ブルーアーカイブ ゲヘナ食堂いらっしゃいませ! 〜人型パンちゃんに転生した私、ゲヘナ給食部でパンちゃんたちを従えて無双…?〜 作:Di Gi O
原神やらスタレやらソシャゲに追われてる中、ブルアカは最低限のスタミナ消費で終わらせる始末。
書き手の姿か、これが…?
一言で言えば、私の人生は平坦だった。
生まれた時の体重から、小中高の成績に至るまで、特筆すべき点はない。
見た目も飛び抜けて美人でも無ければ、さして醜いという程でもないと自負している。
大学は地元の可も不可もない中程度の偏差値の所へ行き、特に問題を起こすことも無ければ、何か活躍することも無く卒業。
そのまま地元の有名スイーツチェーンの事務職になった。
同僚とはそこそこ仲良くなったし、上司のハゲのセクハラやパワハラに辟易としたし、給料もそこそこあったので一人暮らしでさして散財するタイミングもなかった私は恩返しに実家に仕送りもしていた。
彼氏もおらず、なんなら出会いもなく。
職場の男性は優しい人も面白い人もいたが、別に惹かれる事も告白されたりすることもなく。
そんな、面白みのない人生。
平和な人生というのは一見すると羨ましく思えるかもしれない。
実際何か不運に見舞われるより、何も起こらない方が幸せではあるのだろう。
しかし人間…これは主語が大きいかもしれないので私という生物は得てして隣の芝生が青く見えるもの。
私は漠然と不満を感じていた。
では私は平凡な人生から抜け出すためになにかしたのかと問われれば、答えは否である。
もしかしたら中学、高校でもっと勉学に励んだり、部活動に入ったりすれば、今よりもっといい大学に行けたかもしれないし、もっといい職場に就けたかもしれない。
小さい頃から体を鍛えてスポーツに励めば、日本を代表するようなスポーツ選手になれたかもしれない。
しかし私は努力ができない。
いや、努力する努力ができないと言えばいいだろうか。
親は別段私を叱ったり褒めたりもそこまでしなかった。
欠点を取ったり逆に満点を取ったりもしなかったので、色んな意味で言うことがなかったのだろう。
両親の口癖は『普通に働いて普通に独り立ちしてくれたらなんでもいい』だった。
その言葉を鑑みれば、私は概ね親の理想通りの育ち方をしたと言って良いだろう。
そんな特筆することのない私という人間のプロフィール。
その中でひとつ言うことがあるとすれば。
私は、『食』が好きだった。
食べていると幸せな気分になる甘い物が好き。
食べているとスッキリする酸味のある物が好き。
食べていると隠れた旨みを引き立ててくれる苦味のある物が好き。
食べているとしんどいのに何故か食べ進めてしまう旨みのある辛いものが好き。
食べているといくらでも白米が進むようなしょっぱい物が好き。
私は基本的に嫌いな食べ物が無く、出されたものは大抵なんでも食べていた。
小学校の給食の時間、昼休みになっても教室の端っこに机を寄せられ先生に鬼の形相で食べ終わるまで休ませないと言われ泣いていた同級生の皿の上の卯の花煎りをこっそり食べてあげていたりした。
食べるだけでなく作るのも好きだ。
中学生の時、同級生がこぞってネイルや髪型、可愛い女優の話、カッコイイ韓国アイドルの話をしている中。
私はレシピ本を読んでいた。
買い物に行けばいつも母親にねだってホットケーキミックスを買ってもらい、家でパンケーキ以外にもドーナツやクレープ、シュークリームなどのアレンジレシピを試しては家族に振舞っていた。
私にとって食とは、自分の表現だったのだ。
では職もそういった関連のものを選べば良かったのではと思うだろう。
私だってそう思う。
しかし、世の成人の中で、完全に自分が思い描いていた理想通り、つまり夢見ていた職業にそのまま就けた人間というのはどれくらいの割合なのだろうか。
学力が足りずなれなかった、人間関係が苦でやめた、思っていた仕事と違っていた。
理由はどうあれ、何もかもが自分の理想通りの大人になれた人間というのはそうそう居ないと私は考えている。
かくいう私がその1人なのだ。
小さい頃から特に夢らしい夢は無かったが、強いていえばパティシエかコックになりたいと思っていた。
大学ではなく調理師学校に行こうと思っていた。
しかし、その時期の世の中は感染症の流行による在宅の推奨や税金、輸入問題による飲食業界への打撃が目立っていた。
私に情熱があれば。
世に吹き荒れる逆風に立ち向かえる心と実力があれば。
そんなものは関係ないと自分の夢を貫けていたのだろう。
しかし私にはできなかった。
大学卒業時期の担任の先生との面談の時。
「透久子ちゃんは確か料理が好きなんだよね?専門学校じゃなくても調理師免許を取ったりする手段はあるし、今からでも夢を追いかけてみてもいいんじゃない?」
「…そう…ですね。…でも、今は飲食業界も色々と厳しいみたいですし、私は一人っ子なので。親に負担や心配もかけたくないですし、とりあえずは普通に一般企業に就職しようと思います。」
親に迷惑を掛けたくない。負担になりたくない。
そういう理由を先生に、自分に言い聞かせた。
もちろんこれも嘘では無い。
しかし、完全な本心でもない。
自分は逃げたのだ。
世論から、現実から。
今の時代、飲食業は中々厳しい。
そんなテレビやネットの言葉を真に受け、すぐに諦めてしまったのだ。
まだつまづいてもいないのに。
そうして就職し、飾り気のない単色の日々を過ごしていた私。
ある休日、私はいつもの様に、好物のパンケーキを自分で作って食べていた。
パンケーキという食べ物は実に素晴らしいと私は思う。
物価高で小麦粉などの値段も上がりはしたものの、未だ手作りできるお菓子の材料の中では安上がりな値段。
牛乳と卵さえあれば作れる手軽さ。
そしてボリュームと味、アレンジ幅。
これほど機能的なお菓子は私はなかなかないと思う。
今日もいつもの様に5枚程のパンケーキを焼き、バターとメープルシロップをかけて頬張っていた。
「…!?ごほっ、がはっ!げっ、おぇっ!」
黙々とネット小説を漁りながら片手間にパンケーキを頬張っていた私は、ろくに噛まずに飲み込もうとしてしまい、喉に詰まらせてしまう。
私はとっさに手元のコップに手を伸ばすが、息苦しさと少しの焦りからか、コップを倒して牛乳が零れてしまった。
まだ余裕があった私は苛立ちながら立ち上がり、キッチンに向かおうとするが、立ち上がったタイミングでたまたま足元に脱ぎっぱなしだった靴下に足を引っ掛け頭からずっこけてしまう。
その衝撃でもろに頭を打ち、気絶してしまった。
喉にパンパンにパンケーキを詰めたまま、意識を失う。
傍から見ればアホらしい光景だろう。
しかし、私は一人暮らしであり、この日は連休中。
ご近所付き合いも無く、尋ねてくる友人もいない私は、そのまま死んだ。
享年22年。
本当につまらない人生だった。
『新たな名も無き神々が、産まれようとしている。』
『我々より居場所を奪いし者共が、また1人産声を上げようとしている。』
ああ、憎い。未だ色彩は我らの呼び声に答えず、奴らはのうのうと数を増やし美しき世界を鉛と火薬で汚していく。
何なんだろう、この声。
うるさいなぁ、やけに頭の中に響く声というか、脳内に直接…!?というか。
奴らって誰?なんで私の頭に声が響いてるの?
なんて言ってるか分からないし。
なれば何とする。
なればこの者を傀儡としよう。
純なる神性、純なる神秘。されどそれでは傀儡能わず。
なれば不純を注ぎ込もう。志半ばで燃え尽きた魂という不純を。
お、ちょっとよく聞き取れるようになってきた。
というかさっきから何の話をされてる方々なの?
神性とか傀儡とか厨二病爆発してる?
私もアニメやら漫画やらゲームやら好きだったから分からないでもないけど。
彼の者の神秘は?
…『ニスロク』。禁断の園の樹の守衛。食と堕落の支配者。
理解できた。ならばこの魂はさぞ馴染む事だろう。意志薄弱、自己薄弱。なればこそ、傀儡となるに相応しい。
よく分からないけど物凄くディスられてる気がする。
何?意志薄弱って。
私が何の意思も持ってなくて流されるまま生きてきたノータリンだって言いたいわけ?
その通りだよ!!!!
箱の主は未だ現れず、神々の長は雲隠れ。
色彩は未だ来ず、嚮導者とは成り得ぬ。
されど混沌渦巻く今であれば、一つの小石が波紋を起こし、その波紋は津波となる。
さぁ、目覚めよニスロクよ。失楽園の反逆者よ。
んん!?
なんか体が硬い!というか何!?手足がない!?私今どうなってるの!?
なんか引っ張られるような感覚があるし…!
よく分かんないけどさっきの話聞いた感じ、私なんかヤバいやつらの操り人形にしようとされてる!?
い、嫌だ!よく分かんないけどそれは嫌だ!
うぉお動け私の体!!いや体というかなにこれ!?魂!?いや、今はとりあえず抵抗!!
無意味なことを。外の世界で死した魂などそれ単体では何の力も持たない。
お前はニスロクの神性と混ざり、意志を持たぬ傀儡として我々の悲願を叶える手足となるのだ。
なぜ抗う?なぜ今更意志を持つ?
うるせー!!
今まで流されて生きてきたけどそれは別段不満らしい不満が無かったからじゃい!!
あんたらみたいな他人の脳内で厨二臭い会議する奴らに訳もわからず操られるなんて死んでも嫌だねぇぇぇ!!!
…とは言ったもののダメだ、どんどん引っ張られるし、私の体?魂?人魂みたいなものがどんどん吸われて消えていく感覚がする。
思い出した、私パンケーキを喉に詰まらせて死んだんだ。
それで最期に丁度読んでたブルアカの二次創作を思い出して、来世はもっと青春したり、自分の意志を貫いて生きたいなって思ったんだ。
いや死因しょーもな!?
そりゃ老人も喉に餅詰まらせて亡くなる事あるけど!
まさか20代でパンケーキで死ぬと思わないじゃん!?
好物に埋もれて死ぬのは幸せみたいな話もあるけど、私の場合幸せ感じる前に死を迎えたんだが!?
あぁ、嫌だなぁ。折角死後の世界的なところに来たと思ったら、訳分からない白装束の仮面の変態たちに囲まれて吸われて消えるなんて。
…?
…何か、見える。
あれは…確かブルアカの…ゲヘナの、校舎?
…あれって、ジュリとフウカ?
そういえば私が好きな生徒、あの二人だったなぁ。
給食部の二人。
2人とも可愛くて、優しくて、先生が好きで。
私が同じ世界にいたら助けてあげたいって、思ったなぁ。
…!!
白装束。白い仮面。厨二臭いセリフ。
思い出した!!!
こいつらアレだ!最終編の司祭だ!!!
別世界の先生をクロコに殺させて本編キヴォトスに侵略させた黒幕!!!
ってことは何!?私の魂、生徒をクロコみたいに色彩パワーの導き手にする為に使われるってこと!?
つまり、このままだと私のせいで、今見えてる2人の世界が滅ぼされちゃうってこと?
嫌だ。
私一人が何か嫌な思いをするならいい。
でも、私が好きな別の何かを傷つけられるのは嫌だ。
目の前に見えてる二人がソシャゲのキャラだとしても。
架空の人物だとしても。
「うぉおおぉぉおぉぉ!!!!動け私の魂ぃいいぃぃぃいぃ!!!!!!」
!?これは、一体!?
肉体を失って尚、導きに抗っている?
何故?何故?何故?世界線を越え摩耗して尚、何故抗える?
ましてなんの意志も持たなかった、ただの人間の魂が…
理解できぬ。
う、うーん?
なんか頭が痛い…
凄い夢を見てたような気がする…
私、何してたんだっけ…
確か、家でパンケーキ食べてたら喉に詰まっちゃって…
焦って牛乳飲もうとしたら零して、キッチンに牛乳を取りに行こうとしたらずっこけて…
というか寒っ。
うじゅるっ…にちゃっ…
んぁ?何この音。
なんか私の背中の方からきしょい音が。
というか何?めっちゃ煙出てない?何ここ?
煙たっ!喉も鼻も目も痛い!
何!?火事!?火事なの!?
にしては寒いし!
ってえぇぇぇ!!?
マッパなんだが!!!!
「げっほ!何これ煙た!?というか寒っ!え、何!?全裸!?ちょ、なんで私すっぽんぽんなん!?」
「「…」」
そう叫んだと思ったら煙が晴れた。
良かった、火事では無かったみたい。
とりあえず何か着るものを、このままだと通報され…
ん?目の前に人影!?
や、やばい!早く隠れないと…って…
「ん?…え…ジュリ!?フウカ!?待って可愛い!!…というか嘘!?ってことはこの世界…キヴォt」
「「きゃあああああああぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!」」
「…どういう状況?」
「ぱ、ぱ、パンケーキが変態にぃいぃいぃ!?」
「おおおおおおちおちおちおちちついてくださいフウカ先輩!ままままままずは話をききき聞かないとおおぉぉ!?」
「あ、あの〜…も、もしかして本物のフウカとジュr」
「助けて風紀委員長ぉぉぉぉ!!!私変態に襲われたくないよぉおおぉぉ!!!」
「ひぃいいぃ!!!フウカ先輩落ち着いてぇええぇ!!!」
「2人とも落ち着いてくれない!?」
「お〇つ突く!?嫌ぁぁぁぁあやっぱり変態よぉおおぉ!!!あの触手で私というちくわにチーズを差し込まれちゃうんだぁぁぁぁぁ!!!」
「フウカ先輩に酷いことするつもりでしょう!メルリー先生の本みたいに!メルリー先生の本みたいに!!!フウカ先輩の純潔はわわわ私が守りますうぅぅぅ!!!」
「そうはならんやろ。」
泣き叫びながらのたうち回る給食部の二人と触手をうねらせながら突っ込む全裸の人型クリーチャー。
SAN値チェックを挟みたくなるがこの小説を読んでも人生をロストする可能性はないので安心して欲しい。
(うーん、このままだと埒が明かないなぁ。というか私も叫びたいんだけど。目の前に本物のフウカとジュリがいる。めっちゃ可愛い。マジ?)
この化け物は自分に起きている異常事態より、目の前に本来ゲームに登場するだけの架空のキャラクターが実在している事に気を取られているようだ。
しかしいつまでも目の前で漫才のような事をされても困る。
それにもしこの叫びを聞きつけて誰かが来たら。
(どうしよう…さすがに全裸を他の人に見られたら通報案件…というか今の時点で通報されてもおかしくないし、それにもし本当にヒナが来たら多分私撃ち殺されるしなぁ…)
風紀委員会委員長、空崎ヒナ。紛うことなきゲヘナ学園最強の存在。
転生したての赤ん坊クリーチャー少女では手も足も出ないだろう。
最も敵対する気もないだろうが。
(なんとかこの場を穏便に済ませて服をもらう方法は…どうしよ〜!叫び疲れて寝てくれたらいいのに!)
そう考えていると。
じゅるっ…とぷっ、とぷ…むわぁぁぁぁ…
背中から何か気色の悪い音と香りを感じたクリーチャー。
(…?また変な音が。というか起きてからずっと腰周りが痒いというか変な感覚なんだけど。何?)
後ろを振り返る。
にちゃっ…ぬちゃっ…
そこには触手があった。
蠢く4本の触手。太い。自分の腕くらいあるし長さは1mを超えている。
どこから生えている?
キヴォトスに触手が自生している地帯など描写があっただろうか。
そう思い足元を見る。生えていない。
つまりこれは。
「イイイイィィイィィヤァァァアァアアアァア!?キッッッッッショォォォォォォ!!!?」
ようやく自分の体の一部だと自覚したらしい。
のたうち回るクリーチャー少女。
「何!?何これ!触手!?エロゲでも見ないようなごん太なんだが!!?生で見るとキッショ!!!え、何で!?なんで私の腰からこんな物が!?どうせ生えるならかわいいケモ尻尾で良かったじゃん!?なんか水色のガス出てるし!!!ひぃいぃぃ止まれえぇえぇ!?」
必死に触手を掴んで抑えようとするクリーチャー少女。
しかし、思いとは裏腹にガスはもわもわと触手の先から放出され続ける。
そんな時。
「絶対化けて出てやる!!これから貴方の弁当にチーズ刺してあるちくわが入ってる度に私の事思い出させてやr…zzz…」
「今まで食べてあげられなかったパンちゃんが化けて出たんですか!?ごめんなさいパンちゃんこれからは絶対残さn…zzz…」
「いやあぁぁぁ自分の身体なのになんか感触がブヨブヨできしょおぉお…え?…あれ?フウカさん?ジュリさん?過労?過労なの?なんで寝た?」
叫んでのたうち回っていたと思えば目の前で突然倒れ昏睡する二人。
余りの過剰な運動で気絶したのだろうか。
いや、普段から給食部としての拷問レベルの過労に耐えている2人がこのタイミングで急に気絶するというのはあまりにも都合がいい話である。
では何が原因なのだろうか。
「…もしかして…このガス?でも私なんともないんだけど。自分には効かないってこと…?」
2人が寝たと思えば、途端に放出が止まった水色のガス。
今は触手の先から中腹にかけてをコーティングするように緑色の粘液が覆ってゴポゴポと音を立てている。
「よく分からないけど…この触手、睡眠ガス的なのが出せるのかな。いや、いくらブルアカの世界だからって私、積極的に女の子撃ちたくないから穏便な無力化手段は有難いけどサ…ビジュ悪いじゃん…めちゃくちゃ悪いじゃん…」
現在進行形でビジュ以前にコンプラアウトな生物が何を言っても説得力が無いが、実際ビジュは最悪である。
昏睡する少女2人、全裸の触手の化け物が一体。
後からこの光景を見た一般人であればパンデミックの発生地だと思われても仕方ないだろう。
「と、とりあえず、せめて何かタオルとか布とかないかな…で、この2人はどこかに寝かせてあげて…」
そう考えて立ち上がろうとすると。
\フシャッ!フシャッ!/
「あぁ、手伝ってくれるの?ありがt…」
自分の触手を下から支えてくれた何かに反射で礼を言ってしまうクリーチャー少女。
背後の床を見る。
そこに居たのは。
\ウジュルルル…/
数匹の薄緑色の蠢くマリモのような物体だった。
強いて言うならその物体たちから生えているのは千切りキャベツのように見える。
「ぎょわあぁあああぁぁぁあぁあ!?」
咄嗟に叫びながら触手をやたらめったら振り回し、マリモのような何かを周囲へ弾き飛ばすクリーチャー少女。
\ギェェェェ!!/
\ウジュァァァァァ!/
ベチャァッ!
奇声を上げながら壁へ叩きつけられるマリモたち。
壁にベチャッと白い粘液を撒き散らしながらべったり潰れる様はさながらシーザードレッシングをかけられた千切りキャベツである。
「うわぁなんか撒き散らしてる!?きも!?何!?なんでこっち来たの!?というかそもそも何この生物!?生物なの!?」
ブーメランが極まっているが未だ彼女は自分が化け物である自覚が無いらしい。
無意識に触手をピンと伸ばして威嚇するクリーチャー少女。
しかしマリモのような何か達は吹っ飛ばされた事も意に介さず少女の元へ戻ってくる。
「ひぃ!?また来た!?何なの!?私絶対美味しくないって!触手のバケモンよ!?」
後ずさる全裸少女。
しかしマリモたちは一定の距離まで近づいたと思えば、その場で座るように触手をもたげさせ動かなくなる。
「…???」
\…。/
沈黙が場を支配する。
方や喋る化け物、方や喋らない化け物。
化け物同士が互いを見つめ合う奇妙な光景。
「…何、何で止まったの?…よく見たらこの触手…ここは給食部…ぱ、パンちゃん、なの?…というか私の触手もパンちゃんまんまじゃん!?え、ってことは…!」
\フシャァッ!/
「人型のパンちゃんに転生した…ってコト!?」
おっしゃる通りである。
「マジか…え、何?私ってどういう存在なの?そういえばそもそも私なんでここにいるの?アホみたいな死に方したのは覚えてるけど、その後どうやってここに出てきたのか全然思い出せないし…って、ん?」
触手を無意識にゆらゆらと動かしながら独りごちる少女。
そうしているとマリモたちが同じようにゆらゆらと全身から生えた触手を揺らし始めた。
さながら顕微鏡で拡大したウィルスである。
「…えい。」
試しに4本の触手を全て右にピンと伸ばす。
\シャッ!/
マリモたちも全身の触手を右に伸ばす。
「ほいっと。」
左にピンと伸ばす。
\フシャ!/
マリモたちも左に伸ばす。
「ほいほいほいほいほいほい。」
触手をグニャグニャと揺らしまくる。
\シャァァァァァ…/
「うわキショ!」
マリモたちも全身の触手をグニャグニャと蠢かせる。
「うーん…状況から考えても、この子達は私の動きに連動するって事なのかな…私をパンちゃんの変異種的な何かと仮定して、この子達もパンちゃんの変異種なら…私って、もしかしてボス格?」
少なくとも敵意は感じない。
まるで命令を待つかのようにその場で伏せ、少女が考え、やって欲しいと思ったことをできる限り遂行しようとしている。
そんな姿を見ていると、どういう訳か。
「…ちょっと、可愛いかも…。」
\フシュゥゥ…/
「え、それ照れてる?なんか光ってるんだけど…」
とりあえずしゃがみ込んでマリモたちを恐る恐る撫でる少女。
大人しい。攻撃もしてこない。
何となく、考えていることが分かるような、そんな気がする。
頭に、声が流れ込んでくる…。
ファミチキクダサイ
「え、ファミチキください!?」
脳内に直接ゴミのような要求を流し込まれて困惑する少女。
この世界にファミ〇ーマートはあるのだろうか。
「えぇ…というかパンちゃんって肉食なのかな…というか口どこ…?」
今気にするべき点はそこでは無いだろうに。
「と、とりあえずこの子達は私の言うこと聞いてくれるのかな…ね、ねぇ君たち。お願いがあるんだけど、ここに何か体を隠す布とか、予備の服とかないかな?2人が起きた時、目の前に触手生やした全裸がいたらまた気絶しちゃうかもしれないし…。」
アラホラサッサー
「え、ドロ〇ボー一味!?」
全身のキャベツ触手を蠢かせながら給食部のロッカーへと這いずって行くマリモたち。
やがてロッカーから数体がフウカたちと同じような制服とエプロン、幾つかの布地を取ってきてくれた。
「ありがとう!うわ、デザインかわいい!」
べちょぉ…
「…まぁ、仕方ないか…うん…全身触手だもんね…触れたらそりゃベチャベチャになるよね…大丈夫…私の触手も似たようなもんだし…」
嬉しそうに服を差し出すマリモたちから顔を引き攣らせつつ服を受け取る少女。
「うーん、下着はさすがに無いよね…仕方ないから腰に布地を巻いて…胸がきついなぁ…サラシみたいに巻くしかないか。で、制服とエプロンを…うーん、触手が入らないなぁ…でも勝手に穴あける訳にも行かないし、とりあえずシャツの隙間から外に出すしかないか…スカートの中に収納してたらう〇ち漏らしたみたいになるし…」
何とか服を着る少女。
イメージしてもらうとしたらゼン〇ロのイド〇ーみたいな触手を生やした紫髪に緑のメッシュが入ったセミロングヘアの少女である。
「うん!ひとまずこれでいいかな!皆、ありがとね。」
ベ、ベツニアナタノタメジャナインダカラネ!
「ごめんそのビジュでツンデレはしんどいわ。」
「う、うーん…」
目を覚ましたのは1人の少女。
美しい黒髪にエプロンと角が映えるゲヘナの癒し。
そう、愛清フウカである。
「あれ…?私、何があって…確か、ジュリがまたパンちゃんを作っちゃったんだと思ったら、パンちゃんじゃなくて変態で…」
フウカは周囲を見渡す。
ここは、ゲヘナの食堂の、倉庫?
隣ではまだジュリが寝息を立てている。
どういう訳か自分とジュリには仮眠用の寝袋が掛け布団のように掛けられている。
ジュリでないなら、誰がかけてくれたのだろうか。
「…なんかこの寝袋、粘ついてる…?何これ…なんか、パンちゃんの粘液に似てる気が…。」
脳裏によぎる最悪の光景。
まさかパンちゃんが進化を遂げて、何かしようとしているのだろうか?
しかし、だとすればこの布団をかけてくれたのはパンちゃん?
何のために?ジュリには懐いている雰囲気があるけど、こんな事今まで無かったはず…。
「…エ…ん…」
「…ん?…厨房の方から…?」
聞いた事のない、いや、これは寝てしまう前に聞いた声。
つまりこの声の主は…
「ま、まさかあの変態…?」
自分の手元を見る。ご丁寧に寝ていた場所の隣には、自分が愛用している
まさかあの謎の全裸の変態がわざわざ武器を隣に置いてくれたのだろうか。
恐る恐るマシンガンを手に取り、構えながらゆっくり立ち上がる。
そして、引き戸に手をかけ、力を込め…
ガラガラっ!
引き戸を全力で引いて駆け込み厨房にマシンガンの銃口を向ける。
「う、動かないでっ!不審者なら容赦しn」
ズンチャ♪ズンチャ♪
ラジカセから流れるエアロビクスで流れてそうな音楽。
「ワンッツースリッフォエアロパンちゃん♪ワンッツースリッフォエアロパンちゃん♪ヒウィゴ♪」
「何してんのよぉぉぉぉおおぉぉぉ!!?!?」
ズダダダダダダダダ!!!!!
「ぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!?!?」
絶叫しながら放たれた数十発の弾丸に撃ち抜かれたのは。マリモのような塊と共にリズムに乗って踊り狂う、ゲヘナの制服とエプロン、そして触手を身に纏う少女だった。