗って片付け、浴室へと向かう。
ジュリから借りっぱなしの制服とサラシを脱いで、浴室へ入りシャワーを浴びる。
「……あ、そういえばこの制服、洗ってジュリママに返さないと。……というか下着も買わないとだけど、これパンツは触手通すために穴開けないとダメだなぁ……というか多分スカートと制服もそうなるよね……。」
髪を洗い、身体を洗い、触手も洗う。
腕だけでは上手く洗えない背中の真ん中あたりも触手でタオルを持って擦り綺麗に洗う。
「……やっぱりこの触手の緑色の液体はいくら洗っても染み出てくるなぁ……。うーん、身体に害が無いなら良いけど、ビジュがなぁ……。」
いくら念入りに流しても次から次へと分泌される緑色の粘液の根絶を諦め、浴槽へと浸かる。
肩まで浸かると触手も熱に反応してか少しぶるっと震え、同時にほうっと息をつく。
「……なんだかまだ2日目なのに、物凄く濃いなぁ。……私、これから本当にキヴォトスで暮らすんだ……。」
昼間、ヒナに手渡された銃のヒンヤリとした金属の感触を思い出す。
今後、何か争いに巻き込まれれば自分で銃を撃たなければならないかもしれない。
相当酷い集中射撃でもしない限り死なないと分かっているとはいえ、前世ではハンドガンすら握ったことが無かったのだ。
平然と撃てるかと言われれば当然否である。
「……大丈夫、きっとなんとかなるよね。」
そう自分に言い聞かせ、それ以上考えるのを辞める。
頼もしい仲間の二人もいるのだ、きっと上手くいく。
そのまま浴槽から上がり、体を拭いて備え付けのドライヤーで髪を乾かし、歯磨きをしてパジャマに着替える。
最もパジャマも通常のものなので、無理やり触手をはみ出させるために中途半端な履き方をしているが。
「さて……今日はもう寝よ。」
4本の触手全てに大きなナイロン袋をかけて根元の方を輪ゴムで軽く締める。こうすれば粘液で布団が汚れることはないだろう。……多少シャカシャカと擦れて寝心地が少し悪くなるが背に腹はかえられない。ごろんとベッドに寝転がり、触手をだらんと伸ばしながらリモコンで部屋の電気を消す。
薄暗いオレンジ色の常夜灯が部屋を僅かに照らし、その優しい光に眠気をそそられる。
「……もしこの世界がブルーアーカイブのストーリー通り進むなら、もうすぐ先生が来るんだよね……。」
ゲーム本編では性別や容姿について完全には描写されておらず、曖昧な表現をされていた先生。
男性だろうか、女性だろうか。
どんな容姿で、どんな声なのだろうか。
……原作通り、
「……本当に、大丈夫かな。……私にも、なにか出来ないかな……。」
原作の流れを知っている者として、何か出来ることがあるのではないか。もしかしたら、少しでも生徒たちの悲しみや苦しみを、自分の行動で和らげることができるのではないだろうか。……しかし、逆に余計な行動で先生を妨害してしまうかもしれない。……どう転ぶかは今は分からない。
「……いいや。今は寝よう。そういうことは明日の自分に任せよっと。」
そう自分に言い聞かせるように独りごちながら目を閉じる。
どんなことを成すにせよ、一朝一夕では不可能なのだ。
不安で自らの眠りを妨げるより、明日への期待に胸を馳せるべきだろう。
「明日はもっといい日になるよね、パン太郎……なんてね。」
冗談交じりにそう言いながらニロは眠りに落ちていく。
その夜はゲヘナとしては珍しく、あまり爆音や銃声のしない夜だった。
「う、うぅん……もう朝……?なんかネチャネチャ鳴ってるような……。」
しばらく眠っていたが、謎の音に起こされるニロ。
壁にかかったシンプルな時計を見れば、時刻は05:30。
まだゆっくり朝の準備ができる時間である。
「……起きて、準備しなきゃ……それにしてもさっきのニチャニチャ音は一体……?」
そう思いながらベッドから降り、立ち上がる。
するとどういう訳かお尻に何か液体と個体の中間のような不快な感触を感じる。
「……?何これ?触手の粘液……にしてはなんか、触り心地が……。」
そう思いながらお尻に手を当てる。
すると、感じたのはズボンの質感ではなく、なんともいたない半固体の感触。
「……え?」
指についたその色は、
しばらくフリーズし、何かを察しながら恐る恐る布団をめくる。
するとその布団の中は、おぞましい茶色に汚れており、その中心には……。
\フシャァ?/
「お、お、お、お漏らししちゃったぁああぁああぁあああぁあ!?」
白飯の身体にカレールーのような液体を纏った茶色い触手のパンちゃんが、布団の中でおとなしく鎮座していたのだった。
\フシャルル。/
どうでもインドw
「いやクン〇・ダッシュ!?」
深夜、ゲヘナ自治区の一角。
路地裏にて慎ましく営業していた1つのカフェ。
その中から、数人の悲鳴と銃声が響き渡る。
「ひ、ひぃっ!何なんだ!私たちはただここでひっそりと営業していただけで……!」
オートマタの1人が、自分たちを襲う4人の少女に叫ぶ。
彼の周りには数人の店員が既に倒れ伏しており、ピクリとも動かない。
「ひっそりと?その割には随分と幅を利かせていたようですが?店員の接客態度も悪く、値段が高い割に品質は中の下。更にこのコーヒー、最高品質の豆と書いてありますが、この香りはどう考えても市販品です。」
「な、なんだとッ!証拠は!証拠はあるのか!!」
「……証拠、ですって?変なことをお聞きになるのですね?……揺るがぬ証拠はただ1つ。……私たちの魂ですわ。」
「……は?な、何を言って……!?」
「もう結構です。この店から感じたのは無知な客から金を騙し取ってやるという腐った魂胆のみ。存在自体が美食への冒涜ですわ。」
そう吐き捨てながら、その銀髪の少女は店主に背を向け優雅に店から出ていく。
その後ろをついて行くのは3人の少女たち。
「ま、待てっ!こんな事をしておいて、タダで済むと……!」
「タダで済むと、なんですか?もしかしてご自分の事を仰られているのでしょうか?」
そう言いながらその少女は手のひらに何かを握り込む。
それはアンテナと赤いボタンのついた、小型のリモコンのようなもの。
「生憎ですがそれはこちらのセリフですわ。このような店を残しておいてはゲヘナの美食の名が廃るというもの。心配せずとも、誰も惜しみはしませんわ。」
「……!?お、おい!それはまさか……!」
「そういう訳で、ごきげんよう。もう二度と店など持たないことですわ。」
カチッ。
ドカアアァアアァアァァァアンッ!!!!!!
その少女がスイッチを入れた途端、大爆発するカフェ。
爆発跡には黒焦げになった店主と数人の店員が遺されていた。
「うわぁ……今回も凄い派手だったね!ねぇねぇ、ここでどかーんってしちゃったのって何件目だっけ?」
黒い巻き角が目立つ、グラマラスな体型の少女が笑いながら仲間に話しかける。
「ここで666店目ですよ、イズミさん♪おや、丁度悪魔の数字というやつになりましたね!」
金髪とタレ目が特徴的な、おっとりとした少女がイズミと呼ばれた少女の問に答える。
「悪魔の数字、じゃないわよ!私、今の店のケーキ、結構気になってたのに!結局中途半端にしか食べられなかったじゃない!」
4人の中では一回り小柄な赤髪の少女がプンプンと怒る。
「まぁいいでは無いですかジュンコさん、あんな店のケーキなど食べれば食べるだけ我々の名前に傷がつくというものですわ。」
「え〜?私は結構美味しかったと思いますけどね?まぁ
いかんせん金額に対し量が少なかったので、その点は私も不満でしたが。」
「今のお店のパンケーキ、なんだか不思議な味で美味しかったね!チリソースをかけたらもっとスパイシーで美味しくなりそう!」
「げっ……私は絶対食べないからね……。」
マイペースに会話を続ける4人。
今しがた1つの店を爆破したとは思えない優雅さである。
「……そういえば、先日我々の理解者たるフウカさんの所属する給食部に、新入部員が入ったとの情報が入ってきていましたね。」
銀髪の少女、黒舘ハルナがふと話題を変える。
「新入部員〜?そういえば、あそこって今までたった二人で回してたんだっけ?」
「度々我々がフウカさんを誘拐するので、実質1人の時もありましたね☆」
「悪びれずに言うんじゃないわよ……。でも、あのフウカと言えども、給食部は人手不足すぎて給食の味は微妙なんでしょ?1人増えたくらいじゃ味は改善されないんじゃない?」
ハルナの言葉にそれぞれの意見を口にする3人。
共通認識として、1人部員が増えたところで結局フウカ個人を誘拐して料理を作らせた方が美味しいものができるということらしい。
「しかし、どうやら本日提供されていた給食は大好評だったようで、SNSにも高評価のレビューが出回っているのですわ。ただの噂と一蹴するには少し数が多いのではなくて?」
「どれどれ……わぁ、本当ですね!いつもは給食なんて食べない不良の方々まで高評価をつけています!」
「へ〜!それなら行く価値はありそうだね!」
「ふーん……ま、そういう事なら明日にでも試しに行ってみたらいいんじゃない?」
ハルナにスマホでレビューを見せられ納得する3人。
ハルナは全員の意見の一致を確認し、口の端を吊り上げる。
「それでは決まりですわね……明日の目的地はゲヘナ給食部。それもフウカさん個人を狙うのではなく、謎の新入部員と新生給食部のお手並み拝見ですわ。」
そう言いながら、ハルナは肩に羽織った上着をバサリと翻す。
夜風に靡く美しい銀髪と上着、そして片翼。
「丁度腑抜けた店を爆破するのにも飽きていた所です。……給食部の皆さん、我々『美食研究会』を失望させないでくださいね?」
そう独りごちながら、4人はその姿を夜の街へと溶け込ませていくのだった。
[パンちゃん図鑑 No.006]【カレーちゃん】
危険度:C〜A
カレーライスから生成され、夜中に寝ぼけたニロによっておもらしのような形で産まれたパンちゃん。
基本的にはカレールーのような粘液がかかったご飯の本体から、4本のカレー色の触手が生えた見た目だが、その外見や能力には個体差がある。
元となったカレーによってカレールーのような粘液の中に人参やジャガイモ、お肉にキノコなどカレーの具材に見た目が似た物体が含まれていたり、本体がライスではなくナンになるケースも。
基本的にはマイペースで暖かい環境を好むが、本格スパイスや辛口カレールーを元に産まれたカレーちゃんは危険。
全身からカレーの香りのする気体を発生させるが、元となったカレーの辛さによって効能が変わり、甘口や中辛なら目や鼻に多少の刺激がある程度だが、辛口、果ては激辛となると催涙効果や目潰し、嗅覚の機能停止や電子機器の妨害効果までも発揮する。
本体自体の攻撃性能は無いが、他のパンちゃんと組めば激辛カレーちゃんは対集団、電子機器デバッファーとして、遺憾無く能力を発揮することだろう。
ナマステ!
「……ねぇ、なんだか今物凄く寒気がしたんだけど。」
「あら、風邪ですかフウカ先輩?」
「いや、というよりは何か嫌な予感がするというか……ここ数日油断してたツケが回ってきそうな予感というか……。」
「まぁまぁフウカ先輩、いくらゲヘナでもそう毎日トラブルなんて起きないでしょ!大丈夫ですって!」
「まだゲヘナ生活2日目のニロに言われてもなんの説得力も無いわ……。ま、とりあえず次回予告だけして早く休むとしましょうか。」
「そうですね!それでは次回、[ゲヘナ食堂いらっしゃいませ!]『Folge 6 美食研究会、襲来』!見てくれたらあなたのお家にもパンちゃんが来てくれるかも?」
「いややっぱり嫌な予感当たったじゃない!!来ないでッ!!!」
「ふ、フウカ先輩落ち着いて……。」
「次回もお楽しみに♪」
「ママはブレないね!?」